前回は運動会のことを書いたのですが、その時に園庭には様々な要素があることに少しだけ触れました。あさりこども園の園庭がどのような思いで作られているのかについて今までも時々書いてきたのですが、思いをできるだけ細かく伝えるためにいろんな表現方法を持たなければいけないと思っています。アピールという点においては各種メディアの表現は非常に勉強になるので、こども園のこと、保育のことを伝えるためにいろんなメディアをチェックして参考にさせてもらっているところです。
先日おもしろい記事を見つけました。『なぜ誰もがマツダスタジアムに魅了されるのか?設計に隠された驚きの7原則とは』というタイトルの記事です。ご存知の通り、マツダスタジアムはセリーグ2連覇を決めた広島カープの球場の話で、行ったことのない人でも読んでもらうと魅力とその秘密が伝わってくるんじゃないでしょうか。ここに書かれている7原則は、こども環境学会代表理事も務めておられる仙田満氏の影響を受けたもので、実は園庭づくりの7原則ともつながっています。そんなわけで、この記事に書かれている7原則に沿ってあさりこども園の園庭を整理してみることにしました。若干勝手な解釈による説明も含まれますが、その辺は適当に読み流してください。
1.循環機能があること
私たちはこの“循環機能”を“回遊性”とか“反復性”と呼んでいるのですが、園庭で言うと真ん中にあるトラック上のルートを基本とした構成がそれに当たります。同じところをグルグルと巡っているだけでは飽きてしまわないだろうか?と当初心配していたのですが、記事中で「遊具の研究の中で、行き止まりがあると基本的に子どもはそちらの方向には行こうとしないそうです。ずっと先まで続いているような循環機能があると、自分の行動に制約がなくなったように感じ、人はつい動きたくなるとのことです」と書かれているように、子どもたちはグルグルを楽しんでいるのは見ていて分かります。もちろん身体のサイズや集団規模によって満足度は変わってくるでしょうが、今のところはグルグルが機能していると考えています。
2.その循環(道)が安全で変化に富んでいること
記事中には「これも遊具の研究の中で、子どもは起伏があったり危険性を感じる場所を避けて、安全に動ける循環動線を見いだし、そこを基本として動くようになるようです。もちろん、それを踏まえた上でどこかに寄り道したり、見誤って危険な経路を通ってけがをしてしまうことはありますが、そういった経験も踏まえて安全な経路を通るようになる。人間の根源的な本能でリスクを避けようとします。さらには、その循環経路が変化に富んでいることで、何度も繰り返し、通りたくなります」とあります。あさりの園庭のトラックは基本的に平らに作っています。乗り物を使って遊ぶルートでもあるため、段差のない状態です。このような場所があることで、子どもたちは安心して周囲のバラエティに富んだ遊び場に挑戦することができます。ちょっと挑戦して難しかったら戻ってくる場所がある、この安心感は大事です。そして変化という意味では、たくさん植えてある木々の存在も大きいです。特に果樹は季節によって大きく変化しますし、何よりも果実の存在は魅力的です。今はザクロがたくさんなっていてその話で盛り上がったりもしていますが、果実ができるのを楽しみに待ったり、できた実を食べる楽しさもあったりと、変化を感じる要素は満載です。
3.その中にシンボル性の高い空間、場があること
園庭の中で最もシンボル性の高い場所はどこかをいろいろ考えたのですが、いくつかある中でやはり“築山”だろうという結論に至りました。園庭のほぼ真ん中に位置し、どこからでも見ることができます。子どもの発達を考えると、登るためには様々な力を獲得していることが必要で、登ることができるようになると大きな滑り台を滑る権利を得ることになる、ある意味憧れを抱かせる存在でもあります。
4.その循環に“めまい”を体験できる部分があること
めまいについては記事中に「“めまい”というと分かりづらいですが、自分の感覚・知覚を揺るがすことで、その体験自体が遊びになるというものです。」と書かれています。感覚を揺るがす機能を持っているのは、総合遊具の揺れるネットや橋、そしてなんといっても高さのあるツリーハウスです。ここで遊ぶことによって非日常的な感覚体験ができる、つまり”めまい”体験ができるわけです。
5.近道(ショートカット)ができること
園庭にはトラックがあると書きました。基本的な遊びのゾーンはトラックを巡ることでたどり着けるように配置しているのですが、真ん中をショートカットできる道もあります。改めてこの道を眺めてみたんですが、確かにこの道のおかげで動線のバリエーションはかなり多くなっています。この道の重要性を改めて確認することができました。
6.循環に広場が取り付いていること
先にも少し書きましたが、遊びのゾーンはトラックの周囲に配置してあります。単にトラックを巡るだけでなく、巡りながら様々な遊びのゾーンへ行き、そこで満足が行くまで遊びに没頭することができます。砂場であったり、たき火の出来る場であったり、草地であったり、畑であったりと、ゆっくりじっくりと遊ぶことのできる“広場”があり、この存在も遊びの充実には欠かすことができません。
7.全体がポーラス(多孔質)な空間で構成されていること
ポーラス(多孔質)については記事中で「内外をつなぐ穴が無数に空いている構造だという意味です。」と説明されています。この視点で園庭を眺めると、園舎と園庭をつなぐルートは数多くあることに気づきます。それぞれの部屋から見える園庭は少しずつ違っていますし、当然出る場所によって最初に触れる園庭の場所は違います。同じ園庭に出るにしても、様々なアプローチがあるわけです。また、「園舎から園庭へ」の視点だけでなく、「園庭から園外へ」の視点も多様です。周りには山があり、川があり、民家があり、それらが園庭の一部のように溶け込んで見えます。町の中の一部だということを感じることのできるオープンな視界があることも、園庭の要素として大事な部分です。
7原則に沿って園庭の要素を書いてみましたが、ぜひみなさんもこのような視点で園庭を眺めてみてください。
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