朝夕のお集まりのときに、しりとりや言葉遊びをすることがあります。例えば、その日に誕生日を迎えた子の名前を書いて、そこに使われている文字を使って子どもたちが違う言葉を作ったりします(「あいやまめぐみ」なら、「あめ」とか「あみ」とか)。これは、言葉がひとつひとつの音節から成っていることを、遊びの中で気づいていくという目的があります。「いぬ」は、「い」という音節と「ぬ」という音節が合わさった2音節の言葉、といった感じです。しりとりも、終わりの音節とはじめの音節を意識するのには格好な遊びです。このような遊びを生活の中に取り入れているのは、言葉を音節に分解してそれを文字に結び付けていくことが、文字を書くようになる前にできるようにならなければいけないからです。
江津東小学校の校長先生とお話をすることがよくあり、そのたびに保育所での保育のことを話したり小学校の考え方を聞かせてもらったりしています。その中でいつも校長先生が言われるのが「後伸びする力の重要性」についてです。早くできるようになることより、後で確実に身につくようになるための基礎の力が大事だということで、これは私も同じ考えです。例えば上に書いたように、文字を書く前に言葉の音節を分解できることが必要です。また、文字を書くためには自分の思い通りに鉛筆を動かさなければいけません。そのためには十分に絵を描いたり線遊びをしたりしておくことが大切です。そして、「あ」という字を見てそれと同じ形の字を書くためには、図形を見分ける力も必要です。そのためには間違い探しをしたり、「ミッケ」や「ウォーリーを探せ」のようなイメージしたものと同じ形を探したりする絵本での体験も意味があります。算数では、「同質の仲間を識別して選び出すこと」がスタートとしてとても大事です。おもちゃを片付ける場所には「○○の場所」「△△の場所」と分けて片付けるようにしてあり、子どもたちは毎日のように仲間を選び出す体験しています。また、「大きい小さい」「多い少ない」などの様々な大小の比較も算数では大切です。食事の際に「いっぱい、すこし」「おおい、すくない」と選ぶ体験や、砂場に穴を掘って「どっちが深い?」と比べることも、そこにつながります。
長々と書いてしまいましたが、保育所では当然個人差も大事にしながら、このような「後伸びする力」をつけるための体験を大事にします。1つずつ確実に、遊びや生活の中で楽しみながら体験することを、丁寧に支えていきます。
2009年2月27日
2009年2月20日
No.83 個人差を認める、相手と自分の違いを認める
今週の水曜日と木曜日の2日間でお会いした4人の方が、偶然にも同じことを話題に出されました。それは私が最近抱えているテーマにつながることだったので、ここで書いてみます(多分まとめきれませんが)。4人が話されたことは『男の脳と女の脳の違いについて』です。以前NHKスペシャル「シリーズ女と男」で女の脳と男の脳の違いについて取り上げているのを観られた方もいると思います。女の脳と男の脳はこんなに違う!というのを実験・研究したもので、その中でこんなおもしろいものがありました。
最近アメリカでは男の子のクラスと女の子のクラスに分けて授業するという学校が増えてきたそうです。日本も昔は分かれた授業を行っていました。例えば技術家庭などは、男の子は大工、女の子は料理や裁縫といった感じに「習うこと」を分けていました。でも今アメリカが行っているのは少し違っていて、「習うこと」ではなく「習うための手段」を分けているようです。どうやったらより授業の内容が身につくかということを調査して、男の子の学び方と女の子の学び方が違うということが分かってきたからです。じっと座って話を聞いていて身につくのは女の子だそうです。男の子は床に寝転がったりゴロゴロしたりと行儀が悪い方が身につくそうです。おもしろい結果ですね。その結果から考えると、「姿勢を正して話を聞きなさい」というのは女の子の理論で、男の子の理論でいくと「そんなきちんと座らないでゴロゴロして聞きなさい」と言った方がいいのかもしれません。
かなり極端な話になりましたが、当然ゴロゴロして人に迷惑をかけるのはいけません。何が言いたいかというと、こんな風に"違う"ということは知っておかなければいけないということです。そして、男と女が必ずそんな風に違うというわけではなく、最終的には個人差です。この『個人差』が今の私のテーマです。どんな個人差があるのか、またそれに対応するにはどうすればいいか。とても大きなテーマです。74人のあさりの子どもたちは、全員違っています。その全員の"違い"をどう理解して、どう関わっていけばいいか。まずは、子ども一人ひとりを自分とは違う存在と認めて、よく見ることから始まると思っています。自分の基準で見ないことが大切です。簡単そうに思えて実は難しい「相手を自分とは違う存在と認める」ことが、保育でも大人の社会でも、とても重要なことだと思っています。
最近アメリカでは男の子のクラスと女の子のクラスに分けて授業するという学校が増えてきたそうです。日本も昔は分かれた授業を行っていました。例えば技術家庭などは、男の子は大工、女の子は料理や裁縫といった感じに「習うこと」を分けていました。でも今アメリカが行っているのは少し違っていて、「習うこと」ではなく「習うための手段」を分けているようです。どうやったらより授業の内容が身につくかということを調査して、男の子の学び方と女の子の学び方が違うということが分かってきたからです。じっと座って話を聞いていて身につくのは女の子だそうです。男の子は床に寝転がったりゴロゴロしたりと行儀が悪い方が身につくそうです。おもしろい結果ですね。その結果から考えると、「姿勢を正して話を聞きなさい」というのは女の子の理論で、男の子の理論でいくと「そんなきちんと座らないでゴロゴロして聞きなさい」と言った方がいいのかもしれません。
かなり極端な話になりましたが、当然ゴロゴロして人に迷惑をかけるのはいけません。何が言いたいかというと、こんな風に"違う"ということは知っておかなければいけないということです。そして、男と女が必ずそんな風に違うというわけではなく、最終的には個人差です。この『個人差』が今の私のテーマです。どんな個人差があるのか、またそれに対応するにはどうすればいいか。とても大きなテーマです。74人のあさりの子どもたちは、全員違っています。その全員の"違い"をどう理解して、どう関わっていけばいいか。まずは、子ども一人ひとりを自分とは違う存在と認めて、よく見ることから始まると思っています。自分の基準で見ないことが大切です。簡単そうに思えて実は難しい「相手を自分とは違う存在と認める」ことが、保育でも大人の社会でも、とても重要なことだと思っています。
2009年2月6日
No.81 様々な立場を体験する
先週書いた移行の件ですが、今その移行が順調に進んできています。順調とはいっても課題はいろいろあるわけですが、それでも子どもたちは新しい生活の中で今までとは違った姿を見せてくれています。きりん・くま・ぱんだ組の子どもたちはこれから少しずつ新しい関係を作っていくのですが、この関係性を違う国の小学校などの取り組みから考えてみたいと思います。
オランダには「イエナプラン教育」という教育の1つのスタイルがあり、この実践が日本でも注目され、研究が行われたりもしています。このイエナプラン教育の実践からはいろいろと学ぶところも多く、機会があれば取り上げてみたいのですが、ここでは学級編成の特徴に触れてみます。オランダのイエナプラン校の学級編成は、マルチエイジグループが基本です。通常3つの年齢のグループ(4-6歳児グループ、6-9歳児グループ、9-12歳児グループ)から構成されます。子どもたちは、3年間を同じ教室の同じグループリーダーの下で年少・年中・年長の三つの立場を経験しながらすごし、それを繰り返しながら小学校を卒業するわけです。つまり、一人の子どもは、低学年グループの年少・年中・年長を経て、中学年グループの年少・年中・年長を経て、再び高学年グループの年少・年中・年長を経験することができます。こうすることによって年齢差による立場の違いを体験できます。様々な立場を経験することで自分を見つめるようになります。これをイエナプラン教育では、将来社会に出たときに相手の立場を理解して行動するための準備、と考えています。
子どもだけでなく私たち大人も、自分の立場があります。この立場を超えて相手を理解するのは実に難しいことだと感じています。日常の中で起こるトラブルは、立場の違いによる考え方のぶつかり合いによるものがほとんどといってもいいのではないかと思っています。お互いの立場を理解するためには共感する力が必要です。そして、愛したり、反省したり、感謝したりすることは共感する力がないとできません。またそれが相手のよさを見出す力の源泉であり、相手を信頼する力になっていきます。今の世の中、この共感する力が薄れてきているのではないかと、私は感じています。話が大きくなりましたが、きりん・くま・ぱんだ組の新しい関係を通しての様々な立場の体験が、相手の立場を理解する大切な力の基礎になって欲しい、そんなことを思いながら子どもたちの関わりを見ています。
オランダには「イエナプラン教育」という教育の1つのスタイルがあり、この実践が日本でも注目され、研究が行われたりもしています。このイエナプラン教育の実践からはいろいろと学ぶところも多く、機会があれば取り上げてみたいのですが、ここでは学級編成の特徴に触れてみます。オランダのイエナプラン校の学級編成は、マルチエイジグループが基本です。通常3つの年齢のグループ(4-6歳児グループ、6-9歳児グループ、9-12歳児グループ)から構成されます。子どもたちは、3年間を同じ教室の同じグループリーダーの下で年少・年中・年長の三つの立場を経験しながらすごし、それを繰り返しながら小学校を卒業するわけです。つまり、一人の子どもは、低学年グループの年少・年中・年長を経て、中学年グループの年少・年中・年長を経て、再び高学年グループの年少・年中・年長を経験することができます。こうすることによって年齢差による立場の違いを体験できます。様々な立場を経験することで自分を見つめるようになります。これをイエナプラン教育では、将来社会に出たときに相手の立場を理解して行動するための準備、と考えています。
子どもだけでなく私たち大人も、自分の立場があります。この立場を超えて相手を理解するのは実に難しいことだと感じています。日常の中で起こるトラブルは、立場の違いによる考え方のぶつかり合いによるものがほとんどといってもいいのではないかと思っています。お互いの立場を理解するためには共感する力が必要です。そして、愛したり、反省したり、感謝したりすることは共感する力がないとできません。またそれが相手のよさを見出す力の源泉であり、相手を信頼する力になっていきます。今の世の中、この共感する力が薄れてきているのではないかと、私は感じています。話が大きくなりましたが、きりん・くま・ぱんだ組の新しい関係を通しての様々な立場の体験が、相手の立場を理解する大切な力の基礎になって欲しい、そんなことを思いながら子どもたちの関わりを見ています。
登録:
投稿 (Atom)