2010年12月3日

No.171 お花は赤い

ちっちゃな坊やが初めて学校へ行った。
坊やは一枚の紙とクレヨンをもらった。
坊やはどんどん色を塗った。
だっていろんな色がとてもきれいだったから。
でも先生は言いました「キミキミ、そこで何をしているの」
「ちっちゃな花の絵を描いているんです、先生」
先生は言いました。
「花は赤くて空は青い。
そのことを考えておかなくっちゃ。
あなたはここでたった一人じゃないのよ。
みんながあなたのようにしたら、
どういうことになるかしら。
だからあなたに言います。
お花は赤いのよ、坊や。
葉っぱは緑。
他の色に見えても意味がないわ。
だから、どうしてほかの色にしてしまうの。」
それでも坊やは言いました。
「でもね先生、こんなにたくさんの色の花があるんだよ。
こんなにたくさんの色の葉っぱも、ほらいっぱい。
あまりにもたくさんで名前がつけられないくらい。
僕にはそれがみんな見えるのにな。」
でも先生は言いました。
「キミはあまのじゃくな子ね。
私が言うのを繰り返しなさい。
お花は赤よ、葉っぱは緑。
ほかの色に見えても何の意味もないの。
だからどうしてほかの事を考えたりするの?」
(この後廊下に立たされることになった坊やは、
怖くなったため先生に謝って教室に入り、
花は赤、葉っぱは緑に塗りました。
でもつまらなくてつまらなくて仕方がなかったのです。)
そうして2年生になりました。
すると先生は前と変わりました。
彼女は新しくていい先生。
そうして彼女は優しく言いました。
「あなたの好きに絵を描きなさい。
紙もクレヨンもいくらでも使って好きなだけお絵描きしなさい。」と。
でも坊やは花は赤、葉っぱは緑で描いて、
一列に並べて。
そして先生が「どうして」と尋ねると、
坊やはまたクレヨンを取ってこういいました。
「お花は赤で葉っぱは緑。
他の色にする意味はまるでありません。
どうして他のことをする意味があるというのでしょう・・・。」

この文章は、オランダの「お花は赤い」という歌の歌詞です。子ども一人ひとりの個性を認めず、一斉に画一的に一つの価値観を子どもたちに押しつけることの怖さを、この文章を読んだときに強く感じました。「たった一つの存在であることを無視する」「人権を蔑ろにする」という行為があるとしたら、そのことに対して、私たち大人は厳しい態度をとらなければいけないと思っています。この歌を紹介しようと思ったのは、発表会での役員さんの出し物で描かれた「いろんな色で描かれた子どもの笑顔」を見ていて、ふとこの歌が頭に浮かんできたからです。「一人ひとりがかけがえのない存在」であることを決して忘れてはいけないと、再確認させてもらえた発表会でもありました。

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