2008年9月19日

No.63 子どもは何のために力を身につけるのか②

前回は、学校で習い身につける力が生活や社会で生かされていないのではないかということを、奈良女子大の浜田教授のお話を通して書きました。これは学校だけの問題ではなく、乳幼児期の子どもに関わる私たちも丁寧に考える必要のあることだと思っています。今回はそのことについて書いてみます。

学校だけでなく、家庭でも保育所でも、子どもたちは日々いろんな知識をつけ、いろんな力を身につけています。例えば言葉を話す力が身につけば、それを使ってコミュニケーションの世界が広がり多くの人と関わりを持てるようになります。そのように身につけた力を使い、世界が広がることをうれしいと思い、また次の力を身につける意欲につながっていきます。このように膨大な力を身につけていくわけですが、何のため?ということをあらためて考えてみると、やはり生活に使うため、社会に出たときに使うためです。

子どもが育っていく発達していくということは力を身につけていくことではありますが、そのこと自体が目的ではなく「社会で自分の力を発揮しながら生きること」が目的で、そのために力を使えることが大切だということを忘れてはいけないと思います。子どもたちが社会に出たときどんな力が必要になるかを十分に考え、将来どうあるべきかを見通して子どもたちに関わっていくことを、今の時代は特に求められていると思っています。

私たちは人と関わりながら生きています。決して1人では生きていけません。人との関係を作っていくためには会話が上手になるだけではなく、他人がうれしいと感じることで自分もうれしいと感じることも大切です。また社会ではいろんな問題がいつ起きるかわかりません。決して思い通りにいくことばかりではありません。そんな状況を乗り越えていくためには、今持っている力を工夫しながら使い、何とかやりくりすることも必要になります。そうした力をつけていく体験を用意していくことは、私たちの大切な役割です。私たちはつい先を見ないで目の前のものを見ようとします。今持っている力で子どもを評価してしまいがちです。しかし、見なければいけないのはその先にあるものです。今目の前にいる子どもに対して、将来のあるべき姿を見通して、現在をよりよく生きるために援助することを、私たちはいつも考えなければいけないと思っています。

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