2015年12月11日

No.424 共同保育は人間としての出発点

ゴリラ研究の第一人者で京都大学総長の山極壽一(やまぎわじゅいち)さんと、世界に広がっていった人類の道のりを逆ルートで踏破する「グレートジャーニー」をおこなった探検家の関野吉晴さんの対談が、8月にテレビで放送されました。そこで出てきた話がなかなか興味深いものだったので紹介します。関野さんが

「人類は700万年の歴史を持っている。ゴリラやチンパンジーにできないこと、例えば二足歩行や、火や言葉の使用とかをいろいろとやってきた。その中で『これをやらなかったら我々人類はいないだろう』という一番大きな業績は何だと思うか。」

と質問しました。それに対して山極さんは

「食物を共有することと共同保育をすること、つまりあらゆる生活が『ともにある』という心によって作られていること、これが人間としての出発点だと思っている。これがなかったら人間にはならない。そして近隣関係も大事。家族は1つだけではダメ。複数の家族が集まって共同生活をしないと家族というものは存立できない。」

と答えておられました。すごくシンプルなやり取りですが、人間の子育ての原則を端的に示してくれています。「共同保育」が人間の子育ての基本であるということが研究を通して分かったのは、とても興味深いことです。

保護者講演会にも来てくれたことのある新宿せいが保育園の藤森平司園長は、よくこんなことを話されます。

「ゴリラは4年、チンパンジーは5年、オランウータンは7年も授乳期間が続くため、その間はお母さんの手元で育てられます。それに対して人類の授乳期間は1、2年です。離乳すると次の子どもを作ることができるため、霊長類と比較して人類は著しく多産ということになります。子どもが多いということはお母さんが1人で育てることはできないため、いろんな人に抱っこされたり、いろんな人と関わって育てられることは当たり前のことでした。地域の形が変わり少子社会になっている今、家庭や地域の中でいろいろな人と関わって育つことが難しくなっていますし、子ども同士の関わりも減っています。だからこそ保育所のような場で様々な関わりが生まれるようにしていくことは、今の時代においてはますます重要になってきています。」

これらのことから考えると、子どもが家庭だけでなく保育園のような場でも過ごすことはすごく自然なことで、すごく重要なことであるはずです。そして、これは保護者が働いているかどうかに関係なく、全ての子どもに当てはまることです。この“全ての子ども”に対して何をしていくのかが、これからのあさり保育園の大きな課題です。人類の子育ての基本である『共同保育』を守っていくために、できることはまだまだあると思っています。

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