絵本を読んでいる子どもの横を通ったときに「ねえ、この字は何て読むの?」と聞かれることがあります。「えーと、これはね…」と、聞かれた字を含めた文章全部を読もうとすると、「あー、他の字は分かるから読まなくていい」と言われてしまいます。また、服のボタンをとめることができず「やってー」と頼まれることもたまにあります。周りに助けてあげられそうな子がいない場合はやってあげるんですが、一番上をとめて次のボタンに手をかけようとすると、「他のボタンは自分でできるからいい」と言わんばかりに体を背けたりします。こんな子どもたちの姿を見ながら、これって自立の大事な部分だよなあとつくづく感じます。
自立って、何でも一人でできてしまう力、大げさに言えば無人島でも一人で生きていけるサバイバル能力を身につけることのように思ってしまいがちですが、そうではないですよね。上に書いた子どもの姿のように、自分でできることと自分ではできないことを知り、できないことを誰かに頼めるようになること、「助けてほしい」と言えるようになることが自立なんだと思います。自分ができないことを知るためには、その反対の自分ができることや自分の得意なことはこれだと確信を持つことが必要です。その確信が持てるようになるためには、自分のできることや得意なことを周りから認めてもらう経験が大事で、その経験が自信や自尊感情の育ちにつながります。自尊感情が育ち、自分のできることや得意なことが見つかると、反対に自分ではできないことがはっきりと見えてきて、他人に頼むことができるようになるというわけです。
できないことがはっきりして「助けてほしい」と言えるようになった次の課題は、他人から「助けてほしい」と求められたときに自分のできることや得意なことで貢献することです。私たちは様々な人と共に社会を形成して生きています。社会は、様々な人がそれぞれの得意分野で力を発揮し合うことで成り立っています。そうでなければ成り立たないと言った方が正しいかもしれません。なので、社会で生きる力をつけていくために、できないことを「助けてほしい」と言うことや、さらには助けを求められたときに得意なことで貢献するということを、保育園の生活のいろいろな場面でしっかりと体験してもらいたいと思っています。
「助けて」「手伝って」と言えること、人から求められた時に動けるようになることは、社会の一員としての意識が育つということ。私たち大人も社会の一員として「手伝ってー!」「よし、手伝おう!」と声を掛け合う姿を見せていきたいですね。
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