
映画「うまれる」の上映会が終わりました。
今回の上映会は、ある方のFacebookの投稿がきっかけでした。
全く知らなかったこの「うまれる」という映画。ここから「うまれる」について調べ始めたわけですが、調べれば調べるほど興味が沸いてきて、しかもいろんな意味で今上映会を行うべきだという思いが強くなり、あれやこれやと話し合いを重ねて今日の上映会に至りました。
参加者は大人62人、子ども5人、赤ちゃん2人、託児は8人。江津市内だけでなく、県内では邑南町、県外では鳥取県米子市、広島県福山市からも来てくださいました。
参加された方からは
「早く帰って子どもに会いたくなった」
「子どもを抱きしめたくなった」
「感情移入してしまった」
「自分にとっていい時期に観ることができてよかった」
といった感想をいただきました。どんな感想をもたれるだろう?と不安もあったので、ほっとしています。

命を受け継いでいくリレーが「うまれる」ということ。
うん、いい映画でした。
上映会に限らず、また何かやりたいなあと思っています。地域の中の保育園として何ができるか、まだまだ探していきますよ。

上の写真はぱんだ組の食事の様子です。ぱんだ組の食事のテーブルにはぞう組の子が1人座ることになっていて、一緒に食事を食べています。一緒に食べることでぱんだ組の子はその様子を見ることができます。自分より上手に食べる、上の発達段階の子の様子を見て刺激を受けられるようにすることが目的です。異年齢で生活することの長所として「年少児は年長児から刺激を受ける」ということがありますが、遊びの面だけでなく、食事などの生活の部分でも刺激を受けることができるようにこのような方法をとっているわけです。とはいっても、お手本としてぞう組の様子をジーッと見ているわけではなく、その様子を感じながら食べているといった方が正確かもしれません。それでもこれを1年間続けていくことで、「小さい子のお手本となることで自信をつける」ことにもつながっていきます。この日はぱんだ組の子どもたちがいろいろ話しかけ、それに対してぞう組の子が受け答えをしながら、みんなで楽しそうに食事をしていました。

場面は変わってりす・うさぎ組のおやつの様子です。ここにもぞう組さんがお手伝いに来てくれています。おやつを食べる子がエプロンを着ける手伝いをしてくれているところです。この体験を通して「自分のできることをより確実なものにしていく、定着させていく」ことがねらいにあります。もちろんそうした関わりが得意な子もいれば苦手な子もいます。苦手な子はうまくいかなくて葛藤を感じることもあるでしょう。でも、その葛藤の中で自分の感情をコントロールすることは、とても貴重な体験となります。得意な子も苦手な子も、1年間の関わりの中で自分の感情をコントロールしたり、お互いの思いを調整したりといったことを学んでいってもらいたいと思います。
異年齢の関わりはあさり保育園で大切にしていることです。毎日の生活の中で刺激を受けたり、お手本となることで自信をつけたり、といった場面がたくさん生まれるように活動や環境を考えています。そしてこの異年齢と表現している言葉の中には、発達段階の違う関係だけでなく、発達段階の近い子どもの関係も含まれます。この近い子どもの関わりの大切さについても今後触れていきたいと思っています。
3月の終わりに「日本百名山ひと筆書き」という企画(http://www.greattraverse.com/)があることを知りました。
概要は以下の通り。
1964年に出版された深田久弥随筆「日本百名山」で定められた100座を人力のみで繋ぐ。
未だ陸上と海上の両方を人力のみで繋ぎ合わせた記録はなく、前人未達の全く新しい挑戦である。
深田久弥の日本百名山が世に知られてから50周年を迎える2014年春。田中陽希は、日本が有する雄大な自然資源の魅力再発見へとその一歩を踏み出す。
日程:2014年4月1日 ~ 10月末(11月上旬)
出発地:鹿児島県・屋久島・宮之浦岳
最終到達地:北海道・利尻島・利尻岳
移動手段:陸上・徒歩 海上・シーカヤック
※出発地点から到達地点まで陸路はすべて徒歩。海上移動はシーカヤック。宿泊は基本テント泊。
挑戦されるのはプロアドベンチャーレーサーの田中陽希さん。「すごい企画だなあ!」と興味をもってしまいあれこれ調べていると、なんとあさり保育園の前を通過することがわかりました。もし子どもたちが保育園にいる平日に通過するのであれば、そのときは道路で待っていて保育園に来てもらおう!そう勝手に決めてしまいました。
そして待つこと3週間、ようやくその日がやってきました。4月21日(月)は浜田市がスタートです。ということは恐らく午後にあさり保育園前を通過されるはず!こうなると何もしないわけにはいきません。ちょうど副園長のMさんと調理師のKさんが用事で出かけることになっていたので、田中陽希さんを見かけたら声をかけてほしいと伝えました。そしてMさん、Kさんは途中で会うことができ、保育園に寄ってもらえないだろうかと話したところ、なんと「いいですよ」とうれしい返事をもらえ、本当に保育園に来てもらうことができました。
保育園に来てくれた田中陽希さんは持っていた荷物の中身を説明してくれたり、実際に使用しているテントを広げて入らせてくれたりと、子どもたちとたくさん関わってくれました。
そして日本地図にこれから進むルートを書いて旅の説明もしてくれました。「自分も日本全国のいろんなものを見て不思議だなあと感じるものをたくさん見つけるから、みんなも不思議だなあと感じるものをたくさん見つけてくださいね」というメッセージも。私たちも大事にしている不思議さを感じる好奇心を田中陽希さんも大事にしていることがわかり、この出会いがさらに嬉しいものになりました。
「あさり保育園に寄ってもらえませんか?」と急に声をかけたのにも関わらず、その申し出を受けてくださり、そして子どもたちにたくさんのワクワク感を与えてくれました。田中陽希さん、ありがとうございました!
ちなみに田中さんにはカメラマンがずっとついておられました。もしかすると今日の様子がテレビで放送されるかもしれません。放送されるとしたら5月24日(土)だそうです。正式に決まったらお知らせしますね。
NHK BSプレミアムにて放送
グレートトラバース 〜日本百名山ひと筆書き踏破〜
5本シリーズの第1集 5月24日(土) 屋久島〜九州〜中国〜四国地方(予定)

先週の話ですが、いろんな形に発展しそうな子どもたちの姿が見られたので、ここでも紹介しておきます。まずは鳥の図鑑の話。朝のことですが、保育園で鳥が1羽死んでいました。その鳥を見た子どもたちは「この鳥はなんという鳥だろう?」と疑問を持ち、「そうだ、図鑑で調べよう!」と言い出す子が出てきて、みんなで図鑑を調べ始めました。でも保育園にあるのは魚とか動物とか植物の図鑑で、残念ながら鳥はのっていません。そこでぞう組のNくんは「鳥の図鑑がほしいなあ」と考え、保育士のところに相談に行ったようです。その保育士は「みんなにその思いを話して、みんなも欲しいということになれば園長先生に頼みに行ったら?」とアドバイスをしてくれました。Nくんはその日の夕方のお集まりで、ちょっと緊張しながらもみんなに鳥の図鑑が欲しいことをアピールし、みんなも「欲しい!」ということで意見がまとまり、お集まり後に私のところへ「鳥の図鑑がほしい!」と言いに来てくれました。そんなやり取りがあって購入することになったのが上の図鑑です。その後も鳥に対する関心は続いていて、鳥を集めるための鳥小屋が設置されたりもしています。
そして次は別の日にあったバスごっこの話。保育士が大きな赤いワゴンで物を運ぶ作業をしていると、それを使って遊びたいと子どもたちが言ってきて、そのワゴンに友だちを乗せて遊び始めました。大きな木のベンチに座ってワゴンに乗る順番が来るのを待つ子もたくさん出てきて、その様子を見ていた保育士はバスごっことして発展するのではないかと考え、「バス停を作ったらおもしろいかも」と提案したようです。即席で“はたけ前”というバス停を作るとかなり盛り上がってきて、20人近くの子どもが引っ張る人、乗る人、並んで待っている人に分かれて楽しんでいました。今は更に発展してきて、バス停は3カ所になっています。

例えば鳥の図鑑の話のように、子どもたちの中で意見がまとまった提案を叶えてあげることもあります(同じように将棋セットを準備したこともありました)。そしてバス停の話のように、更に遊びが盛り上がりそうな提案をすることもあります。どちらも子どもたちの興味関心が高まってほしいという思いです。興味関心の高まりから子どもたちの遊びが発展していくのを、私たちも一緒に楽しんでいるという話でした。
絵本を読んでいる子どもの横を通ったときに「ねえ、この字は何て読むの?」と聞かれることがあります。「えーと、これはね…」と、聞かれた字を含めた文章全部を読もうとすると、「あー、他の字は分かるから読まなくていい」と言われてしまいます。また、服のボタンをとめることができず「やってー」と頼まれることもたまにあります。周りに助けてあげられそうな子がいない場合はやってあげるんですが、一番上をとめて次のボタンに手をかけようとすると、「他のボタンは自分でできるからいい」と言わんばかりに体を背けたりします。こんな子どもたちの姿を見ながら、これって自立の大事な部分だよなあとつくづく感じます。
自立って、何でも一人でできてしまう力、大げさに言えば無人島でも一人で生きていけるサバイバル能力を身につけることのように思ってしまいがちですが、そうではないですよね。上に書いた子どもの姿のように、自分でできることと自分ではできないことを知り、できないことを誰かに頼めるようになること、「助けてほしい」と言えるようになることが自立なんだと思います。自分ができないことを知るためには、その反対の自分ができることや自分の得意なことはこれだと確信を持つことが必要です。その確信が持てるようになるためには、自分のできることや得意なことを周りから認めてもらう経験が大事で、その経験が自信や自尊感情の育ちにつながります。自尊感情が育ち、自分のできることや得意なことが見つかると、反対に自分ではできないことがはっきりと見えてきて、他人に頼むことができるようになるというわけです。
できないことがはっきりして「助けてほしい」と言えるようになった次の課題は、他人から「助けてほしい」と求められたときに自分のできることや得意なことで貢献することです。私たちは様々な人と共に社会を形成して生きています。社会は、様々な人がそれぞれの得意分野で力を発揮し合うことで成り立っています。そうでなければ成り立たないと言った方が正しいかもしれません。なので、社会で生きる力をつけていくために、できないことを「助けてほしい」と言うことや、さらには助けを求められたときに得意なことで貢献するということを、保育園の生活のいろいろな場面でしっかりと体験してもらいたいと思っています。
「助けて」「手伝って」と言えること、人から求められた時に動けるようになることは、社会の一員としての意識が育つということ。私たち大人も社会の一員として「手伝ってー!」「よし、手伝おう!」と声を掛け合う姿を見せていきたいですね。
平成26年度になりました。新しいクラスになったことをお祝いする進級式、そして11名の新しい友だちを迎える入園式を終え、あさり保育園の活動が始まっています。年度の初めということで、保育園という場について思うところを書いてみますが、保育園って今でもいろんな捉え方をされているんですよね。幼稚園とは違って教育の場ではないとか、単に保護者の代わりに子どもを預かる場であるとか。残念ながら世間ではまだそんな捉え方が主流なんだろうと想像しています。国でされている保育園についての議論でも、そんな考えを持っている人が多いなあと感じることは少なくありません。
でも、私たちはそんな場とは考えていません。保育園は子どもたちの発達をきちんと促していく大切な場。そのために私たちがいつも注目しているのは「子どもたちが自ら発達しようとする力」。その力を引き出すことを意図して環境を整え、活動を計画しています。そうした意図が乳幼児期に必要な教育であり、それを保護者のみなさんにも、社会に対しても分かりやすく伝えていくことが私たちの役割なのですが、まだまだうまく伝えられていないのが現状です。その点は少しずつ改善していきます。そしてみなさんからも「この部屋にコレが置かれているのは何故?」とか「どうしてこういうグループで活動するの?」とか「この活動にはどんなねらいが?」とか、気になることがあれば何でも聞いてください。あさり保育園のスタッフは質問されることを喜ぶという習性があります。丁寧に、思いを込めて説明させてもらうので、ぜひどうぞ。
また、保育園は保護者のみなさんと一緒にお子さんの育ちに関わっていく場だとも考えています。私たちにもみなさんにも、子どもたちが自ら発達しようとする力を引き出すために、それぞれの役割があると思っています。どちらか一方だけあればいいというものではありません。親子の関わりはもちろん大事。同じように保育園での生活や、地域の人やたくさんの子どもたちとの多様な関わりも大事です。その両方がスムーズにいかないこともあるかもしれませんが、そんな時には励まし合いながら進んでいければなあと思っています。『共に』進んでいきたい、という思いです。
さて、今年度のあさり保育園は「和」をテーマにして1年間活動していきます。和食とか和服とかの「和」です。私自身反省していることなのですが、様々な『日本的なもの』に囲まれながら、あまり丁寧に意識を向けていなかったのがこの「和」かもしれません。この1年間の活動を通じて、私たちも「和」と楽しく丁寧に触れていこうと思います。和菓子とか漬け物作りとか、落語体験なんかも楽しいかもしれませんね。