2015年10月23日

No.417 ちょっとした共通点

先日、東大教授の梶田隆章氏がノーベル物理学賞を受賞されました。ニュートリノという物質が質量を持つことを発見したことが今回の受賞につながったようですが、このニュートリノのことを含めて研究内容について私は全く理解できていません。なので内容には触れず、ノーベル賞と保育のちょっとした共通点について考えたことを書きます。

ニュートリノが質量を持つことは、岐阜県の神岡町にあるスーパーカミオカンデという研究施設で発見されました。この施設は1996年に作られたもので、「50,000トンの超純水を蓄えた直径40m深さ41.4mのタンクと、その内部に設置した11,200本の光電子増倍管からなる、地下1,000mに位置する施設」と、全てがとんでもない規模の施設です。しかもそこで行われる研究によって私たちの生活に直結する豊かさがもたらされるかというと、そのような種類の研究ではないと思います。ということは、一般的な“効率・非効率”の基準に照らしてみると、おそらくこの施設や研究は非効率の部類に入るんじゃないでしょうか。でもこの施設があったこと、この施設を作ろうという思いが20年前、30年前の日本にあったことが今回のノーベル賞につながったのは間違いありません。つまり今回の受賞は、結果が出るかどうか分からない、すぐに役に立つかどうか分からない研究に資源を投入してきた過去の日本の姿勢が評価されたと言えなくもないわけで、そのことを私たちは理解しておく必要があると思っています。

さて保育のことに話を移すと、保育の中にも非効率なこと、どんな力につながっていくのか分かりにくいものがたくさんあります。そんなものだらけかもしれません。ハイハイの時期を歩く練習に費やすと、もしかすると早く歩けるようになるかもしれません。子どもたちの個の違いや意思とは関係なく一斉に同じように動かそうとすると、もしかすると無駄の少ない活動ができるのかもしれません。でも、“今”にこだわり少しでも早く結果が出ることを求めて、少しでも無駄なく効率的で“有益”な保育を目指して、それで子どもたちが得られるものは一体何だろうと考えます。子どもたちの活躍の場が“今”であればそれでもいいのかもしれません。でもそうではないですよね。活躍の場は大人になり社会の中心となっていくとき、つまり20年後、30年後であるはずです。そこを見据え、基礎となる力を確実につけていく時期が乳幼児期で、ここに力をかけることが20年後の社会のあり方に大きく影響してくると思っています。「すぐに目に見える力」にはつながらないとしても、後に必要となる力の獲得に向けた取り組みは大切にしていかなければなりません。ノーベル賞も保育も効率的な道はなく、しっかりと先を見据え、今を信じて地道に進み続けることが、どちらにおいても大事なことなんでしょうね。

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