2016年9月9日

No.460 それでいいんです

京都市立芸術大学長の鷲田清一さんが毎日いろいろな言葉を取り上げて解説している「折々のことば」で、こんな言葉が紹介されていました。

『あの子は魚と絵が好きだからそれでいいんです。』さかなクンの母親

さかな博士は小学生の頃、級友の落書きにしびれ、図書室で調べてタコと知る。毎夕母にタコ料理をねだり、水族館で水槽にかじりつき、魚屋では魚を丸ごと一匹買ってもらう。それを観察して絵に描く。「すごい、飛び出て泳ぎ出しそう」と叫ぶ母と感動を共有できたことが“魚学”の道につながった。もっと勉強も、と担任に告げられた時の母の返答。

さかなクンのことは、魚類学者で自分の興味のある分野をとことん極めていった人くらいしか知らないのですが、さかなクンの強みをまるごと認めていた母親の存在がどれだけ力になっていたかを想像すると、お母さんスゴイ!と感動してしまいました。あさり保育園では「自分の強みをもって他者に貢献する力を子どもたちにはつけてもらいたい」と考えていますが、そのためにその子の強みに目を向け、その強みを認め、「それでいいんだ」と丸ごと受け止めるのは決して簡単なことではありません。さかなクンの担任の先生のような「興味があるものに没頭することも大事だけど、それ以外にも大切なことが…」とか「みんなと違っているのはどうなのか…」といった声を耳にすることが少なくない現状もあります。そんな声を聞くと「違いを尊重していていいんだろうか?」と心配になったりすることもあるでしょう。でも実際にたくさんの子どもたちを見てきて、1人ひとりがあまりにも違っていて、しかもみんながそれぞれに興味のあることに没頭しているときの集中力を知っているので、そこは何としても伸ばしてあげたいと強く思っています。そのためにできることは何か?といつも考えています。

移民の多い国では「人とは違うのが当たり前」からスタートしていて、学校でも学力一斉テストや偏差値が存在していないところも当たり前のようにあるようです。日本は国の状況からして違うので、1人ひとりの違いを認める文化も違っているのは当然なのかしれませんが、違いに対する理解と強みに特化することのメリットについて、ゆっくり時間をかけて考える場はもっとあっていいはずです。あさり保育園は保育活動を通して「違いを認めることで子どもたちがどれだけ生き生きと活動するようになるか」を発信し続ける場です。生き生きと活動する子どもたちの姿を感じてもらい、1人でも多くの人と違いを認める思いを共有できる場にしていくことを目指します。

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