2016年11月25日

No.471 ここだけの話

火曜日に発表会の予行練習が行われました。予行練習も発表会当日に向けてワクワク感を高めていくための取り組みの1つなので、当日と全て同じように仕上げて予行練習を実施する…という形とは少し違います。例えばダンスグループの取り組みですが、ダンスの候補曲はたくさんあり、練習のたびに候補の中からくじ引きで2曲選んで踊っています。当日も同じように行う予定で、何を踊るかはまだ決まっていません。ステージ上でくじを引くところから始まるので、何を踊ることになるんだろうとドキドキワクワクしている姿も見てもらえるはずです。

と書いてきましたが、ここだけでの話をします。実は子どもたちが当日踊る曲は決まっているんです。それはたくさんある候補曲の中でも最も人気のある2曲で、くじ引きではそれが「偶然」選ばれるように仕込んであります(もちろん子どもたちはそのことを知りません。だから「ここだけの話」なんです。)。大好きな曲でも、何度も踊っていたり、いつも決められた曲ばかり…と感じてしまったりすると、楽しさが薄れてしまうのはよくあることです。音楽を聞くと楽しくなって思わず体を動かしてしまう、そんなあり方が子どもたちの表現活動を行う上でのねらいです。だからこそこのような仕込みをして、練習のときから「自分たちがくじを引いて選んだ曲を踊る」状況を作り、踊らされていると感じることがないよう、更には当日の楽しさがより増すように工夫をしているわけです。当日の曲が決まったときに子どもたちがどのような表情を見せてくれるか、今から楽しみにしています。



話は変わります。上の写真は、予行練習の日にステージにつながる通路で出番を待っている子どもたちです。ここを通ってステージへ出ると、普段はいないたくさんのお客さんの前に立つことになります。自分の姿をしっかりと見てほしい!という思い、たくさんの人に見られることに対する恥ずかしさ、そんないろんな感情を抱く場所でもあります。ここでの様子を保護者のみなさんにも見てもらうことはできないかと考えたこともありますが、ここは子どもたちだけの空間にしておいた方がいいんだろうと、今は思っています。子どもにとっては、普段一緒に過ごしている友達といつもとは違うちょっと特別な感情を共有することも大事ですし、みなさんにとっては、ここでの様子を想像しながらわが子の出番を待ってもらうことも大事だと考えています。様々な経験を通して力をつけてきている過程も思い浮かべながら、明日のステージを楽しんでください。

2016年11月19日

海士町視察研修

法人の管理者研修として、海士町の視察に言ってきました。

14日(月)の朝、七類港からフェリーで出発。






海士町の菱浦港に到着。
海士町社会福祉協議会の片桐事務局長と合流し、船渡来流亭で昼食を食べながら軽く打ち合わせ。
今回の視察は片桐さんが何から何までコーディネートしてくれました。




保険福祉センターひまわりに移動して、片桐さんによるオリエンテーション。




さくらの家の福来茶作りの見学。






福来の里デイサービスセンターの見学。




諏訪苑でグループホームと特別養護老人ホームの見学






海士町役場で健康福祉課長と意見交換。




けいしょう保育園の見学




この日は民宿但馬屋に宿泊。夜はキンニャモニャも見せてもらいました。






15日(火)の朝は内航船で西ノ島へ移動。






国賀海岸、魔天涯の見学。










また内航船で海士町へ戻り、巡の環の見学。






午後は海士町社会福祉協議会でスタッフの方と意見交換。






最後は隠岐神社の見学。








全ての視察を終え、フェリーで七類港へ。




「ないものはない」宣言。



大きな観光資源を持っている西ノ島より、観光資源を持っていない海士町の方が空き家が少ないという現実を知りました。

島のスローガンは「自立・挑戦・交流」。



多くの交流は持てなかったけど、地域の方から「海士町を好きになってもらいたい」という思いを感じました。

見習わなければいけないこと、仕事の中にも取り入れる必要のある考え方をたくさん学ばせてもらった視察研修でした。



2016年11月18日

No.470 達成感と安堵感




少し前のことですが、ぞう組の和太鼓の活動を見させてもらいました。あさり保育園の伝統として受け継ぐことにした「あさり太鼓」の曲に合わせ、他の子の太鼓の音と合うように気を配りつつ、楽しそうに和太鼓を叩いていました。全ての取り組みに言えることですが、子どもたちが「やってみたい!」という気持ちを持って活動に取り組めるようにすることを、私たちは大事にしています。子どもたちは1人ひとり違っています。しかも、いつも同じ気持ちではありません。そんな子どもたちの「やってみたい!」をいかに引き出すかがなかなか難しいのですが、保育者は実践→話し合い→また実践…を繰り返しながら取り組んでくれています。

「やってみたい!」から始まることがなぜ大事なのか。このことを考えてみます。子どもたちが成長していくためには、様々な活動を通して達成感を得ることが欠かせません。達成感が次の活動への意欲を生み、それがまた次の達成感へとつながっていきます。この達成感を得るための方法として様々な考え方を耳にします。一番多いのは、辛いことや苦しいことを我慢して乗り越える方法でしょうか。でも、この方法で得られるのは達成感ではなく安堵感です。達成感は自ら挑戦しようと思い、それをやり遂げたときに得られるものです。例えば折り紙で花を折ってみたいと思い、挑戦して折ることができたら、そこでも達成感は得られます。やりたくないのに「花を折りなさい」と言われて折るとしたら、できたことでホッとはするでしょうが、達成感とは違うものです。

別の話を1つ。哲学研究者の内田樹さんがこんな話を紹介されていました。ストレス発生物質を注入するテストについてです。一方のグループは最後まで薬を注入され続け、もう一方のグループには「ストッパー」が渡されます。気分が悪くなって「もうだめ」と思ったら「ストッパー」を押せば実験終了ですと指示されて、実験はスタートします。結果は「ストッパーあり」グループは誰もストッパーを押さず、かつ誰も気分が悪くならなかったそうです。ここから分かることは、ストレスの主因は「自分の運命を制御できないこと」それ自体であり、生理的不快も自分の意思で止めることができると思うと「それほど不快に感じない」ということだった、という話です。先に書いていた話と少し意味は違いますが、何かをやるにしても止めるにしても、どちらも自分の意思が尊重される状態であることは、どうやら私たちにとってかなり重要なことのようです。発表会の取り組みも、子どもたちの「○○をやりたい!」という思いを大事にしていきます。

2016年11月15日

2016年11月

小規模多機能型居宅介護合歓の丘の職員、Aさんの話です。Aさんは認知症介護のリーダー研修を受講している最中で、その中で課題として出されている「自施設研修」に取り組んでくれています。職場のリーダーとして職場内の課題を元にテーマを決め、みんなを巻き込んで課題解決に向けて取り組む研修です。少し話を聞かせてもらったところ、自施設研修の意義を十分に感じ、だからこそ取り組みの難しさも同時に感じているようでした。この自施設研修はあくまでも外部研修の一環ではありますが、私は今の取り組みが今後展開していくことを期待しています。

自分たちの課題に自ら目を向けることは、あまり楽しい作業ではありません。自分の体に置き換えてみても、調子の悪い箇所を積極的に探すことは気乗りしないものです。でも、楽しく生活していくため、組織がいい形で動いていくためには、定期的な課題の点検は必要です。今回Aさんが取り組んでいることは、合歓の丘の介護に変化をもたらしてくれるはずです。例え小さな変化だったとしても、その変化はじわりじわりと周りに影響を与えていく、そういうものです。受講中の研修が終わった後も、課題を見つける目と解決に向けて取り組む動きが継続し、他の職場にも広がっていくことを期待しています。小さくても、変化は大歓迎です。

アメリカ大統領選挙が終わりました。その結果ではなく大統領選挙の仕組みに興味を持ったので、ちょっと触れてみます。日本の選挙期間は2週間程度ですが、アメリカの大統領選挙は予備選挙と本選挙を合わせて約1年間、しかも大統領候補者に直接投票するのではなく、大統領を選ぶ選挙人に投票します。時間はかかるし直接的には投票しないなど、やたらとややこしく何度も考える機会が設けられている大統領選挙の仕組みは、「人は間違いを起こす存在」という考えを前提にしているように思え、機能しているかどうかは別として、好感を覚えるのです。

私たちの仕事にも失敗や間違いは存在します。失敗は起こるもの、もっと言えば“失敗込みで仕事”くらいの捉え方をしています(ここで書いているのは、もちろん一生懸命取り組む中での失敗のことです)。ですから、失敗が起きたら原因を探る、対策を立てる、ヒヤリハットに記入して他の職員と内容を共有するなど、失敗後のルールが前もって決めてあります。同じ失敗を繰り返さないため、失敗から学びを得るために、振り返って深く考えるためのルールです。失敗を怖がらずに仕事にあたってもらい、失敗が起きたときにはそれを謙虚に受け止め、ルールちゃんと機能させて、確実に次につなげていく。そうやって行動を磨いていきましょう。

ヘルパー、法人本部、保育園の監査が終了しました。それぞれ数点ですが指摘事項がありましたので、改善に向けて対応していくことになります。監査も私たちの仕事を点検する貴重な機会です。指摘事項に限らず、監査を迎える準備の間に気づいたことなども、ぜひ今後に生かしていくようにしてください。

2016年11月11日

No.469 分かりにくい話ですが




写真はある朝の1シーンです。動物図鑑を10人くらいの子どもが囲んで、「これ知ってる!」「見たことある!」と声を上げながら楽しそうに見ていました。図鑑は『ある分野の正確な絵や写真を並べ、それについての解説文が書かれている博物学書籍』と定義されていますが、子どもたちの楽しみ方の多くはこんな感じです。何かを調べる姿ももちろん見られますが、友達と楽しさを共有する読み方が多いです。子ども集団があるからこそ体験できる楽しさで、見ているこちらまで楽しくなってきます。

話は変わりますが、先日ある研修会でチームのあり方について考える場がありました。保育は、個人ではなくチームで行います。どんな保育者チームを作るかによって保育が変わってくる、それくらい大切なものです。そのチームについて様々な保育園の方と一緒に考える、そんな場でした。どの保育園でもそうですが、個性を十分に発揮して互いにカバーし合う、そんな力を子どもたちにはつけてもらいたいと願っています。そうであるからこそ、まずは保育者が自分の個性を発揮して互いに協力し合う姿を見せる必要があります。もしも個々の個性が認められずにみんなが同じであることを求められたり、協力し合うこともあまりない保育者チームであったなら、前で書いたこどもたちに対する願いは到底叶うはずがありません。なのであさり保育園では、個々に違っていること、それぞれの強みがあり弱みがあることを認め合える保育者チームを目指しています。そんなことを研修会の場で話していました。

保育者にはいろんなタイプの人がいます。あさり保育園の保育者も個性派揃いです。強みや弱みも多様です。それを互いに認め、カバーし合いながらチームで保育をすることで、子どもたちも個々の違いを認めて協力し合う関係の大切さを学んでくれるはずです。「いろんな人がいることが良い」を更に進めて、「いろんな人がいるのが社会で、それが当たり前」と受け止める段階を目指したいと、今は考えるようになりました。分かりにくい話だと思いますが、良いとか悪いとかではなく、そんなものを超えて、良いも悪いも全部ひっくるめて「当然のことでしょ?」とみんなが思える場にしたいという意味です。いろんな人がいるから衝突も起こるし、やっかいな問題も出てくる。出てきたらその問題にちゃんと向き合って解決をし、やっぱりいろんな人がいる方が楽しいねと確認でき、互いを認め合う。でもまた衝突が起こり…と、繰り返しながら学んでいければそれでいいんじゃないかと。やっぱり分かりにくい話ですね。

2016年11月4日

No.468 言葉と表現の育ち

今月末には発表会が行われます。発表会の目的は各クラスからのお便りでも紹介されている通り、4月からの様々な体験を通して言葉と表現がどのように発達してきているかを見てもらうことです。例えば言葉の発達のためには「したこと、見たこと、聞いたこと、味わったこと、感じたこと、考えたことを自分なりに言葉で表現する」場が、表現の発達のためには「生活の中で様々な音、色、形、手触り、動き、味、香りなどに気付いたり、楽しんだりする」場が必要です。いろいろな体験によって心が動き、そのことで言葉が豊かになったり表現して伝え合うことを楽しんだりすることができるよう、保育園では体験の場づくりに力を入れてきました。

テーマを決めて保育を行っていることも多様な場づくりにつながっています。今年度は「季節を味わう」をテーマに、季節毎の植物や食べ物、風習などに触れる機会を多く持つようにしてきました。毎月の足湯体験を通して、その季節の植物を見るだけでなく触れたり匂ったり食べてみたりと、様々な切り口から接しています。園庭で行っている季節ならではのものを見つけるネイチャーゲームもそうです。何もしなければ注目することがなかった物や現象に対してしっかりと目を向け、しかも見る以外の感覚を刺激する体験を通して、子どもたちの言葉や表現は確実に豊かになってきています。テーマに沿った活動の中で数多くの体験をしている姿を想像してもらいながら、子どもたちの成長を感じてみてください。

そして言葉や表現は、友達や保育者とのやりとりによっても豊かになっていきます。楽しかった出来事を話したり、同じように友達の楽しかった話を聞いたりと、相手がいるからこその発達も大事です。同年齢での関わり、異年齢での関わり、保育者との関わりなど、様々な関わりの場があるのが保育園の特徴です。その中で刺激を受けているからこその育ちにも注目してみてください。

最後に「楽しさ」について。全ての活動に共通することですが、子どもたちが楽しさを感じていること、期待感を持っていることが欠かせません。そのために数多くの工夫が行われていますが、今日4日の取り組み「先生たちの発表会」もその1つ。保育者が言葉や表現の楽しさを子どもたちに披露します。この発表会を見ることで、自分たちの発表会を楽しみにする気持ちが増すことをねらっています。どのように受け止め、期待感がどう変化したか、ぜひ感想を聞いてみてください。