2015年12月25日

No.426 つながりを再確認する機会に




火曜日にキャンドルナイトのイベントが行われました。この日のために1週間くらいかけて「四季のキャンドル」を作りました。地域の方の協力もあり、キャンドルを入れる瓶にカラフルな砂を詰めることにも取り組みました。ぞう組さんは会の進行やハンドベルの演奏などを楽しみながら行ってくれていました。また、このキャンドルナイトの取り組みが発展し、12月6日(日)に保育園に来てくれた陽希さんのゴールのお祝いに「特製山型キャンドル」も作りました。このキャンドルはゴールの際に渡してもらえることになっています。

キャンドルナイトに関係する事柄をざっと書き出してみるとこうして7行くらいに収まってしまうわけですが、書かれていない様々なことが背景にあって成り立っています。四季のキャンドル作りはどのようなものを作るか話し合うところから始まっていますし、瓶に詰めた砂は地域の方が試行錯誤した上で「こんなのはどうだろうか」と提案してくれたものです。陽希さんへ渡す山型キャンドルも、キャンドル作りをしていたことからのつながりではありますが、春から陽希さんのチャレンジを追いかけてきたことがなければ成り立たなかったことだと思っています。

子どもは様々な体験から学び、その学びを次の体験につなげていくことで成長していきますが、それと同じで保育園での活動もそれまでの取り組みやそこで学んだことが全部つながって成り立っています。最近特に注目されている人と関わる力、対人知性なんかも、乳児期に他者から刺激を受ける体験が基礎となってきます。どんなことも、程度の違いはありますが、1つ1つがつながっています。そして残念なことに、私たちはそのつながりを忘れてしまいやすいものだと思っています。だからこそ「つながり」や「つながりの意味」を定期的に確認する作業が必要で、例えば年末年始という区切りを利用して「あの時のあの体験があったから今の姿があるんだよなあ」「こういう姿を目指したいわけだから、今のこの体験は大事にしてあげたいよね」「こんな体験の場を用意するのもいいかも」などと考えることが大切になってくるんでしょうね。



冬至の日には柚子を用意して足湯を楽しみました。季節を感じる体験です。大晦日、正月は季節としても、1年という流れの中でも大きな意味を持つ日です。新しい年を迎えること、その独特の雰囲気を子どもたちにたっぷりと伝えてあげてください。来年もよろしくお願いします。



2015年12月22日

冬至

二十四節気

冬至…冬の最中で寒さの厳しい時期。
冬至(とうじ)とは一年でもっとも昼が短く、夜が長い頃。寒さを乗り切るために、栄養価の高いかぼちゃを食べ、柚子湯に浸かり無病息災を願います。

七十二候

2015/12/22
初候 乃東生(なつかれくさしょうず)
夏になると枯れてしまう靭草(うつぼぐさ)の芽が出る頃。靭草は芽を出す頃ですが、この草以外の草木のほとんどは枯れていきます。

2015/12/27
次候 麋角解(さわしかのつのおつる)
ヘラジカの角が生え変わる頃。枝分かれした大きな角が抜け落ち、春にまた新しい角が生え始めます。

2016/01/01
末候 雪下出麦(ゆきわたりてむぎいずる)
降り積もった雪の下で、麦が芽を出しはじめる頃。重い雪の下で、暖かい春をじっと待っています。

「暦生活」より

2015年12月18日

No.425 文化を伝承するということ




先週の土曜日は餅つき会でした。昨年の餅つき会から、祖父母のみなさんだけでなくお父さんお母さんにも協力してもらう形に変えてきました。保育園では餅つき会を「文化を伝承する」行事と位置づけています。祖父母のみなさんから園児に餅つきの文化を伝えてもらうのですが、ふと「今のお父さんお母さんは臼と杵を使った餅つきの経験がどのくらいあるんだろうか?」と疑問が湧いてきました。今の園児が親になったとき、今のお父さんお母さんは祖父母として餅つきの文化を伝える役になるわけです。ということは保護者のみなさんに餅つきの経験がないのであれば、この先文化を伝承する行事が成り立たなくなるのではないかと心配になりました。そこで一部の方ですが餅つき経験について聞いてみると「経験無し」の方が多かったため、お父さんお母さんにも協力のお願いをして一緒に餅つきを楽しむ形に変えることにしました。ただ、現状はたくさんの方に参加してもらうことが難しいので10名限定とさせてもらいましたが、少しずつでも受け入れの枠を増やしていければと思っています。

当日は祖父母のみなさんの丁寧な指導のもと、お父さんお母さんにも餅つきを楽しんでもらいました。つきたてのお餅を食べる時間と重なってしまったため、子どもたちに十分その様子を見てもらうことはできませんでしたが、三世代でにぎやかな餅つき会を楽しむことができたと思っています。餅つきに限らず文化を伝承する取り組みについては、長く受け継がれていくために何をすべきなのかも丁寧に考える必要があるんでしょうね。



子どもたちに伝えていきたいことといえば「掃除」もそうです。保育園で保育者が行う掃除は、可能な限り子どもたちが見ることのできる時間帯に行うようにしています。掃除をしなければきれいに保つことはできないことを、子どもたちにはちゃんと見える形で伝えたいですし、見せることをしなければ掃除の方法が分からないため子どもたちに掃除を任せることも難しくなってきます。また、例えばほうきや雑巾を使った掃除などは、掃除としてだけでなく、ほうきの持ち方や動かし方、雑巾の絞り方や拭き方などの動き自体にもちゃんと意味があります。手だけでなく体全体を育てていく大切な活動だと捉えると、生活をすること自体も丁寧に行っていかなければいけないと思わされます。今年もあとわずかとなってきました。保育園でも大掃除を予定しています。大掃除も大事な学びの場です。家庭でもできる範囲内で一緒に取り組んでみてください。

2015年12月11日

No.424 共同保育は人間としての出発点

ゴリラ研究の第一人者で京都大学総長の山極壽一(やまぎわじゅいち)さんと、世界に広がっていった人類の道のりを逆ルートで踏破する「グレートジャーニー」をおこなった探検家の関野吉晴さんの対談が、8月にテレビで放送されました。そこで出てきた話がなかなか興味深いものだったので紹介します。関野さんが

「人類は700万年の歴史を持っている。ゴリラやチンパンジーにできないこと、例えば二足歩行や、火や言葉の使用とかをいろいろとやってきた。その中で『これをやらなかったら我々人類はいないだろう』という一番大きな業績は何だと思うか。」

と質問しました。それに対して山極さんは

「食物を共有することと共同保育をすること、つまりあらゆる生活が『ともにある』という心によって作られていること、これが人間としての出発点だと思っている。これがなかったら人間にはならない。そして近隣関係も大事。家族は1つだけではダメ。複数の家族が集まって共同生活をしないと家族というものは存立できない。」

と答えておられました。すごくシンプルなやり取りですが、人間の子育ての原則を端的に示してくれています。「共同保育」が人間の子育ての基本であるということが研究を通して分かったのは、とても興味深いことです。

保護者講演会にも来てくれたことのある新宿せいが保育園の藤森平司園長は、よくこんなことを話されます。

「ゴリラは4年、チンパンジーは5年、オランウータンは7年も授乳期間が続くため、その間はお母さんの手元で育てられます。それに対して人類の授乳期間は1、2年です。離乳すると次の子どもを作ることができるため、霊長類と比較して人類は著しく多産ということになります。子どもが多いということはお母さんが1人で育てることはできないため、いろんな人に抱っこされたり、いろんな人と関わって育てられることは当たり前のことでした。地域の形が変わり少子社会になっている今、家庭や地域の中でいろいろな人と関わって育つことが難しくなっていますし、子ども同士の関わりも減っています。だからこそ保育所のような場で様々な関わりが生まれるようにしていくことは、今の時代においてはますます重要になってきています。」

これらのことから考えると、子どもが家庭だけでなく保育園のような場でも過ごすことはすごく自然なことで、すごく重要なことであるはずです。そして、これは保護者が働いているかどうかに関係なく、全ての子どもに当てはまることです。この“全ての子ども”に対して何をしていくのかが、これからのあさり保育園の大きな課題です。人類の子育ての基本である『共同保育』を守っていくために、できることはまだまだあると思っています。

2015年12月7日

大雪

二十四節気

大雪…積陰雪となりて、ここに至りて栗然として大なり。
大雪(たいせつ)とは本格的に冬が到来する頃。山々は雪に覆われ、平野にも雪が降り積もります。新しい年の準備をはじめる「正月事始め」もこの時期から行われます。

七十二候

2015/12/07
初候 閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)
天地の気が塞がれ、冬がおとずれる頃。空は重い雲に覆われ、生き物はじっと気をひそめています。塞ぐという言葉は、寒さから人々を守るという意味でとることもできます。

2015/12/12
次候 熊蟄穴(くまのあなにこもる)
熊が冬ごもりの時期に入り、穴にこもる頃。春になるまで、穴の中で過ごします。熊だけではなく、しまりすや蛙、こうもりも冬ごもりを始めます。

2015/12/17
末候 鱖魚群(さけのうおむらがる)
鮭が川を遡上する頃。海で育った鮭は、産卵のために自分の生まれた川へと里帰りをします。北国では冬を代表する光景のひとつであり、迫力のある遡上を見ることができます。

「暦生活」より

2015年12月6日

田中陽希さんが帰ってきてくれました!




日本2百名山ひと筆書きに挑戦中の田中陽希さんがあさり保育園に立ち寄ってくれました。日曜日でしたがたくさんの親子が集まってくださり、賑やかに迎えることができました。そして奥出雲、広島からも来てくれた方もいました。みなさん、ありがとうございました。







陽希さんはFacebookに「約1万4千キロを歩いて、あさり保育園に帰って来ました♪」と書いておられます。約1万4千キロ!昨年4月に来てもらってからとんでもない距離を歩いておられますね。そして第一声が「帰って来ました〜!」の一言。昨年の出会いを大切に覚えてもらっていたことを感じ、嬉しく思いました。

保育園の中へどうぞとお誘いしたところ、まず「あさり保育園山に登らせてもらおうと決めていたんです」と園庭に向かわれました。実は昨年の百名山ひと筆書き踏破後に陽希さんにお会いした際、子どもたちが園庭の築山に100回登った映像を観てもらったんですが、そのことを覚えていてくれていて「あさり保育園山登頂」を計画してくれていたようです。

昨年の子どもたちの100回チャレンジ



陽希さん、あさり保育園山登頂!



5秒もかからず登ってしまいました。



そして子どもたちが砂場に作っていた山とご対面。さすがにこちらの山には登れないので、手でちょこちょこっと登ってくれました。





その後は園舎内で子どもたちが陽希さんのために準備を考えてくれていたことを1つずつ行っていきました。

まずはさくら保育園で採れたカリンの実で作ったシロップをお湯で割って飲んでもらいました。風邪をひかずに歩き続けてもらいたいという思いです。



子どもたちが書いた応援メッセージを渡しました。子どもたちに囲まれながら読んでくれました。



疲れた体をほぐしてあげたいと肩たたきをしてくれた子もいました。



昨年遊んでもらった卒園児からの応援ビデオを観てもらいました。





6校に別れて入学した11人の卒園児からのメッセージを保護者が集めてくれ、編集までしてくれたものです。ビデオの中には、陽希さんを応援しようという思いから11人が再びつながることができたという言葉も書かれていました。こんなつながりも陽希さんが作ってくれたんだと思うと嬉しくなります。

そして、集まってくれた保護者に向けて子どもたちに対する思いも話してくれました。



体の疲れも痛みももちろんあったと思いますが、私たちとずっと笑顔で接してくれた陽希さん。陽希さんの優しさをたくさん感じることのできた、楽しい時間でした。





まだまだ続く陽希さんの旅を、明日以降もしっかりと応援させてもらいます。







2015年12月4日

No.423 舞台袖から

発表会が終わりました。今年の子どもたちの姿はどのように映ったでしょうか。個々の成長を、そして集団としての成長を感じてもらえたでしょうか。私は今年も舞台の袖であれこれやっていて、発表会前の映像をストップさせてしまったり、出し物の最中に舞台のライトを消してしまったりと、いろいろと迷惑をかけてしまったわけですが、そのことはちょっと置いといて、舞台袖にいたからこそ見えたこと、感じたことを書かせてもらいます。



今年もたくさんの子が裏方役をやってくれました。自分たちの出番以外でも役割があるのは忙しかったと思いますが、裏方役をするために舞台袖に来る子どもたちの表情はとても楽しそうでした。自分のクラスの出し物以外のことに生き生きと取り組んでいる姿を見ていて、発表会を自分たちのこととして楽しんでいるんだなあと嬉しくなりました。そして、りす組の様子を見ながら一緒に手遊びをしてくれる様子も見られました。さらに、くま組の様子を優しく微笑みながら見ていてくれる子もいました。大人が子どもたちの頑張りを見守ってくれているような雰囲気でもあり、ずいぶん成長したなあと感じたりもしました。



こうした姿は子どもたちに教えたものではありません。感覚的に近くなって一緒に楽しんだり、ちょっと距離を置いて見守ったりといった行動は、日々のそうした関わりの積み重ねがあったからこそ見られた姿だと思っています。発表会では何かを教え込むのではなく、日々の生活や遊びの中で育ってきた力を見てもらう場だと言ってきましたが、舞台袖で見ることのできた姿もまさにそれでした。こうした姿を保護者のみなさんにもっと見てもらえるようにすることはできないだろうか?そんなことを改めて考える機会にもなりました。

自分の出番だけでなく、他の子の出番を見たりサポートしたりする場にもなってきているのがここ数年の発表会です。それは練習においても同じです。これは関わる力が育ってきているからこその変化であり、日々の生活の中での関わりがつながっていることを感じています。そして発表会での体験は、その後の生活の場にもちゃんと活かされていくことと思います。「行事はその日だけのものではなく、成長のための通過点である。」今後の行事でも、この思いを丁寧に形にしていきたいと思います。