「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ
俵万智さんのサラダ記念日にこんな詩がありました。かなり季節外れですが。久しぶりにこの詩を読んだとき、これって子どもに寄り添う保育者の姿じゃないかなと、そんなことを思いました。
「子どもたちは白紙の存在で生まれてきて、そこに大人がどんどん知識を植え付けてあげる」過去の子ども観はこんな感じでした。でも今はいろんな研究によって、「子どもたちは様々な力を持って生まれてきて、それを引き出してあげることが大事」だと分かってきました。そうなると、子どもたちにあれこれ指示をしてやらせるのではなく、子どもたちが持っている力を信じ、その力を引き出すための環境を用意し、自分から行動していくためことが大人の役割だと言えます。その存在のことを安全基地と呼んだりするのですが、その安全基地とは何かを考えることがよくあります。大人の視点で、大人の判断で子どもたちの行動をサポートするのとは少し違い、子どもが育つために必要なことは子ども自身がよく分かっているから、子どもからの働きかけを待てばいい、その働きかけに対してきちんと応えてあげればいい、そんなスタンスで子どもを見守る存在のことなんじゃないかと思っています。子どもが求めることに即座に答えてあげることや、子どもの思いに適切に共感してあげることが安全基地としての存在であり、その存在であることが保育者としての役割なんじゃないか、そんな風に考えています。最初に紹介した詩のように、子どもが「今日は暑いね」と言ってきたら「暑いね」と答えたり、「こんな虫を見つけたよー!」と走ってきたら「すごいね、よく見つけたねー」と答えたり、「今日は何もしたくないなー」と言ったら「そうかー、何もしたくない日かー」と答えたり。そんな存在がちゃんといてくれると子どもが実感できると、その存在によって安心して自分の感情を受け入れることができ、自信を持って行動し、そして成長していくと思うんです。
なぜこんなことを書いているかというと、あさりこども園のスタッフが、自分たちの「子どもの力を信じる」や「保育者の役割」について、根本的なところから見直そうと動き始めているからです。今まで子どもを信じていなかったわけでも、保育者の役割を掴めていなかったわけでもありません。そうではなく、次のレベルで自分たちの役割を考え直そうとしてくれているんです。形が見えてくるのはもう少し先かもしれません。でも子どもたちの姿に変化が出てくるはそんなに先の事ではないと思っています。その姿を見ることで、私たち保育者にできることはまだまだ山のようにあると、たくさんの気づきを与えてくれると思っています。あさりこども園はまだまだ変わっていくとしつこく言ってきましたが、今回はかなりの変化になるはずです。その変化をうまく伝えることができるか自信はありませんが、発信だけはいろんな形でしつこく続けていくつもりです。

奥出雲町にあるグループホームよこたの郷の竹下充明所長さんに来ていただき、『認知症への理解~自分らしく、あるがままに~』をテーマに認知症研修を行いました。今回は地域の方が8名も参加してくださいました。

研修の内容ですが、まずよこたの郷の様子を紹介してもらった後、認知症ケアの考え方についての話に移っていきました。
認知症の基本症状として記憶障害・見当識障害・実行機能障害の3つがあるといった基本の話を分かりやすく整理してもらうことに始まり、実際の声かけなどの対応で気をつけることなども細かく教えてもらいました。
研修の中で何度も話されたのが次のことです。
「本人の目線になる。本人の見ているものを理解する。」
「尊厳を守るケア、つまり自分がされて嫌なことはしないことが大事。」
このことを大事して介護を行ってほしいというメッセージをしっかりと受け取らせてもらいました。
現在認知症の人は462万人、軽度認知障害を含めると800万人もいるそうです。島根県の人口が約70万人なので大変な数字です。事業所としては当然ですが、社会としても認知症に対する理解を深めていくことは今後ますます重要になってくるでしょう。今後もこのような研修の場を計画していきますので、1人でも多くの方と共に理解を深めていきたいと思います。
【地産地消】
何を今さらと言われそうですが、花の村では地産地消を食の柱の1つとして大事に考えています。地産地消のメリットについては既にみなさんも知っていると思いますが、旬のものをいつも新鮮なうちに食べられるとか、輸送距離が短いので鮮度がよく栄養価が高いとか、いろいろとあります。そして地元の食材を扱うことで、この土地や地域とやり取りすることになるのが大きいです。この地にどっしりと構えることと地域を創造し活性化していくことは切り離せないので、地産地消は外すことができません。毎日行われる『食べる』営みを通して地域と安定したつながりを持つことは、みんなで考え続けていきたいことです。
【N農園】
合歓の郷の建物の後ろに「N農園」があります。この名前は私が勝手にそう呼んでいるだけなのですが、合歓の郷調理員のNさんがコツコツと作り上げている3坪の畑です。今までに作ってきた作物は大根、カボチャ、キュウリ、トマト、スイカで、たくさんは栽培できないので食数の多くない合歓の丘で時々使われたりしています。今後は畑を少しずつ広げて収穫量を増やしたり、ジャガイモや玉ねぎなども植えたりすることを計画しているようです。
【自産自消】
Nさんが取り組んでいるようなことを「自産自消」という言葉で表現することもあるようです。規模を極端に大きくしていくことは難しいでしょうが、自分たちで作って自分たちで消費する「自産自消」はおもしろい活動だと思っています。地産地消の取り組みと直接つながるわけではありません。でも生産から消費の流れを実際に体験することで、地産地消が食の基本であると実感しやすくなるはずです。各事業所でもそれぞれの規模、それぞれのやり方で自産自消が行われていますが、無理のない範囲で楽しみながら継続してもらいたいと思います。
【失敗から学ぶ姿勢】
そんな地産地消のこと、自産自消のことを先日行われた合歓の郷調理担当者のミーティングの場で話をさせてもらいました。地域の食材を使う場合の課題がたくさん話し合われましたが、こうした話し合いを繰り返し、少しずつ花の村の地産地消の形を作ってもらうことを期待しています。私たちの事業で完成されたものはなく、改善が必要なことばかりです。だからこそみなさんの大胆な発想からの提案、その提案からの行動が大事です。もしうまくいかなかったとしても、みんなでそこから学ばせてもらいましょう。その姿勢こそがこれからの私たちに最も必要なことと考えてください。
先週も書きしたが、今も植松努さんの講演に夢中になっています。
TEDの動画に加えて、2015年5月17日(日)山梨県立図書館で行われた講演も楽しんでいます。
どの話もとっても響いてきて、いつか生で話を聞きたいと思いながら、何度も何度も動画を見ています。
そんな感じで植松さんの話が頭の中にたっぷり詰まっていた昨日の夜のこと。
子どもの行事予定を確認しようと学校からのプリント類を確認していると、あるプリントに「思うは招く」の文字が。
どこかで見た言葉だなあ、そういえば植松さんの講演タイトルは「思うは招く」だったよなあ……
えっ!
植松努さんの講演会の案内だ!
市内で行われる中学生対象の!
しかも前日に終わってる!
中学生の息子のところへ走っていき、聞きました。
「昨日植松さんの話を聞いたの?」
「うん、聞いたよ」
「植松電機の植松さん?」
「うん」
「ロケットを飛ばす植松さん?」
「うん」
「今日みなさんにお話しするのは『思いは招く』っちゅう話です、って話すあの植松さん?」
「うん、おんなじこと言ってた」
「うわー、いいなあーー!父さんにも教えてほしかったーーー!」
「父さんは別に興味ないと思って」
「今一番興味のある人だよ!ほら、この動画とか(TEDの動画を見せる)、、、、この動画とか(山梨の動画を見せる)、、、、これを今ずっと聞いてるんだよ!」
「へえー、好きだったんだ」
「話を聞いてて楽しかったんじゃない?いい話だったでしょ?」
「うん、よかったよ」
そんな感じで、興奮した父と、そんな父の態度にニヤニヤしながら淡々と受け答えする息子のやりとりがありました。
植松さんは講演の中で
「ロケットの作りたいと思ったら、作ったことのない人にそのことを話しても「そんなの無理」と言われてしまう。でも自分に相談してくれたら『どんなのを作る?』と言ってあげられる。そうすると、本当にロケットを作ることができてしまう。だから夢は『どうせ自分にはできない』とか『やり方がわからないからできない』とあきらめてしまうんじゃなくて、どんどん人に話さないといけない。たくさんの人に話していると『それだったこうしてみたら?』とか『それに詳しい人を知ってるよ』と教えてくれる人に出会える。そうやって夢はどんどん叶っていく。」
そんな話をされていました。
もし私が「植松努さんの話が聞きたい」「今一番会いたい人は植松努さん」とあちこちで話していたら、「植松さんなら今度ここに来るよ」と教えてくれる人に出会っていたかもしれません。息子も「今度植松さんの講演会があるよ」と教えてくれてたかもしれません。
夢の大小にかかわらず、「こうしたい!」という思いは人に話さないといけないなあ、植松さんの講演の動画を見てそのことを学んでいたはずなのになあと、大反省した夜でした。
植松さんが山梨県立図書館での講演会の中で、次のようなことを話しておられました。
子育て中の方とは、子どもに関わる人とは、ぜひ共有しておきたい内容です。
例えばお子さんをお持ちの方は子どもの将来についていろいろ考えると思います。
その時についつい「将来何になりたいの?」って聞いちゃうことがあると思います。
でもね、気をつけてください。
できれば「何をやりたいの?」って聞いてほしいんです。
ちょっと違うんだけど、全然違うんです。
どういうことかというと、例えばね、子どもが将来「お医者さんになりたい」と思ったとします。
「あら、いいわね」と思ったとします。
でもよくよく調べてみたら、よっぽど頭がよくないと、すっごくお金がかかるって思ったら、
もうあきらめちゃう人もいるかもしれないですね。
でも考えてほしいんです。
お医者になりたかったのは何故なんだろう?って。
それがもしも「人の命を救いたい」だった場合には、
お医者が使っている道具はお医者が作っているんじゃないんですね。
そしてドクターヘリも救急車もお医者が作っているんじゃないですね。
AEDもお医者が作っているんじゃないですね。
健康にいい食べ物を開発したり、安全な車を作ったりするだけでも
人の命はすごい救えるじゃないですか。
お医者になりたいと思ったら、道が一本でした。
ところが人の命を救いたいと思ったら、道はいろいろあったんです。
だからこそ、子どもの将来のことをしゃべるときとかには、
資格とか学歴とか職業の名前なんかにとらわれないでほしいです。
何をやりたいのかを考えるんです。
そしたらね、いろんな道の可能性が見えてくるからなんです。
園庭について、園庭で遊んでいる子どもたちを見て思っていることを書きます。
あさりこども園の園庭は、こだわって作り上げた園庭です。平らではないし、あちこちに木が植えられています。決められたコースでしか遊べない遊びもあるし、ある程度体に力がつかないと遊べないものもあります。全て子どもたちの育ちを考えた上で、一つ一つに意味を持たせた作りになっています。園庭をぐるっと一周してもらうとわかりますが、必ずたくさんの動きが必要になります。歩く、走るだけでなく、またぐ、飛ぶ、登る、下りる、ぶら下がる、くぐる等の動きです。動詞の数が少しでも多くなるように、遊具の設置場所なんかも考えています。
そんな風にいろいろとこだわりのある園庭ですが、そうは言っても園庭の広さはいつも同じです。遊具が毎日変わるわけでもありません。、園外で遊び場も機会も多くあるにしても、基本的な作りは変わりません。それでも子どもたちは毎日夢中になって遊ぶ姿を見せてくれます。
退屈しないんだろうか?
変わらない園庭をどんな風に見ているんだろう?
そんなことを考えながら、遊んでいる子どもたちを眺めることがあります。
でもよく考えると、子どもたちは成長するたびにできることが増えていきます。鉄棒にぶら下がることしかできなかった子が、大きくなるとくるくる回ることができるようになります。憧れのまなざしを向けることしかできなかったツリーハウスも、力がついてくれば登って遊ぶことができるようになります。
また最近は毎日のように畑で採れた夏野菜を見せてくれるんです。一昨日はキュウリとカボチャ、昨日はキュウリとスイカを誇らしげに見せてくれました。これも当たり前のことですが、植物は毎日変化します。畑の野菜は次々と収穫できる状態に成長します。たくさんある木々の様子も変わります。見ているだけでも変化はあるし、収穫など積極的に関わるとさらに変化を感じやすくなります。
そして遊ぶ友達も変化します。同じ遊びをしていても、一緒に遊ぶ相手が変わるだけで全く違った遊びになるものです。似たような発達段階の子と遊ぶと競い合う楽しさが生まれますし、発達段階の違う子と遊ぶ場合は教えたり教わったり、刺激を与えたり受けたりといったことがでてきます。
サラッと見ると、広さも内容も変化のない園庭に見えてしまうかもしれませんが、その一つ一つをじっくり眺めると、一つとして変化のないものはありません。だからこそ子どもたちは夢中になって遊んでいるわけで、だとすると私たちも「もっといい園庭の環境を」と考え続けなければ!と思わされます。
園庭の様子を眺めながら考えていることを、そのまま書いてみました。
ただそれだけの内容です。