2010年2月12日

No.130 危険回避について

最近は少子社会になったために、子どもが多かった時代に比べてわが子に目が届くようになり、手をかけられるようになりました。しかし目が届くあまりに危険や大変さに大人が先に気がつくようになり、子ども自らその状況から脱しようとする前に、大人がその状況から子どもを救いだしてしまうことが多いようです。そんな中で、スイスの幼稚園のおやつの時間の光景で興味深いことが報告されていたので紹介します。

「スイスでは、おやつは日本のように大人が準備をするのではなく、2人の当番の子どもたちがおやつの準備をします。Aくんは皆のためにリンゴを切る係です。小さなナイフを使ってリンゴを切り始めました。しかし今一つ上手に切れません。担任の先生は、お手本にリンゴをこういう風に切るといいと、ほんの2切れか3切れ切ってみせました。Aくんは先生から教えられたように、リンゴを切る作業を続けました。日本ではどうでしょうか。子どもが手にけがをしたらどうしよう。他の子どもたちを傷つけたらどうしようと考えてしまうかもしれません。このことを担任の先生は次のように説明しました。子どもに危険であるからナイフを持たせないのではなくて、ナイフの危険を認識させつついかに危険を回避するかを、実際にナイフを使いながら学ばせるのがよい。勿論ナイフを使わせることについて、保護者に説明をして同意を得ているとのことでした。こうした子どもたちの自立への訓練がごく自然に行われているのです。」

子どもの自立を考えたとき、「子どもが自分の力で生きていくスキルを学ばせる」ことは当然重要なことです。子どもの周りは危険なもので満ち溢れています。それは環境だけでなく、スイスの例のようなナイフなどの道具にもあります。また、危険な生物や菌などもあります。それらすべてを取り除くことはできませんし、いつまでも付き添ってあげることはできません。だからこそ子どもの危険回避能力を高め、子どもが自ら考え、どう対応すればいいかの答えを見つけていくことが必要になります。子ども一人ひとりの発達を見極め、自分でできるところは手出しをせず、求めてきたときにはすぐに手を差し出すことのできる「見守り」の中で、そして保護者の皆さんとの共通理解のもとで、子どもたちの自立のために保育所では何ができるだろうか。何をすべきだろうか。あらためてそんなことを考えて始めています。

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