2013年8月29日

No.309 目的と方法1

あさり保育園で行っている保育は「見守る保育」と呼ばれることがあります。この「見守る保育」という言葉ですが、「見守る」が普通に使われている言葉なので、例えば「見守る保育って見ているだけなんですか?」なんて聞かれることもあります。でもこれは普通に考えると分かると思いますが、見ているだけの保育なんてあり得ないですよね。では何を見守っているのか、見守るとはどういうことなのか、これをきちんと説明しなければいけません。ということで、何回かに分けてここで説明することにします。ただ運動会が近いので、そのことも書いたりしながらのんびりとやっていくことにします。

まず「見守る保育」の目的。

『環境を通して子どもの発達を保障する。(子ども自ら発達しようとする力を引き出し、可能な最大限度まで発達させることを意図した環境を用意すること。)』

子どもたちは自ら育つ力を持っています。そして、環境に働きかけ、その環境との相互作用によって力を獲得していくのが子どもの発達です。と、こんな風に説明してもまだ分かりにくさは変わらないのかもしれません。ということで、次に方法の話に進んでいきます。

1.子どもが自発的、意欲的に関われるような環境の構成と、そこにおける子どもの主体的な活動を大切にすること。

例えば帰りの会で次の日の確認をしたり、朝の会ではもう一度その日の活動の流れを説明します。こうすることで子どもは見通しをもって活動に取り組むことができます。見通しをもつことが出来なければ、大人でも「この次は何をするんだろう?」と不安になり、意欲的には取り組めませんよね。

また、遊びのゾーンも大事な環境です。絵本ゾーン、制作ゾーン、ゲームゾーン、積み木ゾーン、ごっこ遊びゾーンなどがそうで、例えば何かを作ってみたい!と思ったとき、子どもたちは制作ゾーンへ向かいます。そこに行けば必要な素材はたくさん用意されていますし、ハサミやのりなどの道具も用意してあるため、自発的に取り組むことができます。さらに、ごっこ遊びゾーンでお店屋さんごっこが盛り上がったとき、何か足りないものがあったから制作ゾーンで作ろうといった子どもたちの発想が自由に展開できる環境なので、子どもたちは自分で考え、主体的に活動することができます。こんなことを考え、実践していくことがまずは大事なポイントです。

10 Educational Concepts for Early Childhood

10 Educational Concepts for Early Childhood


1. All Japanese nationals have the right to be educated from birth.

2. It is important to begin children’s education at a very young age as this is in the best interest of the child.

3. All children have the right to receive the best possible care, beginning at birth.

4. All children from early childhood have the right to develop their personalities, talents and spiritual/physical abilities to their fullest potential.

5. Early childhood is the most important time for building a foundation for life-long education, not merely for preparing to enter school. It is, however, necessary to give consideration to the importance of the transition from pre-school to school in order to enable the child to successfully make this transition.

6. Early childhood is a time for children as future-oriented human beings to cultivate their motivations, explore their world, and develop their awareness. In addition, early childhood is a time to learn communication skills, physical skills, and nurture autonomy and independence.

7. All young children are basically educated through the environments surrounding them, and therefore we must prepare good educational environments for them.

8. As early as possible, all children should be encouraged to express themselves freely and participate in making decisions on matters relating to themselves.

9. The dignity of all children should be respected, and their independence should be encouraged.

10. A child in early childhood is here defined to be below approximately eight years old.


乳幼児教育法 10カ条

乳幼児教育法10カ条も載せておくことにします。


乳幼児教育法10カ条


1.すべての国民は、生まれながらにして教育される権利がある。

2.乳幼児に対する教育は、子どもの最善の利益が最も大切にされることが優先課題である。

3.すべての乳幼児は、その発達において、今を大切にされ、自分らしく生きる権利がある。

4.乳幼児は、人格、才能並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達が保障される権利がある。

5.乳幼児期は、生涯にわたっての教育の基礎を培う最も大切な時期であり、決して学校教育の準備期としての教育であってはならない。ただし、人生の出発点をより強固にするために、その後の初等教育との接続を大切にする必要がある。

6.乳幼児期は、人として生きていくための意欲、探求心、社会の一員である意識、コミュニケーション能力、身体的機能の調和的発達、自律と自立などを身につけていくことが課題である。

7.乳幼児期における教育は、環境を通して行うことを基本とし、教育のために乳幼児にとってのよい環境を用意しなければならない。

8.乳幼児は、自分に影響する事項について自由に自己の意思を表明することができ、自分に関係する事項については、その策定において参画することができる。

9.すべての乳幼児においての尊厳を大切にされ、自立を妨げることを排除する。

10.ここでいう乳幼児とは、生まれてからおおむね8歳までと定義する。


見守る保育とは

あさり保育園の保育の考え方は「見守る保育」と呼ばれています。
これは新宿せいが保育園の藤森平司園長が提案されているものです。
この「見守る保育」ですが、「見守る」という言葉があまりにも身近なものであるため、
見てるだけの保育と勘違いされることもあったりします。
でもよく考えてもらったらすぐにわかることですが、
専門性をもった保育士がただ「見ているだけ」なんてあるわけがありませんよね。
では何をすることが「見守る保育」なのか。
ここを説明することが難しいのですが、このたびこれが10カ条にまとめられました。
まだ正式に完成したとは言えない段階ですが、考え方は変わりません。
「見守る保育」はこの10カ条を実践する保育だということを知ってもらいたくて
ここに載せておくことにしました。



「見守る保育」(GTプラン)

目的
環境を通して子どもの発達を保障する。(子ども自ら発達しようとする力を引き出し、可能な最大限度まで発達させることを意図した環境を用意すること。)


方法
1.子どもが自発的、意欲的に関われるような環境の構成と、そこにおける子どもの主体的な活動を大切にすること。【生活と遊び・ゾーン】

2.子ども一人一人の発達について理解し、一人一人の特性に応じ、発達の課題に配慮して保育すること。【一斉保育から選択制保育】

3.子どもは、多様な大人、子ども同士の体験から、社会を学んでいくこと。【シティズンシップ】

4.保育者は、子どもが自発的、主体的、多様な人との関係の中で活動するために、いつでも駆け込める愛着(見守る)という存在でいること。

5.子ども同士の中で刺激しあうということから、様々な年齢とのかかわりを保障すること。(見て、真似して、関わって、教わって、教えて、一緒にやって)【異年齢保育】

6.子どもは、職員のチームによって、多様な社会とのかかわりを学習すること。【チーム保育】

7.子どもを、男女、しょうがい、年齢による刷り込みを持たないこと。【インクルージョン保育】

8.子どもが自立をしていくこと、自己の意思を表明しようとすることを保育者は妨げてはならない。【やってあげる保育から見守る保育へ】

9.保育者は、子どもに奉仕をしたり、世話をする人ではなく、一人の人格を持った人として子どもと共に生活すること。【保育者の人権】

10.乳幼児基本法に則った保育を展開しなければならない。


2013年8月22日

No.308 さくら保育園の学童クラブ

夏休み限定の学童クラブを姉妹園のさくら保育園で実施しています。1ヶ月ちょっとの短い期間ですが子どもたちのいろんな姿を見ることができたと報告を受けてますし、学童クラブのあり方についていろいろ考えることもできました。そのさくら保育園の学童クラブの1日の流れの一部を紹介させてもらいます。

朝来たら、まず今日の自分の感情を確認することから始まります。「とても元気・とても気分が良い」「いつもと変わらず元気で気分が良い」「気分がのらない・元気が出ない」「体調が悪い・気分が悪い・悲しい気持ち」の中のどれに近いかを選んでもらうわけです。どの感情がいい悪いではなく、今の自分の感情を客観的に見つめることが目的です。次に自分の帰る時間の申告をします。その日1日の流れを家庭できちんと話をしておかなければいけません。

そして保育園と同じように当番が進行する朝の会があるのですが、当番の役割は保育園のそれとはずいぶん違っています。出欠状況を職員に伝えることや、その日のおやつのおにぎりは何味にするか意見をまとめて決定すること、おにぎり用のごはんの準備(米を量ってとぐ、炊飯器で炊くなど)なんかも当番の役目です。自分たちでできることは全てやってもらうことにしています。

朝の会が終わると学習の時間です。学校の宿題であるとか、各自で用意した課題に取り組む時間です。1年生から3年生までいるので、自然と教え合う姿が見られるのがこの時間の特徴でもあります。そして、これはちょっとした試みでもあるんですが、自分がどの分野に取り組んだかを自己申告する活動も行っています。個人ごとにケースを用意し、国語の分野に取り組んだら赤、算数の分野に取り組んだら青、科学の分野に取り組んだら緑の紙粘土の玉を入れる、といった感じです。そうすると、自分のケースを見て、何によく取り組んでいて何にあまり取り組んでいないかが一目で分かります。自分の学習状況を客観的に見ることができますし、こちらから促すべき分野もはっきりとしてきます。

その時間が終わると野外活動に出かけたり、自分たちで考えて決めた活動、例えば「バスで買い物に行き、みんなでホットケーキを作る」など、様々な活動を行っています。自分たちで考える。みんなで意見を出し合って、それを調整する。後にたくさんの知識を吸収するために好奇心の芽を育てる体験を重視する。そんなことを大事にしている学童クラブのほんの一部の紹介でした。

2013年8月21日

エジプトを楽しみました!

エジプト考古学者の河江肖剰さんをお招きして、エジプト体験のイベント行いました。どんな内容にするかを河江さんがあれこれと考えてくださり、今回はピラミッドがお墓であること、死と関係が深いことを中心とした内容になりました。とはいっても子どもたちに向けたものなので楽しい内容です。

ピラミッドの説明、ミイラの話、ミイラにお供えする絵やお守りの話から始まり、その後は実際にパピルス紙に絵を描き、護符を作り、ミイラも作りました。

せっかくなので私も河江さんにミイラにしてもらいました。



不思議な縁によって実現した今回のイベント。いろんな方がつないでくれていなかったら河江さんとは出会えていませんでした。縁とかつながりってほんとに不思議でありがたいとあらためて感じています。

とにかく楽しかった今回のイベント、これが子どもたちの好奇心につながっていけばうれしいです。
河江さん、ありがとうございました!


2013年8月8日

No.307 秘密、特異、陶酔など

前回は園庭改修の際に参考にしている7つの項目(①模倣性②偶然性③競争性④リスク性⑤秘密性・特異性⑥回遊性・反復性⑦陶酔性・めまい)と、その中で特に大事だと考えている回遊性・反復性について書きました。今回はそれ以外の項目についても触れてみることにします。

今計画している遊び場改修案の中に、隠れ家的な小屋作りがあります。以前から検討していて、ようやく形が具体的に見えてきたので実行に移そうとしているものです。これは7つの項目の内の秘密性(大人に監視されていない、一人又は気のあった友達のみと過ごす場所のあること。)に当たります。実は外の大人からは見えているんだけど、そこで遊んでいる子どもからすると誰にも見られていないと思っている、そんな遊び場がどこかには必要だと考えています。子どもが楽しく遊んでいる姿を想像するとき、大勢の友だちと賑やかに遊んでいる様子を思い浮かべることが多いと思いますが、実は1人きりになったり少人数で静かに遊んだりすることも、子どもにとっては大事な遊びです。たくさんの関わりの中では思い通りにいかずにストレスを感じることは、大人だけでなく子どもにもあります。もちろんその体験は関わりを学んでいく上で必要なことですが、そこから少し離れることで気持ちが切り替えられて、新たな気持ちで集団に入っていくことも認めてあげないといけないと思っています。

そのための小屋が近いうちに登場する予定です。今の園庭にはあまりなかった要素なので、園庭での遊び方が少し変化するんじゃないかと思っています。その変化を見て、また園庭全体のあり方を見直していくことになるでしょう。私たちはこのことを繰り返していくわけですが、この過程はたまらなく楽しいものです。子どもたちがもっと自分の力を発揮して遊びを発展させていくことができるように、丁寧に子どもたちの姿を見て検証していきます。

もう少しするとウォータスライダーはなくなり、寒くなってくると恒例のたき火が登場します。これは特異性(夏場は水遊び、冬場はたき火の行える特異な場所があること。)に当てはまります。この特異性のある要素はまだまだ増やすことが出来そうです。そして、これが一番子どもの夢中度が高く、一番難易度の高いものかもしれませんが、陶酔性・めまいの要素を充実させたいんですよね。スケールの大きなツリーハウスとか、ハイジのブランコとか…。

パピルス

パピルスとは

北アフリカや熱帯アフリカに分布する毎年育つ多年草で、水辺や湿地でよく育ちます。地際を横に這うように伸びるぶっとい根茎をもち、そこからまっすぐに何本もの茎を伸ばします。茂る、というより茎が林立するといった雰囲気です。大型の多年草で、草丈は2.5mほどに達します。茎の先端から細い糸状の花軸が放射状にたくさん出て、さらにその先端に茶褐色の花穂をつけます。葉は退化して茎の根元にさや状になってくっついています。

すらっとした草姿と放射状に広がる花軸が何となく涼しげで、水辺が非常に似合う植物です。園芸では観葉植物として扱いますが、縦にも横にもよく広がり、熱帯性の植物で寒さには若干弱い(冬は5℃以上)ので、大鉢での栽培が基本です。植物園の温室内でよく見かけます。

(※そしてここに注目↓↓)

古代エジプトでは茎の皮をはいで中の白い随を圧搾してほぐした繊維を編んで重しをして水分を抜いてパピルス紙が作られました。英語のpaper(紙)の語源はpapyrus(パピルス)に端を発します。ちなみにパピルスの学名はCyperus papyrus(シペラス・パピルス)です。



21日にはパピルス紙に絵を描く体験をさせてもらえるんですが、同時にパピルスからどうやってパピルス紙を作るか、その行程も実際に見せてもらえることになっています。
貴重な体験ができそうです。

2013年8月3日

世界ふしぎ発見!

8月21日(水)にあさり保育園へ来られるエジプト考古学者の河江肖剰さん。今日の世界ふしぎ発見に登場されます。




楽しみ!

世界ふしぎ発見「エジプト スフィンクスの謎 遂に解明!!」

2013年8月2日

No.306  遊びが繰り返される園庭

保育園の園庭はどうあるべきなのか。そんなことを職員が集まって考えてくれていて、その中で少しずつ動きが出てきました。今あるモノを整理してちょこっと手を加えたり、新しい遊びの要素を取り入れたりと、今後が楽しみになる計画が動き出しているようです。今回はその園庭について書くことにします。

園庭をどのように改修していくかを考えるとき、参考にしている7つの項目があります。その項目とは
①模倣性(これまでの記憶や、友達の遊んでいる様子を見て、まねたり、一緒に行動したり出来ること。)
②偶然性(ひとりでも友達と数人で遊んでいても、予期しない行動が発生する変化に富んでいること。また新しい発見の喜びのあること。)
③競争性(予想され或いは決まった行動でより早く、スマートに行動が出来ること・友達とルールを決めて行動することが出来る仕掛けがあること。)
④リスク性(勇気を持って試みるものがあること、そして試みた結果達成の喜びがあること。)
⑤秘密性・特異性(大人に監視されていない、一人又は気のあった友達のみと過ごす場所のあること。また夏場は水遊び、冬場はたき火の行える特異な場所があること。)
⑥回遊性・反復性(気に入ったことを、飽きるまで繰り返し行えるようそのルートがあること。)
⑦陶酔性・めまい(一時的に知覚を麻痺させる要素のあること)
です。

全てを取り上げることはここではしませんが、その中で特に大事にしたいと考えている回遊性・反復性について少し。自転車などの乗り物のコースが園庭にはあり、そのコースをぐるっと回っているといろんな遊び場が目に入ってきます。内側には高さを体験できる築山や雲梯が、外側には果樹のスペース、たき火スペース、読書ができるデッキ、鉄棒、ハーブのスパイラルガーデン、今の時期はプール、砂場、いろんな遊びができる大きな遊具、いろんな種類の野菜が育つ畑、砂場、丸太橋、ブランコなどがあります。そして登れる木も点在しています。砂場で夢中になって遊び、それが一段落したら築山へ移動、今度は自転車を楽しんで、また砂場の遊びに戻ってくる。そんな感じで園庭のコースを巡っているといろんな遊びに出会え、その中から好きな遊びを見つけて飽きるまで遊び、また次の遊びを見つけて…。そうやって遊びが繰り返されていく園庭を目指しているわけです。そのイメージを持ちながら、どんな要素をどのように作り、どう配置していけばいいかというが次の課題なのですが、そのことについては次回にでも書きます。