2011年5月27日

No.195 変化や成長を共に感じる場

園庭や玄関周りの工事がようやく終了しそうです。今回の工事や改修ではあちこちが変化したのですが、その変化した部分を保護者のみなさんにもぜひ見ていただきたいと思っています。特に玄関周りの植樹と畑の改修については、どんな思いを持って行ったのかを書いておきます。

まず玄関周りの植樹について。この場所には比較的低い木を植えました。種類はナツメ、ザクロ、キンカン、オリーブ、ブルーベリー、ジューンベリー、アキグミです。果樹をあれこれと植えたわけですが、この場では子どもたちに「触れる」「味わう」といったことを体験してもらいたいと考えています。食べられる実を期待すること、花から熟した実への変化を感じること、待ちきれずに緑で酸っぱい実を食べてしまうことで甘く熟れた実との違いを体験するなど、そこでの子どもたちの姿をあれこれ想像しています。ダイナミックな活動のできる場とは違っていて、自然の変化をのんびりと体験できる場となります。

そして畑の改修について。まだ改修は途中なのですが、1つの大きな畑を小さないくつかの畑に分け、その小さな畑の間には通り抜けられるように道を作りました。栽培活動を行う上でたくさんの野菜が収穫できることはうれしいことです。でも、それが一番の目的でなくてもいいと考えています。まず大事にすべきなのは作物との出会いであり、変化に気づいたり触れたりすることです。今度の畑は子どもと作物の距離が近くなります。面積も少し広くなったので、収穫量を求めなければいろんな種類の野菜を栽培できますし、できた野菜を全て収穫せずにそのまま置いておくとどんな変化が見られるかを積極的に試してみることなど、実験的な試みもやりやすくなるでしょう。そんな取り組みに関わることも、子どもたちにとっては貴重な体験となるはずです。

以上のように、「触れる」「育てる」「気づく」「味わう」「体験する」ための場が増えたわけです。園庭は子どもたちが積極的に活動する場、多くの人が触れ合う場、自然と触れ合う場です。そのためにこれからも変化は続くでしょうし、日々変化し成長することを関わる全ての人と共に感じる場でありたいという思いです。ですから保護者のみなさんも畑や玄関周りを是非のぞいてみてください。お子さんと一緒にいろんな実も味わってみてください。そして「花が枯れそうになってるよ」と教えてもらえることなんかは、結構ありがたいです。


2011年5月20日

No.194 お知らせをいくつか

月曜日のピザ作りは無事に終わりました。感想は既に聞かれていると思いますが、とても美味しいピザができあがり、子どもたちだけでなく私たち大人にとっても楽しい体験となりました。準備から当日の運営までフル稼働してくださったOさんご夫妻には本当に感謝しています。なお、当日は山陰中央新報の「りびえーる」の取材を受けましたので、後日掲載されると思います。

この場で呼びかけていた保護者のみなさんの得意なことを生かした体験の提案ですが、さっそくぞう組のTさんからおもしろい提案を受けました。8割方改修の終わった畑も活用しながら、子どもたちが野菜に対しての興味を持つきっかけになると思われる、そんなおもしろい料理体験です。これだけでは何のことかわかりませんね。詳しく決まればお知らせしますので、もうしばらくいろんな想像をしながら待っていてください。

さて、話は大きく変わって、いずれきちんとまとめようと思っていることについて書いてみます。ほんとにいきなりですが、ヒトの特徴に共感能力があります。他者の立場に立ってものごとを考えたり理解したりすることですが、個を磨くためにも社会を作っていくためにも、とても大事な力だと思っています。他人が何を考えているのか、その背景には何があるのか、そんなことを想像する力は他の動物にはないそうです。そして、この共感能力は他人との関係性の中で磨かれていくということもわかっています。

私たちが子ども同士の関係や大人とのいろんな関係を大事にしているのは、その関わりの中で子どもたちに共感する力を磨いてもらいたいという思いもあるからです。そのためにも、私たち大人が共感をベースにした行動や社会のあり方を子どもたちに見せていく必要があるとも思っています。自分の目の前にいる他人だけでなく、距離も時間も超えた他者に対しての思いを表現することも、共感能力を持つことのできた人間の大きな役割ではないかと考えます。例えば、東北に心を向ける、ということ。無理矢理つなげているように思われるかもしれませんが、心を向ける、目には見えないつながりを感じる、ということの大切さを子どもたちにも感じてもらいたいと思っています。そのために夏祭りで何かできないか、保護者会長さんをはじめ役員の方々とも話をしているので、またきちんとお知らせします。お知らせばかりになってしまいました。

2011年5月13日

No.193 自然に対する思い

昨日は親子遠足がありました。残念ながら今年も雨の遠足となってしまいましたが、それでもサヒメルでの体験はなかなか楽しいものになったのではないかと思います。たくさんの生き物(標本も含めて)を見ることができましたし、地中の様子や野鳥を観察したりするために自然の一部を切り取ったような窓がたくさん設けてあったりと、自然に対して興味を持たせる工夫は私にとっても参考になることが多くありました。

自然について、自然とどのように関わるべきかについて、考える機会が最近明らかに増えました。意識し過ぎないようにしているつもりなんですが、3月のあの日の出来事の衝撃はやはり大きいです。あのような形で、いやいや、あれがありのままの姿なのかもしれませんが、とにかく自然の力を見せつけられて、自然に対する考え方を見直すときですよと言われているような気がしています。私たちは「自然との共生を目指す人になってほしい」という子どもたちへの思いは持ち続けなければいけないと思っています。そのためにも自然のことをもっとよく知り、その上で子どもたちが楽しみながら自然に関わることのできる取り組みを、もっと具体的に形にしていかなければいけないと考えています。最近同じようなことばかり書いていますが、サヒメルでの時間はそんなことをあらためて考えさせてくれました。

話は変わって、いよいよ来週の月曜日にはピザを作ります。以前この活動について「社会には様々な役割を持った様々な人がいることを感じてもらいたい」と書いたのですが、それを受けてぱんだ組のOさんから「自分の仕事を生かして何かできることがあれば協力したい」という言葉が届きました。本当にうれしいことです。そんな風に思ってくれる大勢の保護者に支えられて、あさり保育所の子どもたちは本当に幸せですね。

私たちが子どもたちに身につけてもらいたい力に「自立」がありますが、その「自立」とは、一人で生きていく力ではなく、『社会の中で自分の役割をみつけていく力』です。そのためにもいろんな人、職業、価値観などに触れることを、様々な場面で用意したいと考えています。以前もお願いしましたが、もう一度。「こんな体験はどう?」といった提案があれば、ぜひ聞かせてください。どこまで形にできるかわかりませんが、いろんな提案を楽しみに待ってます。

2011年5月6日

No.192 創造力や探求心を育む環境

森の幼稚園というものをご存じでしょうか。雨の日も雪の日も森に集まり、森の中で移動しながら保育活動を行う幼稚園全体を指すものです。さらに、森の幼稚園には2種類あって、園舎などの施設を持たずに森の中だけで活動している園と、園舎を持ちながら屋外活動の一環として森での保育を行うところがあります。この森の幼稚園は1950年代半ばにデンマークで始まった取り組みで、今ではヨーロッパだけでなく、日本でもその活動は広く行われています。このことについて、ある職員とあれこれ話をしていて考えることがありました。

当然のことながら、森の幼稚園では自然の環境が遊び場です。季節に準じたプロジェクト教育のカリキュラムも充実していて、昆虫、草花、木々や動物の変化を観察します。そして、温暖な季節や天候の日だけではなくて、当然、雪の日も雨風の日もあり、ブトや蚊からどのように身を守り順応していくか、また、そのような厳しい環境の下に身を置くことで、体をとおして自然への畏敬の念を学ぶようです。そんな風に自然から多くのことを学べることはすばらしいことだと思います。

そして既製のおもちゃのない環境でいかに創造的に遊ぶか、ということも大事な点だと考えます。最近は様々な種類のおもちゃがあふれ、子どもたちは常のそれらのおもちゃで遊んでいるために、自ら創造したり工夫をしたりすることが少なくなってきていると言われています。私は、それはある部分は当たっているけどある部分は違っていると思っていて、子どもにとっておもちゃがいいか悪いかという話ではなく、子どもには創造力や探求心が育つようなおもちゃが必要だと考えています。森の中には子どもたちにとってのおもちゃが豊富にあります。木切れ、木の実、切り株、倒木、キノコなど、あらゆるものが子どもたちにとって遊具となります。その遊具を使って遊ぶために、過去の体験を組み合わせたりイメージを膨らませたりします。また常に変化する自然は興味の尽きることがありません。まさに創造力、探求心が育まれる環境です。

子どもたちが探求心をもって創造的に活動できる、そんな保育を行っていくために、毎日森の幼稚園のように…とまではいかなくても、利用できる環境が周りにはまだまだあるように思います。創造力、探求心というキーワードからも、自然とのかかわり方を考え直している最中です。