2016年9月30日

No.463 勝ち負け




上の写真は先週の運動会の一コマ。年長児のリレーが終わった直後のもので、負けた白組の子が悔し涙を流していました。勝負事なので勝ち負けの結果はついてきます。勝った方は嬉しかったでしょうし、負けた方は悔しかったでしょう。私はこれをどちらにとっても貴重な体験と捉えています。昨年このひとりごとで「グッドルーザー(good loser)」について書きました。負けっぷりのいい人、潔く負けを認める人という意味の言葉で、「スポーツをするメリットにはgood loser、つまり『良き敗者』の経験ができる、ということがある。試合に負けたとき、その負けの経験はもちろん意味があるし、負けた立場から勝者がどのように見えるかとか、勝ったときは勝った側から敗者がどのように見えるかとか、そんなことを経験することでしか『良き敗者』になるためにはどうすればいいかを学ぶことができない。」という話を紹介しています。

これは負けた方が良いと言っている訳ではありません。今回のリレーのように、子どもたちはどうやったら勝てるかを考え、走る順番を真剣に相談して臨んでいます。みんな勝ちたいし、勝った方が嬉しいに決まっています。でも、どれだけ力を尽くしても、勝つこともあれば負けることもある。世の中はそんなものです。だからこそ残念ながら負けてしまったときに、自分なりの「次の一歩」の踏み出し方を身につけておくことが大事だという話です。子どもたちが保育園で体験していることの中には、運動会のリレーに限らず、葛藤の場面がたくさんあります。他の子と共に生活し、個々が主体的に活動しているので葛藤が生まれるのは当然のことで、そのときが「次の一歩」を学ぶ貴重な機会です。友達と相談したり力を借りたりすることもあるでしょうし、自分の気持ちに静かに目を向けて考えることもあるでしょう。そんな姿が生まれる取り組みを用意していくことは保育園の大事な役割の1つです。

そして勝ったチームの子は、負けて悔しがっている子の姿をちゃんと見ていたはずです。自分は嬉しい、でも他の子は悔しがっている、その違いを感じ取る力は大事です。友達と楽しく遊ぶときや、何かの拍子でケンカになってしまって折り合いをつけなければいけないときなどは、自分と違う気持ちを抱いている人がいることに気づく力が欠かせません。子の力は体験し、感じることがなければ身につきません。リレーで勝った赤組の子は、勝った嬉しさだけでなく、貴重な経験もしたことになります。そう考えると、様々な育ちのきっかけが見られた、いい運動会だったと改めて感じています。

2016年9月23日

No.462 運動会の注目ポイント

水曜日に運動会の予行練習を行いました。運動会の目的は子どもたちの運動面の発達を見てもらうことなので、何か特別なことを仕込んだりすることはありません。なので予行練習では、今できること、身につけた力を少しでも発揮しやすいように、みなさんに見てもらって育ちを感じてもらいやすいように、競技毎、そして全体の流れを確認することが中心です。取り組む子どもたちだけでなく、見てもらう保護者のみなさんにとっても少し変更した方がいいかも…という部分も確認できたので、それを運動会当日につなげていきます。

競技の話になりますが、最初に「走る」ことの発達を0歳児のハイハイから順に見てもらいます。走ることとは一見関係ないように思われるかもしれないハイハイですが、子どもはある日突然走り始めるのではなく、寝返り→ハイハイ→つかまり立ち→よちよち歩き→歩くといった体験を経て走る力を獲得していきます。それぞれの時期に、そのとき出来ることを十分に体験しておくことは、とても大切なことです。子どもの行動に無駄なものはなく、全てが先の成長につながっています。今できることは何で、その後「走る力」をどのような流れで獲得していくか、それを順に見てもらおうというわけです。0歳児から5歳児の流れだけでなく、次の段階である小学生の姿も見てもらいます。

予行練習でも「走る」ことの発達をしっかりと見させてもらいました。1人ひとりが今できることに取り組んでいる姿を見ていると、それだけで嬉しくなってしまうものです。明日はお子さんの「今」をしっかりと見てもらい、一緒に成長を喜びたいのですが、それ以外にも注目してもらいたい点が2つあります。1つ目は「発達の流れ」です。先にも書いたように、0歳からのつながりを見てもらえるようなプログラムになっています。お子さんが小さい方には、大きい子の動きを見て「我が子もこうやって力をつけていくのか」と感じてもらいたいですし、お子さんが大きい方には、小さい子の動きを見て「我が子もこうやって成長してきたんだよなあ」を振り返ってみてもらいたいです。



そして2つ目は「共に競技を楽しんでいる姿」です。予行練習の日は競技に取り組んでいる姿だけでなく周りの子の姿も見させてもらい、みんなで楽しんでいることを感じました。走ってきた友達を嬉しそうにゴールで迎え入れる1歳児や、4歳児を大声で応援する5歳児など、明日も様々な姿が見られるはずです。まずは我が子に、そしてそこから周りの様子にも注目してもらい、子ども同士の関係性の育ちも楽しんでください。



2016年9月16日

No.461 認定こども園に変わります①

手続きが終わるのが3月なのでまだ正式な話とは言えない状態なのですが、来年度の入園申し込みの案内が始まる時期なので、ここでも少しずつお知らせをしていきます。あさり保育園は来年4月から「認定こども園」に変わります。認定こども園について、島根県の公式サイトでは次のような説明が書かれています。

『保護者が働いている・いないにかかわらず利用可能な施設です。集団活動・異年齢交流に大切な子ども集団を保ち、すこやかな育ちを支援します。』

少し違う表現をすれば、「保育園機能と幼稚園機能が一緒になった施設」となります。

保育園、認定こども園、幼稚園などの利用を希望する場合、まず市役所で「保育の必要性の認定」を受ける必要があります。そこでの認定には1号認定、2号認定、3号認定の3種類あり、1号認定は「幼稚園を希望する満3歳以上の子ども」、2号認定は「保護者の就労等により保育を必要とする満3歳以上の子ども」、3号認定は「保護者の就労等により保育を必要とする満3歳未満の子ども」となっています。現在のあさり保育園は2号認定の子と3号認定の子、つまり保育が必要な就学前の子どもが入園できる施設ですが、4月からはそこに1号認定の子も入園の対象となってきます。

そのような施設に変わることをまず知ってもらい、次に今回一番伝えたかったことを書きますが、今いる園児にとって保育園での生活に特に変化はありません。1号認定の子の保育時間は短い設定になりますし、日曜祝日以外にも休みの日が設定されることになるため、生活時間の少し違う子が今の集団に加わることになる変化はありますが、あさり保育園の保育は全く変わりません。今までと同じことが4月以降も行われていきます。今後、4月からの認定こども園の案内をさせてもらう機会が何度か出てきますが、ぜひこの点は押さえておいてもらい、安心して聞いていただきたいです。

今回「認定こども園」に変わることによって、保護者の就労状況に関係なく、1人でも多くの子どもにあさり保育園での遊びや生活を体験してもらえるようにし、多様な子ども集団の中で自分の力を発揮し、コミュニケーションの大切さを知り、自分を抑えることも学んでほしい、そんな思いを持っています。もちろん受け入れできる人数は今までと変わらず制限がありますが、子育て支援センターを多くの方に利用してもらっているように、あさり保育園に関わる人を少しでも多くしたい、様々な人がつながって刺激し合う場所にしていきたい、そのための動きの1つです。認定こども園については今後もいろんな形で説明をしていきますので、疑問があれば何でも聞いてください。

2016年9月9日

No.460 それでいいんです

京都市立芸術大学長の鷲田清一さんが毎日いろいろな言葉を取り上げて解説している「折々のことば」で、こんな言葉が紹介されていました。

『あの子は魚と絵が好きだからそれでいいんです。』さかなクンの母親

さかな博士は小学生の頃、級友の落書きにしびれ、図書室で調べてタコと知る。毎夕母にタコ料理をねだり、水族館で水槽にかじりつき、魚屋では魚を丸ごと一匹買ってもらう。それを観察して絵に描く。「すごい、飛び出て泳ぎ出しそう」と叫ぶ母と感動を共有できたことが“魚学”の道につながった。もっと勉強も、と担任に告げられた時の母の返答。

さかなクンのことは、魚類学者で自分の興味のある分野をとことん極めていった人くらいしか知らないのですが、さかなクンの強みをまるごと認めていた母親の存在がどれだけ力になっていたかを想像すると、お母さんスゴイ!と感動してしまいました。あさり保育園では「自分の強みをもって他者に貢献する力を子どもたちにはつけてもらいたい」と考えていますが、そのためにその子の強みに目を向け、その強みを認め、「それでいいんだ」と丸ごと受け止めるのは決して簡単なことではありません。さかなクンの担任の先生のような「興味があるものに没頭することも大事だけど、それ以外にも大切なことが…」とか「みんなと違っているのはどうなのか…」といった声を耳にすることが少なくない現状もあります。そんな声を聞くと「違いを尊重していていいんだろうか?」と心配になったりすることもあるでしょう。でも実際にたくさんの子どもたちを見てきて、1人ひとりがあまりにも違っていて、しかもみんながそれぞれに興味のあることに没頭しているときの集中力を知っているので、そこは何としても伸ばしてあげたいと強く思っています。そのためにできることは何か?といつも考えています。

移民の多い国では「人とは違うのが当たり前」からスタートしていて、学校でも学力一斉テストや偏差値が存在していないところも当たり前のようにあるようです。日本は国の状況からして違うので、1人ひとりの違いを認める文化も違っているのは当然なのかしれませんが、違いに対する理解と強みに特化することのメリットについて、ゆっくり時間をかけて考える場はもっとあっていいはずです。あさり保育園は保育活動を通して「違いを認めることで子どもたちがどれだけ生き生きと活動するようになるか」を発信し続ける場です。生き生きと活動する子どもたちの姿を感じてもらい、1人でも多くの人と違いを認める思いを共有できる場にしていくことを目指します。

2016年9月2日

No.459 前のめりになるくらい、やりたい理由を探す

先週の土曜日は、日本百名山ひと筆書き、日本2百名山ひと筆書きを踏破された田中陽希さんに来ていただきました。陽希さんとのつながりは2年前の4月に保育園に立ち寄ってくれたことから始まり、その後は旅先からハガキを送ってくれたり、こちらからは応援メッセージやゴールを祝うメダルを送ったり、そして昨年12月には再度旅の途中で立ち寄ってくれたりと、2年に渡ってやり取りをつづけさせてもらってきました。そんな縁があって今回来ていただけることになったわけです。



午前中は子どもたちとの交流です。登山中の動画を解説付きで見せてもらってみんなで大笑いしたり、順番に抱っこしてもらったりと、なかなか贅沢な時間でした。陽希さんが「時間の許す限り子どもたちと触れ合っていたい」と言ってくださり、本当に午後の講演会の開始時間ギリギリまで子どもたちの中に入って遊んでくれていました。そして午後からは講演会。山陰中央新報では次のように講演の内容を取り上げてもらっていました。

『夢に向かって一歩踏み出すためには「前のめりになるくらい、やりたい理由を探すことが大切」と説いた。さらに「変化を恐れないことが自分を成長させ、成長が自分の可能性を広げ、可能性を広げることが目標の達成につながる」と語った。』

このことはあさり保育園で大事にしている思いと重なる部分があります。子どもたちは“やってみたい!”と思えるものを見つけ、その思いに突き動かされるように物事に没頭することで多くのことを学び、できることを増やし、成長していきます。その成長が自分の世界を広げ、広がった世界の中でまた新たな“やってみたい!”を見つけていく、その循環が次々に生まれるような環境を用意していく場が保育園です。陽希さんが話してくれた旅の中で感じたことを、私たちはあさり保育園のやり方で子どもたちに伝えていきたいですし、できることなら陽希さんとまた違った形でのつながりを持ちながら、興味や挑戦の種を子どもたちに蒔いてくれるようなことができればと考えています。

運動会まで1ヶ月を切りました。9月24日に向けて期待を高めていくカレンダーも順調に動いています。運動会の取り組みに興味をもち、体を動かすことの楽しさを感じ、次の課題に挑戦したくなるよう、当日まで工夫を続けていきます。



2016年9月1日

「いきなり団子」が届きました

熊本県の城山保育園さんから「いきなり団子」をいただきました。



いきなり団子って不思議な名前ですよね。何故「いきなり」なんでしょう?



①いきなり差し出してみる



ビックリされただけでした。



②いきなり匂ってみる



解凍前なので特に匂いもしません。



③いきなりかじってみる



解凍前は固いだけです。

どうやら①②③の「いきなり」ではないようですね。



よくわからなかったのでWikipediaでいきなり団子について調べてみると、

「輪切りにしたサツマイモと餡(小豆あん)を餅(ねりもち)、または小麦粉を練って平たく伸ばした生地で包み、蒸した食品。見た目は大福にも似ている。」


「名称の由来は短時間で「いきなり」作れるという意味と、来客がいきなり来てもいきなり出せる菓子という意味と、生の芋を調理する「生き成り」(いきなり)という語句の意味が重なっていると言われる。」

とありました。
なるほど、そういう意味だったんですね!

というわけで、解凍してみんなでいただくことに。



それではいただきます!





とっても美味しい団子でした!
城山保育園のみなさん、ありがとうございます!