2013年9月5日

No.310 目的と方法2

「見守る保育」の説明の続きです。今回はこのことから。

2.子ども一人一人の発達について理解し、一人一人の特性に応じ、発達の課題に配慮して保育すること。

これはすごく大事なことです。例えばハサミを使った制作活動を考えてみます。8年くらい前のあさり保育園では、3歳児クラスは直線切りで作れるものを、4歳クラスは波線切りで作れるものを、5歳児クラスは円を切って作るものを、といった感じでクラス別に課題を決めて活動していました。クラスが上がるにつれて難易度があがっていくので、一見一人一人の発達課題に配慮した方法のようにも思えるのですが、実際の様子は違っていました。みなさんも分かると思いますが、3歳児でもハサミを使うのがすごく得意な子がいたり、5歳児でもハサミを使うのがあまり得意でない子がいたりと、年齢でスパッと発達を分けられるものではありません。

現在のあさり保育園の活動は違っています。クラス別ではなく、「直線切りの作品」「波線切りの作品」「円を切る作品」と作り方をまず子どもたちに提示し、どの作品を作りたいか子どもたちに選んでもらうところから始まります。子どもたちに活動グループを選んでもらうと、ほとんどの子は自分が一番“楽しい”と感じられるグループを選択します。“楽しい”と感じる活動とは、その子にとって簡単すぎるものでも難しすぎるものでもなく、その間にある「ちょっと頑張ったらできるかもしれないと感じられるもの」「自分のできることのちょっと上の段階」です。言い換えると、それがその子の発達課題ということです。

とは言っても、周りの子どもにつられてかなり難しい作品を選んでしまうこともありますし、簡単な作品を選んでしまうこともあります。そんな時は制作の様子を見ながら、「難しかったら少し簡単な方にかえてもいいよ」とか「それが終わったらもうちょっと難しい方も挑戦してみたら?」と声をかけるのが、個々の発達を理解している保育者の役割でもあります。保育所保育指針には「保育所の保育は、子どもが現在を最も良く生き、望ましい未来をつくり出す力の基礎を培う」ことが保育の目的だと書かれています。一人一人が発達の課題を飛び越すことなく、今の課題に十分に取り組むことを保障することが大事です。そのためにあさり保育園では選択制の活動を取り入れているというわけです。

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