2016年3月25日

No.438 27年度の終わりに

明日はいよいよ卒園式。3月中旬から卒園式に向けてぞう組さんと何度か練習を行ってきたのですが、その短い期間の中でも子どもたちの成長を見ることができています。その成長は子どもによってそれぞれ違いますが、“卒園式の練習”という場から何かを感じ取って、それを変化のきっかけにしているのは共通していると思います。「子どもは環境から学んでいく」と言いますが、今まさにそれを見せてもらっています。乳幼児期は知識をつけていくことよりも、環境や体験を通して刺激を受け、それを次の活動の意欲へとつなげていくことが大切です。卒園式は、ぞう組さんにとって今まで体験したことのない場で、ここで感じたことや受けた刺激は今後の活動にいろんな形でつながっていくはずです。あさり保育園での最後の特別な場から多くのことを感じ取ってもらいたいと思っています。



卒園式では、大きくなったら何になりたいかを1人ずつ発表してもらいます。発表するときの子どもたちのちょっと緊張した表情、発表し終わったときのホッとした表情や満足そうな表情を練習の場で何度か見せてもらっているんですが、何度見てもうれしい気持ちになります。夢については事務室で一緒にごはんを食べたときにも聞かせてもらっていて、どの子も「うーん」と考えた後「○○になりたい!」と真っ直ぐに話してくれました。自分が関わってきた社会(大人に比べるとその範囲はまだまだ狭いですが)の中で特に強い関心を抱いた人や仕事が夢として表現されるわけですが、その抱いた関心を丁寧に聞き、その姿を尊重してあげることで、更に広い社会に関心を向けていくことにつながっていくはずです。子どもたちが社会に対して積極的に関わっていこうと思ってくれるよう、卒園式に限らず、子どもが夢を持つ姿には丁寧に向き合っていきたいと思います。

さて、卒園式が終わると1週間もしないうちに今年度が終わります。あさり保育園のことについて、「もっといろんなことに挑戦すべきだったのにできなかった」と反省したり、「小さなことを積み上げて少しずつ前に進んでいくものなんだから、これでいいんだ」と今を肯定してみたりと、あれこれ考えている真っ最中です。来年度も子どもたちにとって少しでもいい経験のできる場にしていくために、大小様々な変化があると思います。その変化をあたたかく見守ってもらえるとうれしいです。1年間ありがとうございました。

2016年3月20日

春分

二十四節気

春分…昼と夜との時間が等しくなる。本格的な春の始まり。
春分(しゅんぶん)とは昼と夜が同じ長さになる日であり、自然をたたえ、生物をいつくしむ日とされています。多くの出会いや別れがあり、新生活の始まりなど変化が多いのもこの時期です。

七十二候

2016/03/20
初候 雀始巣(すずめはじめてすくう)
雀が巣を作り始める頃。俳句や民話、童謡にも用いられ、日本人にとって古くから身近な存在である雀ですが、最近では生息数が少なく、貴重な存在になっています。

2016/03/25
次候 桜始開(さくらはじめてひらく)
全国各地から桜の開花が聞こえてくる頃。本格的な春の到来です。きれいな桜の木の下で、自然に感謝し春を祝福しましょう。

2016/03/30
末候 雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)
春の訪れとともに、恵みの雨を呼ぶ雷が遠くの空で鳴りはじめる頃。季節の変わり目であり大気が不安定であることから、雪や雹を降らせることもあります。

「暦生活」より

2016年3月18日

No.437 いろんなつながり

先週、ぞう組からきりん組へ「あさり太鼓」の引き継ぎが行われました。数年前にぞう組が演奏する和太鼓のオリジナル曲を作ってもらい、その曲を引き継いでいくようにしています。今までは聞いているだけだった曲を今度は自分たちが演奏するんだと意識することも、ぞう組へ移っていく期待へつながっているようです。そして今週はお別れ会が行われ、卒園していくぞう組のみんなに楽しんでもらうために、きりん組が企画・進行を張り切って取り組んでくれました。このように、今まではぞう組が中心となっていた活動がきりん組の元に移り、今後の活動への期待が高まってきているのを感じています。

大きなクラスに移行してきたぱんだ組は、きりん組やくま組のみんなに教えてもらった生活の流れや遊びのゾーンでのルールを、自分自身に定着させる段階に入っています。自分たちで考えて行動しようとしている姿もあちこちで見られ、これからの変化がますます楽しみになってきました。こうした変化はもちろん子ども自身の成長によるものですが、少し上の子の存在があって、その子達の生活の流れを受け継いでいける環境があるからこそスムーズに変化していけるんだと思います。保育園には次の段階のモデルがたくさんいます。例えばハイハイをする子にとっては歩き回っている段階の子が、折り紙に興味を持ち始めた子にとっては折り紙名人の子が、最高のモデルとなります。このモデルの存在を活かし、期待を持って次の段階に移っていけるようにできるのが保育園の大きな特徴です。周りのたくさんの子の存在が、1人ひとりの発達にしっかりとつながっています。

話は変わりますが、保育園の来年度のテーマが『四季を味わう』に決まりました。今年度は『四季』をテーマに取り組んできましたが、この1年間の取り組みを次の1年につなげ、発展させていくことを考えています。「味わう」という言葉には、単に食べ物の味を楽しむだけでなく、物事の意味やおもしろさを感じ取るとか、それらを体験するという意味もあります。今年度の活動の反省を活かし、活動してきたからこそ見えた四季のおもしろさなんかを十分に感じられる1年にしていく予定です。

いろんなつながりを書いてみましたが、まだ他のつながりもたくさんあります。たくさんのつながりによって成り立っているのが今で、その今は他のことや先のことにつながっていきます。だからこそ“今”は大事なんですよね。つながりを思い浮かべながら、今の保育を丁寧にすることの大切さを考えさせられた3月前半でした。

2016年3月11日

No.436 他人を理解しようとする力

他人を理解しようとする力を子どもは持っているのか?このことを検証するためのおもしろい実験を教えてもらったので早速試してみました。「大人がケガをしている手でタッチを求めたら、子どもはどんな反応を示すのか?」という実験です。この実験には手順があって、いきなりケガをして登場するのではなく、ケガをする過程を子どもに見せるところから始めます。今回はハサミを使った作業をしている時に左手を切ってしまい、「痛っ!」と声を上げる演技から。そして痛そうな顔をしながら手のひらに絆創膏を貼るところも見せます。その後「みんなが手にタッチしてくれたら早く治るかもしれない。」と言いながら、子どもたちの前に両手を差し出します。その手に対してどのような反応を示すかを見るわけです。思いつきで急に行った実験だったため、0歳児2人、1歳児5人、2歳児2人、3歳児2人、5歳児3人の計14人でした。

結果はだいたいみなさんの予想通りだと思います。「優しくタッチしてくれた」が9人(1歳児5人、2歳児2人、3歳児1人、5歳児1人)。「ケガをしていない手のみにタッチ」が1人(0歳児)。「じっと手を見てタッチしなかった」が1人(0歳児)。「普通に両手にタッチ」が3人(3歳児1人、5歳児2人)。優しくタッチしてくれた子は痛そうな表情をし、タッチしかけた手を一度止め、その後優しくタッチというのがほとんどでした。全て演技だったため、みんなが心配してくれるのを見ていてちょっと申し訳ない気持ちになりましたが、気遣ってくれた姿にうれしくなりました。「普通にタッチした」3人に対しては私なりの解釈があります。5歳児の1人は私の下手な演技を最初からずっと見ていました。そして手のひらの絆創膏がキレイなのも見て感覚的に演技だと見抜き、これは大したケガではないと判断したのではないかと考えています。残りの2人もそれに近い判断をしたのかもしれません。

今回試した子の数は少ないですが、子どもは他人の気持ちを理解しようとする力を持っていると思います。しかも0歳児も同じような反応を見せたことから、かなり小さいうちから(生まれた時から?)とも想像できます。でもわざわざ実験しなくても、こうした姿は家庭でも見ることはできますよね。ですが一般的な認識は少し違います。小さいうちは他者と関わるための高度な力を持っておらず、3歳くらいからついてくるという認識が多いのが現状だと思います。そうした認識に対してこのような子どもの姿を示すことで、「こんな力を持っていますよ」と声を届けていきたいんですよね。今後もこうした実験をいろいろ試していきたいと思います。



2016年3月5日

啓蟄

二十四節気

啓蟄…蟄虫が戸を啓く。
啓蟄(けいちつ)とは、土中で冬ごもりをしていた生き物たちが目覚める頃のこと。生き物たちは久しぶりに感じるさわやかな風と、麗らかな春の光の中で生き生きとしています。

七十二候

2016/03/05
初候 蟄虫啓戸(すごもりのむしとをひらく)
土中で冬眠をしていた虫たちが、暖かい春の日差しの下に出てき始める頃。虫とはいいますが、冬眠から目覚め始めるすべての生き物のことを表しています。

2016/03/10
次候 桃始笑(ももはじめてわらう)
桃のつぼみが開き、花が咲き始める頃。昔は“咲く”という言葉を“笑う”と表現したそうです。ゆっくりと開いていく桃の花は、ほほ笑んでいるようにも見えます。

2016/03/15
末候 菜虫化蝶(なむしちょうとかす)
厳しい冬を越したさなぎが羽化し、美しい蝶へと生まれ変わり、羽ばたく頃。菜虫とは、大根や蕪などの葉につく青虫のことをいいます。

「暦生活」より

2016年3月4日

No.435 年長児との食事会

先週から年長児とのちょっと変わった食事会を始めました。どんな食事会かというと、3人ずつ招待して私と一緒に事務室で食事をするというものです。普段は入らないことになっている事務室に堂々と入ることができるというのは、それだけでも嬉しいことなのでしょう。事務室に入る前から笑顔、入ってからもずっと笑顔です。食事前には事務室にあるものを紹介し、事務室がどんなところなのかを説明して、その後は質問を受けたりします。それが終わってから食べ始める流れになっています。

初日はMちゃん、Iくん、Yくんの3人でした。この時を楽しみにしていたようで、ずっと笑顔でいろんな話をしながら楽しく食べることができました。途中で事務室に入ってくる保育者も声をかけてくれ、それがまた嬉しいらしく、ますます笑顔になっていきます。こんなに楽しそうに食べてくれるなら、もっと早くから企画して数回ずつ機会を作ればよかったとも思いましたが、この時期の年長児だったからこそ楽しめていることなのかもしれません。とにかく私もいつも以上に美味しく食べることができています。

食事においては栄養のバランスとか食べる量とか食べ方とか、大事なことはたくさんありますが、根っこには楽しさがなければいけないと思っています。自分たちが栽培したものを食べる、自分たちで調理したものを食べる、みんなで一緒に話をしながら食べるといった楽しさなどもあるし、今回のようにいつもとは違った環境で食べる楽しさもあります。食事の環境を仕掛けることは大人の大切な役割で、それらの楽しさは大人の働きかけ次第で大きく変わってきます。そしてこれは保育全般においても言えることです。子どもが「やりたいことを好きなようにできればいい」のではなく、より自発的に動けるように、より楽しさを感じられるように、次への挑戦意欲がより湧いてくるように、まずはそのための環境を保育者が構成すること。そしてその中で子どもたちが自分のやりたいことを意欲的に(つまり楽しく)取り組めるようにしていくことが保育者の役割です。まだまだ保育園の食事を楽しくするための工夫はできそうだし、保育全体も深めていく工夫はできるんだろうなあと思った年長児との食事会でした。
※ちなみにこの食事会は、1年生の食事時間約30分を意識してもらうこともねらいとしています。

さて今年度もあと1ヶ月を切り、来年度に向けて既に子どもたちは動き出しています。どの子にとってもスムーズな年度替わりとなるよう、慌ただしくなる時期だからこそ丁寧さを忘れずに保育を進めていきたいと思います。そして最後にお知らせを。来年度の職員体制について来週の「園長のひとりごと」で発表します。お楽しみに。