2010年5月21日

No.144 個性の尊重とは

あさり保育所では「個性の尊重」とか「個性の重視」ということを大切にしているのですが、たまに外部の方からこんなことを質問されることがあります。「個性を尊重することは、子どもを放任することになりませんか?」とか「個性を重視するというのは、子どもの思いのままに行動させることですか?」といった内容です。こういうことを聞くたびに、ずいぶん勘違いがあるなあと思ってしまいます。今回は、この「個性」や「個性の尊重」について、書いてみようと思います。

個性とは、その名の通り「個人的な特性」のことを指します。人には様々な個人差があります。その個人差には大きく二通りあるような気がします。一つは、個々によって違う発達のスピードです。たとえば、いつ歩けるようになるか、いつおむつが取れるようになるかなどです。しかし、この個人差は広い意味では個性を形成するうえで影響を及ぼすことはありますが、それがそのまま個性にはなっていきません。それは、質の個人差ではないからです。それに対してもう一つの個人差が、質の個人差です。たとえば、「絵が得意」とか「何かを作るのが得意」とかいうもので、これはそれぞれの質の個人差なので個性になっていきます。この二つの個人差は、それを援助し尊重されなければなりません。それは、子どもの発達を助長することが大人の役目であり、一方、各自の特性を生かすことが社会を形成するうえで大切だからです。

先日の保護者講演会で来ていただいた藤森平司先生は、「社会は様々な職業や役割で成り立っています。一人ひとりが持っている様々な興味や得意なことを生かして1つの社会をつくることが、人間として意味のあることです。一つの価値観を押し付けるのではなく、集団の中で様々な個を育むことが、これからの子育てや乳幼児教育には大切なことです。」と言っておられました。

男女にしても、年齢にしても、子ども像にしても、私たちはずいぶん思い込まされているものが多くあります。そうした思い込みや先入観を持つことなく子どもたちと向きあい、子どもたち一人ひとりが本当の自分を見つけていけるようなお手伝いをしていきたいと思います。それが「個性を尊重すること」だと、私たちは思っています。

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