少し前から書いてきましたが、25年度の保育園のテーマは「世界を体験する」です。昨年度が「世界を知る」で、今年度が「世界を体験する」。「知る」が「体験する」に変わっただけなのですが、その違いは丁寧に表現していこうと職員全員で議論している最中です。昨年度のものと少し似ているところはあるかもしれませんが、「体験する」ということなので、より五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)に働きかける内容、そしてその後の子どもたちの遊びにつながっていくような内容にしていく予定です。
例えば先日は世界各国のパトカーを子どもたちに紹介する場面がありました。写真をたくさん貼りだして、「日本のパトカーはこんな車だけど、○○ではこんなパトカーなんだよ」と、たくさんの世界のパトカーを見てもらいました。昨年はここで終わっていたのですが、今年度はこの後に空き箱とかで作ったパトカーが登場し、それを見て興味を持った子には製作も楽しんでもらおうというのがねらいです。知るだけでなく、そこから実際に手を使った体験に結びつけていこうというわけです。

また、もう少ししたら配布される5月の献立表には「ヴィシソワーズ」というメニューが入っています。アメリカの料理で、冷たいポロネギ風味のジャガイモのポタージュだそうです。あさり保育園の食事はごはんと味噌汁、そしておかずというのが基本です。これについては今回は省略しますが、その基本は崩さずに月に一度は外国の料理が何かの形で登場する予定です。昨年度もピザやピニヤハン・バボイなどが登場していましたが、昼食としてというより少量だけ味わうといった感じでした。それを今年度は昼食にしっかり組み込むことにしました。しっかりと世界を味わってもらう1年にしていきます。

このように「世界を体験する」をテーマに1年間活動していくわけですが、やはり大事なのは私たちの足もとである日本、そしてこの地域だということに変わりはありません。世界という切り口ではありますが、そこから自分たちの足もとにより関心を持ってもらえるようにという思いは大事にしていきます。そして、私たちの周りの世界は多様であることを十分に体験してもらいたいと思っています。夏祭りなどもこのテーマのもとで新たな内容に発展していくかもしれません。「世界を体験する」に注目していてくださいね。
水曜日には保護者会の役員会が行われました。今回は最初の役員会でもありますし、また今回初めて役員に…という方も多数なので、みなさんが活発な意見を出し合うというところまではいきませんでしたが、それでもみなさんの表情を見ていてこれから楽しい役員会になっていくだろうという予感はしています。
役員会終了後でしたが、うれしい提案もありました。例えば漁師をされているHさんからは、自分の仕事を生かしておもしろい海の生き物を持ってきて子どもたちに見せてあげたいという提案です。ハダカゾウクラゲという象のようなクラゲ(これは翌日に早速持ってきてくれました!)とか、スイカのにおいのするウミウシを見せてあげたいとか、サメもときどきとれるから鮫肌を触らせてあげたいとか。大人も興奮してしまうような、うれしい提案です。そこから更に話は膨らみ、カジキがとれたら保育園でさばいてみんなで食べるのはどうか?とか、今年度のテーマ「世界を体験する」に(ちょっと強引に)結びつけて「海の世界を体験する」という内容で海の生き物シリーズを展開するのもおもしろいかも、なんて話も出てきていました。実際には2mを超すようなカジキが保育園に届いたら大変なことになるでしょう。それでも大人がワクワクしながら話す中にまずはヒントを見つけて、今の子どもたちの様子を踏まえ、興味や関心が高まっていくような取り組みにするには何をどんな方法で行えばいいか、その後に丁寧に考えていけばいいと思っています。
保育園の中だけだと、子どもたちが触れることのできる職業は限られています。でもそこに保護者のみなさんの職業が加わるとしたら、知ることのできる社会はグンと広がっていきます。様々な職業を知ることは、社会には様々な役割を持った人がそれぞれにつながりあっているという多様さを知ることになり、そんなことを知っていく中で、子どもたちは自分の役割を見つけていくことにつながっていくと考えています。なので、Hさんがしてくれたような提案は大歓迎なのです。しかも大人がワクワクしながら楽しんでいる姿から、思いは必ず子どもたちに伝わります。いつも言っていることですが、同じことでも楽しみながら取り組むかどうかで、そこから得られるものは大きく違ってきます。ということで、今年度もみなさんからの楽しい提案をお待ちしています。子どもたちの楽しい体験の場を一緒に考えていきましょう。

ハダカゾウクラゲが紹介されているサイトもありました。
http://www.gokaiclub.com/2011/10/yusuke/ichimai/1856
例えばマラソン大会の当日に向けて
自分なりにではあるけどあれこれ考えて調整をするんですが、
いざ走り出しだしたら「あれ?なんか脚の調子がおかしいかも…」とか
「お腹の具合があんまりよくない…」なんてことばかりです。
でも、だからといってそこで走るのを止めて棄権したりなんかしません。
その「万全ではない」状態となんとか折り合いをつけながら
その時の最善策を探りながら走り続けるしかないと思っています。
これって何にでも当てはまることだと思います。
「全ての条件が整ってからスタートさせたい。」
その気持ちが自分にもないわけではありません。
でも、そんなに整った状態でのスタートなんて滅多にありません。
いやいや、全くない、が正しいんでしょうね。
何かが欠けたまま、何かが不十分なまま、とにかく進んでいき、
走りながら欠けた部分を埋めていったり、ほころびを繕ったり、
そうやって突っ走ることが何よりも大事なのかもしれません。
だから苦手ではあるけれど、「見る前にとぶ」なんてことも
場合によっては十分に「あり」な選択と言えるんでしょう。
「安定」からはずいぶんかけ離れているなあと思うけど、
でも「不安定」な状態があるから「安定」を感じられるわけなので、
独りよがりにならないように、周りに迷惑をかけていることを感じながら、
これからもこんな感じで突っ走っていくことになるんでしょうね。
子育て支援センターに置くための新しい本が届きました。『卒乳』『離乳食』『良いおっぱい悪いおっぱい』『子どもはなぜ、ピーマンが嫌いなのか?』『人間は脳で食べている』『自然流育児のすすめ』の5冊です。子育てに関する情報は様々な内容のものがあって、それに惑わされてしまうことも少なくないと思います。そんな時に読んでもらい、ぜひじっくりと腰を落ち着けて子どもに向き合ってもらいたい、そんな思いで用意させてもらいました。タイトルは母乳や食事となっているものが多いですが、子どもとどう向き合えばいいのかのヒントもたくさん詰まっている本です。興味がある方はぜひ読んでみてください。今回ここでは『卒乳』と『離乳食』を少しだけ紹介します。
まずは『卒乳』。この本では最初に「乳離れ」「断乳」「卒乳」の違いについて書かれています。「乳離れ」とは「乳児が成長して乳以外の食物をとるようになること」で、母乳を飲まない状態のことではなく、離乳の始まりを意味する言葉です。そして「断乳」ですが、「自然に何日かかかって母乳をやめていく」ことを指していたのですが、ある日突然「おっぱいを断つ」こととして使われることが多くなっているようです。最後に「卒乳」です。これは「赤ちゃん自らがおっぱいを必要としなくなるときがくるので、そこまで待ちましょう」という考え方です。今育児の指導で使われるのは「卒乳」で、とても大事な考え方です。「○ヶ月になったからおっぱいはやめなければ」ではなく、赤ちゃんは自然と家族が食べている他の食べ物に興味を持ち始める時がきて、おっぱいを必要としなくなるので、大人はその時期を待てばいいという考え方はいいですね。そしておっぱいは栄養源だけでなく、赤ちゃんが安心できる基地でもあると書かれています。外の世界に関心を持ち世界を広げていくわけですが、そこで不安を感じたらおっぱいに戻ってきて、安心するとまた外に向けて活動を始める、そのための大事な存在だということです。これって子育てや保育においても基本となる考え方なんですよね。
スペースがなくなりましたが、「離乳食」についても少しだけ。離乳食を考えるときには栄養だけを考えればいいのではなく、みんなで一緒に食べるという“食本来の楽しさ”も味わう場だということを忘れてはいけないと書かれています。「卒乳」も「離乳食」も、単なるテクニックではないということですね。私もとても勉強になりました。貸し出しもしますので、興味のある方はぜひ!


平成25年度最初の「園長のひとりごと」です。この場には私が考えていること、保育園の取り組み、子どもの姿から感じたことなど、いろんなことを取り上げて書いていくことにしています。少しでもあさり保育園の目指すものを理解してもらいたいという思いで、そして理解してもらって子どもたちと一緒に保育園の生活を楽しんでもらいたいという思いで、今後も書いていこうと思います。よろしくお願いします。
先日ある保育園の園長先生からこんなことを質問されました。
「例えば歩けるようになったりとか、一人でごはんが食べられるようになったりとか、そういった成長って別に保育園でなくても家庭でもしますよね。じゃあ保育園ならではの子どもの成長って何だと思いますか?」
子どもたちの成長にはいろいろなものがあります。歩けるようになったり飛び跳ねることができるようになったり、一人で着替えができるようになったり排泄面で自立したり、本当に様々な成長を保育園では目にすることができます。でもそうしたことが保育園ならではの成長かと言われると、決してそんなことはありませんよね。では何が保育園での特徴的な成長かというと、その1つは、やはりたくさんの子どもが周りにいることによるものではないでしょうか。
ちょっと分かりにくいかもしれないので具体的にいうと、
例えば
「1人で楽器の演奏を楽しんでいたのが、みんなで合奏を楽しむようになる」
「1人で絵本を読んでいたのが、子ども同士で読み聞かせをするようになる」
「大きい子に教えてもらってできるようになったことを、今度は下の子に教えてあげることができるようになる」
といったことが挙げられます。こうした成長が日々あちこちで見られるのが、0歳から6歳までの様々な子どもがたくさんいる保育園の大きな特徴です。
このことを逆に考えると、そのような姿が生まれる環境を保育園では十分に用意しなければいけないということでもあります。子どもたちが他者と協力して社会を形成していくための基礎を培っていく場であることが、あさり保育園の大きな役割です。そんな場にしていくために、今年度も試行錯誤していきます。もちろん「楽しむこと」も忘れずに、です。