2013年5月31日

子どもの生きるリズムに沿う

「子どもの文化」という本にあさり保育園のことを書かせてもらったので、ここにも載せておきます。『子どもの生きるリズムに沿う』というシリーズです。



見守る保育は、子どもの生活、遊びのリズムを保障する


 私たちの保育園で行っている保育は「見守る保育」と呼ばれることがあります。
 これは新宿せいが保育園の藤森平司園長が提案され、全国各地の保育園でも実践されている保育の考え方です。「見守る」という言葉を使うとき、見ているだけでは良くないのでは?と言われることがありますが、そうではありません。子どもたち一人ひとりの発達過程をしっかりと「見」て、しっかりと「守る」、そして発達に応じた適切な「援助をする」というのが「見守る保育」の考え方です。そしてこの「見守る保育」はリズムということからも説明することができます。それは、子どもの生活のリズムや遊びのリズムを保障することも大事なポイントだからです。ここではそうしたリズムを保障する保育について、私たちの保育園での実践を通して説明します。


その子に合ったリズム

 まず生活のリズムを保障することについてです。大人の生活にリズムがあるように、子どもの生活にもリズムがあります。生活のリズムは家庭によってずいぶん違っています。
 例えば、朝起きる時間に始まり夜寝る時間まで、家庭によって様々なリズムがあります。そんなことから考えても、一人ひとりの子どもの生活のリズムが違っているのは当然のことです。それなのに保育園で全員が同じリズムで行動することを求めると、当然リズムが乱れてしまう子が出てきてしまいます。保育指針の第三章には、情緒の安定のために「一人ひとりの子どもの生活リズム、発達過程、保育時間などに応じて、活動内容のバランスや調和を図りながら、適切な食事や休息が取れるようにする。」と書かれています。子どもの情緒が安定するように、私たちは一人ひとりの生活のリズムを保障することが必要になります。なので、家庭は家庭、保育園は保育園と切り離して考えるのではなく、家庭との連続性を考慮し、個々の生活リズムに応じるよう心がけています。


 ●赤ちゃんからの食のリズム

 例えば食について。まず赤ちゃんですが、ミルクを欲しがるタイミングや飲む量はそれぞれ違います。家庭でいつ、どのくらい飲んだかによっても違いますし、その日の活動内容によっても違います。それなのに、全員が同じ時間に同じ量を飲ませるようなことは決してありません。赤ちゃんが求めるタイミングで、求める量を飲めるように、保育者は赤ちゃん一人ひとりの生活リズムを把握し、違いを把握し、要求に応えるようにしています。そして3,4,5歳児の食事はセミバイキング方式で行っています。自分の食べたい量を当番の子に伝え、よそってもらうやり方です。赤ちゃんの場合と同じように、朝、家庭で何を食べてきたか、どれだけ食べてきたかも違うため、個々によって必要な量は違っています。また、その日の気候や活動内容、気分によっても食べたい量は変化します。そんな違いに対応できるのもセミバイキング方式の特徴です。自分に必要な量を選択して、友だちとの会話を楽しみながら食事をとることが、午後の活動も主体的に行えることにつながるので、食事の時間も生活のリズムを保障するための大事な時間と捉えています。


 ●睡眠のリズム

 次に睡眠についてです。以前私たちの保育園では、午後1時頃から3時頃まで全員が一斉に午睡をするようにしていました。しかし、これは多くの保育園で見られる光景だと思いますが、中にはどうしても午睡のできない子がいます。その子たちはじっと布団に入っていることができず、時には騒いだりして他の子を起こしてしまうこともありました。子どもは一人ひとり体力も違います。午睡が必要な子もいれば、午睡をしなくても午後の活動に影響のない子もいますし、午睡が必要な子の中にも短時間の午睡で十分な子もいたりと様々です。そこで保護者と相談しながら、3・4・5歳児には午睡をするかどうかを選択してもらうようにしました。そうすることで、午睡を必要としない子は自分のリズムを崩すことなく生活できますし、必要な子は誰にも邪魔されることなく十分な睡眠をとることができ、リズムを守ることができます。また、必要ではあるけれど時間は短めで構わない子は少し遅れて午睡のスペースに移動したり、早く目覚めた子は起きている子どもたちと同じスペースへ移動したりしています。全ての子どもたちに同じ睡眠のスケジュールを当てはめるのではなく、生活リズムは個々によって違うことを考慮し、眠たい子は寝て、眠たくない子は静かに過ごして体を休めるといった、様々な睡眠・休息が選択できるようにすることが大事だと考えています。


保育空間とリズム

 保育園の空間をどのように設定するかも、リズムを保障する観点から工夫しています。例えば遊ぶスペースと食べるスペース、寝るスペースを独立させていることがそうです。もしそれらが独立しておらず、同じスペースで共用しているとしたら、強制的に一斉に活動を中断させられる場面が出てきてしまいます。例えば積木遊びが盛り上がってきて大きな作品が出来はじめていたとします。でも食事の時間になれば準備をしなければいないため、積木遊びを中断して片づけなければなりません。子どもたちがイメージを共有しながら楽しんでいて、更に発展していきそうな状態であったとしても、そこで強制的に中断しゼロの状態に戻すことになります。でも私たちの保育園では、遊と食のスペースを独立させているため、「あとちょっとで完成するから…」を認めてあげて切りのいいところまでやらせてあげることができます。そのことで集中力が身につきますし、保育者からいわれてではなく自分で納得して区切りをつけることで、自分から次の活動へスムーズに移っていく自律を学んでいくことにもなります。また、積木ゾーンでは作りかけの作品はそのままで残しておくことが認められているので、遊びに集中でき、安心して次の活動へ移れることにつながっています。


 ●食事のスペースと寝るスペース

 そして食事のスペースと寝るスペースの場合です。子どもたちは一人ひとり食べる早さが違います。もしも寝る場所が同じ場所であれば、決まった時間までに布団の準備をしなければいけないため、食べるのが遅い子がいたすると、ある時間で食事を切り上げるか、食べている途中でも準備をしなければいけないケースもでてきます。布団を敷くときはたくさんのごみやほこりが出ることになるため、そこで残って食事をする子にとって望ましい環境とは言えません。食事は友だちと話をしたりしながら、みんなで一緒に食べることを楽しむことが大事です。決して時間内に食べることが一番の目的ではありません。かといって、食事の時間が長引いたからといって睡眠時間が少なくなってもいいかというと、それも避けたいところです。一人ひとりの食事のリズムも睡眠のリズムも保障するためにも、やはり食と寝のスペースは独立させておくことが必要だと考えます。
 遊・食・寝のスペースを独立させるうえで、保育者同士の連携も重要になってきます。それぞれのスペースが独立しているということは、食事のスペースで食事の準備が進んでいるときに遊びのスペースで遊んでいる子がいたりと、常に複数の場所で子どもたちの活動が行われていることになります。それぞれの場所での活動に保育者が対応するためには、複数の保育者で連携をとることが必要です。私たちはチーム保育を行っていて、誰がどのスペースを担当するかを当番制で決めていますし、急な出来事に対しても子どもの体調が悪くなった等の出来事があった場合も声を掛け合うことで対応できるようにしています。子ども一人ひとりのリズムを考慮した保育を行うためにも、複数の保育者でチーム保育を行うことは重要な点であると考えています。


 ●遊びのゾーンがいくつもある

 遊びのゾーンについてもう少し触れておきます。私たちの保育園では、何かがしたい!と思ったときにそれがすぐにできるように、常設の遊びのゾーンをいくつも用意しています。
 前述の積木ゾーン、ごっこ遊びゾーン、製作ゾーン、絵本ゾーン、ゲームゾーン、文字・数・科学を取り上げたふしぎゾーンといった感じです。子どもは遊びから多くのことを学んでいくわけですが、それは「やらされて」ではなく自分自身が興味を持ったときに強く促されます。興味・関心を持ち、そこから自発的に環境に働きかけることで成長していくのが子どもたちです。となると、興味・関心を持ったそのタイミングを逃さないようにしてあげる必要があります。例えば何かを作りたくなったとき、製作ゾーンには材料や道具が揃っていることを子どもたちは普段から知っているため、すぐにそこへ行って製作活動に取り組むことができます。園庭で見つけた虫について調べようと思ったとき、ふしぎゾーンには図鑑が置いてあることを知っているため、すぐにそこへ行って調べることことができます。そのように、何かをしたい、何かを知りたいと思ったタイミングを逃すことなく活動に移せることも、子どもたちの活動にリズムを生み出すことにつながります。すぐに実現できなければ興味が薄れてしまうこともあり得ます。興味がすぐに実現することでその体験が楽しいものになり、そのことで更に次の興味が沸いてきて…といった、リズムを生み出すことも、子どもの遊びを考えるうえで重要な点です。そのためにも、各ゾーンが子どもの興味・関心に応える場であるよう準備をするために、保育者は子どもたちが今何に強く興味を示しているかを把握しておく必要があります。それには、普段から子どもたちの遊びの様子をよく見て、そのことについて話し合い、常に各ゾーンのあり方について見直しをするようにしています。


日々の生活にメリハリをもたせる

 行事を大事にしていることも、子どもたちの生活リズムを保障するために必要なことと捉えています。ハレとケという言葉があるように、年中行事や祭などの非日常である「ハレ」と、普段の生活である「ケ」が保育園の生活の中でうまく混ざり合っていることは、子どもたちの生活にリズムを与えてくれます。七夕会、お月見会、もちつき会、豆まき会、ひな祭り会などの年中行事は、日本や地域の伝統行事を子どもたちに伝承するというねらいもありますが、日々の生活にメリハリをつける目的もあります。このメリハリによって生活にリズムが生まれ、それが情緒の安定につながります。そんな大事な行事だからこそ、子どもたちにストレスを与えるような内容ではなく、楽しんで意欲的に取り組めるような内容を計画しなければなりません。そのためにも、まずは保育者がその行事を、そして準備の段階からも楽しみ、その楽しむ姿を子どもたちにも見せるようにしています。

 子どもたちは情緒が安定することで自発的に環境に働きかけるようになります。そして、そのことによって学びを得て成長していきます。情緒の安定に欠かすことにできない「生活、遊びのリズム」を保障することは、子どもたち一人ひとりの発達過程をしっかりと「見」て、しっかりと「守る」、そして発達に応じた適切な「援助をする」という「見守る」ことにつながります。そのため、様々な場面で一人ひとりの「生活、遊びのリズム」を保障することを大事にしています。

2013年5月30日

No.297 リズムを共有すること

先週末、福岡で行われた「日本赤ちゃん学会学術集会」に参加してきました。あさり保育園とさくら保育園の取り組みを発表するためです。発表してくれたのは主任のMさん。大学教授や企業の研究員、医師たちがたくさんいる前で堂々と発表してくれました。みなさんにも見せてあげたかったくらいです。

発表のテーマは「保育所における乳幼児の関わり」。乳幼児、特に乳児は母子関係の大切さばかり取り上げられる傾向にありますが、私たちは実際に子どもたちを見ていて、母子関係が特別であり大切なのは間違いないことだけど、決してそれだけではないことを感じています。父親もそうですし、おじいちゃんおばあちゃんの関わりも、それから地域のたくさんの人との関わりも、子どもの成長には大事なことです。ちょっと意地悪く解釈すれば、母親1人に子どもを育てる責任があるとも受け取れてしまう、そんな意見に出会うことも少なくありません。でも決してそんなことはないですよね。今まさに子育て中の保護者のみなさんは、同じように感じておられるんじゃないでしょうか。

で、今回はその様々な人との関わりの中でも、特に子ども同士の関わりの重要性について主張してきました。言葉によるコミュニケーションができるようになる前には非言語のコミュニケーションが行われます。非言語のコミュニケーションを十分に体験し、それが言語によるコミュニケーションへとつながっていくという考えです。その非言語によるコミュニケーションは、身振り手振りだけでなく、「リズム」によっても行われているのではないかということを発表してきたわけです。
(ややこしくてよく分からない話ですね。すみません。)

ある子が積木で机を叩いてカン!カン!カン!…と音を出していると、それを聞いた別の子も積木を持ってやって来て、一緒になってリズムを合わせてカン!カン!カン!…というのはよく見られる光景です。他者が出したリズムに合わせることでそのリズムを共有し、それが他者との共感につながり、やがて他者と心が響き合う共鳴へとつながっていきます。こうしたリズムのやり取りは乳児でも日常的に行っています。○歳になったらできるというものではなく、年齢に関係なく他者のリズムを聞くことができる環境があるかどうかが重要なんです。だからこそ子ども同士で関わることのできる環境は赤ちゃんの頃から大事なんですよと、これからもしっかりアピールしていくつもりです。

2013年5月23日

No.296 園庭の様子を書いてみました

この文章は園庭に新しくできた絵本ゾーンのデッキに座って書いています(木曜日です)。目の前では、ぞう組さんときりん組さんが中心となってリレーが行われています。ちょっと変わったリレーで、待っている子はブランコをして遊んでいます。リレーに加わっているようには見えないのですが、応援の声を張り上げていますし、次の順番は○○くんだよー!と指示も飛んだりしています。なんとも緩やかなリレーですが、ルールはちゃんと共有して関わりを楽しんでいるようです。そう思っていたら、さっきまでのリレーの中心にいた子が他の遊びに移っていき、中心人物が変わってくま組さんも加わってきました。メンバーが入れ替わるとリレー自体の雰囲気も変わってきます。

そんなことを書いていると、ぞう組のRちゃんが摘んだ花を見せに来てくれました。黄色い花と白い花です。その花について話をしていると園庭の隅にある紫色の花が目に入ったようで、「あの花はなんだろう?」と言いながらそちらへ走っていきました。園庭にいろんな植物があり、それぞれに違った表情や成長を見せているので、子どもたちの興味はいい具合に刺激されているようです。今度はきりん組のNくんが捕まえた黒くて小さい虫を見せに来てくれました。デッキに座っていると、いろんな子が遊びの成果を教えに来てくれます。

横のたき火ゾーンに目をやると、うさぎ組のSくんとぞう組の男の子たちが何やら楽しそうにお話をしています。どうやら見つけた虫を見せてあげているようです。「畑にもっとたくさんいるから行こう!」と誘われ、それに対して言葉を返すことはありませんでしたが、Sくんは一生懸命ぞう組さんたちの様子を真似をしてついていきます。離れたところでは、車に乗ったけどなかなか進むことのできないうさぎ組のAくんに、きりん組のMちゃんが話しかけています。異年齢の関わりには「下の子は刺激を受け、上の子は教えることで自信をつける」ねらいがあり、そんな様子があちこちで見られるので嬉しくなります。

後ろの方では金槌で釘をうつ音が聞こえています。砂場ではままごと遊びがずっと続いています。いろんなものを発見しては、みんなで驚きや喜びを共有している姿も見られます。こんな様子を見ていると、もっと夢中になって遊べる園庭に、もっと興味関心の尽きない園庭にしていきたいという思いが強くなってきます。まだまだ満足はしてませんので、どんどん変化していきますよ。

相手の立場に立つことの大切さについて

毎週配布する(ことに勝手に決めている)『園長のひとりごと』。
今週分を書いたんですが、なんとなく「(自分にとって)楽しくないなあ」と感じたので別の文章を書きました。
でもこれも自分の思いではあるので、ここにはのせておきます。

「相手の立場に立つことの大切さについて」

コミュニケーションって難しいですよね。例えばその手段の一つの「言葉」。その言葉を使って自分の思いを伝えたり、反対に相手の思いを受けとったりするわけですが、伝えることだけを考えても何でも言えばいいというわけではありません。私たちは日々生活している中で世の中のためになるようないいことだけを考えているわけではなく、人にとってはどうでもいいくだらないこととか、場合によっては邪なことを考えたりする、そんな存在ですよね。少なくとも私はそうです。ではその考えていることの全てを言葉にしているか、表現しているかといえば、決してそんなことはありません。何を言って、何を言わないか。また言うとしてもどのような言葉を選んで言うか。その判断にその人の人格が現れると思っています。

その判断の基準になるのは相手の存在です。これを言うと相手はどう受けとるだろうか?どんな気持ちになるだろうか?と、どれだけ相手のことを思えるかがポイントになってくると思います。もしも自分が相手の立場だったら、と想像力を働かせることができるかどうかによって、何を言って何を言わないかの判断は大きく変わってくるはずです。今の自分の立場はたまたまそうあるだけであって、もしかしたら自分は相手の立場だったかもしれないと想像することは、ものすごく大事なことだと思います。自分は日本人だけど、もしかしたら違う国の人として生まれていたかもしれないと考えると、他国の人に対してひどい言葉を浴びせるなんてことはできないですよね。思っていることの全てを言うのを控えてみたり、少し表現を変えてみたり、そんなことをするはずです。ちょっと極端な話ですが、それがコミュニケーションだと思っています。

なんだか変な話になりましたが、今なにかと世間を騒がせている有名な方のいろんな発言を耳にしていると、どうしてもこのことを書きたくなったんです。ここでは保育に関することを書くと決めているので、そのことに対して細かくどうこう書くつもりはありません。ではなぜこんな話かというと、このことが私たちが考える保育と無関係ではないと感じたからです。コミュニケーションを始めとする他者との関わりでは、相手の立場に立つことがとっても大事なことだという思いがあるからです。コミュニケーションの基本、他者との関わりの基本を、まずは大人が示していかなければと考えているので、なんだかムズムズしてこんなことを書いてしまいました。

2013年5月16日

No.295 園庭と遊びと情報発信について

社会福祉法人花の村には、1年間かけて1つのテーマについて議論を重ねていく「プロジェクト活動」があります。今年度は全部で10のプロジェクトがあるのですが、その内の保育園に関係する代表的な3つをここで簡単に紹介します。

その1.「これからの園庭のあり方」
最近園庭をガチャガチャと改造し始めています。あさり保育園の園庭は一般的な保育園からすると特殊なようで、広いグラウンドがあって、その周りに遊具を配置するという形をとっていません。「運動会はどうするの?」と聞かれることもありますが、年に1回の運動会のための園庭を作るのではなく、子どもたちが日々の遊びの中で体験してほしい運動や遊び、経験が可能になる形を表現したいという思いです。そのためにはどんな要素が必要なのか?植物だったら何をどこに?高低差が必要ならどんな規模のものをどんな素材で?そんなことを改めて考えていきます。

その2.「あそびの再発見」
保育園の遊びについて、もう一度見直してみます。保育園で行われる保育は「養護と教育」と定義されています。養護とは生命の保持と情緒の安定。では教育は?これは決して早くから文字や数を教えたり、英語を教えたりといった学校教育の先取りではありません。学校での勉強での支えになってくれるような、後伸びするような、そんな体験のことです。それを保育園の遊びの中でどのように体験していくかを整理し直すことが目的です。文字・数を習得し、科学に興味を持つためには、押さえておくべき過程があります。例えば積木遊びの中にも、そのための要素はたっぷりと詰まっています。そんなことを保護者のみなさんにも伝えていければと考えています。

その3.「保育園からの情報発信」
保育園からの情報発信の手段はいろいろとあります。園便り、献立表、クラスからのお便り、日々の連絡帳、掲示板、ホームページ、フェイスブック、ツイッターなどがそうです。ではその手段を適切に活用できているか?保護者、園を選んでいる保護者、地域の人など、それぞれが求めている情報は違っているはずだけど、それぞれに必要な情報を適切な内容と手段で提供できているか?そんなことを見直していきます。

以上の議論が進んでいくにつれて、少しずつ変化が現れると思います。変化が小さいと分かりにくいかもしれませんが、ぜひ注目していてください。

2013年5月9日

No.294 春は苦味です

『春苦味 夏は酢の物 秋辛味 冬は油と合点して食え』 これは明治時代の食養研究家の石塚左玄氏の言葉です。この言葉は保育園で貸し出しを始めた「自然流育児のすすめ」という本に書かれていて、私はそこで初めて知りました。意味は書かれている通りです。「春は苦味」→フキノトウや菜の花などの野草や山菜などのアクのあるものは、冬にたまった脂肪分を排泄してくれます。「夏は酢の物」→食欲が下がる夏はさっぱり酢の物。きゅうりやトマト、茄子などの野菜は体を冷やしてくれます。「秋の辛味」→夏の間に消耗した体力を補うための食欲増進をしてくれる辛味。ピリッと辛い大根おろしなどです。「冬は油」→寒さ予防に脂肪分を取って抵抗力を養います。要は、その季節ならではのものをその季節に食べる、食事とは本来そういうものだというわけです。

今月の2日の保育園の昼食では、タケノコごはん、若竹汁と、タケノコをたくさん食べました。タケノコの旬ということで、せっかくなのでみんなで皮むきをし、タケノコづくしのメニューにしようと調理担当者が考えてくれました。このような食事は、栄養素を一番に考えることからはなかなか出てこない食事だと思っています。様々な栄養を食事によって摂取するのが大切だということに異論はありません。でも、たんぱく質が○グラム、脂質が○グラム…といったように、数字合わせのメニューだけでいいかというと、やはりそのことには違和感を覚えてしまいます。その季節にとれるものを食べることは、上で書いたように人間にとって意味のあることです。「フードは風土」という言葉もあるように、その土地でとれたものがその土地の食事を決めるという考え方も同じような意味だと思います。子どもたちの体のことを考え、この地域の特色を生かし、季節の恵みを感じながら、そして楽しさを感じることのできる食事の場作りをいつも考えています。

あさり保育園の食事は、ごはんと味噌汁、そこに副菜という形が基本で、フードは風土の考え方を基本としています。今問題になっている肥満や成人病の低年齢化は、この糖分や脂質の摂り過ぎが主な原因と言われていますが、ごはんと味噌汁に合う副菜は糖分や脂質は自然と少なくなります。旬のもの、畑でとれたものは、その場で調理をしたりしてしっかりといただいています。行事のときは「ハレの日メニュー」として、特別な料理も登場してメリハリをつけています。食事のことはいくら考えても尽きることはありませんね。



今回紹介したのはこの本。

「自然流育児のすすめ」


この他にオススメしたい本は

「良いおっぱい 悪いおっぱい」


「子どもはなぜ、ピーマンが嫌いなのか?」


「人間は脳で食べている」


ちなみに読む順番のオススメは次の通りです。

①『卒乳』

②『離乳食』

③『良いおっぱい悪いおっぱい』

④『子どもはなぜ、ピーマンが嫌いなのか?』

⑤『人間は脳で食べている』

⑥『自然流育児のすすめ』

2013年5月4日

三瓶縦走トレイルラン

行ってきました、三瓶縦走トレイルラン。



北山縦走は1人だったけど、今回はHさんと2人で走りました。



今回は男三瓶→子三瓶→孫三瓶→大平山→女三瓶というコース。



北山縦走よりも走りやすい道が多く、また違った楽しさがありました。











ちなみに三瓶の土はクロボクと呼ばれる黒い土。



黒くてほくほくした感じの土をさす言葉のようです。
こんな土が保育園の園庭にあったら遊びが広がるだろうなあと
そんなことを考えながら走ってました。







GWということもあって登山者が多く、トレラン中の方にも遭遇しました。
北山縦走では登山者とすれ違うことが少ないのですが、
今回はいろんな人と短い会話を楽しみながら走ることができました。
三瓶はいろんなコースが選択できるで、まだまだ楽しめそうです。
今度は東の原のリフトの側を駆け下りてみようと思っています。



2013年5月2日

No.293 ハレとケの話からリズムの話まで

「ハレとケ」という言葉があります。年中行事や祭などの非日常が「ハレ」で、普段の生活である日常が「ケ」です。このハレとケがうまく混ざり合っていることは保育園の生活でも大事だということについて書いてみます。昨日はこどもの日の会を行い、5月5日のこどもの日にはどんな意味があるのかを子どもたちに話しました。おやつに登場したのは柏餅です。少し前から園庭には鯉のぼりが泳いでいます。何でもないことかもしれませんが、こうした行事を保育園では必ず行うようにしています。

この他にも七夕会、お月見会、もちつき会、豆まき会、ひな祭り会などの年中行事が保育園にはあって、これらをとても大事にしています。年中行事を行うねらいには、日本の伝統的な行事を子どもたちに伝承するということがあります。そして生活にメリハリをつけるとかリズムを生み出すといった目的もあります。このメリハリとかリズムは大事なことで、いくら保育園での生活が楽しいものであったとしても、365日同じ日が続くとなると誰でも退屈してしまうものです。子どもたちは日々の生活や遊びの中から多くのことを学んでいきます。だからこそ楽しさを感じながら自発的に日々の生活を送ることが大事で、そのためにメリハリが必要になるわけです。ケの日の中にハレの日が適度に混ざり合っている状態は、昔から続いている大切なリズムです。このリズムを子どもたちにしっかりと伝えることも大事にしていきたいと思っています。

そしてハレとケとは違いますが、1年間のリズムが大切なように、1日の生活においてもリズムは大切です。みんなで集まっての朝のお集まりからはじまり、次は個々に取り組みたい遊びに夢中になる時間があります。それが終わるとみんなが揃ってから食べ始める昼ごはん…というように集団の大きさは活動によって頻繁に変わっていきます。これもリズムを生み出すうえで大事な要素です。また、遊・食・寝の場所を独立させることで個々のリズムを保障することも大事にしています。もしも全てが一緒の場所で行われるのであれば、どれだけ遊びが盛り上がっていても食事の準備の時間になれば全て片づけないといけませんし、ごはんを食べるのに時間がかかる子がいても昼寝の準備のためにある時間で切り上げなければいけません。個々のリズムは成長のリズムでもあります。決して均一ではありません。そのリズムを保障し、1人ひとりが意欲的に活動できるようにすることがあさり保育園の保育の形ともいえるかもしれません。




こどもの日の会食は「こいのぼりカレー」。ハレの日のメニューです。