2008年6月13日

No.49 子どもが『立つ』ために必要なこと

りす組のSくんが5月から歩き始めています。子どもたちの成長はどれもうれしいことばかりですが、中でも立ち上がって歩くという成長は、誰もが特別な思い出になっていると思います。赤ちゃんは身の回りの物に興味を持ち、それを取るためにハイハイをするようになります。しかもかなりのスピードで移動できるようになります。それなのに何故、わざわざ時間がかかって大変な『立つ』『歩く』という行為を身につけようとするのか、私は疑問に思っていました。そのことについて教わったことがあるので、少し書いてみます。

これは遺伝子の働きによるもので、人間の不思議なところだそうです。遺伝子はハイハイのスピードの限界を知っているため、今はハイハイの方がより速く進めるけど、わざわざ立ち上がり、歩くという大変なことを始めようとするわけです。そして物を速く取りに行くのと同時に、危険から逃げることも必要なります。小さいうちは親に抱いて逃げてもらえるので、すぐに歩かなくてもいいのですが、体が大きくなり重くなってきて「そろそろ親は抱っこして逃げてくれないだろう」と思うと、「そろそろ立たなきゃ」と思うようになるのも遺伝子の働きだそうです。下の子が生まれることも『立つ』きっかけになるようです。本当に不思議な働きですね。(それと違って馬などは、生まれたときから親は抱っこして逃げてくれないので、すぐに立たなければいけないのです。)

でも生物にとって、立ち上がりは一番敵に襲われやすく危険の多い時期です。そのときにあえて立ち上がるのは何故かというと、「でも、いざというときには抱っこしてくれるだろう」という安心感があるからです。安心感がなければ立とうとはしません。そう考えると、大人がすべきことは抱っこすることでもなく、立ち上がることを手伝うことでもなく、『いつでも危険だったら抱っこしてもらえる』という確信を子どもに持たせることです。新しいことや次の発達の課題に対して、子どもが自分から取り組むためには何が必要かというと、『困ったらいつでも助けてくれる』という確信です。この確信を持たせる関係が信頼関係、愛着関係なんです。私たちは、Sくんが更にしっかり歩いていけるように、また全ての子どもに対しても、「困ったらいつでも助けてあげるから、興味を持ったことに挑戦してごらん」というサインを送ってあげることを大切にします。皆さんもお子さんにこのサインをしっかり送ってあげてほしいと思います。

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