医師の鎌田實さんが著書「いいかげんがいい」の中で、SMAPの木村拓哉さんの母・木村まさ子さんの子育てについて、対談の中で感じたことを書いておられます。舞台裏ですれ違ったときの木村拓哉さんのまっとうな身のこなしやきちんとした礼儀作法に感心し、それがどのように身についていったか、鎌田さんはその子育てについて興味を持ち、まさ子さんとの対談が実現したようです。そこには「体験」することの大切さについて書かれていたので、その一部を紹介します。
『三歳でナイフを持たせてリンゴを切らせた。小学校にあがる前から、火は危ないものときちんと伝えたうえで、ガスコンロの点火の仕方を教えている。コンロが使えるようになると、一人でホットケーキをつくるようになった。ハンバーグをつくるとき、こねるのは拓哉君の仕事。餃子も彼に包ませたという。できそこないの餃子を、つくった本人の拓哉君が食べようとすると、「それ、お母さんが食べたい」と言って食べ、「おいしいね」とほめてあげる。そうか。そのときすでに、幼い拓哉君には自分が失敗した餃子を自分で責任をとって食べようとする心が育っていたんだ。その心にちゃんと気づきながら、お母さんは自分が食べたいと言って引き受ける。これって、なにげないようでじつはすごいんじゃないか。』
『お米も子どもたちにといでもらった。さりげなく、「水少ないかもね」などとアドバイスはするが、最終判断はいつも子どもたちにまかせたという。自身の経験から「いい加減」を知ることが必要だと思ったから。炊きあがったご飯に結果は出る。なんでも自分でさせる。自分ですることによって細かな感覚を覚えていく。ご飯がおいしく炊けたときの感動も、二人の息子は味わったのだろう。そうか、お米の水加減もお風呂の湯加減も、言葉では教えられない。いい加減な感覚なのだ。本では学べない大切な感覚。』
子どもたちは、自分のしたことに責任を持つことを体験から学んでいきます。生活していく力(大げさな言い方をすれば生きていく力)も、やはり体験から学んでいきます。本で学ぶのでも、大人が言って聞かせることで身につけるのでもないと思います。人や環境との主体的な関わりの中で身につける力、様々な体験を通して身につける力を、大切に育んでいきたいと思います。
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