2011年7月29日

No.204 子ども自らが興味・関心をもって

夏祭りが終わりました。今年は450人の参加があり、多くの人と楽しい時間を過ごすことができました。募金とバザーにも多くの方にご協力いただきました。本当にありがとうございます。夏祭り後にも募金の申し出が続いているので、もう少し待ってから報告をさせてもらいます。

今年の夏祭りでは最後に和太鼓の演奏を行いました。あさり保育所とさくら保育所の職員が結成した、チーム「あさくら笑太鼓(わだいこ)」の演奏です。この活動はあさり保育所ではS保育士が中心になってスタートしました。その様子はあさり保育所のホームページからも見ることができるようにしてあるのですが、少しずつ音がそろっていくところや、メンバーの表情が変化していくところなど、よく見ているといろんなことを感じます。

この「あさくら笑太鼓」の大きな目的には、和太鼓の楽しさを子どもたちに感じてもらいたい、大人が楽しんで取り組んでいる様子を見ることで、ぞう組さんの中に「和太鼓をやりたい!」という気持ちが生まれることを期待したい、ということがありました。子どもたちが「あさくら笑太鼓」の演奏を見てどのように感じたか、正確なところはわかりませんが、火曜日から始まったぞう組さんの和太鼓の活動では、“早く叩きたくてたまらない”という表情をした子どもがあちこちで見られました。「あさくら笑太鼓」の活動の意味を改めて感じることができました。

先週から始まった「もくもくの日」の取り組みもそうですが、基本的にあさり保育所の活動は子どものやりたい!という気持ちを重視するため、保育者から無理矢理に取り組ませるということはありません。子ども自らが興味・関心をもって取り組むことが、学びには最も大切なことだと考えるからです。でも同時に、どの子にもいろんな体験をしてもらいたいとも思っています。だからこそ、提案する活動に対して子どもたちが興味を持つための仕掛けには、目一杯力を注いでいます。興味をもって楽しさを感じてもらうためにはどんな工夫や演出が必要か、そんなことをいつも話し合っています。

昨日2回目の「もくもくの日」が行われ、一部ではありますが活動を見て、やはり子どもたちが自然と関わることで得るものは大きいと感じています。なので、もっともっとこの活動に対して興味・関心が深まるよう、まだまだ試行錯誤を続けていきます。

2011年7月26日

両立ではなく調和・バランスを

「両立」という言葉はいろんなところで使われていますが、
これってとても難しいことではないかと思っています。
「あちらを立てればこちらが立たず。こちらを立てればあちらが立たず。」
という言葉がありますが、
果たして「あちらもこちらも立つ(=両立)」というケースが
世の中にどれだけあるでしょうか。
そんなものはほとんどなく、
「あちらを立てればこちらが立たず」のケースがほとんどだということを、
私たちは経験を通して知っていますよね。

例えば仕事と子育てのことを考えてみると、
仕事がたくさんあって忙しいときに子どもが熱を出したらどうするか
まだ仕事が残っているときに、子どもが本を読んでとねだってきたらどうするか
こんなときに両立なんて恐らく無理だと思います。

残念ながら、どんな時でも1日は24時間しかありません。
これはどんな立場にあっても、どんな人でも平等です。
こんなときこそ両立させようと考えるのではなく、
調和とかバランスとか
そういう考え方にならなければいけないんじゃないでしょうか。

何でもかんでも欲しがるとか、すべてをパーフェクトにしようとか、
すべてを欲しがっても、どこかで無理がきてしまいます。
そうではなく、限られた24時間をどう使うか、
どう子育てと仕事のバランスをとるかが大事なのではないでしょうか。
その時々に子育てと仕事をてんびんにかけて、どちらをどのくらい選択するか
その優先順位のつけ方のセンスを磨きたいと、私はいつも思っています。

子育ては決して楽なことではありません。
でもその時期はあっという間に過ぎてしまい、二度と戻っては来ません。
だからこそ「今」を大切にしてほしいと思います。
その「今」を、みなさんと一緒に楽しみたいと思っています。

「両立」ではなく「調和、バランス」を大事にしたいですね。

2011年7月24日

夏祭りが終わりました

夏祭りが終わりました。
たくさんの人たちと思いを共有できた、
そんな夏祭りだったと思います。

会場中にあふれる子どもたちの笑顔、
とっても印象的でした。
そして、多くの人に支えられていることも再確認できました。
ほんとにほんとにありがとうございます。

バザーも募金も、多くの方に協力していただきました。
後日金額等の報告はきちんとさせてもらいます。
みなさんの温かい気持ちを
東北の保育園に届けさせてもらいます。

「つながり」というテーマを掲げて取り組んだ夏祭りですが、
ほんとに大きなつながりになったと思います。
柄にもなく感動してしまいました。
今回生まれたつながりをもっともっと深めていきたい、
今はそんな風に思っています。

何度も何度も言うようですが、
本当にありがとうございました。

2011年7月23日

いよいよ夏祭り

日付は変わって、いよいよ今日は夏祭り。
天気もどうやらいい感じに晴れてくれそうです。

今回用意したバッジができるまでのことを、ふと思い出しました。
3月のあの出来事に対して何かしたいという思いを、
まだ漠然としていたけどその思いの全てをよしとさんに話したとき、
「できるだけシンプルな形で表現した方がいいですね」
といった意味のことを言われたように記憶しています。

人に何かの思いを伝えたいとき、
その思いが大事なものであればあるほど、
力を抜いてシンプルに表現する冷静さが必要だと、
そう教えてもらったような気がします。

そのままでは複雑すぎて人に伝えることが難しい状態だった思いを
シンプルな絵で表現してくれたよしとさんに感謝です。

バッジの絵のラフスケッチが見つかったので、
それを見ながらそのときのことを思い出しました。
みんながつながりを感じられる夏祭りになるといいなあ。





2011年7月22日

もくもくの日

21日(木)は第1回目の「もくもくの日」でした。
自然に生かされるってどういうことだろう?
私たちが掲げている目標である
「自然に生かされる保育」を深めるために
大事な大事な活動になっていくと思ってます。

活動はいたってシンプル。
天候に関わらず、
その日一日は自然の中で過ごすというもの。
既製の遊具なんて何もないけれど、
自然の中のありとあらゆるものが
子どもたちの遊びになっていきます。
と、簡単に書いてしまうのはもったいないくらい
活動の中ではすごーくいろんなことが起こってました。
中身は今後じっくりと説明していきますね。

自然について考える日が続いているんですが、
自然を大切にしようとか
自然と共に生きていこうといった気持ちは、
自然の中で“楽しく”遊んだ体験が
じっくりと時間をかけて育んでくれるものだと思ってます。
大人になったときに、気がづけば自然が大切な存在になっている
そんな風につながる活動にしていきたいんですよね。

今後、いろんな形で「もくもくの日」の活動を取り上げていきますが、
とりあえず21日の写真を1枚だけ。
子どもたち全員がとてもゆったりとした姿だったことが
とても印象的でした。



No.203 美味しい納豆の条件は

いよいよ明日は夏祭りです。ここで何度も書いてきたことなんですが、今年の夏祭りは「つながり」ということもテーマに掲げています。東北地方の方々の思いに共感する、目には見えないけれど“つながり”を感じる、そんなことの大切さを大人の行動を通して子どもたちに伝えてきたい、そう考えています。

このことについてずっと考えているので同じことばかり書いていると思いますが、東北地方の方々に対してというだけでなく、「他者の気持ちに共感する」ということはとても大切なことなんですよね。自分とは違う様々な価値観を受け入れることができる人になってもらいたい、自分以外の多くの人と共に生きていくことを大切にできる人になってもらいたい、そのためにも他者の気持ちに共感する力は絶対に必要だと思っています。

様々な価値観を受け入れるということは、自分にとっての「当たり前」はあの人にとっての「当たり前」ではないということを『当たり前』と感じることができるということでもあります。相手の「当たり前」に「うん、それもわかる」と共感しなければでも、わかってはいるけどこの『当たり前』が難しいことなんです。例えば、納豆を一度も食べたことのない人と納豆を毎日のように食べる習慣がある人の、「きみの家では腐った豆を食べる変わった習慣があるみたいだけど、あれはとても人間の食べ物とは思えないね。」「何を言ってるんだ。オレの家では毎朝納豆を食べないと一日が始まらないんだ。それをなんだ、腐った豆とは!ほっといてくれ。」なんて会話があるとします。納豆を食べない人にとって、納豆を美味しく食べる人を全く理解しようとしないか、自分は食べないけれど納豆を好きな人がいるという事実をそのまま受け入れるかでは、世界の広がり方が全く違ってくると思うんですよね。こういうことって納豆に限らず様々なことに当てはまると思っています。

変な例えのせいでなんだかよくわからない話になってしまいましたが、要するに、価値観が違う他者と関わることや距離が遠かったり状況が全く違っている他者の思いを想像することは大事だということです。美味しい納豆(豊かな社会・世界の広がり)の条件はネバネバ(共感によるつながり)がしっかりあること、ということでまとめになったでしょうか?とにかく明日の夏祭り、みんながいろんなつながりを感じることのできる場になればと思っています。

2011年7月19日

手紙をいただきました

今週の土曜日は夏祭り。以前からお知らせしているように、今年の夏祭りでは募金活動を行います。バザーも一品の単価を上げ、その収益を東北へ届けます。少しでも多くの方に趣旨を理解していただき協力してもらえたらと思っています。

少し前に、ある方から義援金とともに短い手紙をいただきました。その手紙にはこんなことが書かれていました。

『東日本大震災後、家族で何らかの形で義援金を送りたいという話が何度か出てきました。今回の保育所での活動の仲間に入れさせてください。義援金を送られる時、一緒に送ってくださるようお願いいたします。「我が家の家族の思いが太陽を通してつながっていきますように…」』

この手紙を読んでいて、なんというか、その人の思いや家族の思いがじわーっと伝わってきたんですよね。うまく言えないけれど、じわーっと、です。そして、こんな思いを感じている人って、自分を含めてまだまだたくさんいるんじゃないかなあ、そんな風にも思いました。今回のあさり保育所の夏祭りでは、そんな思いをみなさんからちょっとずつお借りして、それをつなげていきたいんですよね。

つながっていくとか、つながっていることを感じるとか、そんなことが実はすごく大事なことだってことをみんなで感じたいなあと思っています。

2011年7月15日

No.202 ひとりごとをブログでも

5月に行った第三者評価のアンケートがまとまったようです。ご協力ありがとうございました。たくさんの方が提出していただいたアンケートと園で行ったヒアリングの結果と合わせて、来月には結果を見ていただけるようになると思います。島根県西部では初めて第三者評価を受審した園となるわけですが、そこには「保育は子どもと保護者だけがわかっていればいい」というものではない、そんな思いもあります。社会全体で乳幼児教育すなわち保育の重要性を共有したい、そのためにも現状を第三者に対してさらけ出してどう見られるか、どこまでその重要性を伝えることができるかということを、一度つかんでおき、整理をしたかったという思いです。

私たちは決してその場しのぎの保育は行いません。今この瞬間の形を整えることに集中するあまり個々の発達を無視してしまい、結果として将来子どもに大きな歪みが出てしまうようなことは絶対にしてはいけないことです。子どもが社会に出たときにどんな風に個々の力を発揮して他者と共に生きていくのか、そこにつなげていくためには乳幼児期にどんな体験をすべきなのか、そんなことを大事にしなければいけないと思っています。そのためにも個々の発達をそのときそのときできちんと保障する必要があり、それが「子どもたちが今をよりよく生きる」ことだと考えています。そんなことを今回改めて考えることができました。

で、こうしたことをいかに第三者、つまり地域の方や社会に対して発信していくかですが、こちらから働きかけをしていかないことには何も変化はありません。「この“園長のひとりごと”を保護者だけでなくもっと広く発信してみてはどうですか?」との評価機関の方からの提案もあり、まずはブログ形式で発信してみることにしました。タイトルはそのまま『園長のひとりごと』、ブログのアドレスは『http://ecbalance.blogspot.com』。ecbalanceには乳幼児期は「養護(生命の保持と情緒の安定)」と「教育」のバランス(「e」ducationと「c」areのbalance)が大事であるという思いを込めて…とこれはどうでもいいことですね。これを機に中身が充実するといった変化はないでしょうが、子どもたちの育ちのため必要なこと、みなさんと共に大事にしていきたいことなどを、じっくりと発信していきたいと考えています。こんなことコツコツ続けていくことくらいしか今は思いつきませんが、今後もよろしくお願いします。

2011年7月8日

No.201 自然と人間の関係

最近読んだ本の中におもしろいものがありました。森林をテーマとした著書を書いておられる浜田久美子さんの「森の力」という本です。その中に書かれていたことで特に興味を持ったのは、『森の幼稚園のような森での活動を多く持っている子どもはコミュニケーション能力が高くなる』というものです。森での活動を通して運動面や健康面でプラスになるのは想像していたことなんですが、コミュニケーション能力が高くなるのはどういうことなんでしょうか。

浜田さんは森の幼稚園の活動を体験して感じたことをこんな風に書いておられます。『コミュニケーションの基本は言語の獲得や相手に対する想像力や場や状況を読み取る力。そのためにはまず自分自身の感情や感覚をきちんと感じ取り、それに対処できることが大事。その感情や感覚をバランスよくマイルドに刺激される機会が森での活動には多くあり、そして喜怒哀楽の感情を制約されずに放出することが許されているのが森の特徴。』これを読んで、なるほどと思います。コミュニケーション=他者と関わるためには相手への想像力が大事で、自分の様々な感情がそのベースとなる。そのための様々な感情を体験する場として森は重要な環境となるという話は新鮮でした。同時に私自身の森や自然に対しての見方が偏っていたかもしれないと気づかせてくれる内容でした。

とてもいい気づきを与えてくれる内容だったので、あらためて森や自然について学んでみようと思っています。あさり保育所の保育目標に『自然に生かされる保育』という項目があります。今まで自然との関わりをおろそかにしていたわけではないのですが、その捉え方についてはまだまだ十分ではなかったかもしれません。4月のこのひとりごとでも書いているのですが、自然をどう活用しようとかどう守っていこうとか、どちらかというと自然を上から眺めたような視点ではなく、私たちも人間も自然の一部であり、自然とともに歩み、自然に対して畏敬の念を感じることを大切にする考え方への転換が必要だと感じています。謙虚な気持ちで自然を眺めたとき、絶えず変化している自然が私たちに何を伝えてくれているか、自然とともに生活ができていたとき人はどんな育ちの機会を与えられていたか、そんなことを整理してみることにします。自然の中へ出かけることが増えると思います。自然の変化に着目した取り組みなども増えていくと思います。できることから、そしてもちろん楽しみながら、子どもたちとともに「自然に生かされるとは?」に触れていこうと思います。

2011年7月1日

No.200 体験してつかんだことこそ

今週の火曜日からプールの活動が始まりました。もう何年も続けていますしお便りでもお知らせしているので、知っておられる方がほとんどだと思いますが、あらためてあさり保育所のプールの活動について説明させてもらいます。

ぞう・きりん・くま組のプール遊びは、まず『選ぶ』ことから始まります。「水遊びは大好きだけど、顔に水がかかるのはちょっと…」という“かにグループ”、「顔に水がかかってもいいけど、でも潜ったりするのは苦手」という“さかなグループ”、「しっかり泳いで遊びたい」という“いるかグループ”の3つのグループから、今日はどのグループでプールに入るかを選びます。子どもたちは自分で選ぶことによって、とても意欲的に活動に取り組みますし、意欲的に取り組むことで活動に対して自信を持ち、次の課題への挑戦意欲へとつながっているのが見て取れる、そんなプールの活動です。「自発的な活動によって自信を深める」ことが情緒の安定にはまず大切なことです。

さて、そんな火曜日のプールの活動でこんなことがありました。くま組のNちゃんは“いるかグループ”を選んでプールに入って遊んでいたのですが、ホースで頭から水をかけていた保育士に「顔にかかるのは嫌だからかけないで」と言いました。それに対して保育士が「でも“いるかグループ”はしっかり泳いで遊びたいグループだから顔にかかっても平気なはずだよ。それが嫌な人はどのグループに行けばよかったのかな?」と言うと、Nちゃんは「かにグループ」と言い、自分が満足して遊べるグループに気づいたようです。そして他の保育士にも「今度はかにグループで入るよ!」と伝えたりもしていて、木曜日のプール遊びでは宣言通り“かにグループ”でしっかりと楽しんでいました。

自分に合った活動ができるグループを自分に問いかけながら見つけていく中では、選択を間違ってしまったことをやってみて初めて気づくということは当然あります。大人が「あなたはこっち、あなたはあっち」と振り分けてしまえば選択を間違える可能性はずいぶん減るんでしょうが、でもこの間違いも子どもにとって大事な学びです。自分の責任で選択し、そこでうまくいった、うまくいかなかったを繰り返すことでつかんでいくものは、確実に子どもの力になっていきます。本から得たこと、人から聞いて得たことより、体験してつかんだことこそ理解が深まる、そんなことを考えさせてくれたNちゃんでした。