2009年7月31日

No.105 お手伝いクッキングが始まりました

今週から「お手伝いクッキング」が始まりました。その日みんなが食べる昼ごはんの味噌汁作りを当番さんがお手伝いするというものです。ダシをとるところから始まり、野菜を切ったり味噌を入れたりと、その日の味噌汁の味は当番さんが決めていきます。今回の当番はぞう組のKくんとSちゃん、きりん組のRくんとMちゃんで、とてもおいしい味噌汁を作ってくれました。今回の担当は4人でしたが、興味を持ったきりん組のSちゃんとKちゃんは、真剣な表情でお手伝いの様子を見ていました。月に数回程度の予定ですが、ぞう・きりん組は全員体験できるよう計画しています。子どもが興味を持って食に関わる、よい体験になると思っています。

幼児教育の目的の一つに「生きる力」をつけるというものがあります。その「生きる力」とは一体何なのかを考えたとき、人生に立ち向かい、人生の難題を解いていく力、これからのサバイバル時代を生き抜く力、最終的にはそういうことになるでしょう。では「生きる力」をつけるために今何をすべきかというと、何も特別なことではなく、例えばお手伝いクッキングでするように「自分で包丁を上手に扱う」ことや、「自分で片付けや着替えができるようになる」ことや、ケンカをしたときに「自分たちで仲直りする」ことなど、生活する上で必要な一つ一つのスキルを失敗を繰り返しながらでも確実につけていくことや、他人と関わることで起こる問題を自分自身でクリアしていくことなんだろうと思っています。

大人としては子どもたちに自分で味噌汁を作らせるのは、見方を変えればリスクかもしれません。野菜を切るときに指を切ってしまったり、火を使うので火傷してしまったり、味付けもうまくいかなかったりする可能性が高いからです。でも、自立して生きていく為には、何事も失敗しながらでも自分たちでこなしていく必要があります。だから、どんどん子どもたちが自分でやる機会を用意していきます。多少ロスもあります。ハラハラもします。でも子どもはちゃんと学んで、どんどん上手になっていきます。毎日の生活の所作を通して、子どもの「生きる力」を育んでいきたいと思います。そして、そのために私たちがすべきことは「禁止」や「抑制」ではなく、子どもたちの持っている力を信じ、「許可」し「励ます」ことだと思っています。

2009年7月24日

No.104 子どもの『好き』は様々です

22日(水)の日食、皆さんはどんなことを感じられましたか?あいにく雲の多い天気でしたが、あさり保育所付近では10時過ぎに少しだけ太陽が顔を出してくれ、欠け始めた太陽をなんとか見ることができました。一瞬のことだったので全員が見ることができたわけではありませんでしたが、太陽の姿以外の様々な変化を子どもたちは感じてくれたと思っています。

欠けている太陽を見て「すごい!」と歓声をあげる子、約4℃下がった気温を感じて「ちょっと寒くなってきた」と言う子、冷たい風を感じて「ひんやりしてきた」と言う子、暗くなってきたことに気づき「なんか夕方になったみたい」と言う子、いろんな反応を見させてもらいました。おそらく子どもたちは、日食の原理なんかは分からないでしょう。でも、分からなくても、こうしたことを体験し感じることに意味があると思っています。宇宙飛行士の毛利衛さんは『皆既日食を見たこの体験が、私の今の原点になっています。もっと自然を知りたいという強い思いが芽生え、科学者になろうと決めました。そして、宇宙飛行士への道に広がっていったわけです。』と言っておられます。子どもたちにとってこの日の体験が、何かのきっかけになるかもしれません。

また、ある程度予想はしていましたが、「見えたー!」と興奮している子どもたちの横で、それが気にはなりながらも目の前の砂遊びに夢中になっていた子もいました。子どもたちの興味関心は様々だということを、あらためて教わりました。以前も似たようなことを書きましたが、子どもの「好き」は様々です。その「好き」をどのように伸ばし、どのように生かしていくかも様々です。私たちが子どもたちにすべきことは、一人ひとりの「好き」を見つけるお手伝い、それを伸ばしていくお手伝いでもあると言ってもいいと思います。全員が天文好きであったり、全員が宇宙飛行士になったりする必要はありません。それぞれの「好き」が見つかることが大事だと思っています。

明日はいよいよ夏祭りです。自然をテーマにして、「いかに自然に対して興味を抱かせるか」を考え、活動してきました。シロップ作りなど、保護者の皆さんのありがたい協力もありました。梅雨明け前の夏祭りになってしまいましたが、できることなら園舎内ではなく園庭で行いたいと思っています。今夜も天気予報から目が離せません。

2009年7月17日

No.103 2009年7月22日の日食

来週水曜日、7月22日には日本全国で日食が観測できます。残念ながら島根県で見られるのは部分日食ですが、奄美大島北部や屋久島、種子島南部などでは皆既日食も見ることができるようです。部分日食では、太陽のまわりのコロナや太陽表面から吹き出ている赤いプロミネンスなどは見ることができませんが、部分日食も十分おもしろいようです。部分日食には部分日食の楽しみ方があるようで、その一部を紹介したいと思います。

当然のことながら、日食の日は、何を置いても晴れることを期待しましょう(現在の週間天気予報では、残念ながら曇りですが・・・)。

その① トゲトゲ木漏れ日
部分日食を楽しむには、まず木漏れ日が見える所で部分日食の時の影を見ましょう。その影の中の木漏れ日が皆、三日月になるトゲトゲしさを味わう事が大切です。

その② 天変地異
ほんの少しだけ西の空に雲があると、空を動く月の影を見る事ができます。この影がぐんぐん近寄ってくる不気味さと、同時に巻き起こる大風が、ますます天変地異をかもし出してくれてワクワクしてきます。

太陽という絶対的なものがこのような状態になることを、昔の人は不思議に思ったことでしょう。また、不安にもなったでしょう。ですから当然、この日食に関しての民話や神話が残っています。日本でも有名なものにアマテラスが天岩戸に隠れて世の中が闇になるという話があり、これは日食を表したものだという解釈があります。神秘的な宇宙の出来事を、こんな話をしながら楽しみに待つというのも、子どもたちにとって素敵な経験になると思います。

22日は至る所で日食の観測が行われるようですが、保育所でもちょっとした日食観察をひそかに計画しています。午前9時40分頃から始まり、最も欠けるのが10時59分、ということです。皆さんも部分日食を楽しんでみられてはいかがですか。

2009年7月10日

No.102 天気のことから考えてみる

プールの活動が始まりました。夏祭りも近づいてきました。この時期は、いつも以上に天気が気になり、毎日何度も天気予報を見てしまいます。天気予報といえば気象予報士という職業を思い浮かべますが、この資格をとった人の話で興味深いものがありました。

まず今年の1月に13歳7か月(中学1年)で最年少気象予報士となった山崎一哉君。山崎君は、幼稚園の頃に買ってもらったお天気の漫画をきっかけにテレビの天気予報が大好きになり、最初は雲の写真や図鑑などをよく見ていたといいます。小学生の頃、家族でハワイ旅行に行く途中の飛行機の中で見ていた「雲の本」に夢中になったのが受験のきっかけで、小5の時から試験に挑戦していたそうです。彼の将来の夢は、「化学者」だそうです。気象予報士は直接職業には結びつかないようです。

そしてRAG FAIR(ラグフェア)のボーカルパーカッションとして活躍していること奥村政佳さん。10年前の高校2年生のころ最年少気象予報士として合格しています。その後、筑波大学(第一学群自然学類地球科学専攻)に入学しますが、アカペラサークルに入り、「ボーカルパーカッション」というものを世に知らしめました。このときをきっかけにして、気象予報士の道ではなく、音楽の道を歩んでいます。しかし、今でも天気図を眺めるのが好きなようです。彼のある日のブログを読むと、「ただいま新幹線。空は青空、山は緑。天気図チェック合間にブログの更新でもいたしましょう」ではじまり、その日のブログの最後は「さ、そろそろ天気図に戻りますか。」で終わっています。

人はいろいろな経験をする中で、何が好きか、何をしているときが楽しいか、それぞれ違います。また職業としてどんなことをやるのかもそれぞれ違います。好きなことが趣味になるのか職業になるのか、成長していくうえでの通過点であるのかもそれぞれ違います。今、保育所にいる様々な子どもたちを見ていると、これから先どんな職業について、どんな人生を送るのだろうかと考えてしまいます。そして、そのために今をどのように過ごさせればよいかということを考えないといけないとも思います。子どもが現在を最も良く生きることを保障するのは、望ましい未来をつくり出す力の基礎を培うためであり、言い換えれば、保育理念の「人生の基礎づくりのおてつだい」ということになります。

2009年7月3日

No.101 あさり保育所の保育の方向は

突然ですが、世界では今、保育・教育界は揺れ動いています。以前触れたことのある、OECD(経済協力開発機構)が行ったPISAの学力調査の結果についての対策のためです。幼児教育には2つの捉え方、学校準備型としての「就学前教育」、社会教育の出発点としての「社会教育前教育」があり、OECDは両者を検討した結果、「社会教育前教育」がこれからの子どもたちには必要だと言っています。あさり保育所でも同じ考えで保育を行っています。

あさり保育所には「人生の基礎づくりのおてつだい」という保育理念があります。そして、その理念をどのように保育の中で具体的に実践していくか、その指針となるべきものとして「保育課程」というものがあります。今後社会に出て行く子どもたちに、どんな力をつけてあげるよう保育を行えばいいか。どんな力をつけることが、生き生きと生きていくことの基礎となるのか。そんなことを書いている「保育課程」の一部をここにも書いてみます。一部ではありますが、あさり保育所の保育の方向を知ってもらうことができると思うので、ぜひ読んでみてください。

最近の大きな変化に、子どもに求められる力が変わってきたことがあります。いわゆる「学力観」の変化です。かつて、物を覚えることが学習の優先課題であり、どれだけものを覚えているかがその子の頭のよしあしを測る基準であり、覚えていることを試すのが試験でした。学力が高いということは、多くのものを覚えさせ、多くのことができるようになるということでした。しかし、機械が発達しコンピューターが出現してからは、ただ多くの知識を覚えることだけでは意味がなくなってきました。そのように、ある知識を子どもに覚えこませることから、きちんとした発達を保障することに変わってきたとき、新しい教育の創造・これから目指す保育のキーワードは、「一斉で画一的な保育・教育からの脱却」です。知識を伝達する上で、より効果的な集団、統制のとりやすい集団を、保育士が主導的に引っ張っていくというような保育から変わらなければなりません。そして今後は、子どもの主体的な活動を促す環境、子どもの自発的な活動としての遊びを保障する環境、子ども一人ひとりの特性に応じた環境をどのように創造していくのか、人との関わりをどのように作っていくのか、子ども集団で行われる「協同的な学び」をどのように意図していくかが、保育の目標になります。