2010年6月4日

No.146 感情が揺り動かされるような体験

最近、幼児教育における「科学する目」が重要視されています。でも、何が科学かということはなかなかわかりにくいものがあります。昨年度は年長児を対象に様々な実験(水と油、鏡などを使ったもの)を行いました。そのとき子どもたちは、驚き、いろんな発見をしてくれました。科学の語源は「知る」ことなので、幼児に対して「科学する目」を養おうとすることは、「知る」という人間の自然な能力を育んでいるということになります。しかも、子どもは本来いろいろなものを知りたがるという特徴があるので、生まれながらにして科学する心を持ち合わせているということにもなります。その心が好奇心や探究心という言葉になると思っています。

有名な生物学者レイチェル・カーソンは、「センス・オブ・ワンダー」という有名な本の中で次のように書いています。
『ひとたび、美しいという感覚、新しく未知なるものへの興奮、共感、同情、感嘆や愛などの感情がわき起こると、感情をゆり動かしたものへの知識を渇望するようになる。そして、その知識が見出されると、永続的な意味を持つのだ』
驚きや発見といった経験は、その子にとって長く価値を持つ大切なことだと示してくれています。知識は、子ども自らが強く求めたものでなければいけません。知識とは、教え込まれ叩き込まれるものではなく、知りたいという好奇心がなければいけません。そのためには、まず、感情がゆり動かされるような体験が必要になります。

少し話はそれるかもしれませんが、老子の言葉として伝わっているものに『聞いたことは忘れる。見たことは覚える。体験したことは分かる。』というものがあります。それに付け加えて「見つけ出したことは身に付く。」という言葉もあります。それぞれの行動による学びの効果を、記憶に残る割合で示した数字がアメリカで発表されていますが、『聞いたときは10%、見たときは15%、聞いて見たときは20%、話し合ったときは40%、体験したときは80%、人に教えたときは90%』だったそうです。意欲や好奇心、探究心を高める環境作りをすることによって、子どもは自ら知識を求めるようになり、その結果知識量が自然に増加するということが、このようなことからもよくわかります。まず私たちは、体験を、その中でも感情が揺り動かされるような体験の場を、できるだけ多く用意することを考えなければいけないと思っています。

0 件のコメント:

コメントを投稿