2010年1月29日

No.128 うれしい“つながり”

昨年の12月のことですが、うれしい“つながり”が生まれました。保護者のみなさんにも伝えておきたい内容なので、遅くなりましたが今回ここで書くことにします。つながりの相手は、「ぷれジョブ」という活動をしておられる「江津市の子どもの社会参加を考える会」の方々です。「ぷれジョブ」とは何か。簡単に説明すると、障害をもったお子さん(小学校5年生くらいから)が、放課後に地域の支援者と一緒に地元の企業へ行き、約1時間その企業の仕事を体験するというものです。この仕事の体験の場として、あさり保育所も加わってほしいという要請を迷わず受けることにしたのですが、それはある思いに共感したからです。

この「ぷれジョブ」は職業訓練が一番の目的ではなく、「新しい障害観をもつ・育てる」ということを大事にされています。この会の言葉を借りると、『しょうがいの意味をマイナスの見方から「みんなの助け合う力を引き出すことができる役割」のプラスの見方』に変えて活動すれば、障害をもつお子さんを中心に人のつながり(支援者など)が増え、そのネットワークがその子にとって大きな支えになっていく、そんなことを目指しておられます。これはあさり保育所が大事にしている思いと通じるところがあり、とても共感できました。

今までに何度も書いていることですが、人はそれぞれ違っていて、そして社会の中でそれぞれの役割があり、その上でいろんな人とつながっていくことが豊かな社会を作っていくことになります。一人ひとりの良いところや得意なところを見つけ、それを伸ばしていくことが、その子自身が自分の役割を見つけていくことにつながります。子ども一人ひとりが自分の役割を見つけることができるように支えていくのが、私たち大人の役目だと言ってもいいかもしれません。「ぷれジョブ」の活動に関わることで、子どもたちを含めたあさり保育所の関係者全員がそんなことを考えるきっかけにもなるだろうと思っています。

話は元に戻りますが、さっそく2月1日(月)からあさり保育所での「ぷれジョブ」の活動が始まることになりました。毎週月曜日の16時から1時間、小学4年生の男の子があさり保育所で活動します。期間は8月までを予定しています。この活動について、保護者の皆さんにも少しだけでも関心を寄せておいてもらえればと思っています。

2010年1月22日

No.127 絵画展のポイント

既に始まっていますが、1月21日(木)から24日(日)まで、グリーンモールの1Fイベントホールで絵画展が行われています。これは江津市保育所・児童館連合保護者会の活動のひとつで、あさり保育所からもぞう・きりん・くま組さんが出品しています。今回の絵画展に出品するにあたり、あさり保育所では1つのテーマを決めました。そのテーマとは「○△□を使って自由に表現してみよう」です。具体的に言うと、様々な色や大きさの○△□の紙を画用紙に貼り、好きなものを作ってもらうというものです。紙を貼るだけでもいいし、貼った後に色を塗るのもいいし、何を表現してもいいということで取り組みました。絵を描くのがあまり好きでない子も、この活動は楽しんで取り組んでいたようです。

子どもの表現活動の目的は、「感じたことや考えたことを自分なりに表現することを通して、豊かな感性や表現する力」を養い、創造性を豊かにすることにあります。そして、そのことがどのように発達したかを保護者の皆さんに伝えることが、今回の絵画展の目的の1つであると考えています。見栄えのいい?作品を作り上げることも表現活動の1つと考えることもできるかもしれませんが、子どもたちが「自分なりにどう表現するか」を大事にしたいというのが、あさり保育所の表現活動に対しての考え方の基本です。

今回全員が同じテーマで取り組んだ作品を、展示する前にじっくり見ていたのですが、一人ひとりの特徴がよく表現されていると感じました。また、子どもの表現はこのように成長していくんだというものが、全体を眺めているとよく見えてきます。絵画展に行かれた際は、他の子との比較として見るのではなく、わが子のその子なりの表現の育ちを見てあげてください。そして全体を眺めて、子どもの表現はこんな風に育っていくんだという流れを感じていただきたいと思います。欲をいえば、3ヶ月ごとに同じテーマで作品を作り、それがどのように変化していくかを見てもらうような絵画展であればもっといいのにと思いますが、江津市全体の絵画展なのでそこまではできません。でも機会があれば、一人ひとりの成長を保護者の皆さんに実感してもらえるように、あさり保育所の全ての子を対象にして、「健康面」「人間関係」「環境との関わり」「言葉」「表現」の全てがどのように育ったかを見てもらう場を、いつか設けてみたいと企んでいます。

2010年1月15日

No.126 いよいよ発表会

いよいよ明日は発表会です。本当にいよいよです。中身のポイントや見どころについては各クラスからのお便りを読んでいただくとして、ここでは全体のことについて少し書いておきます。あさり保育所では、発表会を通して子どもたちの「表現」と「言葉」の領域の発達を保護者のみなさんに伝えることを、主な目的としています。0,1,2歳児は生活発表が主になりますが、3,4,5歳児は「演じる」ことにも取り組んできました。例えば物語を演じるとき、子どもたちは登場人物の立場になって演じます。物語を読むことが子どもにとって楽しいのは、登場人物に身を寄せ、出来事を見守っていくことにあります。様々な体験をしていきながら、何を考え、どんな工夫をし、様々な人と出会う中でどのように困難を乗り切り、最後にどのように思いを達成するかを共感していきます。物語を通して子どもの思いを深めるためには、解釈よりも「演じる」ことの方が効果はあると思います。体験・理解・表現という過程で捉えれば、学習の体験化ということにもつながります。発表会での劇遊びには、そんな意図もあります。

そして取り組みに関しては、子ども自らやろうとする意欲をもつことを大切にしてきました。ある日のくま組さんの練習を見ていたのですが、何人かの子どもたちが笑顔でダンスを踊りながら、「あー、楽しい!!」と思わず声が出た(と思われる)シーンを見ました。このシーンは、子どもたちがこの行事に自ら取り組んでいることを感じさせてくれました。練習一つにしても、子ども自らやろうとする意欲があるかどうかで意味は大きく変わってしまいます。また、いろいろな出し物の内容について、子ども同士が話し合って決めたことが多くあります。発表会に限ったことではないのですが、子ども同士の話し合いがずいぶん増えてきました。そんなことからも行事の大切さを感じています。

最後に1つだけ。発表会は何かの完成形を見てもらう場ではなく、子どもたちの成長の過程を見てもらう場であると考えています。今週の水曜日の予行練習では、「こんなことができるようになったんだ」とか「こんな時にこんな対応ができるようになったんだ」といった、一人ひとりの成長を感じることができました。明日の発表会では、普段の保育所での生活や発表会の取り組みを通して成長してきた子どもたちの今の姿を見て、十分に楽しんでいただきたいと思います。

2010年1月8日

No.125 昔からの子どもの遊びの意味

2010年最初の「ひとりごと」です。園だよりにも書かせてもらいましたが、正月遊びについて、あらためて考えてみようと思います。昔から行われている正月遊びには、手先や脳、運動能力をつけると同時に遊ぶ中で社会を知るといった、子どもにとって大切な要素が詰まっています。その有益な知恵を、今の時代にも有益なものとして受け取る力をつけたいという思いで、個人的な見解も含めて整理してみます。凧揚げ・すごろく・かるた・羽根つき・コマ回し・福笑いなど様々な正月遊びがありますが、すごろく・かるた・コマ回しは以前取り上げたので、今回は凧揚げ・福笑いについて書いてみます。

まず凧揚げです。日本の凧とゲイラカイトを比較してみると、面白いことがわかります。勝手な解釈ですが、農耕民族の日本人と狩猟民族の欧米人では必要な力が違うため、それが凧の違いにも表れているように思います。狩猟民族は確実に獲物を仕留めるために速く走る力などが重要です。そのため欧米で主流のゲイラカイトは一人でも揚げることができますし、高く上げるためには速く走ることが必要になります。対して農耕民族である日本人は、村の人と協力しないと生きていくのは難しいので、少しずつ社会性を養なっていく必要がありました。そのため日本の凧は持ち手がいないと揚げることができません。そこで二人で協力することを学びます。もっと高く上げようとすると、速く走ることよりも、凧の反りやしっぽの長さを工夫しないといけません。この比較から、日本人は力強さよりも、協力することや工夫をすることを大切にしてきたとも言えると思います。

次に福笑いです。その出来上がりの顔が変なことを笑うのでよくないのではないかという意見もあるようですが、目・鼻・口・まゆ毛の位置や傾きで顔の表情が変わることを知るためにはよい教材だと思います。目隠しをしなくても、顔のパーツを自由に動かして表情を様々に変える体験をすることで、絵に描く人物に様々な表情をつけることを知っていくことができます。

正月遊びに限らず、昔からの子どもの遊びには成長のための意味があります。もしかすると最近の子どもの遊びは、成長のための学習ではなく、楽しさを追求した大人の遊びに近い役目を持ったものが多いのかもしれません。昔からの子どもの遊びの科学的な意味を整理する必要性を感じるようになりました。