2016年4月28日

No.443 子どもの飲み物




先週の土曜日は保護者講演会を行いました。講師はフード&ヘルス研究所の幕内秀夫氏、講演タイトルは「じょうぶな子どもを作る基本食」です。講演では、子どもたちの食を考える上で大切なことを丁寧に説明してもらいました。大人の食と子どもの食は根本的に違っていること、子どもの好き嫌いにはちゃんと意味があり理にかなっていること、知らず知らずのうちに大量の砂糖を摂取してしまうことが起こりやすい現状であり、それが子どもの食を考える上で非常に大きな問題であることなど、今の子どもの食が置かれている状況を1つ1つ整理して話してもらったので、聞かれた方は課題が明確になたのではないかと思います。幕内先生から具体的に6つの提案もしてもらいました。それが書かれたものは先日配布しましたので全部の説明は省略しますが、今回はその中の3つ目、「子どもの飲み物は水・麦茶・ほうじ茶」の部分を書くことにします。

提案として説明されている内容は以下の通りです。

成長期の子どもは、代謝が激しい(水分の入れ替えが大きい)ため、水分欲求が大きいのが特徴です。したがって、飲み物の選択はもっとも大切になります。飲み物は水分を補給するものであって、熱量(カロリー)をとるものではありません。飲み物で熱量をとってしまうと、きちんと食事をしなくなってしまいます。飲み物は、熱量のない水、麦茶、ほうじ茶などにしましょう。

子どもたちが活動するために必要なエネルギーは、子どもが大好きな「白くて甘いもの」、つまりごはんから摂取するのが一番いいとされています(ごはん中心の食事にすると、自然と砂糖や油をあまり使わないおかず、煮物やおひたし等になるという良い点もあるのですが、それはまた別の機会で。)。なので、子どもたちにまずはごはんをしっかりと食べてもらうことを考える必要があります。そして子どもはエネルギーだけでなく水分の摂取も大事なんですが、その飲み物でカロリーを摂ってしまうとそれだけで空腹感が減ってしまい、まずはごはんを!という流れが崩れてしまいます。暑い日に清涼飲料水を飲み過ぎてお腹がいっぱいになり、食欲が落ちてごはんが食べられず、その結果バテてしまった経験のある方は少なくないと思います。そんなわけで、あさり保育園での飲み物は、カロリーのないお茶にしています。



このように保育園の食事の意味を伝えることをしてこなかったわけではないのですが、まだまだ十分ではなかったと反省しています。毎月配っている献立表についても、今後少しずつ見直していく予定です。興味を持って見てもらえるものを目指します。

2016年4月22日

No.442 伝統的な食

先日、市の保健師さんと子どもの「食」についてお話する機会がありました。食は子どもたちの成長の基礎になるものなので、話題に上がることは多いですし、考える機会も当然多くなります。しかも考える切り口は様々あって、食の中身だけでなく食べ方や食べる環境など、どこを取り上げるかによって見えてくる課題はそれぞれ違っていたりします。今回保健師さんとお話したのは「伝統的な食をどのように子どもたちに伝えていくか」について。そのことについて考えたことを書きます。

「伝統的な食を伝える」と言えば、そのための取り組みとしてイベントのような形で大切さを伝えていく活動はあちこちで見かけます。「これが伝統的な食ですよー!大事なので覚えていてくださいねー!」と盛大にアピールするイベントもちろん意味はありますが、そういったイベントだけではなく、日常の中で丁寧にしつこく伝えていくことも保育園では必要だと思っています。日頃からその食に接していることによって、違う地域の伝統食に触れたときに「あれ?いつも自分が食べているものとちょっと違うなあ。」と気づいたりします。日常的な取り組みはそんなところを目指すものだと考えています。伝統的な食や味が子どもたちの食の基礎となるよう、地道な取り組みがイベントとうまく絡み合っていくよう進めていければと思っています。

私たちが子どもたちに伝えていきたい伝統的な食は和食。ごはん+味噌汁+おかず+お茶の組み合わせです。決して特別なものではなく、ごく普通の和食です。この食事が栄養面でも子どもにとってどれだけ大事なのかは、明日の保護者講演会でしっかりとお話してもらえるはずですし、来ることのできなかった方には何らかの方法でお伝えしようと思いますので、ここでは省略します。そして伝えたいことがもう1つ。旬のものをしっかりと味わうことです。旬のものとはその時期にその土地で採れるもの。講演会の講師がよく話されることに「foodは風土」という言葉があります。食はその土地のものを食べることがまず基本だという意味で、旬のものも当然そこに含まれます。一般的な伝統とは少し意味が違いますが、地域の伝統的な味を考えたとき、その土地のものや旬のものは欠かせないはずです。先日はたくさん頂いたワラビを昼食で味わいました。タケノコの皮むきも経験してもらい、タケノコごはんにして食べました。畑では季節の野菜を収穫できるよう、計画が進められています。その時期に採れるものに関心を向け、食べるだけでなく収穫や下ごしらえなどの「触れる」ことも大切にしていきたいと思います。そうした体験の積み重ねによって、子どもたちの食の基礎を作っていきたいと思っています。



2016年4月15日

No.441 石見おばちゃん語訳?

ちょっと考えていることがありまして、『日本国憲法 大阪おばちゃん語訳』(谷口真由美 著)という本を読んでいます。もし大阪のおばちゃんが井戸端会議で憲法の話をしたとしたらどんな風になるのか?というコンセプトの本です。何を考えてこの本を読んでいるかは後で説明するとして、この中の一部を紹介します。例えば憲法の12条は大阪のおばちゃん語訳ではこうなります。
「この憲法が国民に保障している自由とか権利は、みんなで普段から絶え間なく努力することで持ち続けていかなアカンねんで。ほんで、私らもこれを自分のためだけにつこたらアカンねん。ひとさまにご迷惑おかけせーへんようにつかわなアカンねんで。自分だけが大事とか言うたらアカンねんで。」

原文は「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。また、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためのこれを利用する責任を負う」(自由・権利の保持の責任とその濫用の禁止)

そして解説にはこう書かれています。

人権っちゅうのは、無制限に認められているわけちゃいますねん。そやのに、巷では「人権人権いうたらなんでも認められる」って言うお人がいてはりますねんけど、それはウソですわ。ほら、憲法にも書いてますやろ、「濫用」したらあきまへん、「公共の福祉」のために使わなあかんでって。人間っちゅうのは、社会で暮らす生き物ですさかい、その権利にも限界がありますねん。要は、他の人の権利は無しにして、自分の権利だけがぎょうさん認められるなんてことはあり得へんってことですわ。ひとさまにご迷惑をおかけせーへん限り、人権は認められまっせってことですわ。

憲法のような条文を読むと、「大事なんだろうな」とは思いますが、「なるほど〜!」とはなかなか思えません。でも大阪おばちゃん語訳を読むと、特に解説なんかはスッとその意味が頭に入ってきます。大阪弁が読みやすいかどうかは人によるでしょうが。何が言いたいかというと、表現方法によって伝わり方はかなり違ってくるということです。そして日常の言葉で表現した方が圧倒的に分かりやすいです。保育においても同じことが言えると思っていて、憲法ほど分かりにくくはないはずですが、例えば私たちが大切にしている保育の考え方「子どもが自発的、意欲的に関われるような環境の構成と、そこにおける子どもの主体的な活動を大切にする」ということなんかも、「なんのために?」も含めて実際の様子を通して、分かりやすく具体的に発信し続けないといけないと思っています。「保育理論 石見おばちゃん語訳」があってもいいかもしれませんね。

2016年4月12日

食も保育

食を通して成長につながる体験をしていくことも大切なこと。栄養を摂ることだけが食事の目的ではありません。食も保育の1つです。ということで、食に対する考え方を保育を行う上で大切にしている10ヶ条に当てはめてみました。個人的には9条がもっと保育の世界で一般的になってくればいいなと思っています。子どもたちに対して保育者自身をきちんと見せていくことは、社会を学ぶために大切なことだと思っているので。


1.子どもが自発的、意欲的に関われるような環境の構成と、そこにおける子どもの主体的な活動を大切にすること。




2.子ども一人一人の発達について理解し、一人一人の特性に応じ、発達の課題に配慮して保育すること。




3.子どもは、多様な大人、子ども同士の体験から、社会を学んでいくこと。




4.保育者は、子どもが自発的、主体的、多様な人との関係の中で活動するために、いつでも駆け込める愛着(見守る)という存在でいること。




5.子ども同士の中で刺激しあうということから、様々な年齢とのかかわりを保障すること。(見て、真似して、関わって、教わって、教えて、一緒にやって)




6.子どもは、職員のチームによって、多様な社会とのかかわりを学習すること。




7.子どもを、男女、しょうがい、年齢による刷り込みを持たないこと。




8.子どもが自立をしていくこと、自己の意思を表明しようとすることを保育者は妨げてはならない。




9.保育者は、子どもに奉仕をしたり、世話をする人ではなく、一人の人格を持った人として子どもと共に生活すること。




10.乳幼児基本法(教育法)に則った保育を展開しなければならない。

2016年4月10日

日本語→英語→日本語

日本赤ちゃん学会というものがあり、その学術集会で研究発表を行うことになりそうです。
https://sites.google.com/site/akachan2016/home
その発表の概要は以下の通り。

子ども主導の遊びや活動、子どもが中心で教師がつなぎ発展させる遊びや活動が多い保育
その中で引き出される子どもたちの能力とは

優れているプリスクールの特徴として、「子ども主導の遊びや活動、子どもが中心で教師がつなぎ発展させる遊びや活動が多い保育」があげられている。では、この保育環境が子どもたちのどのような能力を引き出すことになるのか、今回は主にトラブルの解決に焦点をあて、考察したいと考えている。
保育園では5歳児がトラブルを自分たちで解決していく姿が見られる。この力は5歳児が突然身につけるものではなく、0歳児からの他者との多様な関わりの中で磨いていくものである。トラブルを解決する力を身につけるためには、乳児期からの他者との関わりや子ども主導の遊びがいかに大切かを、実際の日常的な保育現場から考えていく。そして他者との関わりや子ども主導の遊びを展開していくためには、保育者がどう関わり、どう子ども同士の関係をつないでいくかも重要である。様々な年齢の子どもがいる保育園という場の役割だけでなく、保育者の役割についても同時に考えていきたい。


の概要を提出した後、果たしてこの文章は一般的なものなのか?(保育園関係者以外に理解してもらえるものなのか?)と疑問に思い、妹(保育園関係者ではない)に頼んで英語にしてもらいました。
それを再度日本語に訳して(日本語→英語→日本語ということ)意味の通じるものが残れば、おそらくそれは一般的な文章だと言えるのではないだろうかという、勝手な理屈です。その結果ですが、まあまあいい感じではないかと思っています。日本語訳はつけませんが。
子どものこと、保育のことを広く知ってもらうことを目指しています。自分たちだけで通じる言葉を使って分かった気になっていても仕方ないと思っているので
今回の翻訳がどんな役に立つのかは分かりませんが、思いついたことはこれからもいろいろと試してみます。


Nursery school where children follow their own play urges and teachers take a role of supporting them to discover, invent and explore.
What this nurturing environment could bring out of children?

One characteristic of good pre-schools is“There are many child-led play and actives. Children follow their own play urges and teachers take a role of supporting them to discover, invent and explore more."
What this nurturing environment could bring out of children?
We would like to think about it by focusing on children’s problem-solving skills.
We see that 5-year-old children solve their problems on their own in our nursery school.
This problem-solving skill is not something that they learn all the sudden at the age of 5.
Children usually learn this skill gradually from the age of 0.
In order to acquire this problem-solving skill, we would like to think about how important it is for children to have interactions with others as well as child-led play.
It is also important to know how caregivers get involved in children to expand thier interactions with others and child-led play.
We would like to think about not only a role of a nursery with children of various ages but also a role of caregivers.

2016年4月8日

No.440 トラブルに対処する力

今回はトラブルについて。トラブルを辞書で調べると「いざこざ。紛争。悶着。」と出てきます。これは他者がいるからこそ起こるもので、たくさんの人と共に生活している私たちは、常にトラブルの起こる可能性がある中にいることになります。他人と関わって生きていく上でトラブルをゼロにすることは、おそらくできないと思います。では仕方ないからそのトラブルを全部正面から受け止めるのかというと、それはしんどすぎます。だから誰もが上手く回避したり、折り合いをつけたりしながら生活しているのが現状だと思います。では、どうやってその力をつけていくんでしょうか?

このことについて明確な答えを持っているわけではないのですが、1つだけ自信を持って言えることがあります。それは、回避したり折り合いをつけたりすることは、人から教わったり教科書を読んで学ぶようなことではなく、実際のトラブルを経験する中で学んでいくしかない、ということです。そのトラブルは激しいぶつかり合いのようなものである必要はありません。小さな葛藤体験を子どもの頃から経験できることが大事だと思っています。そんなことを考えながら0,1歳児のクラスの様子を見に行きました。



4月から入った1人の子が保育者に抱かれています。周りには昨年から保育園にいる3人の子がいて、絶妙な距離を保ちながら保育者と会話をしたり、他の子と笑い合ったりしてゆったりと過ごしています。この3人の子は保育者が誰も抱っこしていなければ、もう少し保育者との距離を詰めていたかもしれません。でも、その時は抱かれている子に保育者を譲っているようにも感じられました。このような姿を見ることができるのは、保育者との信頼関係があるからこそだと思います。その信頼関係を基盤にし、子ども同士の関係の中で譲ったり譲ってもらったり、自分の思いを出したり引っ込めたりして葛藤することもあったりと、そんな経験を積み重ねていくことがトラブルに対処していく力の獲得につながっていくと思います。今回見た小さな葛藤の場面(小さなトラブルと言ってもいいかも)は、まさに子どもたちの学びの場面だと思いました。

トラブルは様々です。大人がきちんと止めなければいけないトラブルはもちろんあります。そこは十分気をつけていきますが、子ども同士でそこに向き合って経験を重ねるべきものも、実はたくさんあります。トラブルに対処する力の獲得につながる小さなトラブルの場面に改めて注目し、その意味を考えていきたいと思っています。

2016年4月1日

No.439 28年度がスタートしました

今日から平成28年度のスタートです。新入児が加わることで、新たな子ども同士の関係が生まれ、昨年度までとは少し違った子どもたちの姿が見られるようになると思います。私たちの役割は「子どもたちの姿をよく見て、子どもたちが成長していくために必要な環境を用意すること」です。昨年度までのことにとらわれることなく、必要な変化は積極的に行っていきます。なぜ変化をするのか?そのことによって子どもたちはどのような姿を見せているのか?そんなことも保護者のみなさんにもお伝えしていき、保育園のことをより知ってもらえるようしたいと思います。

今年もテーマを決めて保育を行っていきます。昨年度は「四季」でした。そして今年度は「季節を味わう」です。単に季節を味わうのではなく、そのことによってより子どもの活動が促され、興味関心も高まっていくことがねらいなので、どう保育の中に取り入れていくかは、まだ悩んでいる最中です。いろんなことを試しながら、保育の中での季節の味わい方を見つけていこうと思います。さっそく8日(金)にはお花見をするんですが、そのときに食べる巻き寿司作りを花見の前に行う予定にしています。調理体験は遊びにつながりやすく、ままごと遊びや製作活動にも巻き寿司を作った体験が活きてくるんじゃないかと思っています。そうしたつながりにもちゃんと焦点を当てて、そこから更に展開していくよう働きかけたりと、つながって発展していく保育のカタチも大事にしていきたいと思います。

子ども、特に乳児にとって保育園という場がどのような意味を持っているのか、その研究を継続して行っていきます。最近は、保育園が決まらない保護者の声が大きな反響を呼び、1人でも多くの子どもが入園できるように保育制度の見直しが検討されています。保育士の処遇が良くないということで新たな制度もできましたし、まだまだ検討は続いています。これらは当然必要なことだとは思いますが、一番聞きたい「子どもにとってより良い保育は?」という話がなかなか聞こえてこないことはとても残念に思っています。なぜその話が表に出てこないのか、とても不思議です。保育園は0歳から6歳までの全ての子どもにとってより良い体験のできる場でなければいけません。そのためにも、子どもたちが保育園での生活や関わりの中でどんな力をつけているのか、成長のためにはどんな環境が必要なのかといったことを明らかにしていくのは大事なことです。保育園での子どもたち、特に乳児の姿をよく観察し、保育のあり方を研究していきます。その研究から見えたことを整理してみなさんにもお伝えしたいと思っているので、このことも楽しみにしておいてください。