今年最後の「ひとりごと」です。突然ですが、俳優のトム・クルーズはLD(学習障害)で読字障害をもっているそうです。台本が手渡されるとスタッフにそれを読んでもらい、自分のセリフだけではなく、全部のセリフを暗記して撮影にのぞんでいるようです。字は読めないけれど、彼には豊かな演技力があり、それを活かすことで多くの人に感動を与えています。また発明家のエジソンは非常に好奇心が旺盛で、「なぜ物は燃えるのか」を知りたくてワラを燃やしていたら納屋に延焼してしまったという逸話もあります。これは彼がLD(学習障害)やADHD(注意欠陥多動性障害)であったからではないかといわれています。でもそんな彼をよく理解し徹底的に好奇心を満たしてくれた母親がいたからこそ、自分の好奇心が科学の根本であることに気づくことができ、人類にとって貴重な発明(電球など)につながっていきます。
エジソンのことをもう少し書くと、彼の伝記の中で有名なのが小学校を退学させられたことです。入学してからわずか3カ月で放校処分になるほど先生の手を煩わせたようです。たとえば、「1+1=2」を教師が粘土を例にして教えていた時、エジソンが「1個の粘土と1個の粘土を合わせても、大きな1個の粘土になるだけなのになぜ2個になるのか」と聞いて、教師がエジソンを「腐れ脳ミソ」と罵倒したというエピソードが残っています。母親がエジソンの得意なところを伸ばそうとしていなかったらどうなっていただろうと思います。
私たちは普段子どもたちと接していて、子どもたちは様々だということをいつも感じます。子どもだけでなく大人も含めて、人はそれぞれ違っていて、社会に対してそれぞれの役割を持っています。一人ひとりの良いところや得意なところを見つけ、それを伸ばしていくことが、その子自身が自分の役割を見つけていくことにつながると思うからです。私たちは保育の中でそんな考え方を大切にしています。人はそれぞれ違っていて様々だということを認め、その上で社会を作っていくために自分の役割を見つけ、それをどう発揮していくかを考えることの大切さに気づける人になってもらいたい、そんな願いを子どもたちに対して持っています。そのためには、まず私たちもそんな思いを強くもたなければいけません。大きなテーマですが、「共生」と「貢献」ということについて、まだまだ深めていきたいと思います。
今年も1年間ありがとうございました。来年もよろしくお願いします。
2009年12月25日
2009年12月18日
No.123 地域の文化の伝承
先週の土曜日は、祖父母の皆さんをお招きして「もちつき会」を行いました。あさり保育所では、それぞれの行事の目的を、意味を整理して取り組んでいます。今回の「もちつき」という行事は、行事の4つの目的「保育を深める」「子どもの発達や保育内容を保護者に伝える」「親子の触れ合いと遊びの提案」「地域の文化の伝承・地域理解」の内の1つである、「地域の文化の伝承」です。
当日はそのねらい通り、もちつきを通して文化を感じることができました。ついた餅が固まらないように部屋の温度を気遣うところから始まり、臼に入れたもち米をまず杵でしっかりこねるところ。いよいよつく段階になると、つき手と手返しの絶妙なタイミングでの動きなど。いろんな技や知恵を間近で見ながら子どもたちはどんなことを感じているんだろうと、子どもたちの表情を見ながら考えていました。また、子どもたちは実際に餅をついてみて、大人の力強さを感じたでしょうし、杵にくっつく餅の粘っこさも体感したと思います。祖父母を中心に進んでいく作業の一つ一つが、子どもたちにとって賑やかで楽しい体験になったと思います。
私は、地域の文化を含めたいろいろなことを、子どもたちに伝承することができているだろうかと思うことがあります。同時に、自分自身が子どもたちに伝えるべきことを理解しているだろうかと思うことがあります。欧米から新しい文化が入ってきて、それが素晴らしい世界かのように見えていたこともありました。その文化に浸り、その文化を取り入れることが、時代の先端を行くかのように思っていたこともありました。残すことよりも、壊すこと、変えることに価値を感じていたこともあります。もちろん、古くからの悪い慣習は変える必要があります。新しい時代を作っていかなければなりません。しかしその前に、過去からの文化を検証し、その意味を考えなければいけないと思います。
21年度は「自然」をテーマにし、様々な活動に取り組んでいます(今日行われた「なかよし会」はリサイクルに焦点をあて、身近なものを使った遊びをいろいろと考えました)。22年度のテーマの候補の1つは「地域を知る」です。あさり保育所のある浅利町や江津市は、どんな歴史があり、どんな特徴があり、どんな文化があるのか。そんなことを体験を通して子どもたちと一緒に考える、そんな22年度になるかもしれません。
当日はそのねらい通り、もちつきを通して文化を感じることができました。ついた餅が固まらないように部屋の温度を気遣うところから始まり、臼に入れたもち米をまず杵でしっかりこねるところ。いよいよつく段階になると、つき手と手返しの絶妙なタイミングでの動きなど。いろんな技や知恵を間近で見ながら子どもたちはどんなことを感じているんだろうと、子どもたちの表情を見ながら考えていました。また、子どもたちは実際に餅をついてみて、大人の力強さを感じたでしょうし、杵にくっつく餅の粘っこさも体感したと思います。祖父母を中心に進んでいく作業の一つ一つが、子どもたちにとって賑やかで楽しい体験になったと思います。
私は、地域の文化を含めたいろいろなことを、子どもたちに伝承することができているだろうかと思うことがあります。同時に、自分自身が子どもたちに伝えるべきことを理解しているだろうかと思うことがあります。欧米から新しい文化が入ってきて、それが素晴らしい世界かのように見えていたこともありました。その文化に浸り、その文化を取り入れることが、時代の先端を行くかのように思っていたこともありました。残すことよりも、壊すこと、変えることに価値を感じていたこともあります。もちろん、古くからの悪い慣習は変える必要があります。新しい時代を作っていかなければなりません。しかしその前に、過去からの文化を検証し、その意味を考えなければいけないと思います。
21年度は「自然」をテーマにし、様々な活動に取り組んでいます(今日行われた「なかよし会」はリサイクルに焦点をあて、身近なものを使った遊びをいろいろと考えました)。22年度のテーマの候補の1つは「地域を知る」です。あさり保育所のある浅利町や江津市は、どんな歴史があり、どんな特徴があり、どんな文化があるのか。そんなことを体験を通して子どもたちと一緒に考える、そんな22年度になるかもしれません。
2009年12月11日
No.122 少し早いですが移行の話をします
ちょっと気が早いかもしれませんが、来年度に向けた移行のことについて書いてみようと思います。本格的に動き出すのは1月以降になりますが、話し合いは既に始まっています。例年は年明けにこの話題を取り上げるのですが、どのように進んでいくかをつかんだ上で今後の様子を見ていただきたい、という思いで書かせてもらいます。
子どもの発達は言うまでもなく連続性の中にあります。4月になったら急に次の段階へ、というわけではありません。しかし一般的には制度上、4月1日には年齢別のクラスを設けて一気に進級が行われます。月齢差や個人差があるのに一気に進級というのはどうなの?どうにかできないの?ということで、少しずつ移行していく方法を取り入れることにしています。
特徴的なのはぱんだ組(2歳児)です。2歳児クラスから3歳児クラスに変わる時は大きな変化があります。子どもたちに対しての保育士の人数も変わりますし、4歳・5歳と一緒の空間で生活をするようにもなります。そのために必要になる基本的生活習慣や社会性の基礎をしっかりと身につけることを、ぱんだ組では特に意識して保育を行っています。そして移行期に入ると、食事も3~5歳のランチルームで食べたり、3~5歳と活動する時間が少しずつ増えていきます。このように少しずつ移行していき、4月を迎えます。
そして、ぱんだ組の生活が3~5歳の空間に移ってくると、今度はぱんだ組の部屋がぞう組(5歳児)の主な活動スペースになります。「4月から小学生になる」という課題をもったぞう組は、その課題に向けた活動にも取り組み始めます。といっても小学校の勉強を先取りするわけではありません。先週取り上げたような、実体験(遊び)が中心の、後で伸びる力をつけることを目的としたものです。
このような徐々に移行していく中で、子どもたちは次の年度への見通しがつくようになります。その見通しは情緒の安定につながります。情緒の安定は子どもたちの自発的に活動につながります。自発的な活動は子どもたちにたくさんの学びをもたらします。そうした流れを保障するためにも、これから始まっていく移行を丁寧に行っていくわけですが、保護者のみなさんもこうした変化に注目していただきたいと思います。
子どもの発達は言うまでもなく連続性の中にあります。4月になったら急に次の段階へ、というわけではありません。しかし一般的には制度上、4月1日には年齢別のクラスを設けて一気に進級が行われます。月齢差や個人差があるのに一気に進級というのはどうなの?どうにかできないの?ということで、少しずつ移行していく方法を取り入れることにしています。
特徴的なのはぱんだ組(2歳児)です。2歳児クラスから3歳児クラスに変わる時は大きな変化があります。子どもたちに対しての保育士の人数も変わりますし、4歳・5歳と一緒の空間で生活をするようにもなります。そのために必要になる基本的生活習慣や社会性の基礎をしっかりと身につけることを、ぱんだ組では特に意識して保育を行っています。そして移行期に入ると、食事も3~5歳のランチルームで食べたり、3~5歳と活動する時間が少しずつ増えていきます。このように少しずつ移行していき、4月を迎えます。
そして、ぱんだ組の生活が3~5歳の空間に移ってくると、今度はぱんだ組の部屋がぞう組(5歳児)の主な活動スペースになります。「4月から小学生になる」という課題をもったぞう組は、その課題に向けた活動にも取り組み始めます。といっても小学校の勉強を先取りするわけではありません。先週取り上げたような、実体験(遊び)が中心の、後で伸びる力をつけることを目的としたものです。
このような徐々に移行していく中で、子どもたちは次の年度への見通しがつくようになります。その見通しは情緒の安定につながります。情緒の安定は子どもたちの自発的に活動につながります。自発的な活動は子どもたちにたくさんの学びをもたらします。そうした流れを保障するためにも、これから始まっていく移行を丁寧に行っていくわけですが、保護者のみなさんもこうした変化に注目していただきたいと思います。
2009年12月4日
No.121 就学前の幼児期にどんな体験が必要か①
今年の3月の話ですが、ある自治体が小学校教育を引き下げて、5歳の幼児に行うと発表したという報道がありました。例として出ていたのは、算数の前倒しとして「数字を幾つまで数えられるか」や、足し算・引き算を教えるといった内容です。こんなおかしなことを誰が考えるんだろうと思っていたのですが、小学校へ進んでいく子どもたちにとって、就学前の幼児期にどんな体験が必要なのかをきちんとおさえておく必要があるので、ここで取り上げてみます。
例えば算数。算数では足し算や引き算などの計算を行いますが、早くから数字を言えるようになったり計算に取り組めばいいのではなく、「集合」や「量」が数の背後にあることの感覚や知識を、子ども自らが経験することがまずはとても大切です。例えば、赤い色のブロックをしまうということを保育所では行っていますが、これは片づけのためだけではなく、集まりを感じさせる、集合の概念をつけるという意味もあります。ブロックの中の赤いブロックを選ぶ、「同質の仲間を選別して選びだす」ということが集合を知ることになります。これが数の背景にあることを知るのが大事で、これが欠けると計算が難しくなります。例えば「チューリップが3本、バラが3本あります。合わせて何本ですか?」という問題があるとします。チューリップとバラを一緒にして数えるという概念は、花という総合的な集合概念がなければできません。「庭には花が何本ありますか?」という問題は、花という概念がなければ分かりません。数を数えるとき、この集合の概念はすごく大切です。
そうした集合を知ることの次の段階には、集めた2つの仲間はどちらが多いか、あるいは同じか、と比べることが出てきます。保育所の生活の中でもそんな状況がよくあります。例えば子どもに画用紙を配ると、「足りない」「ちょうど足りた」「余った」の3様の結果が生じます。ぞう組さんとくま組さんが並んで手をつないだら、くま組さんが余ってしまいます。そんなことを数多く体験することが大切です。食事のときに「もっと」「多い」「少ない」と食べたい量を考えて伝える体験も大切です。こうしたことが、数の概念を理解するために幼児期に必要なことです。就学前の数学教育があるとしたら、こんなことを日常の中で体験することだと言ってもいいくらいです。
就学前に必要な体験について、私たちもまだまだ議論不足ではありますが、整理する意味も含めて、機会をみつけて続きを書いていく予定です。
例えば算数。算数では足し算や引き算などの計算を行いますが、早くから数字を言えるようになったり計算に取り組めばいいのではなく、「集合」や「量」が数の背後にあることの感覚や知識を、子ども自らが経験することがまずはとても大切です。例えば、赤い色のブロックをしまうということを保育所では行っていますが、これは片づけのためだけではなく、集まりを感じさせる、集合の概念をつけるという意味もあります。ブロックの中の赤いブロックを選ぶ、「同質の仲間を選別して選びだす」ということが集合を知ることになります。これが数の背景にあることを知るのが大事で、これが欠けると計算が難しくなります。例えば「チューリップが3本、バラが3本あります。合わせて何本ですか?」という問題があるとします。チューリップとバラを一緒にして数えるという概念は、花という総合的な集合概念がなければできません。「庭には花が何本ありますか?」という問題は、花という概念がなければ分かりません。数を数えるとき、この集合の概念はすごく大切です。
そうした集合を知ることの次の段階には、集めた2つの仲間はどちらが多いか、あるいは同じか、と比べることが出てきます。保育所の生活の中でもそんな状況がよくあります。例えば子どもに画用紙を配ると、「足りない」「ちょうど足りた」「余った」の3様の結果が生じます。ぞう組さんとくま組さんが並んで手をつないだら、くま組さんが余ってしまいます。そんなことを数多く体験することが大切です。食事のときに「もっと」「多い」「少ない」と食べたい量を考えて伝える体験も大切です。こうしたことが、数の概念を理解するために幼児期に必要なことです。就学前の数学教育があるとしたら、こんなことを日常の中で体験することだと言ってもいいくらいです。
就学前に必要な体験について、私たちもまだまだ議論不足ではありますが、整理する意味も含めて、機会をみつけて続きを書いていく予定です。
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