2016年5月13日

No.444 昔ばなしはおもしろい

保育というのはおもしろいもので、身の周りのありとあらゆるモノを保育に活かすことができます。旅行先で見つけたモノからヒントを得ることもありますし、食事のために訪れたお店の庭や装飾などからヒントが得られることもあります。常に「保育に活かせないかなあ」と思いながらモノを見たり人の話を聞いたりしているため、頭の中で整理がついていないものがたくさんあり、形にできていないことが多いのは反省しなければいけないのですが…。今回は最近聞いた「昔ばなし」の話から考えていることについて書きます。

小澤俊夫さんをご存じでしょうか?小澤昔ばなし研究所を設立された方で、指揮者の小澤征爾さんのお兄さんです。ある保育園の園長先生から「小澤俊夫さんの昔ばなしの解説がおもしろいから、ラジオを聞いてみたら」と勧められたので聞いてみると、これがかなりおもしろいんです。いろんな国の昔ばなしを紹介していたり、昔ばなしは伝説や神話とはどう違うかを解説していたりと、聞いたことのない話ばかりで引き込まれてしまいました。その中で、昔ばなしの特徴についてこんな風に解説されていました。

昔ばなしというのは「むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。ある日のこと…」と始まります。ということは、時代も場所も人物も不特定に語っていると言えます。それが何を意味するかと言うと、「これからお話しする話は本当の話じゃないよ。信じないでくれよ。」と宣言しているわけです。

昔ばなしは口伝えの話です。紙に書かれた話と違い、話がこんがらがってしまっても前のページに戻るようなことはできません。読み返しがきかない文芸ということは、シンプルでクリアな文章でなければいけないわけです。例えば「暗い森がありました。そこへ入っていきました。」といった文章です。森にはカシの木や松の木があってといった説明はなく、シンプルに「暗い森」だけです。

これを聞いただけでなんだかワクワクしてきませんか?ウソの話が世界中で遙か昔から語り継がれてきたという事実。昔ばなしが持つ力の大きさを感じます。シンプルでクリアな文章が昔ばなしの特徴だとすると、私たちが知っている昔ばなしは結構脚色されているのかもしれません。どれだけシンプルかによって、子どもが話を聞いたときの響き方も違ってしまう気もします。今子どもたちの周りにある昔ばなしを、一度点検してみる必要もありそうです。みなさんも昔ばなしに注目してみてはいかがでしょうか。

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