2009年5月29日

No.96 子育て前支援のお知らせ

今週の月曜日の午前中は小学生8名が保育所に来てくれました(前日が玉江大会だったため、学校が休みだったようです)。全員が子どもたちとよく遊んでくれ、特に6年生たちはりす・うさぎ組のお手伝いを積極的にしてくれていました。何度も来てくれていることもあってか関わり方はとても慣れていて、オムツがえなどを積極的にやってくれ、そうした動きにはいつも感心させられます。このような関わりは、保育所の子どもたちだけでなく、小学生にも意味の大きなことだと考えています。

あさり保育所の子育て支援センターでは、今年度から高校生を対象に「子育て前支援」を行うことにしました。夏休みなどを利用して乳幼児との触れ合いやスタッフのお手伝いをしてもらおうというものです。この活動の趣旨を高校の先生方に理解していただくための案内に書いた内容をのせておきます。保護者の皆さんにもご理解いただき、活動の紹介をしていただけたらと思っています。

『近年、若年層の妊娠・出産が増え、初めての育児に悩んだり、子育てに対する想像と現実とのギャップに耐えることができず、育児放棄や虐待という悲しい事件が起こっています。・・・そこで近い将来、妊娠や出産を控えた高校生を対象に「育児」や「命」について一緒に考えたり、実際に育児体験をしてもらったりすることで、少しでも赤ちゃん(人間)を産み、育てることが容易なことではないことに気付いたり、反面小さい子どもといる幸せや(楽しさ)を実感してもらったり、自分自身が家族(両親)に愛され大切に育てられてきたことを感じたりしてもらえることを期待して、このような活動を考えました。』

<目的>
・将来の「出産」「育児」を想定し悩んだり困ったりした時に子育て支援センターまたは保育所など周囲に相談する場があることを知ってもらう。
・自分自身の理想とする父親像や母親像を考えたり、小さい子どもとふれあったりすることで父性や母性を高める。
・小さい子どもが自分より弱者であることに気付き、守るべき存在だということを実感してもらう。
・自分を含め一人ひとりが親に愛され、守られながら成長している尊い存在だということに気付き、一人ひとりの「命」の重さを感じてもらう。

2009年5月21日

No.95 あさり保育所のヒミツ①

あさり保育所では毎日たくさんの子どもたちが、子ども同士での生活を通して様々なことを学んでいます。それを促すのが保育所の目的でもあるので、当然環境設定や様々な活動には意味や目的があります。そのことについて、職員同士で日々議論をし、必要な部分は改善してきています。でも、その意味や目的を保護者の皆さんに十分に伝えることができているかというと、まだまだ十分ではないと思っています。そんなわけで、この場でもっと環境設定や活動の意味や目的を書いていこうと思います。今回は0,1歳児の部屋にある食事用の半円のテーブルについて、です。

このテーブルは下図のように、外側に子どもが3人、内側に大人が1人座るようになっています。離乳食が始まった頃からこのテーブルで食事をするわけですが、職員はまず子どもAに食べさせます(①)。次は子どもB(②)、子どもC(③)と移り、最後に職員が食べます(④)。それを繰り返していると、子どもAは自分が食べた後は、3人が食べるまで順番が回ってきません。食べさせてもらおうと思っても、目の前で職員が常に忙しくしているのが分かっているので、待ちきれなくなって思わず自分から手づかみで食べようと手が出ます。また、常に目の前に職員がいるため、職員の食べる様子を見て、どのように食べるのかを真似することができます。
















このように「子どもが自発的・意欲的に食べ物を手にして口に運ぶこと」を促すのを目的としたのが、この半円のテーブルです。ポイントは職員が忙しそうにしていること。「食べさせて欲しいけど、忙しそうにしている」ことを察して自分で食べようとするのが、子どもの持っている力のすごいところです。そして、自分である程度食べることができるようになれば、今度は食事の場所が変わり、もう少し大人の関わりも少なくなります。

2009年5月15日

No.94 子どものころにやっていた遊び

13日(水)にはぞう・きりん・くま組の親子遠足がありました。行きのバスの中では「保護者の皆さんは子どもの頃どんな遊びをしていましたか?」という質問に答えてもらったところ、「ゴムとび」「カンけり」「リカちゃん人形」といった懐かしい遊びもいろいろ出てきて盛り上がりました。その話を聞きながら考えたことがあるので、今回は遊びについて書いてみます。

昔の遊びには工夫がいっぱいあったように思います。学校の帰りにはよく草野球をしていたのですが、あれはまさに工夫の宝庫でした。まずどこをベースにするか?ということを、人数やレベルから調整することから始まります。さらに、人数が足りない場合は「三角ベース」になったり「透明ランナー」が登場したりします(皆さん知ってますよね?)。塁上に人を立たせると打つ人がいなくなるので、そんなときは「透明ランナー2塁!」と宣言してランナーがいることとするルールです。その他にも、小さい子がメンバーにいる場合はストライク4つでアウトになるルールにしたり、ワンバウンドで取ってもアウトにするルールにしたり、状況に応じてルールを工夫していました。そうしなければゲームが成り立たないし、面白くならなかったからです。

脳科学者の茂木健一郎さんは、草野球のような遊びとテレビゲームの違いをこんな風に言っておられます。
「テレビゲームは、ゲームのルールをコンピューターが決め、人間はそれに合わせるだけ。草野球のような遊びは、ルールを自分たちで決めなければ成り立たない。ありとあらゆる工夫が必要で、それが一番大きな違い。」

また、先週土曜日の保護者講演会でお話をしてもらった藤森平司先生は、テレビゲームについてこんな風に言っておられます。
「テレビゲーム自体が子どもに良くないのではなく、それをすることで人と人とのコミュニケーションが不足することが問題なのです。」

この2つの意見はとても大事なことを言っていると思います。今後ますます求められるようになる『問題解決能力』や『コミュニケーション能力』をどうつけていくか考える上でも、非常に重要です。最近の子どもたちの遊びを、こうした観点から考えてみることも必要だと思っています。

2009年5月1日

No.93 4月が終わりました

4月が終わりました。4月1ヶ月間の子どもたちの平日の出席率は95%でした。保育所でいろんな体験をするためには、まず元気に登所してこなければいけません。ですから保育所では子どもの健康のために食事や体力づくりも課題の1つです。様々な体験を支える子どもたちの体づくりを、皆さんと一緒に取り組んでいきたいと思っています。

ちょっと話は変わりますが、子どもの体について、滝井宏新著「教育七五三の現場から」の本の中にこんなことが紹介されています。日本の小児医療の司令塔ともいえる国立成育医療センターが2000年に医学部の学生を対象に実施したアトピー素因の調査結果です。その結果、95人の学生中85人、90%がアレルギー体質を持っているという結果が出ました。1960年代の調査ではわずか数%だったのが、70年代で25%、90年代で40%、そして、2000年にはこの結果です。この本の中では、このような状況を「最近の乳幼児でアレルギー体質でない子どもを見つけるほうが難しい。」とまで言っています。

なぜこんなにもアレルギー体質が増えたかということを成育医療センター部長はこんなことを言っています。「清潔すぎる環境や抗生物質の過剰投与によって、乳幼児期に細菌やウイルスに感染することが少なくなってしまった。その結果、アレルゲンに反応するアレルギー抗体(IgE抗体)の生産を抑えるⅠ型の発達を妨げ、アレルギー抗体の生産を促進するⅡ型が優位になってしまったというのです。抗生物質の投与などによって日本の乳幼児死亡率は世界一低くなりましたが、その代償として、子どもたちの9割がアレルギー体質になった。」

これはあくまでもまだ仮説の段階ではありますが、要するに、菌対策というあまりに清潔主義に陥り、また熱などが出た時に自らそれを下げる努力をする前に薬で下げてしまう事、ただ子どもに感染症をうつさないように神経質になることなどが、子どもの体に変調をきたしているようです。

また2月のニュースでは、「花粉症にならないための9か条」がアレルギー科学総合研究センターから発表され、その中には「小児期にはなるべく抗生物質を使わない」「適度に不衛生な環境を維持する」という項目がありました。体によくない病原菌との共生は避けたいですが、『菌との共生』は子どもにとっても大人にとっても今後大きな課題になってくると思っています。