2008年4月25日

No.42 子どもが遊びに飽きる理由

以前、積み木についてこのひとりごとでも書きましたが、今でも積み木は子どもたちには人気のあるおもちゃです。いろんな部屋にいろんな種類の積み木が置いてあり、子どもたちはそれぞれがそれぞれに合った遊び方を楽しんでいます。ホームページでも、子どもたちが積み木で作った作品を紹介したりもしています。子どもたちが積み木で遊んでいるのを見るたびに、子どもの想像力や積み木の奥深さに感心させられます。

以前ある保護者から、子どもが同じ遊びしかしない場合、いつまでも同じおもちゃで遊んでいるような場合、「いろいろなことを経験させたいのだけど、今のままで大丈夫だろうか。たまには違う遊びもしてほしいのに。」という心配の声を聞いたことがあります。このことについては少し角度を変えて考えてみたいと思います。

子どもが遊びに飽きるときの大きな理由は、そのおもちゃで遊ぶときに、それが簡単すぎるときや難しすぎるときです。子どもはおもちゃで遊んでいると、次第に慣れてきて簡単になってきます。そうなるとそのおもちゃに飽きてしまいます。遊ぶ回数や時間ではありません。しかし、子どもが簡単にできるようになると、そのおもちゃがもっと難しいものも作れるようなものであれば、子どもは飽きません。つまり、子どもの習熟にあわせてそのおもちゃもそれに対応できるようであれば、長くそのおもちゃで遊ぶことができるというわけです。

その代表的な物が「積み木」だと思います。積み木は遊び方が決まっていませんし、簡単な物から、大人でもやっと作れる難しいものまで様々な物が作れます。1人の子の習熟に合わせるだけでなく、子どもの成長によっても対応できます。赤ちゃんは握ったりしゃぶったり、1歳近くになるとカチカチとぶつけて音が出るのを楽しんだり積んでは崩したり、さらに大きくなると想像を膨らませていろんなものを作ったり、人と関わって遊んだり。そうやって考えると、子どもが同じおもちゃで遊んでいるように見えても、その遊びに取り組む課題は常に変化しています。いろんなことを経験することが大切なように、1つの遊びにのめり込むことも大切にしたいと考えていますが、皆さんはどう思われるでしょうか。

2008年4月18日

No.41 絵を描いてから遊ぶか、遊んでから絵を描くか

先週の話ですが、ぞう・きりん・くま組である取り組みをしました。その内容は「今日はいろんな模様を絵の具で描きます。絵を描いてから外に遊びに行くか、それとも先に外で遊んで10時30分になったら絵を描くか。どちらかを選んでください。」(順序性の選択)というものです。子どもたちはそれぞれに考えどちらにするかを選び、12人が先に絵を描くということで活動がスタートしました。

先に絵を描くことを選んだ子は順調に絵を描きあげ、満足して外に遊びに行きました。担当保育士は「後で絵を描くことを選んだ25人は10時30分に集まってくれるだろうか」と不安もありましたが、辛抱強く待つことにしました。結果は、10時30分に10人は外での遊びを終えて絵を描き始め、その後もぽつぽつと子どもたちが絵を描きに集まってきました。

しかし、絵を描きに来ることなく片付けの時間を迎える子が8人いました。その8人の子どもたちからは絵を描きに来なかった理由を聞く時間を設けました。理由は様々ありましたが、多くは「忘れていた」というものでした。その子たちとは話し合いをした結果、後日その絵を描くということでまとまり、今週の月曜日に全ての子どもが絵を描きあげました。

この活動には、絵を描くことを一斉に強制するのではなく、先か後かを選んで自主的に取り組むということと、自分で決めたことに責任を持って取り組むという意味があります。自分で考え行動することは、それ自体がとても大きな意味のあることですが、同じくらい「忘れていてできなかった」という体験も意味があると思っています。「ああしとけばよかった」「こうしとけばうまくいった」と感じることから次の活動の工夫が生まれ、そして行動が変わっていく、できるようになっていく。このような落差というか凹(へこみ)というか、そういったものを感じる体験を重ねることは、将来困難なことがあったときに乗り越える力につながっていくはずです。子どもの成長は一直線に右肩上がりというものではありません。成長とか発達の過程で沈むところも必要なはずです。凹を次の成長の大切なステップにつなげていくことができるよう、フォローもしながら、こうした活動(形は変わっていきますが)を大切にしていきます。

2008年4月11日

No.40 私たちのスタンス

新年度がスタートして2週間がたちました。昨年度から新しい生活に向けて移行を進めていたことで、子どもたちにとって大きな変化やあわただしさは比較的少なくすんでいると思います。環境の変化は少ないですが、子どもたちの成長(変化)は、新しい生活のスタートとともに進んできています。「立って歩いたり」「おしゃべりしだしたり」といった成長だけでなく、子ども同士の関わり方の成長など、これからどんどん見られるようになると思います。この成長をいかに促すかということは、今年度も変わらず私たちの課題です。

そのために、1人ひとりの特性や1人ひとりの発達をよく見よう、子ども優先で集団を決めよう、子ども同士が自ら育とうという力を持っていることを信じよう、というのが私たちのスタンスです。そのために、子どもたちの発達を援助していくことが私たちのすべきことです。そう考えると、私たちは子どもの後ろ側にいて、後ろから見守っている(見て守っている)と言えるかもしれません。

「後ろから見ているだけ」とは違います。後ろから見ているだけで子どもは先に行ってどんどんいろんなことをして成長していくかと言えば、そうではありません。小さい子ほど先に歩くけど、定期的に後ろを振り向きます。大人はついてきていてくれるだろうか、私たちを見てくれているだろうかということを確かめます。そのときには必ず答えなければいけません。「大丈夫、見ているから」「ここにいるよ」「いつでも困ったらすぐに行ってあげるよ」というサインを送らないと、子どもは先に歩いていきません。

不安になるとしがみついてきて抱っこを求めることもありますが、抱っこをしてもらい見てくれていると確信ができたら、また自分で歩いていきます。このように子どもがサインを送ってきたときに、すかさずそのサインに答えてあげることが『後ろから見て守る(子どもをよく見て必要な援助をする)』姿勢だと思っています。子どものサインを的確に感じ取れているか。子どものサインに答える方法は適切か。今は手を出すべきか、そのままにしておくべきか。そうした検証の繰り返しはどこまでも続きます。

2008年4月4日

No.39 新年度スタート

4月1日に新しく4名の園児を迎え、65名で新年度がスタートしました。5月以降には8名加わり、73名になる予定です。今年度も子どもたちは大きな集団の中で、有意義な体験を重ねていってくれると思います。

昨日保護者会の総会の後クラスごとに分かれてもらい、今年度の保育の説明をさせてもらいました。そのときに配布したプリントには、各クラスではどのような考えでどのような活動をしていくかを書かせてもらっています。その中で、うさぎ組・りす組のプリントにはこんなことを書いています。

『1歳児クラスの特徴として、だんだん自己主張が強くなってきますので、友だちと関わる場面のトラブルが増えていくということがあります。どういう自己表現なら認められるのかという適応行動をまだ身につけていませんから、生の欲求が阻止されるものなら、すぐさま、かみつき、ひっかきなどの即時的な行動になってしまいます。この行動に対して基本的には、欲求を把握し、それを満たしながら、「即時的な自己表現」を「認められる適応行動」に代替させていくプロセスを工夫していくしかありません。かみつき、ひっかきなどの行動は、友だちとの関係性のなかで育てるべき欲求コントロールの発達課題ですから、集団の機能をもっている保育所ならではの、また、保護者とともに「育ち」の課題を共有できる保育所の大切な役割だと思います。』

子どもが育っていく中で(発達の過程で)このようなことはたくさんあります。自分以外の人の気持ちを考えることが出来るようになってくると、今度は自分の思いと他人の思いが自分の中でひしめき合い、葛藤となり、友達とのトラブルにもなってしまうこともよくあることです。かみつきやひっかき、友だちとのトラブルなど、何とかしたいと職員全員がいつも考えています。だからこそ、「これも発達の過程で通り過ぎていくもの」ということを押さえつつ「子ども同士がもっと上手に関わるためにはどうすれば?」を、保護者の皆さんと共に考えながら、子どもたちと真剣に向き合っていきたいと思います。