2009年8月28日

No.108 子どもたちのリレーの取り組みから

来月には運動会が行われます。そのための取り組みが始まっているのですが、その取り組みを見るたびに子どもたちの成長を感じることができます。例えば先週のことですが、リレーをすることになり2つのグループに分かれてくじを引いて順番を決めました。そこまでは何でもないのですが、すごいのはその後です。保育者は何も声掛けをしていないのに、ぞう組さんを中心に「○○くんは1番だからここ。次は△△ちゃんがここに並んで。」といった感じに自分たちだけで並んで、後はスタートを待つだけという状態になっていました。簡単なことのようにも思えますが、次は何をすればいいのかが分かっているということでもありますし、みんなをまとめる力を子どもたちがつけてきているということでもあります。

また、リレーにはかなり興味をもっているようで、夕方などに子どもたちだけでリレーをしている姿も見かけます。ある日のことですが、スタートと同時にぞう組のCちゃんがコースを間違えて走ってしまいました。みんなはあわててCちゃんを止め、もう一度やり直すことになりました。今度は順調に進んでいたのですが、勝負が盛り上がってきた頃に今度はぞう組のYちゃんがコースを間違えました。「また止めるかな」と思って見ていたのですが、子どもたちは「あっ」と声を出しましたが、今度は誰も止めずにそのまま続行しました。私の勝手な推測ですが、「途中で止めてやり直しをすると、せっかくの盛り上がりが半減してしまう」といったことを考えたのではないかと思っています。本当のところは分かりませんが、子どもたちなりに「どうすればリレーを楽しめるか」を考えながら取り組んでいるのが伝わってくるシーンでした。

人間というものは基本的には自己中心的だと思うのですが、本当の意味で自己中心的であればあるほど、他人との関係を上手く保つことが必要になってくると思っています。自分が今よりもっと楽しみたい(自己中心)と思ったとき、1人で遊ぶより複数で遊んだ方が楽しみはより増していきます(他人との関係)。リレーという競技に興味を持ち、それがみんなで取り組まなければ楽しめないことが分かるからこそ、自分たちで順番どおりに並んで待ったり、自分が、そしてみんながより楽しめるように、ルールを柔軟に変更したりできるんだと思います。子ども集団がなければできない貴重な経験です。とてもいい姿を見せてもらいました。

2009年8月21日

No.107 ペット相談もなかなかおもしろい

先日の朝日新聞の「どらく」に、あるペットの相談が載っていました。興味深い内容だったのでここに載せてみます。「我が家に愛想のいい利口な柴犬がいます。この子に姉妹をつくろうと、1週間前に赤ちゃんの柴犬を迎え入れ、2、3日たったころで先住犬と子犬を一緒にしました。すると先住犬の様子がおかしくなってしまいました。部屋の端に寝転び、子犬に近づきません。私が仕事に行っている間に胃液を十数カ所にも吐き、その後食事もとりません。いつもはまったく吠えないのに、子犬に近づきわざわざ吠えることもあります。もう一度子犬と別にしたら以前のように戻りました。どうしたらよいでしょうか?」というものです。

回答としては、「赤ちゃんが家に来てまだ1週間。先住犬は今までの生活がガラっと変わってしまったことに、心と体がついていけていないのでしょう。飼い主が留守の間は、別にして、飼い主が一緒にいる時に、一緒にして、赤ちゃんをサークルに入れたままで、先住犬をなでてあげたり、抱っこしてあげたりして、たくさん「いい思い」をさせてあげてください。「赤ちゃんが来ても嫌なことは何もなかった」と思わせると同時に、「ママは赤ちゃんがいても、ちゃんと私をなでてくれたり抱っこしてくれたり今までどおりに接してくれるんだ」と安心させてあげることができます。一番に思うことは「愛犬同士の関係を左右するのは、ほとんどが飼い主さんの行動や心持ちである」ということです。」

そして、心構えとしてこう提案します。一つは「飼い主さんが『より頼れるリーダー』になる」こと、二つ目は「心配し過ぎない、あえて干渉しすぎないことも愛情」ということで、飼い主が心配して過度に声を掛けたり、気にしてしまったりすると「ああ、ママも心配なのね。私ってやっぱりかわいそうなんだ…」と余計状態が悪化したり、「こうやってご飯を食べないと、ママが声をかけてくれたり、構ってくれたりする」と勘違いして、余計ごはんを食べなくなって困らせたりと、先住犬が「赤ちゃん帰り」をしてしまうこともあります。群れのメンバーが増えたことは、決してかわいそうなことではなく、とても楽しいこと。いま、その楽しくなるまでのハードルを柴ちゃんは頑張って越えようとしている状態です。「赤ちゃんが来て楽しいね。ママもいろいろ頑張るから、一緒に協力してね」という気持ちで接してあげてください。赤ちゃんを意識して吠えてみたり、嫌がる素振りを見せたりすることもあるかもしれませんが「そんなことしてもしょうがないよ、これから赤ちゃんはずっとおうちにいるんだからね」くらいの気持ちであまり干渉せず、柴ちゃんのペースに合わせて接しさせてください。」 犬にも人間と同じようなところがあるんですね。

2009年8月11日

No.106 自然の力には抗えないけれど

全国各地で大雨、地震、そして台風と、自然の力をまざまざと見せつけられることが続いています。被害にあわれた方は大変な思いをしておられると思います。こうした知らせを聞くたびに、自然の力の前では人間はなんて無力なんだろうと、当たり前のことをあらためて気づかされます。

8月6日は広島、9日は長崎、それぞれの原爆の日が終わりました。15日は終戦記念日です。世界に目を向けると今でも戦争は行われていますが、現在の日本で戦争を自分のこととして考えることができるのは、もしかすると8月のこうした日だけになってしまっているのかもしれません。言うまでもなく、戦争は人が起こすものです。自然の力には抗えないけれど、人の力に対しては人の力で向き合い、動かし、変えていくことができるはずです。6日、9日、15日のそれぞれの日にどんな姿勢で向き合うのか。それを考えることが、私たち大人の大切な役割ではないかと思っています。

今年も保育所では広島の原爆の日に合わせて“ひろしまのピカ”という絵本を読みました。内容は皆さんもよく知っていると思いますが、7歳になるみいちゃんとその家族が広島で原爆の被害にあった話です。一瞬にして街を壊し、大勢の人の命を奪う破壊力、何気ない幸せを奪い、その後何十年も後遺症に苦しめられる恐怖…。原爆の作り出す罪深さを切々と描いている絵本です。「戦争」や「原爆」の意味を理解することは、子どもたちにはまだまだ難しいかもしれません。それでも子どもたちと一緒に戦争というテーマに触れ、戦争に対する考えや、そこで生じる感情を伝えていかなければいけないと思っています。

テレビでは戦争の悲惨さを伝えるドキュメント番組などがあります。そうしたもので事実をきちんと伝えることも大切です。それだけでなく“ひろしまのピカ”や“はだしのゲン”などのように、物語として伝えることも大切です。平和をテーマにした歌を聞くこともいいでしょうし、広島の原爆ドームを訪れるのもいいかもしれません。それぞれが訴えるものを持っていますし、響き方も違います。私自身戦争体験はありませんが、それでも、戦争のもたらす大きな悲しみを次の世代に途切れることなく伝えていかなければいけないと、強く思っています。