2016年6月24日

No.450 新たなつながりの形

夏祭りまであと1ヶ月を切りました。梅雨の真っ只中なので暑い暑い夏のことをまだ想像しにくいと思いますが、準備は着々と進んでいます。今年の保育園のテーマは「季節を味わう」で、夏祭りのテーマも同じです。夏をどのように感じてもらうか、どのように楽しんでもらうかを、各コーナーの担当が考えてくれています。この内容を考える際に気をつけていることは、単なるイベントではなく保育の1つとして捉えることです。今までの体験が夏祭りにつながり、夏祭りの体験が次の活動につながっていくことが大事です。参観日の際に一緒に仕込んでもらった梅シロップはかき氷に使われますし、少し前に行ったある活動の楽しさを味わえるように、そして今後の製作活動の意欲にもつながっていくようにと計画中です。このようなつながりが保育の楽しいところです。

つながりといえば、今回の夏祭りでは新たなつながりの形に挑戦してみることになりました。まだきちんと決まっていないのではっきりとしたことは言えませんが、あさり保育園の卒園児とのつながりの場を作ることができるかもしれません。最初に書いたのは保育活動のつながりで、こちらは人との幅広いつながりです。あさり保育園では子ども同士の関わりを大切にしています。同時に保護者のみなさんや地域の方々など様々な人と関わり、そこから刺激を受けたり社会を学んだりすることも大切にしています。もちろん大人だけでなく小学生、中学生、高校生との関わりも大歓迎で、子どもたちと一緒に遊んであげたい、ボランティアがしたいといった申し出は積極的に受けています。できることが格段に増えた卒園児の姿を見ることは、いつもとは違う刺激をたくさん受けることになるからです。

計画しているのは、1つが卒園児にダンスを披露してもらうこと、そしてもう1つは卒園児が企画から運営まで担当するお店を用意することです。実は、お店の企画は卒園児のNくんから昨年度に提案されていたものでした。保育園に来てくれ、「園長先生、話があります。保育園のみんなにお店を開いてあげたいんです。」と、考えていることを話してくれました。昨年度は実現させてあげることができず申し訳なかったのですが、今回はいよいよ登場することになりそうです。そのため近々保育園に集まることになっているので、どんな話し合いが行われ、どんな企画が出来上がってくるのか、今から楽しみにしています。

子どもと子ども、子どもと大人、子どもと地域、子どもと○○。保育園は子どもと様々なものを結びつけていくための場でもあると思うんですよね。

2016年6月20日

隠岐の島の反省とか

隠岐の島ウルトラマラソンが終わりました。結果は無事完走、でも中身はいろいろと想定していなかったことがありました。できれば同じことは繰り返したくないので、昨日感じたことを思い出して記録しておくことに。





スタートはワラーチで。ワラーチにするか裸足にするか迷ったんですが、なんとなくの気分でワラーチを選択。これはどっちでもよかったんだけど、ちょっと乱暴に走ってしまったこととペースが速かったことが問題でした。100km走る気分になりきれてなかったのかもしれません。たいして力もないのに丁寧さが足りませんでした。

途中から雨が降りはじめ、ワラーチの上で足がツルツル滑り始めて上り坂をうまく走れなくなったため、20km地点から裸足に変更し、48kmのレストステーションまで。濡れた路面が気持ちよくて、道路を勢いよく流れる水の上を滑るように走ったりして楽しみました。この時もちょっと走り方は雑になっていたなあと反省。

そんなこんなで50km過ぎたあたりから膝に違和感が。痛みが出ると膝に力が入らない状態になり、その間隔が段々短くなってきました。1km続けて走ることができないもどかしい状態です。でもこれは時々あることで、30歩ルール(歩くのは30歩まで、歩いた後は50歩以上走る。これの繰り返し。)でやり過ごしながら様子を見ることに。でも全く回復せず、この辺りから下りは全て歩きに。

70km過ぎからいよいよ怪しくなり、30歩ルールが守れなくなりました。75kmからは完全に歩きに。でも12分/km前後で歩き続ければ6時間くらいでゴールにたどり着けそうで、それなら制限時間も問題なくクリアできる計算です。その時はまだ諦めるつもりは全くなかったので、まずは80kmを目指しました。でも想定外だったのが、走れば30〜40分くらいでたどり着ける距離を1時間以上かけて歩いて進むしんどさ。痛みもあるけど精神的にかなりやられました。その後85kmまでが一番辛かったかも。リタイアを考え始め、ゴールで待ってくれている人にどう連絡をとるかとか、応援メッセージをくれた子をゴール前で探してお礼を言うつもりだったけどそれができそうにないこととか、とにかくいろんなことを考えました。でも同時にゴールまで歩き続けるために気持ちを切らさないこと、ウルトラマラソンを楽しむと決めていたことなどを実行するためにできることはないかといろいろ考え、歩きながら他のランナーを応援することに。「あと20km!がんばれー!」と声をかけてると「お互いがんばりましょう!」と声が返ってきます。元気づけるつもりが逆にこちらがたくさん元気をもらいました。

もちろん歩いている最中も沿道で応援してくれている人にはお礼を伝え続けました。隠岐の島ウルトラマラソンの特徴は島をあげて応援してくれることだと思っています。後で聞いた話ですが、集落毎にどんな応援をするか話し合っているそうです。大会中はコースになっている道路はスタッフとランナーしか移動することができません。なので、他の集落ではどんな応援をしているのか、島の人は見ることができません。あそこではこんな応援をしていたらしいといった話を聞いて、次はどんな応援をするか考えたりするそうです。しかも町の人がお金を出し合って飲み物や食べ物を用意してくれたり。10km地点で応援してくれた人が、コースになっていない道路を通って70km、90km地点でまた応援してくれたり。押し車に座って応援し続けてくれる人、ランナーのゼッケンを見て事前に島民に配られる参加者名簿で名前を探し、「○○さん、がんばれー!」とみんなに声をかけてくれる人、子どもと一緒にずっと声をかけ続けてくれる人。そんな人たちからいっぱい力をもらいました。歩き続けてよかったことは、そんな人たちと今まで以上に話ができたことです。走ることができなくてもいいことはあります。



84km過ぎたあたりでバイクに乗ったスタッフに「大丈夫ですか?」と声をかけられました。そこで初めてリタイアという言葉を口にしました。「リタイアする場合はどうすればいいんですか?」この言葉を言った瞬間、気持ちがかなり切れてしまいました。「自分に言ってくれてもいいですし、この先のエイドで言ってくれてもいいです。」と言われ、とりあえず次のエイドまでは歩くことに。そのときはリタイアをほぼ決めていました。もうちょっとでエイドに着くという頃、くまモンのぬいぐるみをつけた女性と一緒に少し歩きました。実はリタイアを考えてるんですと話すと、「そうですよね、無理はしない方がいいですもんね。でも私もしんどいけど、今回は絶対にリタイアしないと決めてるんです。歩いてでも絶対にゴールしますよ!」と力強く話して走って行かれました。すごい人だなーと思いながら、でも自分はリタイアを決めています。複雑な思いでスタッフの人に「リタイアします」と伝えました。リタイアの手続きが分からずすぐに本部に問い合わせてくれ、ゼッケン番号を伝えてもらいました。その様子をボーッと見ながら本当にこれでいいんだろうか?と再び考え、急に気持ちが変わり「すいません!リタイアを取り消させてください!」とお願いしました。あと15km、3、4時間歩き続ける自信は余りなかったけどまだ進みたいという思いが強くなり、少し休ませてもらった後、また進み始めました。

85km地点から95km地点まではひたすら沿道の人やランナーに話しかけ続けました。気持ちが切れてしまわないように。もうやめよう、いや歩き続けようと葛藤する2時間は辛かったです。長時間歩く練習もしておいた方がいいなとか、少しでも楽に速く歩く方法を身につけなければとか、とにかく今の状況を前向きに捉えるよう工夫をしてみました。ほとんど効果はなかったですが。残り3kmの地点まで来て、これで時間内にゴールできるとやっと安心することができました。ここまで来るのは長かったけど、膝の痛みでしばらく悩むことになるだろうけど、歩き続けてここまで来ることができてよかったと、やっと思えました。次に同じ状況になったらリタイアするかもしれません。でも、このときの「あと3km!」「あと2km!」「あと1km!」の気持ちを思いだして歩き続けるかもしれません。とりあえずは痛みをとって、自分の力に合った走り方やペースをもう一度確認することにします。で、また来年隠岐の島の100kmに挑戦です。





2016年6月17日

No.449 Yさんからの質問

少し前のことですが、保護者のYさんからこんな質問を受けましたと報告がありました。その質問は「保育園のトイレに書かれている言葉はどこで見つけてきた言葉ですか?」というものです。保育園の大人用トイレ(2ヶ所)には、保育園の理念や保育方法だけでなく、一見保育には関係のないような言葉まで貼り付けてあります。これは私が不定期で取り替えているもので、これを目にした人が何かを感じてくれたらいいなあと思ったものを貼るようにしています。いろんな文章に触れていると「あっ、この考え方はおもしろいな」と思う言葉に出会うことは多く、その中でも子どもたちと向き合う私たちが変化・進化していくために特に必要な考え方だと思ったことを選んでいます。

私の独断と偏見で選んでいるのでどうしても偏りはありますが、今貼っているもの一部を紹介します。例えば調理室横のトイレは糸井重里さん。

「よりすがる」ということばが、あたまに浮かんだ。そんなことば、あったっけ、ということさえ思った。辞書を見たら、ちゃんとあった。「からだをすり寄せてすがりつく」「助けてもらおうとたのみにする」漢字で書くと「寄り縋る」ということになる。「よりすがるってのが、いけないんだよなぁ」と、そんなことを思ったのがきっかけだった。なんにせよ、「よりすがる」がまちがいのもとだ、と。「よりすがる」がわるくないのは、無力なものとして神さまに「よりすがる」とか、赤ん坊が母親に「よりすがる」とか、犬や猫などが飼い主に「よりすがる」とかぐらいかな。それ以外は、だいたいろくなことにならない気がする。「こだわり」ということばが…(続く)

そして遊戯室横のトイレは村上春樹さん。

二十歳になったからって、急に大人になれるわけじゃありません。また経済的に自立できたとしても、それで大人になれるわけでもありません。僕は個人的には、自分の心の痛みと、まわりの人々の心の痛みとを…(続く)

こんな感じの言葉を貼っているわけですが、見たことのある方はどれくらいいるでしょうか?とにかくこの方たちの言葉はよく響いてきます。うまく説明できないのですが、じんわり伝わってきて、しばらく頭の中に残り、そして忘れた頃にふっと頭に浮かんできたりします。こんな表現力があればみなさんに保育のことを分かりやすく伝えることができるのに…と思うのですが、ないものねだりは止めておきます。トイレの話だけで終わってしまいましたが、保育園のトイレはいつでも自由に使ってくださいね。そのときは是非トイレの言葉にも目を向けてみてください。

2016年6月10日

No.448 好奇心を持ち続ける方法

子どもたちの好奇心は大事に育てていかないといけない。このことはあさり保育園の保育者全員が大切にしていることですし、ここで何度も書いてきました。「おもしろい!」「不思議だ!」「なぜ?」と好奇心を持つことが「やってみたい」「もっと知りたい」という意欲につながり、その意欲が行動(遊び)につながっていきます。その好奇心について私自身がもっと学びたいという思いが常にあり、ある本を読み始めました。『子どもは40000回質問する』という本です。内容は、教育でもビジネスでも、更には健康面や幸福度においても、好奇心は何よりも大切だというものです。この本を読んでいておもしろいと感じたのは「好奇心を持ち続ける7つの方法」が書かれた箇所です。

その方法として例えば「成功にあぐらをかかない」(1つの成功に満足せず、繰り返し考え続ける)、「なぜかと深く問う」(それは何か?ではなく、それはなぜか?を問い続ける)、「手を動かして考える」(実際にやってみることを大切にする)、「ティースプーンに問いかける」(なんでもないものにも面白さを見つけようとする)などが書かれているんですが、これって子どもの姿そのものだと思いませんか?一度上手くいったからといって満足して行動を止めてしまう子はいません。常に次のものを貪欲に求めて動き回っています。常に「どうして?」と疑問をぶつけてきます。道で見つけた石ころや木の枝を大事そうに持って帰るのは、大人には見えない特別な何かが見えているからでしょう。みなさんにも思い当たる子どもの姿があると思います。このことから考えると、“子ども自身から湧き出てくる行動を認めてあげること”さえできていれば、子どもの好奇心は育っていくと言っていいんじゃないかと思えてきます。

雨水をためる樽の周りで数人の子がカエルを探していました。前日にこの場所でカエルを見つけたからまた探しに来たそうです。一度捕まえても飽きることなく何度も繰り返す姿です。カエルを捕まえた後も、おそらく他の生き物に対しても同じように強い興味を向け続けるでしょう。図鑑を見ただけで満足することもありません。実際に自分の手で捕まえ、その対象を観察することを求めます。その対象の不思議さを「なぜ?」と問い続けることも想像できます。そして樽の下にはちょっとしたすき間があるんですが、どうやらそこがカエルの隠れる場所になっていると考えたようでした。もしかするとカエルの家のようなものを想像していたかもしれません。家があるとしたら少し場所が違うのですが、想像を膨らませてすき間を夢中になって調べる姿を見ていて、これこそ好奇心を持ち続ける行動だと嬉しくなりました。



2016年6月3日

No.447 実行から観察、そして検討へ




今回は園庭にあるツリーハウスのこととその課題について書くことにします。見るとすぐにわかりますが、このツリーハウスは登り口が1カ所しかありません。ツリーハウスの中に登り棒が1本ついているだけで、他に登ることのできる場所はありません。つまり、上に登りたいと思ったら、まずはその登り棒をクリアする必要があります。登り棒を登るためには、棒を掴む、ぶら下がる、棒を足ではさみ体重を支える、手で体を引き上げるといった様々な力、それらを同時にこなす力が必要です。そんなことでまだ一部の子しかツリーハウスに上がることができていません。もっとたくさんの子が上で楽しめるようにすれば…と思われるかもしれませんが、事故防止のために必要なことと考えています。

ツリーハウスの床面までの高さは約180cm。これを安全に登るだけでなく、安全に降りることができなければいけません。だからこそ自分で登り切ることのできる力は、ここでは絶対に必要です。何かの助けを借りて簡単に登れてしまうとその高さや怖さをうまく認識できませんし、自分で降りることができない可能性は高くなります。楽しく安全に遊んでもらうために、このような高めのハードルを設けているという訳です。

そしてここからは課題となるのですが、できるだけ多くの子に登ってもらいたいし、多くの子に挑戦し力をつけてもらいたいので、登り棒のみでいいのか、登り口は1カ所でいいのかは、子どもたちの姿をよく観察して検討しなければいけないところです。そして、登りたい!という意欲をより強く持ってもらうために、登った先の楽しさを充実させることも検討が必要です。もちろん登れた達成感はあるでしょうし、高い場所から景色を眺めるという「陶酔性・めまい」の要素もあり、楽しさがないわけではありません。でも、子どもが遊びに熱中する要素には「回遊性・反復性」(気に入ったことを、飽きるまで繰り返し行えるようそのルートがあること。)もあり、この回遊性・反復性がこのツリーハウスには少し不足していると思っています。登ったら行き止まりではなく、そこから先に更に楽しめる要素があるとか、繰り返し登り降りすることで違った楽しみがあるとか、そんなことを考えていく必要もあると思っています。実行→観察→検討→実行…が保育園の考え方です。今後のツリーハウスの変化、そこでの子どもたちの遊びの変化、そしてウォータースライダーも始まった園庭全体の遊びの変化にも注目していてください。