2012年9月20日

保育園からのアプローチによる連携の取り組み

「小学校との連携」の取り組みについて、全国保育協議会の会報に書かせてもらいました。1年前に書いていたものを今回まとめ直しました。記録のためにもここに載せておくことにします。



子どもたちのための連携とは

あさり保育園は、平成12年4月に公立園が民営化された、定員60名の保育園です。小学校との連携については、年1回の話し合いや交流活動などはあったものの、果たしてそれが子どもたちのためになっているのか分かりませんでしたし、小学校で○○をするようになるから保育園ではそれに向けての準備をという考え方も、丁寧に整理して考える必要があると感じていました。

保育所保育指針には小学校との連携について「(ア)子どもの生活や発達の連続性を踏まえ、保育の内容の工夫を図るとともに、就学に向けて、保育所の子どもと小学校の児童との交流、職員同士の交流、情報共有や相互理解など小学校との積極的な連携を図るよう配慮すること。」と書かれています。この中の「子どもの生活や発達の連続性を踏まえ、保育の内容の工夫を図る」ことがまずは連携の基礎であると考え、保育の内容を固めていくことから始めました。

子どもの発達を考えたとき、例えば行動抑制力をつけるためにはまず自己主張をし、やりたいことを十分に行う必要があります。小学校へいってじっと座ることができるように保育園で座る練習をするのではなく、保育園では子どもがやりたいことを自分で考え自発的に取り組める環境を保障しています。遊びのゾーンを設置したり、活動を選択できるようにしたり、そのときの発達課題に確実に取り組めるよう年齢で集団を分けず、活動によって柔軟に集団を作っていく形をとったりしています。小学校ではこうしているからそれに合わせて…と子どもの発達を上から見ていくのではなく、0歳からの発達をしっかりと保障していくことが連携の基礎になければいけないと考えています。


学力の基礎となる探究心を育てる

また、全ての学力の基礎になるのは物事に対する探究心です。探求心がなければいくら文字が読めても数が理解できても、学習に対する意欲は高まりません。子どもの意欲の低下は調査などでも明らかになってきていますが、小学校での学習に対して意欲的に取り組めるようになるためにも、保育園で探究心をいかに育てていくかは大きな課題です。森の中で1日中過ごす活動を行っていますが、自然の中にあるものに対して興味を持ち、思う存分そのものと触れ合うことで不思議さを感じることも、探求心を育てる大事な活動と位置づけています。これらのことは小学校との直接的な関わりではないですが、連携の大事な出発点と捉えています。


日常的に行き来のできる関係づくりを

具体的な連携としては情報の共有、職員の交流があります。主には近くの小学校との連携ですが、子どもの情報を共有するために、年度末だけでなく年度の初めにも話し合いの場を設けてもらうようお願いしています。以前は学期ごとに行っていたのですが、現在は3月と5月の年2回となっていて、ここには園長以外に保育士数名も参加します。それとは別に、不定期ですが、校長先生や教頭先生と話をする場を設けてもらっています。保育園で行っている取り組みの意味を理解してもらうことや、小学校での学習について理解することが目的で、必要性を感じたときに園長が随時小学校へ出かけていって話をさせてもらいます。保育園と小学校という立場の違いはあるますが、子どものことについて語る場はこちらからの動き次第で作ることはできると実感しています。

また夏休み期間を利用して小学校の先生が1名ずつ保育園に来られ、保育士体験をされる活動が続いています。子どもたちの生活を実際にじっくりと見てもらうことで、子どもに対しての理解だけでなく保育に対しての理解も少しずつ深くなってきているように思います。保育園の職員が小学校の授業の様子を見学させてもらう場も、必要に応じて設けてもらっています。頻繁に話し合いをするようになってから、保育園と小学校の行き来も盛んになってきています。連携のためにも日常的に話のできる関係作りは重要だと思っています。


園児と小学生の主体的な交流

子どもたちの交流としては、小学校の5年生と3、4、5歳児が年4、5回に渡って交流する機会もあります。この取り組みでは小学生にとっても園児にとってもコミュニケーション能力の向上を期待した取り組みになるように工夫をしています。小学生と園児が混ざって6人程度のグループを作り、小学生が中心となってどこで何をして遊ぶかを決める活動なのですが、園児から意見を聞き出すのに最初は苦労をしています。発達差が大きい中でのコミュニケーションは互いに伝えることや理解することに工夫を必要としますが、回を重ねるごとに上手くコミュニケーションを取ることができるようになり、その様子からもこうした活動は大切だと思っています。ここで交流する5年生と年長児は次年度の6年生と1年生になり、小学校でもいい関係を築いているようです。


特別支援学校の教諭からのアドバイスも

支援の必要な子どもに対しての取り組みとしては、地域の特別支援学校の先生に定期的に保育園へ来ていただいて子どもの様子を見てもらい、保育に対してのアドバイスをしてもらっています。いろんな角度から子どもたちを見てもらうことで、よりよい支援のための気づきを少しでも多く得たいという思いから、この定期的な訪問を特別支援学校にお願いし実現しました。行政が動いてきちんとしたシステムが作られることももちろん大事ですが、それにはどうしても時間がかかります。であるなら、こちらから行動を起こしてつながりの必要性を訴え支援の輪を広げていくことは、これからも必要になってくると思います。


今後の課題-さらなる共通理解を

小学校だけでなく様々な機関と連携を取ることで、子どもたちの育ちについての共通認識はスムーズにできるようになったと思いますし、特別な支援を必要とする子どもについては、就学に向けての混乱はずいぶん少なくなったと思います。ただ、現状は同地区にある小学校との連携に限定されているので、その他の小学校との連携についても検討していく必要はあります。さらには子どもの0歳からの発達についての共通理解にはまだまだ十分ではないところがあるので、続けて対話を行っていくことが今後の課題でもあります。

0 件のコメント:

コメントを投稿