2015年6月5日

社会で生きること

書き終わった後に気が変わり、配布するのをやめた文章です。



今なにかと話題になっている憲法には、『基本的人権の尊重』について書かれています。細かく知っているわけではないので大雑把な捉え方になりますが、基本的人権は誰もが持っていて、誰からも侵されることのないものということです。どんなことがあっても尊重されなければいけないものです。でもこれには例外あって、自分の人権と他者の人権が対立するようなケースでは、「どちらも全て尊重する」では前に進めないので落としどころを見つける作業が必要になるわけです。

今度は「子どもの権利条約」の話に移りますが、この条約の第13条「表現の自由」には次のようなことが書かれています。「子どもは、自由な方法でいろいろな情報や考えを伝える権利、知る権利をもっています。」子どもは何も知らないからといって大人の言う通りに動かすのではなく、自由に意見を表したり、自由な活動を行ったりできるようにしなければなりません。でも「ただし、ほかの人に迷惑をかけてはなりません。」とも書かれています。自由に表現する権利はあるけれど、当然他者の権利を尊重したものでなければいけません。個人は尊重するけど、同じように他の個人も尊重する。他者に迷惑をかけたり危害を加えたりするようなものまで尊重するわけではありません。他者と共に生きている社会を考えると当然のことですよね。

これは保育園でも同じで…と書くと何だか無理やりな話のようにも思えますが、でも原則は同じです。個人の人権は尊重する、でもそれが他人の迷惑になるようであれば根気強く伝えていき、その考えを自分のものとして行動に移していけるような力をつけてもらうことを、私たちは考えています。でもこれが簡単なことではないんです。子どもはみんな違っていますし、理解の仕方やそのスピードも全然違います。だからその違いを丁寧に捉え、その上で試行錯誤しながら伝えていく必要があります。そしてこれは1人で学ぶものではなく、他者との生活の中で、言葉ではなく体験から学ぶものです。となればその過程でいろいろな衝突が起こります。でもそれは単なる衝突ではなく、必要な「学び」だと私は考えています。自分は“思い通り”にやりたい、でも相手の“思い通り”とぶつかってしまって葛藤したり、時にはケンカになってしまうこともあります。私たち大人は、もちろん衝突を小さくするための関わりを持ちながらですが、その経験を大事にしてあげるべきだと思います。そのような理解のもとで、「社会で生きる」ことの基礎を学ぶ場を保障してあげたいと考えています。両者にしっかりと目を向け、互いの人権を尊重するための落としどころを見つけるサポートができる、そんな保育園でありたいと思っています。

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