2012年5月25日

No.245 信頼している人の表情を見る

今回は前にも書いたことのある「共視(共同注視)」について。この共視というのは同じものを見るという経験のことで、大人が赤ちゃんと同じものを見ているとその赤ちゃんは安心すると言われています。その例として、おそらく体験から知っている人は多いと思うのですが、泣いている子どもを一生懸命抱っこしても泣き止まないけど、おんぶをするとピタッと泣き止んだりします。これは同じ方向を見ているという、まさに共視の状態だからです。

今回書きたいのはさらにそれを進めた内容です。実は赤ちゃんは共同注視をすることによって、持っている素晴らしい能力を発揮するということも分かっています。例えば、赤ちゃんは生き延びていくために初めて見るモノが自分にとって安全なのか危険なのかをとっさに判断しないといけません。そのためにそのモノに触れたり、そのモノとずっと過ごしたりすることで判断していくことをします。だけどものすごいスピードで世界を広げていく赤ちゃんにとって、そんな時間の余裕はほとんどありません。ではどうするか。そんなとき赤ちゃんは素晴らしい能力の出番です。

どんな能力かというと、自分が一番信頼・信用している人、例えば親や保育者がそのモノに対して安心しているかどうかの表情を見ます。そしてその人が安心している表情を見ると、「ああ、安心していいんだ」と判断するわけです。例えば大人の例でいうと、飛行機に乗っていて揺れたとき、私たちは「この飛行機は大丈夫か?」と思いますよね。そんなときは一番信頼している客室乗務員の顔を見ます。その客室乗務員が落ち着いていたら「大丈夫なんだ」と思うようになりますし、慌てた表情をしていたらこちらも慌ててしまいます。それと同じことを赤ちゃんも行っているんです。

自分の体験が圧倒的に少ない赤ちゃんは、信頼していて体験の多い人の顔を見ることで自分の体験不足をカバーします。ということは、赤ちゃんが安心して過ごせるようにするために、まずは赤ちゃんが見ているものと同じものをちゃんと見ている必要があります。そして、そのモノがどういう性質であるか知っている必要もあるということです。赤ちゃんと向き合って…ということが注目されていましたが、それとは少し違う、一緒に同じものをみるという共視という向き合い方は大事にしていきたいですね。

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