2009年11月20日

No.120 保護者とともに

先週の木曜日と今週の水曜日の夜に、発表会で行う役員さんの出し物の練習が行われました。来週の木曜日に最後の練習を行い、当日を迎えます。この取り組みは今年で5年目になります。子どもたちの発表会ではあるけれど、その中で子どもたちが見て楽しむものが何かできないだろうかと、保護者会の役員さんが中心になって考えられた活動です。それぞれに忙しい中、時間を作って積極的に取り組んでいる姿を見るたびに、本当にありがたいことだと感じています。この取り組みが子どもにとって意味があると感じているのは、発表会後に役員さんが踊ったダンスなどを、子どもたちが生き生きと取り組んでいるところを見ることができるからです。私たちは、子どもたちの活動は自らやってみようと思って主体的に行われるべきと考えています。一方的にやらせるのではなく、子どもたちがやりたいと感じるような“仕掛け”をいかに作るか、ということに力を入れています。そのことから考えると役員さんの出し物は、子どもたちの自発的な活動を促すとてもいい“仕掛け”になっていると思います。

別の角度からも考えてみます。保育のあり方に対して同じ課題を持って議論しあえる仲間が全国各地にいるのですが、その仲間の一人がドイツの幼児教育施設を視察に行った際にこんな話を聞いたと教えてくれました。ドイツの中でも非常に進んだ取り組みを行っているミュンヘン市の幼児教育統括責任者の話によると、保育所や幼稚園で大事にしなければいけないと考えていることの1つに「保育所と保護者がともに子どもを育てる環境づくり」を挙げられたそうです。その意味は、5月に行った保護者講演会の講師・藤森先生もいつも言っておられますが、「保育所と保護者が一緒になって子どもを育てたとき、その子どもは著しく発達する」ということにあるそうです。

今回の発表会だけでなく、夏祭りや運動会、そしてそうした行事以外の様々な面でも、役員さんを中心に保護者の皆さんには積極的にいろんな協力をしてもらっています。そのことが子どもたちの成長の支える保育所にとっても大きな支えになっていると感じ、本当にありがたく思っています。来週の発表会では、「保育所と保護者がともに子どもを育てる環境づくり」の取り組みの1つを、あたたかく見ていただきたいと思います。

2009年11月13日

No.119 鮭の解体ショーの取り組みから

今週の月曜日の朝、ランチルームで鮭の解体ショーが行われました。この取り組みは今年で3年目、食材を元の姿から調理するところを見せるという目的で行っています。以前、アジは開きのままで泳いでいると思っている子どもがいるというびっくりするような話を聞いたことがあります。そこまではいかなくても、世の中が便利になればなるほど食材の元の姿を知らないといったことは増えていくかもしれないと思っています。そんなこともあってこの解体ショーが開催され、子どもたちは興味を持ってその様子を眺めていましたし、食事に出てきた鮭を食べるときもショーの話をしながら嬉しそうな表情を見せていました。

そんな解体ショーですが、保育士の個性や特技を生かす場の1つとも考えています。このショーは2年前からM保育士が担当していて、M保育士の特技?を披露する場としても定着してきたと思っています。他にもいろんな保育士が特技を発揮してくれていて、ほんの一部だけ紹介すると、例えば運動会や発表会でぞう組さんが行う和太鼓演奏の指導はS保育士が担当していて、和太鼓だけでなく様々な打楽器の豊富な演奏経験を生かし、指導に関しても子どもたちの力をしっかり引き出してくれています。また以前も書きましたが、染物や紙すきに関してのB保育士の技術や知識は年々向上しています。子どもたちが意欲的に関わるためにまず自分が楽しむという姿勢も見事です。これ以外にもいろいろありますが、これらの特技を全員が身につける必要はありません。それぞれが得意な分野でチカラを発揮してくれればいいと思っています。

あさり保育所は大人と子ども合わせて約90人の、小さいけれど立派な社会です。社会にはいろんな性格や特技をもった人がいます。多様な人が集まって成り立っているのが社会で、保育所は子どもたちにとって大事な社会体験ができる場でなければいけないと思っています。様々な人がいて、様々な役割を持っていて、それを互いに認め合えることが大切なんだと感じられなければいけません。一人ひとりが万能である必要はなく、それぞれの持ち味を発揮して足りないところは補い合えば、全体として素晴らしい活動ができます。そのことを子どもたちには感じてもらいたいと思っています。そのためにもまず職員が個性を発揮し、その結果として集団がより輝きを増すんだということを、子どもたちに見せていくことのできる保育所でありたいと思っています。

2009年11月6日

No.118 あさり保育所のヒミツ③

しばらくお休みしていた「あさり保育所のヒミツ(環境設定や活動の意味・目的)」を再開します。今回は、ぱんだ組の部屋にある「円形で、周りにアルファベットや絵がかかれたカーペット」についてです。4月の保護者会総会の際にぱんだ組の保護者に配ったプリントには、こんなことを書いています。『平行遊びから一緒に遊ぶことを楽しめるようになって来るように、集団を意識し始め、集団から学び始めます。そのことを踏まえ、お集まりを丸い形のカーペットの上で行ったりします。』この丸いカーペットの上で子どもたちは円形になってお集まりを行っているのですが、この円形になって集まるということがポイントです。

まず、学校の教室のスタイルをイメージしてください。子どもが25人、先生は1人いるとします。学校のようなスクール形式で集まったとすると、1人の子どもに注がれる視線は先生からの1/25の視線ということになります。それに対して円形で集まれば、注がれる視線は先生を含めて自分を除いた25/26ということになります。2つを比べると、全く質の違う集まり方だということが分かると思います。円形だと全員の顔をお互いに見ることができます。一斉に何かを伝えようとするときスクール形式は有効でしょうが、自分の思いを言ったり人の意見を聞いたりといった関わりが目的であれば、円形の方が効果的です。これも大事な子ども同士の関わりの形です。

また、アルファベットや絵がかいてあることで、子どもたちは自然と文字や絵の上に座ります。どこに座ればいいか、特にあれこれ言わなくてもわかりやすい作りになっています。何故アルファベットかというと、これは欧米の学校などは1クラス25人(+先生1人)であることが多く、アルファベット26文字の上に座るとぴったりになるからです。その人数に合わせたサイズで作られているため、ぱんだ組さんには少し大きいですが、円のサイズを調整しながら上手に集まっています。円形以外の集まり方では、3,4,5歳児のお集まりなどは1日の流れを全員に伝えるなどの目的があるため、スクール形式に近い形をとっています。どんな集団の大きさ、どんな形で集まるかも大事ですが、何を目的とするかが集まりの形を考える際には重要になります。「集まり」にもいろいろと工夫が必要です。