2007年10月26日

No.17 全国学力・学習状況調査の結果から考えること

以前から気になっていたことが新聞で取り上げられていたので、今回はその話題からです。昨日の新聞で全国の小学6年生と中学3年生を対象にした全国学力・学習状況調査の結果が公表されていました。この調査は43年ぶりに実施されたとのことですが、OECD(経済協力開発機構)という機関が15歳の子どもたちを対象に実施した2003年のPISA(国際学力到達度調査)の結果と同じような問題が表れているようです。それは、日本の子どもたちは、暗記中心の「基礎知識」の問題は得意だが、応用問題とか実生活に役立つ「活用」問題は苦手だということです。

OECD(経済協力開発機構)は、EU諸国や北米、日本など先進諸国が加盟し、国際経済に関することを協議する国際機関です。それがなぜ15歳の子どもたちの学力調査を行っているのかというと、これからの社会を担う子どもたちにどのような能力が求められ、そのための教育がどうあるべきかを研究しているからです。OECDでは、これからの社会をリードする人材は、単に知識が豊かだとか計算が速いことではなく、読解力(問題の本質を突き止める力)や応用力(知識・理論などを総合的に考え、実際の問題に当てはめていく力)などの問題解決力が重要だとしています。

日本では、PISAの順位が何位からいくつ下がったとかで騒いでいましたが、問題の本質は順位ではなく、教育システムそのものが問われていたと思っています。両調査でも明らかなように、学習時間を増やして教える量を増やしても、考える力や問題解決能力はつかないと思えるのですが、なぜか日本の教育政策はそこが遅れたままになっているように思います。

そしてこのことは、実は就学前(0~6歳)の問題でもあります。そのことについてはまた次の機会に書こうと思いますが、いずれにしても日本の教育は、このままでは先進諸国からずいぶんと後れを取るのではないかと心配になります。

2007年10月19日

No.16 中学生の職場体験

10月30日(火)、31日(水)の2日間、職場体験として江東中学校の生徒4名をあさり保育所で受け入れることになりました。その活動のねらいは次のようなことだと中学校より説明を受けています。

『労働の尊さを味わい、進路実現をめざす意欲と展望をもつ一機会とする』
『職業や自己の適正について理解すると共に、社会人としての心構えやマナーを身につける』
『地域の人々の仕事や生き方を知りそれに学ぶ』

とても大切なことだと思います。社会に対して視野を少しずつ広げ、社会の一員としての自覚が育っていく時期に、このようなねらいでの職場体験をすることは、意味のあるものだと思います。しかし、せっかく保育所に来てもらうので、もう1つのねらいをそこに加えたいと思います。

そのねらいとは、「自分の育ちを振り返る」ということです。0歳児から5歳児まで、全ての段階の子どもたちを見てもらおうと思います。最近家庭や地域で0歳児から5歳児までの子どもと一度に触れ合う機会は、かなり少なくなってきていると思います。自分の育ってきた歩みを実際に見て感じたり触れて感じたりすることは、今の自分を確認することにもつながりますし、「育てられた」自分から「育てる」自分になっていくという人間の根源的に重要な営みを学ぶためにも、非常に意味のあるものだと考えます。そのようなことをいつでも体験できる保育所には、小学生や中学生に対しても育ちの支援を行うことを、今後はますます求められてくるだろうと感じています。子どもの育ちを縦のつながりで考えたとき、小中学校などとの「縦の連携」は大切なことです。

当然中学生との触れ合いは、子どもたちにとっても貴重な体験となります。中学生のことを、いつも関わっている保育士より"近く"に感じる子どももいるかもしれませんし、逆に"遠く"感じる子どももいるかもしれません。中学生とどのように接し、どのようなことを感じるか。子どもたちの心の動きを見てみたいと思います。

2007年10月12日

No.15 子は親の鏡

今回は「子どもが育つ魔法の言葉」(ドロシー・ロー・ノルト著)の中の言葉を紹介したいと思います。有名な育児についての本なのでご存知の方もいるとは思いますが、あえて紹介させてもらいます。子どもに対してどう接していいか分からないという悩みが非常に多くなり、それが大きな問題を起こして頻繁に報道されている現状を考えると、ここに書かれている言葉を今こそ大切にしなければいけないと思います。この本は保育所に1冊だけあります。貸し出しもしますので、興味をもたれた方は声をかけてください。

『子は親の鏡』

・けなされて育つと、子どもは人をけなすようになる。
・とげとげした家庭で育つと、子どもは乱暴になる。
・不安な気持ちで育てると、子どもは不安になる。
・「かわいそうな子だ」といって育てると、子どもは惨めな気持ちになる。
・子どもを馬鹿にすると、引っ込み思案な子になる。
・親が他人を羨んでばかりいると、子どもも人を羨むようになる。
・叱りつけてばかりいると、子どもは「自分は悪い子なんだ」と思ってしまう。
・励ましてあげれば、子どもは自信を持つようになる。
・広い心で接すれば、キレる子にならない。
・誉めてあげれば、子どもは明るい子に育つ。
・愛してあげれば、子どもは人を愛することを学ぶ。
・認めてあげれば、子どもは自分が好きになる。
・見つめてあげれば、子どもは頑張り屋になる。
・分かち合うことを教えれば、子どもは思いやりを学ぶ。
・親が正直であれば、子どもは正直であることの大切さを知る。
・子どもに公平であれば、子どもは正義感のある子に育つ。
・やさしく思いやりを持って育てれば、子どもはやさしい子に育つ。
・守ってあげれば、子どもは強い子に育つ。
・和気あいあいとした家庭で育てば、子どもはこの世の中はいいところだと思えるようになる。

2007年10月5日

No.14 りす組の食事

現在あさり保育所には0歳から6歳まで様々な年齢の子が全部で75名いて、様々な生活が繰り広げられています。その中の一番小さなりす組(0歳児)には今8名の子どもがいます。このりす組は年度途中での入所が多いクラスで、今年度のスタート時は3名でしたが、今月中には9名になる予定です。今回はこのりす組の食事の特徴(特にハイテーブルとハイチェアー)について少し触れてみようと思います。

あさり保育所では「楽しく食事をする」ことを基本としています。これはどの年齢でも変わりません。ですから、どのクラスもできる限り保育士も一緒に食事をするようにしています。そしてりす組では、子どもが自発的に食べ物を手にして口に運ぶことを促す食事の方法を大切にしているので、床には食べ物がこぼれ落ちてかなり汚れてしまいます。本当は低い椅子でしっかりと安定して座れる方がいいのですが、床に落ちた食べ物に触れながらよりも、落ちたものが気にならないようにハイテーブルとハイチェアーを使うことにしました。

さらに、自発的に食事をするためには、テーブルと口元の距離が適切かどうかということも大切です。そのため使っているハイチェアーは高さが自由に変えられるようになっています。また安定して座れるようにおしりの大きさに合わせたり、ひざからかかとまでの高さも調整できます。これらの距離を一人ひとりに合わせて様々に調整できます。椅子の宣伝みたいになりましたが、実際にこの机と椅子で子どもたちの食事もスムーズに進んでいるようです。

食事も次の段階では「1人で上手に食べること」「気持ちよく食べること」が課題になってきて、机とイスも低いものに変わります。当然まだたくさんの食べこぼしがありますが、それを「不快」と感じることで、気持ちよく食べようという意欲につながっていきます。次の段階の食事に対しての考え方でもあります。 全ての子にとって食事の時間の学びが多くなるためには、まだまだ見直す点はあります。りす組以外の食事についてもいつか触れたいと思います。りす組のハイテーブルとハイチェアーをまだ見ておられない方は、子どもたちの楽しい食事風景を想像しながら、ぜひ一度見ていただきたいと思います。