「地域」をテーマに掲げて活動している今年度ですが、新しい取り組みがアレコレと動いています。1つはお世話になっている地域の方に対しての「おもてなしカフェ」、もう1つは自分たちの住む地域の魅力的な風景の写真を集める取り組みです。
おもてなしカフェは保護者会の企画で、運営も保護者会が主になって行われるものです。あさりこども園のために力を貸してくれている地域の方たちに対して保護者からも感謝の思いを伝えたい、そんなことから計画されました。地域の行事が多い11月の開催でもあり、また初めての取り組みでもあるので、どれだけ地域の方が来てくださるか分かりませんが、まずは動いてみる、そしてそこでの気づきを次につなげる、こんな感じで動くことになるんじゃないかと思います。
こども園が目指す子どもの姿として、「地域の身近な人と触れ合う中で、人との様々な関わり方に気付き、相手の気持ちを考えて関わり、自分が役に立つ喜びを感じ、地域に親しみをもつようになる。」ということがあります。限られた関係の中だけでなく広く多様な人との関係を持つことは、子どもの成長にとって欠かすことのできないことです。他者との関係の作り方、地域に対しての愛着を育てていくことについて、保護者のみなさんと共に考えていける園でありたいと思っています。この「おもてなしカフェ」もそこへつながる取り組みであることは間違いなく、だからこそ嬉しく思っています。
もう1つの地域の風景の写真集めは、まだ始まったばかりです。今後少しずつ写真が集まってくるとおもしろくなってくると思います。好きな風景の写真を撮ろうと思うと、当然のことですが好きなところを探します。見た人が同じように魅力を感じてもらえるような「地域の自慢できる」ところを探します。初めから魅力がある地域は実は少なく、魅力を感じる人がいて、そこを大事にする人がいるからこそ、その魅力が人にも伝わっていき、多くの人が共感してくれる場や地域になっていく、私はそんな風に考えています。子どもたちにこの地域を好きになってもらうために、まずは地域を知る活動を多く取り入れてきました。それは今も継続しています。そこに更なる魅力を感じてもらうために、私たち大人が魅力を再発見、再確認しようというのが、この取り組みをしようと考えた私たちの思いです。みなさんと一緒にこの地域の良さに対して具体的に目を向けていけば、それは子どもたちにも伝わっていく、そう思っています。たくさんの写真が集まったら、それを何かの機会に展示してみんなで楽しめるようにする予定です。
地域の写真
最後にもう1つ。地域の方に関わってもらう新たな制度を作ることにしました。別に目新しいものではありませんが、「私たちあさりこども園は多くの人に関わってもらうことを望んでいます」と明確に打ち出すことも大事だと考えたものです。間もなくお知らせできるようになると思いますので、そちらもお楽しみに。
2017年10月27日
2017年10月20日
No.515 ごちゃ混ぜ
石川県金沢市にある「シェア金沢」の視察に行ってきました。
シェア金沢は、高齢者、大学生、病気の人、障害のある人など、誰もが分け隔てなく共に生活できる街、社会に貢献できる街で、社会福祉法人佛子園のみなさんが運営されています。
こども園と直接関係があるわけではなく、当法人の方向性を考えることが主な目的だったのですが、こども園のあるべき姿を再確認させてもらえる機会にもなりました。
ここで大切にされている考えの1つは、「全ての人には役割がある」ということ。どれだけ基本的な欲求が満たされても、それで十分なのではなく、社会や誰かのために貢献できていると実感できることが大事だと考えていますが、まさにそことつながります。そのためには社会や誰かとつながっていることが必要で、しかもそのつながりは多様である方がいい、まさにそのことが実践されている街でした。社会や他者に貢献できる人になってもらいたい、そのことを心地いいと思える人になってもらいたい、そのためにも乳児期から多様な関わりが生まれる場を日常的に設けたい、そんな思いであさりこども園の保育を作ってきているわけですが、シェア金沢のような実践は全然足りていません。仕組みづくりもまだまだこれからのところが多いのが現状です。ですが今回の視察でいろいろな実践に向けて動く刺激はしっかりともらってきました。まだまだやるべき事があると思えると、俄然やる気が出てきます。嬉しいことです。
シェア金沢での説明の最後に、作家の村上龍さんが書かれた言葉が紹介されました。印象的な内容だったので、ここでも紹介しておきます。
「共生」ではなく「ごちゃ混ぜ」。「きまじめ」ではなく「ユーモア」を。こんなことが書かれています。
Think globally, act locally. 思考は悲観的に、行動は楽天的に。行動する際に意識するようにしている言葉ですが、これらと通ずるところがある気もします。現場に近いところほど考えたいことです。
シェア金沢は、高齢者、大学生、病気の人、障害のある人など、誰もが分け隔てなく共に生活できる街、社会に貢献できる街で、社会福祉法人佛子園のみなさんが運営されています。
こども園と直接関係があるわけではなく、当法人の方向性を考えることが主な目的だったのですが、こども園のあるべき姿を再確認させてもらえる機会にもなりました。
ここで大切にされている考えの1つは、「全ての人には役割がある」ということ。どれだけ基本的な欲求が満たされても、それで十分なのではなく、社会や誰かのために貢献できていると実感できることが大事だと考えていますが、まさにそことつながります。そのためには社会や誰かとつながっていることが必要で、しかもそのつながりは多様である方がいい、まさにそのことが実践されている街でした。社会や他者に貢献できる人になってもらいたい、そのことを心地いいと思える人になってもらいたい、そのためにも乳児期から多様な関わりが生まれる場を日常的に設けたい、そんな思いであさりこども園の保育を作ってきているわけですが、シェア金沢のような実践は全然足りていません。仕組みづくりもまだまだこれからのところが多いのが現状です。ですが今回の視察でいろいろな実践に向けて動く刺激はしっかりともらってきました。まだまだやるべき事があると思えると、俄然やる気が出てきます。嬉しいことです。
シェア金沢での説明の最後に、作家の村上龍さんが書かれた言葉が紹介されました。印象的な内容だったので、ここでも紹介しておきます。
「共生」ではなく「ごちゃ混ぜ」。「きまじめ」ではなく「ユーモア」を。こんなことが書かれています。
Think globally, act locally. 思考は悲観的に、行動は楽天的に。行動する際に意識するようにしている言葉ですが、これらと通ずるところがある気もします。現場に近いところほど考えたいことです。
佛子園の理念・方針は、「ごちゃ混ぜ」と表される。似たような意味でよく使われるのは「共生」だが、きまじめな印象になる。同じ街で、障がい者、高齢者、それに子どもたちが、ともに接するのは、当然のことながら簡単ではなく、「きまじめ」では限界があり、ときに何らかの反作用が起こることもある。
必要なのは「きまじめ」ではなく、人間味溢れ、懐深い、ユーモアのようなものだと思う。それに、「やってあげる」「やってもらう」が基本となる福祉は、ともすれば「見返り」や「依存」を生じさせ、破綻することも多い。
イタリア映画の巨匠であるF・フェリーニの往年の名画『道』に、象徴的な台詞がある。知的障がいだと思われる主人公のジェルソミーナが「自分には価値がない」と悩んでいるとき、友だちになった綱渡り芸人が、そばにあった石ころを拾って言うのだ。
「君はわかっていない。この石ころだって何かの役に立っている」
社会的に必要とされない人など存在しないという「佛子園」の哲学は、人間としての原点であり、普遍的真実である。
2017年10月13日
No.514 ウクレレグループ誕生
あさりこども園の子育て支援センターのイベントして、ウクレレレッスンを春から行なっています。子育てに関するど真ん中のことをやっていくのが役割であることは間違いないのですが、それだけでいいんだろうか?とずっと考えていて、ど真ん中ではないけれど子育てに関わる人が生き生きと活動できるように、そして子育てに直接関わる人の周りにいる人にもこども園に興味を持ってもらえるように、その機会としてウクレレレッスンの場を設けることにしました。
今までに6回レッスンを開催してきたわけですが、レッスンだけでは終わらないのがおもしろいところです。レッスンを修了した方が「どこかで演奏を披露したいね」と盛り上がり、積極的にメンバー集めの声をかけ始め、なんと12月のきらきらコンサートで演奏することが決まってしまいました。この動きを引っ張ってくれているのは保護者のYさんです。あさりこども園の保護者だけでなく、レッスンを受けられた外部の方も関わってくれているようです。あさりこども園という場にさまざまな人が関わってくれ、そこから新たな取り組みが生まれるのは本当に嬉しいことです。一見子どもたちには何も関係のないことのように思えますが、保護者だけでなく、関わってくれる方、そして地域自体が生き生きと活動している様子は、しっかりと子どもたちに伝わっていくはずです。子どもだけでなく、大人も地域も楽しんで動いていくきっかけを作っていくことは、あさりこども園の目指すところでもあります。無理なく、楽しく、ウクレレグループの活動が続いていくことを期待しています。
ウクレレレッスンのような取り組みとは少し違いますが、関わってくれる人を増やしていく仕組み作りは今後も継続して行なっていきます。アイデアがたくさんあるわけではありませんが、できるところから形にしていくつもりです。もしも「こんなことはどう?」といったアイデアがあれば、ぜひ教えてください。
今までに6回レッスンを開催してきたわけですが、レッスンだけでは終わらないのがおもしろいところです。レッスンを修了した方が「どこかで演奏を披露したいね」と盛り上がり、積極的にメンバー集めの声をかけ始め、なんと12月のきらきらコンサートで演奏することが決まってしまいました。この動きを引っ張ってくれているのは保護者のYさんです。あさりこども園の保護者だけでなく、レッスンを受けられた外部の方も関わってくれているようです。あさりこども園という場にさまざまな人が関わってくれ、そこから新たな取り組みが生まれるのは本当に嬉しいことです。一見子どもたちには何も関係のないことのように思えますが、保護者だけでなく、関わってくれる方、そして地域自体が生き生きと活動している様子は、しっかりと子どもたちに伝わっていくはずです。子どもだけでなく、大人も地域も楽しんで動いていくきっかけを作っていくことは、あさりこども園の目指すところでもあります。無理なく、楽しく、ウクレレグループの活動が続いていくことを期待しています。
ウクレレレッスンのような取り組みとは少し違いますが、関わってくれる人を増やしていく仕組み作りは今後も継続して行なっていきます。アイデアがたくさんあるわけではありませんが、できるところから形にしていくつもりです。もしも「こんなことはどう?」といったアイデアがあれば、ぜひ教えてください。
2017年10月
【ブレスト】
あさりこども園では、10月のスタッフミーティングで「ブレスト」が行われました。ブレストとはブレインストーミングの略で、複数の人が自由にアイデアを出し合って新しい発想や問題の解決方法を導き出す手法のことです。要は話し合いの方法の1つなんですが、今回はルールを2つ設定して実施してもらいました。そのルールとは「とにかく数多くのアイデアを出す(内容は問わない)」「他人が出したアイデアに乗っかる」です。面白法人カヤックという会社が、おもしろい仕事をしていくためにこのブレストを大事にしているのを知り、方法なども真似させてもらいました。ブレストを体験することが一番の目的だったので、お題は「どんな結婚式を挙げたいか?」「カフェを繁盛させるためのアイデアは?」と軽めのもの、しかも業務とは関係のない内容でしたが、だからこそブレストの意味を理解してもらいやすかったんじゃないかと思っています。
【乗っかる】
今回のブレストはアイデアを数多く出すことが最優先。そうなると他人のアイデアを否定している暇はありません。出てきたアイデア全てをみんなで「それいいね!」と受け止める姿勢が大事です。そして個々に思いついたものを出し合うのではなく、他人のアイデアに乗っかることをしなければ、数は増えず、発想の幅も広がらず、すぐに行き詰ってしまいます。これは日々の業務にもつながる話です。仕事に行き詰まりを感じている、なんとなく楽しくない、そんな状態になるのはそこから抜け出す方法が浮かばないことが原因です。1人で考えているだけだと思いつく方法の数は限界がありますが、自分の思いつきに誰かが乗っかったり、誰かの意見に乗っかったりと、そんなことが職場の文化として定着していたとしたら、行き詰まりから抜け出す方法は数多く出てくるはずです。行き詰まりを減らし仕事を楽しくするために、仕事の質を高めていくために、アイデアをたくさん出すためのブレストを取り入れてみてはどうでしょうか。今回企画運営をしてくれたあさりこども園のNさんがアドバイスをしてくれるはずです。
【サンマ】
デイサービスセンターの「さんま祭り」が終わりました。今回サンマを一緒に食べた人は約170名。昨年と比べて50名程度増えたことになります。調理の手伝いに来てくださった方も、この企画を知って来てくださった地域の方も増えました。1人でも多くの方に関わっていただきたいと動いてくれた、職員のみなさんのおかげです。もっと多くの方に関わってもらいたい、花の村の思いを理解してくれる人、協力してくれる人を増やしたい、そしてそのつながりを生かして花の村からも地域へ貢献したい。そんな思いで花の村は動いています。この姿勢を粘り強く継続していると、地域から依頼や提案の声も増えてくると思います。そのときは、みんなで喜んで乗っからせてもらいましょう。
あさりこども園では、10月のスタッフミーティングで「ブレスト」が行われました。ブレストとはブレインストーミングの略で、複数の人が自由にアイデアを出し合って新しい発想や問題の解決方法を導き出す手法のことです。要は話し合いの方法の1つなんですが、今回はルールを2つ設定して実施してもらいました。そのルールとは「とにかく数多くのアイデアを出す(内容は問わない)」「他人が出したアイデアに乗っかる」です。面白法人カヤックという会社が、おもしろい仕事をしていくためにこのブレストを大事にしているのを知り、方法なども真似させてもらいました。ブレストを体験することが一番の目的だったので、お題は「どんな結婚式を挙げたいか?」「カフェを繁盛させるためのアイデアは?」と軽めのもの、しかも業務とは関係のない内容でしたが、だからこそブレストの意味を理解してもらいやすかったんじゃないかと思っています。
【乗っかる】
今回のブレストはアイデアを数多く出すことが最優先。そうなると他人のアイデアを否定している暇はありません。出てきたアイデア全てをみんなで「それいいね!」と受け止める姿勢が大事です。そして個々に思いついたものを出し合うのではなく、他人のアイデアに乗っかることをしなければ、数は増えず、発想の幅も広がらず、すぐに行き詰ってしまいます。これは日々の業務にもつながる話です。仕事に行き詰まりを感じている、なんとなく楽しくない、そんな状態になるのはそこから抜け出す方法が浮かばないことが原因です。1人で考えているだけだと思いつく方法の数は限界がありますが、自分の思いつきに誰かが乗っかったり、誰かの意見に乗っかったりと、そんなことが職場の文化として定着していたとしたら、行き詰まりから抜け出す方法は数多く出てくるはずです。行き詰まりを減らし仕事を楽しくするために、仕事の質を高めていくために、アイデアをたくさん出すためのブレストを取り入れてみてはどうでしょうか。今回企画運営をしてくれたあさりこども園のNさんがアドバイスをしてくれるはずです。
【サンマ】
デイサービスセンターの「さんま祭り」が終わりました。今回サンマを一緒に食べた人は約170名。昨年と比べて50名程度増えたことになります。調理の手伝いに来てくださった方も、この企画を知って来てくださった地域の方も増えました。1人でも多くの方に関わっていただきたいと動いてくれた、職員のみなさんのおかげです。もっと多くの方に関わってもらいたい、花の村の思いを理解してくれる人、協力してくれる人を増やしたい、そしてそのつながりを生かして花の村からも地域へ貢献したい。そんな思いで花の村は動いています。この姿勢を粘り強く継続していると、地域から依頼や提案の声も増えてくると思います。そのときは、みんなで喜んで乗っからせてもらいましょう。
2017年10月6日
No.513 自己肯定感のはなし
最近読んだ2人の文章から感じたことを、そのまま書いてみます。
自己肯定感について、鯨岡峻さん(発達心理学者、京都大学名誉教授)が次のようなことを書かれていました。
今の子どもは自己肯定感が低い、日本は自己肯定感が高くない人が多いといったことをよく耳にします。子どもたちが自分の力を信じ、個性を大事にしながら成長していくためには自己肯定感を持つことが欠かせない、そういった専門家の声もよく耳にします。確かにその通りだと思うのですが、自己肯定感が目に見えて明らかに計測することができないものだけに、正直なところそのために何をすればいいのかを掴めずにいたところがあります。ですがこの文章を読んで、「なんだ、子どもを認める存在であればそれでいいんだ」と気づかせてもらいました。まあそれがなかなか難しいことではあるんですけどね。
鯨岡さんが書かれている「生活に張りがある」感覚というのは、「自分には役割があると認識している」感覚と同じ意味だと、私は解釈しています。信頼できる人がいて、自分を認めてくれる人がいると、自分の持っている力を認識することができます。そして必要としてくれる人がいるということは、そこには自分の役割が発生しているということです。自分の持っている力を生かした役割があると思えることが、どれだけ力を与えてくれることか。私たちはそのことをもっと理解しておく必要があると思っています。
『ボクたちはみんな大人になれなかった』を書かれた燃え殻さんがその著書の中に書かれていることです。最初は「これいいなあ、そうだよなあ」と感じていたくらいだったのですが、時間が経つにつれてこの言葉の意味を深く考えるようになってきています。SNSなどのつながりが広がってきている今、「いいね!」を押したりすることで簡単に共感の意を示し合う関係も含めると、共感してくれる人は以前と比べて圧倒的に増えています。でも、燃え殻さんが書いている幸せのポイントは「近くにいること」です。画面の向こう側ではなく、身近で直接的な関係のことです。その関係をどれだけ築いていくことができるかが、これからはますます重要になってくるでしょうね。
人間関係は何もしなくても自然と出来上がるようなものではありません。楽しく過ごす体験やぶつかり合う体験を繰り返す中で、自分なりの他者との距離感を掴んでいき、自分にとって心地よい関わりができる関係を少しずつ築いていくものだと思っています。子ども時代の体験も関係づくりの力をつけていくために間違いなく重要なものです。成長につれて所属集団は変化していき、数も増えていきます。価値観の違う所属集団を複数持つことも大事だと思っていますし、それぞれの集団の中で共感し合える直接的な関係を緩やかに築いていけることも大事だと思っています。そしてその関係こそが、上で書いたような自己肯定感に大きくつながってくるものであるはずです。そんな関係づくりの基礎となる力を園生活を通してつけていけるよう、私たちはこども園の場づくりについてもっともっと考えなければいけないなあと思わされました。
自己肯定感について、鯨岡峻さん(発達心理学者、京都大学名誉教授)が次のようなことを書かれていました。
自己肯定感というのは、「それがある」と意識できる感覚ではありませんし、世間でいわれているような「ありのままの自分でよい」ということでもないと私は思っています。「信頼できる人」「自分を認めてくれる人」「自分を必要としてくれる人」、それらの人がいれば、その人はその生活の中で、きっと気持ちが前向きに動くに違いなく、それは一言でいえば、「生活に張りがある」感覚だといってもよいのではないでしょうか。私は、それが自己肯定感だと思っています。
お母さんが子どもから「お母さん大好き」と思われ、夫から「愛しているよ」と言葉や態度で示され、また職場の同僚や友人から「よく頑張っているね、頑張っているあなたは素敵だよ」と認めてもらえるなら、たとえ子育てや日々の生活で多忙な毎日をすごしていて、自分のための時間や、ほっとできる時間が乏しくても、前向きに生きる意欲が湧いてくるに違いありません。それは、「自己肯定感がある」状態といってよいでしょう。
今の子どもは自己肯定感が低い、日本は自己肯定感が高くない人が多いといったことをよく耳にします。子どもたちが自分の力を信じ、個性を大事にしながら成長していくためには自己肯定感を持つことが欠かせない、そういった専門家の声もよく耳にします。確かにその通りだと思うのですが、自己肯定感が目に見えて明らかに計測することができないものだけに、正直なところそのために何をすればいいのかを掴めずにいたところがあります。ですがこの文章を読んで、「なんだ、子どもを認める存在であればそれでいいんだ」と気づかせてもらいました。まあそれがなかなか難しいことではあるんですけどね。
鯨岡さんが書かれている「生活に張りがある」感覚というのは、「自分には役割があると認識している」感覚と同じ意味だと、私は解釈しています。信頼できる人がいて、自分を認めてくれる人がいると、自分の持っている力を認識することができます。そして必要としてくれる人がいるということは、そこには自分の役割が発生しているということです。自分の持っている力を生かした役割があると思えることが、どれだけ力を与えてくれることか。私たちはそのことをもっと理解しておく必要があると思っています。
美味しいもの、美しいもの、面白いものに出会った時、これを知ったら絶対喜ぶなという人が近くにいることを、ボクは幸せと呼びたい
『ボクたちはみんな大人になれなかった』を書かれた燃え殻さんがその著書の中に書かれていることです。最初は「これいいなあ、そうだよなあ」と感じていたくらいだったのですが、時間が経つにつれてこの言葉の意味を深く考えるようになってきています。SNSなどのつながりが広がってきている今、「いいね!」を押したりすることで簡単に共感の意を示し合う関係も含めると、共感してくれる人は以前と比べて圧倒的に増えています。でも、燃え殻さんが書いている幸せのポイントは「近くにいること」です。画面の向こう側ではなく、身近で直接的な関係のことです。その関係をどれだけ築いていくことができるかが、これからはますます重要になってくるでしょうね。
人間関係は何もしなくても自然と出来上がるようなものではありません。楽しく過ごす体験やぶつかり合う体験を繰り返す中で、自分なりの他者との距離感を掴んでいき、自分にとって心地よい関わりができる関係を少しずつ築いていくものだと思っています。子ども時代の体験も関係づくりの力をつけていくために間違いなく重要なものです。成長につれて所属集団は変化していき、数も増えていきます。価値観の違う所属集団を複数持つことも大事だと思っていますし、それぞれの集団の中で共感し合える直接的な関係を緩やかに築いていけることも大事だと思っています。そしてその関係こそが、上で書いたような自己肯定感に大きくつながってくるものであるはずです。そんな関係づくりの基礎となる力を園生活を通してつけていけるよう、私たちはこども園の場づくりについてもっともっと考えなければいけないなあと思わされました。
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