2008年12月25日

No.76 今年の終わりに

先週の金曜日にキャンドルナイトの行事がありました。保護者の皆さんにも見ていただき、「こういう雰囲気は素敵ですね」「なんだか癒されました」といった声もたくさん聞かせていただきました。皆さんにもこの取り組みを感じてもらえたことを嬉しく思います。私自身は今回のキャンドルナイトの様子を見ていて、暗さを感じることの大切さを特に考えさせられました。古来より闇の部分を重んじ、とても大切にしてきた日本人ですが、現代では、本来闇であるはずの時間や空間にまで一日中光を当て続けています。その結果、見なくても良いものまで見えて、休むものも休まらず、個人にも社会にも強いストレスがかかっている状態と言えるかもしれません。技術の発達によって便利になったはずなのに、それが果たして人々の幸せにつながっているか、疑問に感じることもあります。

世の中は確実に便利になってきています。でも・・・、と思うことはいろいろあります。例えば交通機関の進歩によって、昔は大阪から東京まで6時間かかっていたのに、新幹線を利用すると今は3時間もかかりません(飛行機だともっと早く着きます)。そのことによって3時間の余裕ができたはずなのに、今の人達は(私も含めて)昔の人達よりも時間が足りないと言っているのが現状です。昔は6時間の間に物事を考えたり、駅弁を食べながら風景を楽しんだりと、じっくり時間が流れることで人生の豊かさを得ていた気がします。便利になることがゆとりを生むのではなく、ゆとりを失くしてしまっているのかもしれません。

私たちは「何のために生きていますか?」と問われると、多くの人は「幸せになるために生きている」と答えると思います。では、どうなることが幸せといえるのでしょうか。大人だけでなく子どもたちも幸せを感じにくくなったと言われるこんな時代だからこそ、私たちは"人と物"や"人と人"とのつながりを見直してみる必要があると思っています。そのことは自分自身の「幸せ観」を見直すことにつながります。そしてそれは子どもにも伝わり、子ども自身が「幸せ観」を築き上げていく際のモデルにもなると思っています。

子どもたちのために、こんなことも皆さんと一緒に考えていけたらという思いを込めて、書かせてもらいました。皆さんの思いもぜひ聞かせてください。

1年間ありがとうございました。来年もよろしくお願いします。

2008年12月18日

No.75 なかよし会とキャンドルナイト

明日19日(金)になかよし会を行います。今年のなかよし会はK保育士が中心になって計画が進められてきました。今回のテーマは"五感"で、その五感をそれぞれに刺激するコーナーを用意します。以前「五感を使った遊び」をぞう組さんが体験してきたことを書きましたが、そのときにもらったヒントが今回のなかよし会に生かされることになりました。

普段私たちは五感を特別に意識することはあまりないと思いますが、何気なく行っている日常の動作に五感はフルに使われています。この五感を1つずつ取り上げて子どもたちに体験させることにはいろんな意味があります。1つは以前も書いたように脳が刺激されるということがあります。「聞く」「触る」「臭いをかぐ」という動作をする度に、脳の働きが強化されることが分かってきています。またそれ以外に記憶にも関係してきます。目で見たり耳で聞いたりするだけなく、実際に触ってみたり、臭いをかいでみたり、味わってみたりすることで、その行動がより脳に意識され記憶にも残りやすくなります。そこから関心が深まり、さらに次の興味・関心へと広がっていくことにもなる、とても大切なことだと思っています。

そして夕方には今年で2回目のキャンドルナイトです。今回のキャンドルナイトの内容はぞう組さんが考えてくれました。どのような内容をどのように行うかを、自分たちで意見を出し合いみんなでまとめ、準備までやってくれました。しかも「積極的に」です。このように子どもたちが自らやろうとする意欲は、行事の意味を大きなものにしてくれます。『自分で考え、自分で決めて、それに取り組む』体験を繰り返すことで、子どもたちは自分のしたことに責任を持つことも学んでいきます。本で学ぶのでも、大人が言って聞かせることで学ぶのでもなく、やはり大切なのはこうした主体的に取り組む体験の積み重ねです。ぞう組さんの取り組みを見ていて、行事の大切さをあらためて感じました。また、ぞう組さんの姿勢は、他の子にもしっかり伝わるだろうと思っています。

明日のなかよし会とキャンドルナイト。この2つの行事を通して子どもたちがどんなことを体験し感じたか、いろいろと聞いてみてください。

2008年12月5日

No.73 赤ちゃんも子ども同士で関わる力を持っている

21年度の保育所入所申し込みが終わりました。毎年のことですが、入所申込期間中は問い合わせも多く、そのためいろいろな方とお話する機会があります。問い合わせ内容は手続きや入所条件のことが多いのですが、話をしているうちに、その方の子どもに対しての思いが伝わってきたりします。また、0歳児や1歳児の入所を検討しておられる方の中には、「子どもが小さいうちは親が面倒を見たほうがいいのでは・・・」と周りの人に言われて悩んでいる人もおられました。同じ悩みを抱えている方は一時保育を利用される方の中にもおられます。今回はこのことについて書いてみます。

子どもが小さいうちは大人との関わりが重要で、子ども同士の関わりの必要性は成長していくにつれて高くなっていくという考えが、まだまだ多いのではないかと思います。しかし最近の研究で、赤ちゃんも子ども同士で関わる力をもっているということが分かってきています。例えば、集団保育の場面で乳児がどのように他児と関わるかを観察して分かってきたことはこんなことです。

3ヶ月児では他児への、見る・発声する・さわるといった行動が見られ、4~5ヶ月児では保育者に抱かれたまま、他児に手をのばしたり、服をつかんだりという行動が見られるようになります。6ヶ月を過ぎると互いに見つめあって何らかの関わりをもとうとするしぐさを示すようになり、9ヶ月児になると、這って接近をしていったり、相手の発声に微笑んだり、物を介したやりとりをするようになるといいます。そして1歳前後になると物を介した関わりが多く出現し、「物の取りあい」も生じてきます。こうした行動は、多くの保護者も目にしてこられたのではないかと思います。

OECD(経済協力開発機構)が乳幼児教育の指針として出した基本のひとつに「ひとは、生まれた瞬間から教育される権利がある。」というものがあり、親との関わり以外の体験も重要視されるようになっています。すでに世界はこうした考えで動き出しています。ここでいう「教育」とは、子ども同士の関わりや大人の導きによって、持っている力を引き出すという意味です。生まれたときから持っている「子ども同士で関わる力」をしっかり発揮できる環境での体験は、どんな子どもにも必要だと私は考えています。親との関わりと同時に、子ども集団での経験の重要性も、もっともっと語られるようになければいけないのかもしれません。11月はこんなことをいろいろと考えさせられました。