2017年11月17日

No.519 互いに影響し合う関係

子育てにおいてアタッチメント(愛着)が重要なことはご存じのとおりだと思います。アタッチメントが形成されることで、子どもは「いつでも見ていてくれる、守ってくれる」と安心感を持ち、そのことが様々な環境に働きかける意欲につながり、成長へとつながっていきます。代表的なのが母子関係、親子関係において、子どもの気持ちを的確に読み取り、それに即座に応答してあげるアタッチメントです。この母子関係と同じアタッチメントが保育園の保育士の役割として今でも強調されることがありますが、様々な研究によって実はそれが必ずしも効果的ではないと分かってきています。

細かなことは省略しますが、子ども集団の規模が小さい場合、例えば家庭や2,3人の集団の中においては保育者と子どもの密な関係によってアタッチメントは安定しますが、保育園やこども園のような大きな子ども集団になると、保育者との二者間の関係によるアタッチメントの安定度の相関が小さくなってくるようです。そして子ども集団の規模が大きくなっても、保育者と子どものアタッチメントの安定性はたいして変化しないようです。分かりやすい表現にすることが出来ませんでしたが、要するに大きな子ども集団の中では、保育者との二者間の関係を強化することを考えるよりも、保育者との二者間、そして子ども同士のつながり、それらを総合的に高めていく視点を持つことが重要だということになりそうです。

先日、メトロノームの動きやろうそくの炎の揺らぎが互いに影響し合ってシンクロしてくる現象の話を聞きました。

『バラバラに動くメトロノームが徐々に同期するふしぎな現象』




『なぜ複数のロウソクの炎の揺らぎは同期するのか』


目に見えるわけではないけど、互いの力が全体の中で作用し合い、気づけば同じように動いている。こんなまとめ方では間違っているのかもしれませんが、だいたいこんな感じでもいいのかと。ここで同期の原理を細かく見ていくことはしませんが、例えばメトロノームが同期・同調していく様子を見ていると、子ども同士の関係を考える上で大事な部分でもあると感じます。

親や保育者が子どもの気持ちを的確に読み取り、それに即座に応答してあげることでアタッチメントが安定することは上で書きましたが、それは子ども同士の関係においてもあり得るというのが私の立場です。ある子が楽しそうに歌っているとします。それを周りで見ている子が、歌っている子の楽しい気持ちを感じ取り、その気持ちに影響されて同じように歌い出すとか、上手に片付けをしている子を見ていて刺激を受け、同じようにやってみたいと思って片付けに挑戦し始めるとか。そして最初に行動を起こした子が周りが動き出したことを見て、更に気持ちを高めたり行動の意欲を高めたり。そんなことも応答性だと考えていて、その応答によってアタッチメントが安定する、それが子ども集団の持っている力だと思っています。

あさりこども園において「子ども同士の関係性を大事にする」としつこく言っているのは、保育者との二者関係も子ども同士の関係も、どちらも子どもの育ちには大切で、特に子ども同士の関係は子ども1人ひとりの発達を理解したうえで意図して作ろうとしなければ生まれてきにくいと考えるからです。大人の関わりが強すぎるとどうしても大人に依存する傾向が強まり、子ども同士の関係は豊かになりにくいです。大人との関係も築きつつ、子ども同士の関係も豊かに広がっていくようにしていくことが、保育者の役割だと考えています。

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