今回出会った本は「学力の経済学」。一見難しそうなタイトルですが、内容は多くの方が興味を持つものだと思います。単なる思い込みや個人の経験から語られてきた教育を科学的根拠から解き明かしてくれている本です。例えば「子どもはほめて育てるべきなのか」という問いに対して。ほめて自尊心を高めることが学力の向上につながるとよく言われますが、自尊心と学力の因果関係は逆で、
「学力が高いという『原因』が、自尊心が高いという『結果』をもたらしている」
と研究結果は示しているそうです。そして重要なのは「ほめ方」であるとしていて、「頭がいいのね」と能力をほめるのと、「よく頑張ったわね」と努力の過程をほめるとではどちらが効果的かについてはこう書かれています。
「子どものもともとの能力(=頭のよさ)をほめると、子どもたちは意欲を失い、成績が低下する」
そうです。私たちは乳幼児に関わっているので学力ではなく意欲を重視しているのですが、例えば子どもの描いた絵を見て出来映えを評価する姿勢ではなく、その絵に取り組んだ子どもの姿や、子どもの描きたかったものの背景に思いを巡らす姿勢で子どもと話す方が、意欲の向上につながるとも言えそうです。
そして「勉強させるためにご褒美で釣るのっていけない?」「テレビやゲームは子どもに悪影響を及ぼすのか」といった問いに対する研究結果などが紹介された後、乳幼児期の何が将来の学力とつながっていくかについても科学的根拠をもとに書かれています。その内容は、早期教育などで幼児期に「認知能力(IQや学力など)」を上げることはできるが、その効果は8歳頃には失われてしまうこと、乳幼児期は「認知能力」ではなく、忍耐力や社会性や意欲といった「非認知能力」が重要であることなどが示されています。更に
「非認知能力は人から学び、獲得するものである」
ということまで研究で分かっているようです。私たちが重視している友だちや保育者、地域の人たちとの関わりは忍耐力や社会性や意欲などを学ぶことにつながり、それは先の学力へとちゃんとつながっていく、つまりそれこそが乳幼児期に必要な教育だということです。
先週と今週紹介した本「よいこととわるいことって、なに?」「学力の経済学」に興味のある方は職員に声をかけてください。
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