2014年1月19日

No.328-2 火が描けない?

宮崎駿さんが「最近のアニメーターは火が描けない。」と言っておられたという話を聞きました。若いアニメーターに火を描かせるとアニメで見た炎を描くそうです。「本物の火はこんなのじゃないだろ?」と言うと「見たことないですから」と返ってくるそうで、見ていたとしてもキャンプファイヤーのときに1、2回くらい。火が動くのをずっと、まじまじと、30分でも1時間でも見るということが日常生活にない、これは現代の1つの特徴かもしれません。

この話を聞いたとき、ある男の子のことを思い出しました。保育園でたき火を始めたときですが、その子は遊びの時間になると、1時間から1時間半くらい私の横でずっと火を見ていました。「火がゆらゆら揺れてるね」「あっ、今木が崩れた」と様子をじっくり観察したり、時には「この木とあの木はどっちがよく燃えると思う?」「なんで木は燃えたら黒くなるんだろう?」と質問してきたり。その様子を見ながら、私も子供の頃はずっと火を見ていたなあと懐かしく思ったりもしました。お風呂は薪で沸かしてましたし、ドラム缶とか畑の隅でゴミを焼いたりと、火を見たり扱ったりする機会は頻繁にあった時代です。

じーっと火の様子を眺めている行為は、一見何もせずにボーっとしているだけに思えるかもしれません。でも火の性質について学ぶ大事な機会です。もっとも基本的なことは火が熱いと知ることと、火との距離感を学べること。これらは熱さを感じながら学ぶことです。そして火の性質に対しての興味も膨らむはずです。火の様子は常に変化します。最初は激しく燃え、しばらくすると安定し、火が弱くなったらまた薪を追加し…と同じ状態ではありません。煙の動きにも気をつけておかないと正面から受けてしまって大変です。火をじーっと見ることは不思議さを感じる大事な体験ですし、気持ちが落ち着く効果もあります。とっても意味のある行為だと、私はただの経験者ですが語っておきます。

別にアニメーターを生み出したい訳ではありませんが、火に触れる経験ができる場をなくしてしまってはいけないと思っています。もちろん気をつけるべきことは気をつけた上で、いかに安全に使いこなすか。それを学ぶ機会を日常の中に用意していくことも私たちの役目だと考えています。火のおかげで野菜などもおいしく食べることができる体験をしたり、寒いときに身体を温めてくれることを実感したりと、ありがたさもしっかりと感じてもらいたいですね。

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