2008年8月29日

No.60 一人ひとりの違いを認め合うこと

今年の運動会も子どもたちが「選ぶ」ことを取り入れた種目を計画しています。得意なことやできるようになったことを子どもたちが選び、自分で選ぶことによって主体的に取り組む姿を保護者の皆さんに見てもらいたいと思っています。子どもは一人ひとり違います。それは大人も同じです。一人ひとりの成長に違いはありますし、当然得意なことやできることも違っていて、私たちは普段からその違いを大切にするように保育をしています。

このことを考えるとき、『チームワーク』という言葉が頭に浮かびます。複数の人と共に活動するときチームワークが必要になりますが、"いいチームワーク"というのは、「あなたがAをするなら私もAをする」というのではなく(もちろんそれも大切なときはありますが)「あなたがAをするなら私はBをする」といった、個々の特性を生かしながら全体として1つの目的に向かって進んでいけることだと考えています。

子どもが得意なことに主体的に挑戦している姿に刺激を受けて、別の子も自分の得意なことに積極的に挑戦することがあります。「個」を出すということは一人ひとりが違ってくるということですが決してバラバラになることではなく、それが集団や活動を豊かにすることにもつながります。一人ひとり違っていて、それを認め合うことは当たり前のことだと考えられる風土を作っていきたいと思っています。このことは子ども社会だけでなく、社会全体にも今特に求められていることのような気がしています。

互いに支えあう社会をつくろうということで、他と同じようにすることを目指した「共同体」という言葉がありますが、今は異なったものが共に認め合う集まりという意味で『共異体』の社会が必要だと思います(共異体とは「共に生きる(共)、違いを認め合う(異)、社会を形成する(体)」という意味の造語です)。生き生きと個を発揮し、そのことを誰もが認め合う関係を、保育所時代に実体験として感じてもらいたいと思っています。運動会の話から飛躍しすぎた感じはありますが、保育所の日々の活動や行事を通して子どもたちに伝えていきたい大切なことと捉えていますので、ここで書かせてもらいました。

2008年8月22日

No.59 運動会の目的について

猛暑はつらいですが、急に涼しくなると何だか寂しさを感じたりもします。まだ夏が終わったわけではないでしょうが、プール遊びも終わり、子どもたちの遊びも少しずつ"秋"に移っていきます。そして来月20日にある運動会に向けての活動も増えてきます。この運動会の目的について、昨年もこのひとりごとで書きましたが、大切なことなので今年も書くことにします。

あさり保育所では運動会を「子どもの運動能力の発達を保護者に伝える」「親子のふれあいを提案する」「普段の保育をより深める」という3つの目的に位置づけています。この中の「子どもの運動能力の発達を保護者に伝える」という目的について、特に職員の話し合いが深まってきています。連日熱戦が行われているオリンピックのように身体能力の高さや技の出来を競うのではなく、子どもが日々の生活の中でつけてきている力をどのように種目の中で見てもらうか、またそれを子どもたちが"やらされる"のではなく"主体的に取り組む"ものにするためにはどのような形がいいか、様々な議論は運動会の直前まで続くだろうと思っています。

また、この運動会の取り組みを通して「体を動かすことの楽しさ」を子どもたちに伝えたいと考えています。楽しさは、1人で感じるより共感できる相手がいた方がより強く感じられます。個々の子どもが集団のなかでお互いに関わりながら取り組み、そして楽しさを共感しあう、そんな運動会にしたいという思いがあります。そして親子の関わりも同様に考えています。「親子のふれあいを提案する」ということで、親子で取り組んでもらう種目も計画しています。ぜひ保護者の皆さんも子どもと一緒に体を動かすことを楽しんでもらいたいと思います。

そして「普段の保育をより深める」という目的。これは運動会当日を含めてそこに至るまでの活動で子どもたちがどんな経験を重ねていくかが大切であり、そのためにも保育者の「子ども理解」とそれに基づく「創意工夫」がポイントとなります。これについては、今後の子どもたちの活動を具体的に取り上げて、後日書いてみようと思います。

2008年8月13日

No.58 ロフトを設置します

お盆がやってきます。この期間には家族が集まったり、日本独特の文化を感じるイベントがあったりと、いつもとは違った雰囲気になります。仕事のことを考えると、こんなときでも休むわけにいかない業種もあるでしょうし、逆にこんなときだからこそ忙しい業種もあるでしょう。保育所もそのひとつです。家庭によって様々なお盆の過ごし方があると思いますが、それでも子どもたちには、その家庭なりのお盆を感じてもらいたいと思っています。

この期間に保育所には変化があります。15日(金)に保育室内にロフトを設置する工事をします。ロフトは屋根裏部屋という意味ですが、イメージとしては部屋の中に大きな二段ベッドがあるという感じです。このロフトを設置することで、2階に新たな遊び場(そんなに広くはありませんが)できること、1階も天井が低くなり明るさが変わること、そうした変化は子どもたちにとって意味のあることと考えています。

私は特に、2階の部屋ができることを楽しみにしています。というのも、子どもがいつも視線を水平に見ている生活の中で、上から覗き込むということをさせるのは脳のシナプスが増えるという研究データがあるからです。そんなことからドイツの幼稚園・保育園の多くは、保育室にロフトが設置されているようです。また、そこに上るために階段を上ることも、脳のシナプスを増やすということがわかっているそうです。平屋作りの園舎内にロフトを設置することによって、階段を上り、上から覗き込むということを、遊びの中で子どもたちに体験させたいと思っています。

また、この上から覗き込むことを考えたとき、私はいつも木に登ったときに見える風景が頭に浮かびます。高いところに上ると下を覗き込むことができるだけでなく、いつもは見えない景色が見え、視界が広がったように感じます。その爽快感は保護者の皆さんも体験してこられたのではないでしょうか。高さが変わっただけでも、子どもの好奇心は刺激され、遊びが広がり、そして想像力もふくらみます。こんな体験のできる環境としてまずはロフトを、そして今後は園庭にも作りたいとひそかに計画中です。

2008年8月8日

No.57 子どもが『選ぶ』プール遊び

暑さをものともせず、子どもたちの元気な声が園庭中に響き渡っています。水遊びや泥んこ遊びも充実してきて、遊びを終えて帰ってくる子どもたちの表情を見ていると、夏の遊びを満喫しているのが伝わってきます。プール遊びも回数を重ねるごとに充実してきているのを感じます。あさり保育所のぞう・きりん・くま組のプール遊びについてはお便りで内容をお伝えしていますが、ここでも取り上げてみます。

ぞう・きりん・くま組のプール遊びは、まず『選ぶ』ことから始まります。「水遊びは大好きだけど、顔に水がかかるのはちょっと…」という"かにグループ"、「顔に水がかかってもいいけど、でも潜ったりするのは苦手」という"さかなグループ"、「しっかり泳いで遊びたい」という"いるかグループ"の3つのグループから、今日はどのグループでプールに入るかを選びます。子どもは、自分のできることや自分が挑戦したいことを選んでいくわけですが、面白いのは子どもがいつもいつもステップアップしていくことを目指しているわけではない点です。

さかなグループをクリアすれば次はいるかグループに挑戦する、という順番を私なんかは想像しますが、そうではなく、さかなグループの次にかにグループを選ぶ子もいます。保育者は子どもにここまでできるようになってもらいたいというねらいを持っているのでステップアップを促したりすることもありますが、子どもたちは自分なりにどう水遊びに取り組むかを、自分自身に問いかけながら丁寧に選んでいるようです。プールを使う順番も日によって違うため、一番にプールに入ることの出来るグループを選ぶという選び方もあるようです。子どもたちの『選ぶ』基準は本当にいろいろです。

子どもたちは自分で選ぶことによって、とても意欲的に活動に取り組みます。そして意欲的に取り組むことが、自分自身の課題をクリアしていく一番の力になっていくと考えています。そのために、私たちは子どもたちの選択を大切にします。子どもは本来自ら育つ力を持っており、それが育つためにどんな環境を用意するか。私たちはここに一番力を注がなければいけないと思っています。子どもを主体的に捉えること、子どもの選択を大切にすること。子どもたちのプール遊びを見ながら、そんな思いを強くしました。

2008年8月1日

No.56 何が『子どものため』?

夏祭りが無事に終わりました。今年の参加者は約500人。たくさんの参加者と楽しいひとときを過ごすことができたと思っています。今回の夏祭りの目玉のひとつ、カキ氷はいかがでしたか?「食の大切さを伝える」ことを目的とし、今回はほとんどを保護者の皆さんに作っていただきました。「子どもたちのため」に素晴らしい味を体験する場を用意してくれたことを、本当に感謝しています。

話は変わって上に書いた「子どものため」について。私たちは「子どものため」とはどういうことかを常に考え保育をしています。これは保護者の皆さんも同じだと思います。「子どものため」に何をすべきかをいつも考えておられると思います。でも難しいのが、いろんな「子どものため」があることです。例えば、着替えを手伝ってあげるのも、自分で着替えができるようにと手伝わないのも、どちらも「子どものため」と言うことができます。同じ事に対して複数の「子どものため」が存在しています。ではどちらが正解かをはっきりさせるのかというと、人と人の関わり方に1つの答えを出すことは、少し違うような気もします。ややこしいですね。

こんなことを考えるヒントが、子育て支援室に貸出し用として置いてある「やってあげる育児から見守る育児へ」という本の中に、子どもに関わる大人の心得として書かれていました。何かの参考になればと思ったので載せておきます。何が「子どものため」か、皆さんと一緒に考えていければと思っています。

『子どもが何か問題を抱えているときに、それを除いてあげようとするのではなく、自分でそれを解決できるように援助してあげます』『子どもが何を考えているかを、いつも先回りして考えるのではなく、子どもの考えを聞いてあげます』『子どもは、何かものを与えれば喜ぶのではなく、気持ちをわかってもらうことを望んでいます』『子どもは、自分のために親が犠牲になることを望むのではなく、子どもから望んだときに、自分が優先順位の高いことを望みます』『子どもが自分でできることや、自分でやろうとすることを手伝うことは、子どもにとっては迷惑です』『子どもを甘やかすことと、子どもの甘えを受容することは違います』『子どもが次第に自立していき、親が必要でなくなってくることは、うれしいことであり、さびしいことではありません』