2012年12月31日

こんなことも計画しています

以前からやってみたいとひそかに計画していたのが「父親保育」。
そろそろ実行に移してみたいと思っています。
もしかすると具体的な計画をたてる段階で
かなり時間がかかってしまうかもしれませんが、
そんなこともやってみないとわかりません。
今よりももっと保育園のことを知ってもらうために、
そしてもっともっと保育園を楽しんでもらうために、
やってみましょうか、「父親保育」。

ちゃんと計画ができたらお知らせをしますが、
いちおう仮のお知らせを載せておきます。
「父親保育」がどんなものなのか
だいたいの感じは掴めるんじゃないかと思います。


父親保育のお知らせ(仮)

父親保育に参加するお父さん大募集!
○月○日(土)に父親保育を行ないます。
父親保育とは、保育園の保育士の代わりに、
お父さん方に一日保育士になっていただき、
保育をしてもらおうというものです。

保育園には、日頃家庭では見られない、
子どもたちの世界があります。
また、子どもたちはお父さんが大好きです。
父親保育の日は、そんな子どもたちに
「こんな遊びを教えてあげたい」
「あんな保育をしてみたい」
といったアイデアや思いを実現していただく場です。

また「保育園をもっと知りたい」
「保育園は、いったい何をしているところなんだろう?」
というお父さんも大歓迎です。
さらに父親保育は、保育園に関する情報公開の場でもあります。
「保育園はどんな運営をしているのか?」
「保育園の仕組みを知りたい」など、
参加することによってご理解いただきたいと思います。

参加していただいたお父さんは、
園児みんなのお父さんとして父親保育を行ない、
子どもたちは“お父さんの保育”を体験できる貴重な日となります。

ごっこ遊び ままごと遊び

子どもたちに人気のある遊びに「ままごと遊び」があります。
この「まま」は「まんま」ということでご飯を表わしています。
つまり「ままごと」は、食事を代表として家庭の中で営まれる生活を、
子どもたちが模倣して遊ぶ遊びです。
子どもたちが目にする大人の生活の中で最初に意識的に体験するものが
みんなで食事をする場面であり、その次に料理になるでしょう。
そんなことから、子どもたちは1つのテーブルを囲んで
みんなで食事をする真似をし、それを料理する人の真似をします。

そして次第に子どもの体験する世界が広がっていきます。
家から外に出ていき、いろいろと地域の人と出会うことになります。
そして様々な仕事があることを知っていきます。
スーパーへ買い物に行き、病気になると病院へ行き、
時には母親についてマッサージに行くことだってあるかもしれません。
そしてそうした体験からその仕事を真似しようとすることがあります。

また、家の中にも食事や料理だけでなく、
家族がいろいろなことをしています。
パソコンをしたり、掃除をしたり、時には家族で車に乗ったり、
バスに乗って出かけることもあったり、
着飾ってパーティーに行くこともあったり、
携帯電話で待ち合わせて居酒屋に行くこともあります。
そんな大人の世界を子どもは真似しようとします。
その時には子どもそれぞれが役割を演じることになります。
それを英語ではロールプレイング(role playing)といい、
それをそのまま日本語に訳すと「役割演技」ということになります。
これを子どもの世界では「ごっこ」と言い、
何かになったつもりで遊びます。
こうして大人の世界を模倣して遊ぶことは非常に重要なことで、
この遊びができるような環境を設定してあげることも
幼児施設では大切なことです。

こうした体験ができる環境をどのように設定するか、
あさり保育園では「あーでもない、こーでもない」と
話し合っている真っ最中です。
今の環境はどのクラスも「ごっこ遊び」といいながら
なんとなく「ままごと遊び」が中心になっています。
それを、2歳児クラスまでは「ままごと遊び」を中心にし、
世界が広がっていく3歳児クラスからは
「ごっこ遊び」を中心にしてはどうか、
そんなことを考えています。
2歳児クラスまでは「ままごとゾーン」とし、
家庭の、特に食事や料理が行える環境を整える。
3、4、5歳児の部屋では「ごっこ遊びゾーン」とし、
様々な仕事の真似ができるような環境を整える。
そんなことを検討しています。

「ごっこ遊びゾーン」での遊びが盛り上げるかどうかは
そこに何が用意されているかはもちろん、
どんな体験をしてきているかも重要になります。
地域を知るという目的での活動を続けてきていますが、
工場や美容院や病院にもよく遊びに行かせてもらっていることなんかも
今計画している「ごっこ遊び」にしっかりとつながっていくはずです。
言葉で言うとこんな感じなのですが、子どもたちにとっても私たちにとっても
結構大きな変化になっていくだろうと思っています。

今後の3,4,5歳児の部屋の「ごっこ遊びゾーン」がどう変化していくか、
楽しみにしておいてください。

2012年12月27日

No.276  2012年の終わりに

今年も事務室の前に火鉢が登場しています。我が家の話ですが、子どもの頃は冬になるとこの火鉢が登場していました。炭をおこして火鉢へ運び、後はちょこちょこと火箸で炭の位置を整えたりする、ただそれだけの事だったのですが、その体験の記憶は何故か鮮明に残っています。この火鉢、ストーブとはひと味違う暖かさですし、見ているだけでもなんとなく暖かくなってくるから不思議です。たき火なんかも同じですが、子どもたちのいる中に火を置くわけなので扱いには十分に気をつけなければいけません。だからといって火を使うことを避けるのではなく、火の怖さや扱い方を丁寧に教え、同時に火の便利さも伝え、それを体験する中で学んでいくことも大事だと思っています。

この火鉢の使い方ですが、単に暖まるだけではありません。今年はまだやっていないのですが、もちつき会でついたお餅を焼いてみたり、スルメを焼いてみたりといろいろ活躍してもらう予定です。そのときにお餅がだんだん膨らんでいく様子をながめたり、スルメの焼けるいいにおいを十分にかいだりと、そんな楽しさをしっかり味わってもらおうと考えています。また、ここで使っている炭は地元の方が作っている炭で、叩くと「カンカン」ときれいな音がしますし、燃えるときには「パチパチ、キンキン」と高い音が出ます。その音を静かに聞いている子どももいて、見て、匂って、聞いて、そして暖かさを感じてと、五感をふんだんに使う場にもなっています。



5、6人で火鉢を囲んで会話を楽しんでいる姿もよく見られます。火を囲んでのんびりと楽しく話をするというのは、たき火をしているときにも見られる姿ですが、たき火よりも火鉢を囲んだときの方が互いの距離が近く、話も弾みやすいのかもしれないと思っています。五感を刺激してくれるだけでなく、子ども同士の会話も促してくれるので、火鉢がある場は子どもたちの様々な体験という意味でとても貴重な場になっていると思います。



保育園では子どもたちの成長のために、興味や関心を高め、やってみようという意欲を高めるために、様々な体験の場を用意しようといつも考えています。子ども同士の関わる体験も、とても大切なこととしてその場を保障することに努めています。こうしたことは新しい年になっても変わることはありません。もっともっと楽しい場を目指していきます。来年もよろしくお願いします。

2012年12月26日

チーム保育の研修会 2次募集!

チーム保育の研修会ですが、
会場に多少の余裕があるので2次募集を行うことにしました。
興味のある方はぜひご参加ください。



12月27日 追記

 

上の様に書いていたら主任のMさんに
「そんな書き方だと人気がない研修だと誤解されますよ!」
と注意されました。
言われるとおりかも…と反省したので書き直します。

実は90名くらいの参加者だろうと予想し会場をおさえていたのですが、
今の時点で申し込みが、なんと130名以上も!
しかももう少し増えることも予想されています。
研修を受けたいと希望されている方には是非参加してもらいたいので
急遽200名程度は入ることのできる会場に変更することにしました。
そんなわけでまだまだ参加してもらえる状況になったので、
2次募集をおこなうことにした、というわけなんです。

おそらくどの園でも課題になっている職員のチームとしてのあり方について
一緒に考え、意見交換なんかもしてみませんか。

詳細はこちら→ www.hana-mura.net/asari/team_kensyu.pdf


2012年12月20日

No.275 過程も大事です

これを配布する21日(金)はキャンドルナイトの集いが行われます。この文章は20日(木)に書いていて、しかもイベントの時間には保育園にいないために見ることができません。そんな状況ではあるんですが、おそらく楽しいイベントになってるだろうなあと勝手に想像しています。見てもないのに「楽しいイベントになってる…」と適当に言ってるわけではなくて、ちゃんと理由はあります。

キャンドルナイトの集いは特別に節電を促すとかではなく、「電気を使わないことで電気がある今の生活を考えてみる」ということがあります。考えるのは難しいので、なんとなく感じるというくらいでしょうか。いつも使っている電気ではなくロウソクの灯を使うことで、それでも楽しくてあたたかな気持ちを感じることができるということを体験してもらいたいと思っています。また、ろうそくの一部は保育園の調理室で出た廃油から作りました。その様子を子どもたちにも見てもらうことで、身の周りにあるものの性質について関心をもってもらうことをねらっています。

それだけでなく、当日の会の内容は全てぞう組さんが考えてくれました。司会進行のこととかハンドベルの演奏なども、全部です。自分たちで考え、自分たちの会として運営することで、様々なことを体験できます。段取りや役の振り分け、チケットの準備をどうするかなどを決めるための話し合いも貴重な体験です。そんなこともできるようになったぞう組さんの成長を感じることができ、うれしく思っています。

行事は、そのときを楽しく過ごすこともですが、そこに至る過程でどんな体験をしながら進めていくかが大事です。その意味でいうと、今回のキャンドルナイトの集いは、前日までの取り組みも十分に意義のある活動だったと言えると思いますし、だからこそ「楽しいイベントになっているハズ」と書いたわけです。目的をきちんと定め、そして子どもたちにどんな体験をしてもらいたいかを確認しながら準備を進めることも、保育園のイベントの大事な部分です。後はその活動をどう振り返るか、です。取り組みの中で感じたことを子どもたちは自分なりの言葉や表現で伝えてくれるはずです。どんな思いが出てくるか、家庭でもゆっくりと聞いてみてくださいね。



2012年12月18日

「失敗」を「自信の根」に ⑥

「見守る」という言葉は誤解されやすい言葉です。「放任」などと混同されもします。ですから、私なりに「失敗」「葛藤」「試行錯誤」「意志」といったキーワードを交えながら、「信頼する」「尊重する」「待つ」などといい換えて、「見守る」の中身を述べてみました。


最後に、私事で締めるのは恐縮ですが、私の母は、私の高校の入学式で、壇上の先生が新入生の保護者に向けておっしゃった言葉を、懐かしそうに口にすることがあります。

「私たちは高校の3年間で、40歳になった時に勝負できる人間を育てます。だから、親御さんたちは、目先のことを、細かく気にしないでください。その子に勝負の根が育っているかどうかを、見てください」

母親によると、先生はそうおっしゃったようです。当の入学生だった私自身には、先生の言葉の記憶はないのですが、先生のいう「勝負の根」をそのまま「自信の根」といい換えれば、先生のこの言葉は、私がこの文章で書きたかったことを、そのまま代弁してくれているように思うのです。


その子が40歳になった時に花が咲く。そこまでの未来を見据えて、その子の中に「勝負の根」「自信の根」がしっかりと張られるように、失敗や葛藤を「見守る」。そこで育まれるものは目に見えにくいものですが、非常に重要なものだと思うのです。


《終わり》

「失敗」を「自信の根」に ⑤

次に、「危なっかしさの中にこそ、自信型に育つ芽がひそんでいる」ことについてです。

自信を積み重ねるという点でいえば、「できる」から始まるのではなく、「できない」から始まること、「できない」ものが「できる」ようになることが重要です。

大人でもそうだと思いますが、最初から「できた」ものが、どれだけできても、そこまで自信にはなりません。最初は「できなかった」ものが「できる」ようになっていく。「できなかった自分」を克服して、「できる自分」を自らの手でつくっていく。「できない」という状態がスタートにあるからこそ、「やれば、できる」という自信を得ることができます。

そのためには、「できないけど、やりたい」という危なっかしい状態を尊重するしかありません。できなくても「やる」と決め、試行錯誤を繰り返しながら、自ら「できた」にもっていく。その過程を見守るしかありません。それには、やはり「自分のことは自分で決めていいんだよ」という子どもへの信頼が重要になってくると思います。


信頼と同じくらい、尊重も重要であるように思いように思います。

「できないけど、やりたい」という内面からの強い意志を尊重することは、とりわけ重要であるように思います。というのも、「やりたい」という強い意志がないかぎり、試行錯誤が続かないからです。

「できない」の中に「できた」を見つけていく作業は、楽しいものです。しかし、それは、辛いものでもあります。「できない」の時間が長くなれば、 途中で放り出すことだって、あります。

だからこそ、本人の「やりたい」を根におくことが大事になってきます。

「やりたい」気持ちが根っこにあれば、一度は放り出した課題に、再び挑戦し始める。そうして、達成した時、その苦労が多かった分だけ、「やれば、できる」という自信は深くなる。

そういう点でも、大人は見守るしかありません。本人の「やりたい」という意志が、本人の中で高まってくるのを待つしかありません。


《「失敗」を「自信の根」に ⑥》へ

「失敗」を「自信の根」に ④

とはいえ、ケガを心配されるのも当たり前の心情です。たしかに、後遺症が残るような大ケガは避けなければなりません。しかし、すり傷、切り傷ほどのケガならば、「学び」のために必要な失敗・葛藤の産物だと思って許容していただきたいのです。


子どもが挑戦する時は、「できる」と思った時です。「今の自分にはできない」と子ども自身が判断すれば、大ケガをする前に、自分で挑戦を中止します。

そうした時、子どもはそっとその場を離れるか、もしくは大人に声をかけていきます。「無理だと思ったら、登らなくていいんだよ」というまなざしで、ゆったりと見守ってくれている大人のところにやってきます。そんな信頼関係をつくるためにも、「見守る」ことは大事です。

ですから、「見守る」ことは「放任する」ことではありません。子どもが葛藤に耐えられなくなった時、大人のところに戻ってこれるように、「見守られている」という安心感を与えておくことでもあります。「自分のことは自分で決めていいんだよ」という大人から子どもへの信頼は、「見守られている」という子どもの安心感を生むものでもあります。


そうして長い目で見ていると、子ども自身が、自分のやり方を発見していきます。「できない」の中に「できた」を見つけていきます。大人のまなざしに支えられて、子どもは、自らの力で、学習の段階を進めていきます。その家庭を保障する責任が大人にはあるように思います。



《「失敗」を「自信の根」に ⑤》へ

「失敗」を「自信の根」に ③

まずは、「危なっかしさの中にこそ、学びがあること」についてです。

フィンランドにエンゲストロームという教育学者がいます。エンゲストロームによると、「学習」は次のような段階に整理されます。

 ①やりたいと思う段階(欲求段階)
 ②できないけど、やりたい段階(ダブルバインド:葛藤:試行錯誤)
 ③「やった!できた!」の段階(ツールの発見)
 ④「いつでもできる。どこでもできる」の段階(ツールの一般化)


こうした段階を繰り返しながら、人はできることを増やしていく。その過程を、エンゲストロームは「学習」と呼びます。失敗や葛藤が起きるのは、「できないけど、やりたい段階」です。


もう少し丁寧に説明します。

年長の子がジャングルジムに登っているのを見て、自分も同じように登ろうとする。これが「やりたいと思う段階」。

しかし、うまく登れない。失敗する。そこで「登りたいけど登れない」という葛藤が生じる。これが「できないけど、やりたい段階」。

うまく登れずに、それでもなんとか登ろうとしている姿は、「危なっかしく」見えるものですから、大人は、ここで、ついつい手を出してしまいます。しかし、手を出してしまっては、子どもが自らの力で「やった!できた!の段階」に到達するチャンスを奪ってしまいます。そうならないためにも、大人は手出しを我慢する必要があります。このことが、失敗や葛藤を「見守る」ということです。


場合によっては、とくに葛藤せずに、別のルートを見つけて、登る場合もあります。それはそれでいいのです。肝心なのは、子どもが失敗してもやろうとしている時、そうして葛藤している時、その葛藤を見守ることです。

子どもが葛藤しているかどうかは、その子の顔つきを見ればわかります。失敗し、うまくいかない。それでもやると決める。そうして挑戦を始める時、子どもの顔つきが変わります。「あ、決めたな」そんな顔をします。そうなったら、大人はその子の挑戦を見守る。



《「失敗」を「自信の根」に ④》へ

「失敗」を「自信の根」に ②

自分より年上の子が、ブランコを立ちこぎしている。それを見て、自分も同じように立ちこぎしようとする。しかし、うまくできない。場合によってはバランスを崩して、ブランコから落ちてしまう。これが「失敗」です。しかし、やりたい。「できないけど、やりたい」。これが「葛藤」です。


以下に紹介するのは、定期的にお邪魔している子育て支援センターでの出来事です。

お母さんに連れられてきた3、4名の子どもたちが、ジャングルジムで遊び始めます。ジャングルジムの高さは1mくらい。積極的に登り始めたのは、一番大きな4歳の女の子。ジャングルジムを登っては、ジャングルジムについているすべり台から降りる。それを見ながら、3歳から1歳の子どもたちが、同じように遊び始めます。

子どもたちの遊びを見ていた、あるお母さんの言葉が気になりました。とにかく否定語・禁止語が多いのです。

 「そんなとこ登ったら、危ないわよ」
 「お兄ちゃんでしょ。譲ってあげなさい」
 「後ろに赤ちゃんいるわよ。気をつけなさい」
 「パンツ見えてるわよ。みっともないわよ」



登りたいのに、うまく登れない。時には落ちてしまう。そのような子どもの姿は、大人から見ると「危なっかしい」。だから、思わず手を出してしまいたくなる。しかし、失敗や葛藤は「危なっかしい」ものです。


先ほどのお母さんの場合は、ご本人が自分の言葉に悩んでいると見えて、自然と、その話になりました。話しているうちにわかってきたのですが、このお母さんの場合は、周囲がしつけにきびしいのです。

お母さん自身は、子どもにめいっぱい遊ばせてあげたい、多少のことは大目に見てあげたいと思っているのですが、周囲がうるさいのです。「甘やかすな」「しっかりしつけろ」、そんな小言で、お母さんを追い込むのです。

いきおい、お母さんの小言も増える。「みっともない」「危ない」、そんな言葉で子どもを縛ってしまうのです。


子育て支援にかかわっていると、こうしたケースに出会うことが少なくありません。少々危ないことをしたほうが子どもにとっての学びになると思っていても、周囲の声におされて手を出してしまう。そういった方が多いのです。

ですから、周囲の方には「危なっかしさの中にこそ、学びがある」「危なっかしさの中にこそ、自信型に育つ芽が潜んでいる」ということをご理解いただき、保護者や保育者が「危なっかしさ」を「見守る」ことを許容していただきたいのです。

以下の文章では、そういった思いを込めて、「危なっかしさの中にこそ、学びがあること」「危なっかしさの中にこそ、自信型に育つ芽が潜んでいる」 ことについて、記します。



《「失敗」を「自信の根」に ③》へ

「失敗」を「自信の根」に ①

全国私立保育園連盟の冊子にこんな文章が掲載されていました。乳幼児期の子どもに向き合うとき、とても大切な考え方だと思うので、ここでも紹介します。

久保健太氏
全私保連 保育・子育て総合研究機構研究企画委員会 社会化プロジェクトチーム
東京・篠原学園専門学校こども保育学科教員


シリーズ 乳幼児期の教育を考える 第2回
「失敗」を「自信の根」に



子どもを「自信型」に育てるためにも、子どもの失敗や葛藤を「見守る」ことは大切だと思っています。

そして、子どもの一番そばにいる人たちが、つまり、保護者や保育者が、子どもの失敗や葛藤を「見守る」ことができるように、周囲の大人たちが、失敗や葛藤を「見守る」ことの大切さをわかり合うことが大事だと思っています。


「自信型」とは、ヤクルト、阪神、楽天などの監督を歴任した野村克也さんの言葉です。プロ野球の世界で、選手として、監督として、じつに50年以上活躍された野村監督は、「仕事」について、次のようにおっしゃっています。

 「仕事をするとき」というものは、たいてい、
 自信と不安が交錯します。
 自分を、自信型に仕向けてゆくのも、
 「仕事をする」うえで、一つの方法ではありますまいか。
 野村克也・著『敵は我にあり』(サンケイ出版)



自信と不安が交錯した時、自信が不安を上回り、「やればできるだろうから、やる」と考えるのが、自信型の人間です。逆に、不安が自信を上回り、「やってもできないだろうから、やらない」と考えるのが、不安型の人間です。


今、私たちの目の前にいる子どもたちも、いつか大人になり、仕事を始めます。勝負どころで、不安が膨らむ時もあるでしょう。野村監督のおっしゃるように、仕事をする時には、たいてい、自信と不安が交錯します。その時、どこからか自信が湧いてきて、不安を上回る。不安が一掃されることはないかもしれないが、不安を抱えながら、何とか一歩踏み出す。

目の前にいる子どもたちを、そんな自信型の人間へと、育ててゆくためにも、失敗や葛藤を「見守る」ことが大事だと思っています。


《「失敗」を「自信の根」に ②》へ

ベースキャンプ

別に登山が大好きというわけではありませんが、
「アルプスへ挑む!」といった番組があったりすると
気になってついつい観てしまいます。
そしてハラハラしながらその登山者を応援することになります。
そんな番組を観ていて「すごいなぁ」といつも思ってしまうのが
“ベースキャンプ”というものの存在です。



特に高い山に登るときは
中腹あたりにテントを張ってベースキャンプとし、
そこから頂上を目指します。
途中で嵐になったり体調が悪くなったりした場合は、
そのベースキャンプに戻って体調を整えたりして
再び頂上を目指すというわけです。
登山者にとっての安全基地がこのベースキャンプです。

私はこの登山者を子どもに置き換えることができると思っています。
子どもは周りにある環境(これが山です)に対して
積極的に働きかけることで自分の世界を広げていき、
そのことで成長していきます。
でもまだ知らないことだらけなので不安になることはしょっちゅうあります。

そんな行動をとっているときに大人がとるべき大切な行動は、
一緒について行くことではなく、
いつでも帰ってきていいよという構えを見せることだと思うのです。
これが安全基地、つまり登山でいうベースキャンプです。

一緒について行くと、嵐になったときには一緒に遭難してしまいます。
そうではなくて、そこへ戻ればいつでも不安を解消してくれる、
そんな安心感を感じることのできる存在となることが大事だというわけです。

保育者のスタンスというか役割というのは、
子どもたちが自分で考え自分から積極的に挑戦し、
そしてそのことによっていろんなことを学び成長していくために、
「必ずそこにある」安全基地であることがまずは大事だと思っています。
そしてそれが子どもと大人の間の大切な信頼関係だと思います。

2012年12月14日

ロケットストーブ作り

保育園でスタッフのBさんとおもしろいモノを作りました。
作ったのはペール缶を使ったロケットストーブです。

ロケットストーブとは薪、廃木材、枯れ枝などを効率よく燃やすことができ、
煮炊きに使う、暖をとるなどが誰にでも簡単にできるという画期的なものです。

今回参考にさせてもらったのはこのサイト。
  ペール缶ロケットストーブの作り方

非常にわかりやすく紹介されていたので助かりました。

材料はこれ。
ペール缶2個
ステンレス製の煙突パーツ(半直管、エビ曲90°、T曲)
パーライト





まずペール缶にパイプを通すための穴を開けます。
金切バサミで切っていったんですが、これがかなり大変。
煙突パーツのサイズとジャストサイズの穴にしてしまったので
後で随分苦労しました。
少し大きめに開けておいた方がいいみたいですね。




もう1つのペール缶は底を切り取ります。
これも金切バサミで。
子どもたちが興味深そうに作業を見ていました。




穴を開けたペール缶にエビ曲を通し、他の部品も取り付けます。
底を切り取ったペール缶を上につなげます。




固定はボルトでしっかりと。




ペール缶の中にパーライト(断熱材として使用)を入れて完成!!
のはずだったんですが、
パーライトの量が全く足りず後日用意して完成させることになりました。
でもせっかくできたのでちょっと火をつけてみることに。




おー、よく燃える!(写真では分かりにくいですが)
しかもちょっとの薪でも十分暖かい!!

中に詰めたパーライトはとても軽いので持ち運びも簡単。
寒い季節のもくもくの日で、このロケットストーブは活躍してくれるハズです。




それにしてもかなり早く作ることができました。約1時間30分。
材料が集まれば2号もつくってみようかな。

2012年12月13日

No.274  子育て支援センターでの話 その2

先週は、「子どもが小さいうちは家庭で育てるべき」「早くから保育園に預けるのは子どもがかわいそう」という考えも、少し視点を変えて考える必要があるんじゃないか、という内容のことを書きました。今の時代だからこそ「様々な子ども集団の中での体験も大事」という考えに変えていく必要もあるんじゃないかという話です。そこからつなげていきますが、私が思っているのは、様々な年齢の子ども集団がある保育園の機能をしっかりと活用してほしいということです。

子ども集団で体験できることは本当に様々です。例えば一緒に遊んだりするときは自分と近い発達の子を選んで遊んだり、新しいことに挑戦しようと思うと、真似をして学ぶために少し上の発達の子を見るということをします。そして、いろんなことを教えてもらうためにずっと上の発達の子と関わったりします。様々な発達段階の子が周りにいて、必要に応じて相手を変えながら関わっていくことが大事だというわけです。こうした関わりの中で下の子は上の子から刺激を受け、上の子は下の子に教えてあげることで自分の能力を定着させ、お手本となることで自信をつけていきます。

ではこのような体験のできる保育園に子どもを送り出してあげればそれでいいかというと、決してそんな単純な話ではなくて、やはり親子の関係は大事になってきます。いろんな子と関わる環境の中で、意欲的に活動し、そして自分の世界をどんどん広げていこうとすると、どこかに安心できる拠点が必要だと思います。もちろんそれが友だちであったり保育者であったりもするわけですが、やはり一番は親の存在だと思います。友だちとのやり取りの中で葛藤を感じることもあります。不安になるときもあると思います。でも、そんなときはその気持ちをちゃんと分かってくれて受け止めてくれる親の存在があるからこそ、子どもたちは学びを深めていけるんだと思います。

子どもが求めたとき、子どもが困ったとき、子どもが負の状態に陥ったとき、いつでも助けてあげるよというメッセージを子どもに伝えてあげていると、その思いはちゃんと子どもに届くと思っています。そんな親子の関係から、子ども同士の関係へつながり、そしてもっと広い社会のいろんな人との関係につながっていく。そんなつながりを思い浮かべているとうれしくなってきます。

島根顔マラソン2012



奈良マラソンも終わり「次はどこの大会にしようか?」なんて考えてたんですが、
次のマラソンが決まっていたのを忘れてました。

次は「島根顔マラソン」
2012年12月23日(日)に開催される記念すべき第1回目の大会です。


 顔マラソンの説明はこちら→ 顔マラソン公式サイト

 島根顔マラソンのコース説明などはこちら→ 島根顔マラソン

 島根顔マラソンの開催要項などはこちら→ 島根顔マラソン事務局


コースは顔マラソン公式サイト管理人の@hama112さんが作ってくれました。
コース上のお店や自動販売機を利用して飲んだり食べたりしながら、
6〜7時間かけてのんびりと走る予定です。
こんなマラソンの楽しみ方もいいですよね。


※参加希望の方は事務局の@hatihatibunbunさんまで。

2012年12月9日

奈良マラソン2012

奈良マラソンを走ってきました。



気温が低かったので寒さ対策として百均のレインコートを着てのスタートです。
やたらとテンションの高い有森裕子さんに見送られ順調に走り出しました。



5kmくらい走ったところで寒さも和らいできたのでレインコートを脱ぎ捨てたんですが、
いま考えるとこれは失敗でした。

ところで今回もいろんな仮装をして走ってる人がいました。
被り物ではクマもん、富士山、でっかい馬の頭など、
全身系ではせんとくん、ゴジラ、半魚人、タイガーマスク、なんとか戦隊なんとかジャーの5人など、
すれ違うたびにうれしくてジロジロ見てしまいます。



沿道の応援もとても温かくて、いつもありがたいなぁと思います。
今回はたくさんの子どもともタッチを交わしました。
ほんとに嬉しくなる瞬間です。

さてレースですが、今ノ葉狂志郎とかいう人が応援してくれていたあたり、
天理市に向かう山越えの箇所くらいから一気に気温が下がり、風が強くなりました。




レインコートはもう捨ててしまっていたため、お腹を直撃する冷た~い風を防ぐことができません。
この辺りから定期的に襲ってくる腹痛とのたたかいも始まりました。
そして天理市に入ると雪も舞い始め、一気に身体が冷たくなります。
レインコートは捨てずに持って走るべきでしたね。

でもそんな身体を暖めてくれたのが25km地点のエイドで振る舞われたぜんざいです。
これは美味しかった!



このぜんざいで気分転換ができ、さあ残りをがんばろうと走り出したんですが、
今度はダラダラ続く登りに脚がきつくなってきました。
そしてこの辺りからペースが落ちていき、無事にゴールはできたものの、
目標にしていた3時間55分には全く届かない4時間8分49秒という結果でした。



このレースで4時間を切り次のステップへ進もうと思っていたんですが、
もうちょっとフルマラソンとの付き合いは続けることになりそうです。
疲れたけど楽しかった奈良マラソンでした。

2012年12月7日

No.273  子育て支援センターでの話 その1

先日子育て支援センターのイベントで少しだけお話をさせてもらいました。全くうまく話せず、聞いている人に申し訳ないような内容だったのですが、そのときに伝えたかったことだけはここに書くことで整理しておこうと思います。

子どもが小さいうちは家庭で育てるべき」「早くから保育園に預けるのは子どもがかわいそう」そんなことを今でも耳にすることがあります。言わんとすることはわかるのですが、少し視点を変えてみる必要もあるんじゃないかと思っています。私たちは子どもたちに社会の中で生きていくために必要な力を確実につけていってほしいと思っています。もちろんみなさんも同じ思いでしょうし、地域の人をはじめ、子どもを取り巻く様々な人も同じだと思います。だからこそ、そのために必要な環境を子どものために用意することが、社会にとっても大切なことのはずです。

社会の中で生きていくということは、いろんな人と関わりながら自分と他人の違いを認め合って、自分の持ち味を生かして助け合って生きていくことです。他人が喜んでいるとか、悲しい思いをしているとか、そんな他者の思いに共感することも大切です。それらは学校で勉強して学んだりするようなことではありません。全て関わりの体験から学んでいくことです。ではそのための環境は?

例えば「子どもが小さいうちは家庭で…」というときの家庭は、今も昔も変わらないでしょうか?昔の家庭は兄弟もたくさんいたし、さらに地域とのつながりも強く、地域の子どもたちや大人ともいろんな形でつながっていました。でも、今の家庭は、場合によっては日中は母親だけということも珍しくはありません。家庭で過ごすというのは単に“家で”とか“親と”ということではなく、様々な人との関わりのある中で過ごすという意味だったはずです。いろんな年齢の子どもと関わる体験とか、地域の人が共に協力しながら生活している様子に触れることとか、そんな場での体験が子どもには必要なんじゃないか、私はその視点も必要だと思っています。そして、赤ちゃんは生まれた時から他者と関わろうとする力を持っていることが分かってきた今、「早くから保育園に預けるのは…」というのも、今こそ「様々な子ども集団の中での体験も大事」という見方に変えていく必要があると思います。

というところまで書いたらいっぱいになってしまったので、続きは次回に書かせてもらいます。

2012年12月5日

研修会のテーマは「チーム保育」

県内で自主的に行っている保育の勉強会があります。
その名も「語ろう会」。
その「語ろう会」が中心になって研修会を開催することになりました。
今回のテーマは「チーム保育」です。

保育園の現場でよく悩みとして出てくるのがこのチームの話。
保育士がどんなチームをつくるかによって、
保育の形も随分違ってくるものなんです。

自分たちのチームのあり方を見つめ直したいという人、
チームの中での自分のあり方を考えたい人、
やるからには楽しく保育をしたいと思っている人、
そもそもチーム保育って何?という人などなど、
そんなみなさんの参加をお待ちしています。

日程:2013年2月16日(土)、17日(日)
会場:石央地域地場産業振興センター(島根県江津市)
対象者、定員
・【1日目】主任保育士、またはそれに準ずる立場の方(定員20名)
・【2日目】保育関係者、保育・教育・子どもに関心のある方(定員100名)
内容
・【1日目】講演「チーム保育について(リーダー編)」
・【2日目】講演「チーム保育について」
講師:藤森平司氏(新宿せいが保育園園長、保育環境研究所ギビングツリー代表)

タイムスケジュール
【1日目】2月16日(土)
14:30〜15:00 受付
15:00〜17:00 講演「チーム保育について(リーダー編)」
18:30〜20:30 情報交換会(会場は有福温泉三階旅館)

【2日目】2月17日(日)
09:00〜09:30 受付
09:30〜12:00 講演「チーム保育について①」
12:00〜13:00 昼食・休憩
13:00〜15:00 講演「チーム保育について②」
15:00 閉会

参加費:1日目の講演会は1,000円、2日目の講演会は2,500円、情報交換会は未定
申し込み、問い合わせ先:あさり保育園 0855-55-1024
申し込み締切:12月25日(火)

2012年11月29日

No.272  発表会を通して伝えたいこと

さて、明日は発表会です。その予行練習「いきいき発表会」が水曜日に行われました。地域の方を含めた10名の方が見てくれている中で、それぞれに表現を楽しんでいる子どもたちの姿を見ることができました。裏方としてステージチェンジ等の手伝いをしてくれた役員さんにも子どもたちの様子を見てもらい、その感想をいろいろ聞かせてもらいました。

その中で印象深かったのが、「去年とか一昨年とかは人前に出るのをあんなに嫌がってたAくんとかBちゃんが、今回はあんなに堂々としていて成長を感じますね」とか「くま→きりん→ぞうと順に発表を見ていると、くま組の時になかなか上手く言葉にできなくても、きりん組やぞう組になるとこんな風に自分の思いを言葉にできるようになるというのがよく分かります。そうやって成長の過程が感じられるのっていいですよね。」といった言葉です。

あさり保育園の保護者のみなさんは、子どもたちのことをほんとによく見てくれていると思います。自分の子どもだけでなく、他の子どもの姿や成長の様子に目を向けてくれていると感じます。そして子どもの発達についての理解も同じで、その子なりのペースがあることや、先の発達を見通した上で今できることにきちんと目を向けてくれている、そう感じています。こうした雰囲気の中だからこそ子どもたちは安心して生き生きと活動できているんでしょうね。

発表会は保護者のみなさんに「子どもの発達(特に言葉と表現)を伝える」という目的があります。そのために発表会の後半は0歳児から6歳児までが順番に登場するプログラムになっています。保育者との簡単なやり取りから始まり、友だちと同じ世界を共有してのやり取り、自分の感じたことや考えたことを伝えるといった風に、言葉・表現という同じ観点から通して見てもらうのがねらいです。その流れを見てもらうことで言葉・表現がどのように発達していくかを知ってもらい、そしてお子さんの発達を喜んでもらいたいと思います。前半は、子どもたちが興味のあるものを選択し取り組むものになっています。どんなことに興味を持ち、その興味を持ったことに対してどんな風に楽しんで取り組んでいるかをみてもらいたいと思います。そして終わったときの表情には、やり切った達成感やみなさんに見てもらった喜びがにじみ出ているはずです。そんな表情にもぜひ注目してあげてくださいね。

2012年11月22日

No.271 役員さんに感謝!

11月に入ってからの話です。毎週水曜日の夜になると保護者会の役員さんが遊戯室に集まり、発表会の出し物の練習をしています。出し物の内容について、こんなことをこんな風にやって…といったことを本当はお伝えしたいのですが、当日のお楽しみということでここに書くのは控えておきます。とにかくみなさんそれぞれに忙しい中、あれこれ調整をして参加をしてくれていると思います。本当に大変なことでしょうが、それでもワイワイ楽しく練習している様子を見ていて、ありがたいことだなあと思うわけです。

この保護者の出し物は、単に子どもたちにも楽しんでもらおうという思いだけではないのがすごいところです。内容を考える際に、保育園のテーマに沿ったものになるように考えてくれているんです。ご存じのように今年のテーマは『世界を知る』です。そのテーマのもとに様々な活動をしているわけですが、子どもたちがテーマに対してもっと関心を持てるように、もっと楽しめるように、大人がテーマに沿って活動する様子を子どもたちに見せたい!と、あーでもないこーでもないと考えたものを披露してくれることになっています。

保育を辞書で調べてみると『乳幼児の心身の正常な発達のために、幼稚園・保育所などで行われる養護を含んだ教育作用』と書かれています。ここから考えると保育園などの施設内で完結してしまうことの様に思えてしまいますが、私の解釈は少し違っていて、保育者だけでなく、保護者のみなさんや地域の方たちと一緒になって行うものと捉えています。社会の中で生きていくための力を確実につけていくのが保育の目的でもあります。もちろん保育園の役割はとても重要す。でもそれだけでは十分ではありません。保護者のみなさんを含んだいろんな人たちが子どもたちに様々な姿や思いを見せていくことも、「心身の正常な発達のため」に欠かせないことです。その意味でいうと、今回の取り組みのように、大人も一緒になって保育園のテーマに乗っかって活動する姿を見せることは、すごく意味のある取り組みだと思っています。

子どもたちのために「それぞれの立場からできること」をと動いてもらえる、そんな輪が大きくなると子どもたちの体験の密度は濃くなっていきます。その輪を大きなものにしていくことも保育園の大事な役割です。大きな輪を作るために、みなさんと一緒に考え、そして行動していきたいと思っています。

2012年11月15日

No.270  棒の取り合いから始まった関わり

先日、園庭で子どもたちのおもしろい関わりを見ました。いろいろと奥の深い関わりだと感じたので紹介させてもらいます。きっかけは2人の男の子です。いろんな遊びに使えそうな、いい感じの木の棒を取り合っています。2人とも絶対に譲らないという思いがしっかりと伝わってくる、そんな取り合いでした。もちろん危険な状況になれば止めるつもりで見ていたのですが、そこから状況が変化していきます。

2人の様子に気づいた女の子が「お〜い、ダメだよ〜!」と言いながら遠くから走ってきます。また別のところで遊んでいた女の子も「ダメー!」と言いながら、そのとき明らかに優勢だった男の子の方を止めに入りました。別の男の子もやってきて、少し離れたところからケンカは良くないということを一生懸命に訴えています。そうこうしているうちに取り合っていた棒を最初にやってきた女の子が取り上げてしまい、興奮していた2人の男の子は争いの元がなくなってしまったこともあってか少しずつ落ち着いていき、みんなもその様子を見ながらそれぞれの遊びに戻っていきました。

このやり取りは全てぱんだ組の子どもたちによるものです。他のクラスの子どもたちは用事のため園舎内にいて、たまたまぱんだ組の子どもたちだけが園庭にいるときに起こった出来事でした。他の子がいれば、例えばぞう組さんたちがいれば、また違ったことになった気もしますが、このときはぱんだ組の子どもたちだけでこのトラブルを見事に解決してしまいました。ケンカをしてる子がいて周りの子がそれを収めるという、言葉にすればたったそれだけのことなんですが、普段から関わる体験を十分にしているという土台がないとできないことなのは間違いありません。そして友だちとどのように関わればいいか、ケンカが起きたときにはどう解決していけばいいか、上の子の姿を見て学んでいることも大事なポイントです。他の子との関わりの機会、他の子を見る機会の大切さを改めて感じた出来事でした。

さて、2週間後には発表会が行われます。言葉のやりとりや体を使ってのいろんな表現を楽しんでほしい、そんなことを目的に発表会に向けての取り組みを行っているところです。できるようになったことや、楽しいと感じ興味を持ったことに取り組んでいる姿を、みなさんと一緒に楽しみたいと思います。

2012年11月9日

No.269 集団生活の中での『待つ』体験

今の社会を考えたとき、「うーん、もっと大事にしないといけないんじゃないかなあ」と感じていることに「待つ」ことがあります。というのも以前と比べて「待つ」機会が少なくなり、苦手になっている傾向があるように思うからです。技術がどんどん進歩し、新しいモノがたくさん生まれ、間違いなく便利になりました。そして「待つ」ことが少ない、もしくはほとんど無いことが好まれるようになったのが、今の社会の特徴かもしれないと思っています。でも、「待つ」体験を重ねて、待つことを知っておく必要もありますよね。

以前は待つ機会がたくさんありました。例えば携帯電話のない時代は、好きな人に思いを届けるために手紙を書いたりしてました(よね?)。手紙は書いてもすぐには届けられません。会って直接渡すとか、机の引き出しにそっと入れておくとか、とにかく時間がかかったものです。また電話をかけようと思っても、できることなら相手の親が電話に出ない時間がいいからその時間まで待たないといけないとか、それはもう大変でした。それが携帯電話やメールでのやり取りが普通になって様子は大きく変わりました。

便利になって「待つ」ことが少なくなり、よかったことはもちろんあります。急を要する人、例えば急病人とかが素早く連絡をとり必要な処置が受けられるようになっていることなんかは、大きなメリットだと思います。でも、全てにおいて「待たない」ことが当たり前になってしまい、「待つ」ことが例外になってしまうのはよくないと、最近特に思うわけです。何故かというと、人と人との関わりの基本は「待つ」ことだと思うからです。自分に思いや都合があるように相手にも思いや都合があります。相手の思いを尊重し「待つ」ことをしなければ、他者との関わりが成り立たない場合がほとんです。他者との関わりは「待つ」ことが基本にあると思っています。

保育園でごはんを食べるときは、みんなが揃うまで待って、みんなで「いただきます」と食べ始めます。もちろんかなり時間がかかることもありますが、それでもこの時間は待つ機会として大事にしています。「お預け」のように個人的に待つのは訓練のようになってしまいますが、そうではなく「みんなが揃うまで」といった集団生活の中での待つ体験は、社会の中で生きていくうえでとても大切な体験と考えています。周りのみんなを意識し、相手の思いを尊重できるように、便利さの中でも「待つ」ことは大事にしていきたいと思います。

2012年11月1日

No.268 ウォークラリーの話

月曜日にぞう・きりん・くま組さんがウォークラリーを行いました。距離の短いグループと長いグループとに分かれ、それぞれポイントとなっている場所(畑などでお世話になっている方の家と何度かお邪魔している美容院)までそこへの地図を持って進み、そこでクイズに答えて宝の地図をもらいます。ただその地図は半分しかないので、2つのグループが菰沢公園で合流して地図をくっつけると、やっと宝の地図が完成するという内容になっていました。

◆まず歩くコースですが、普段の保育で行っているように距離を選択しました。長い距離を歩けるかどうかは必ずしも年齢に比例するわけではありませんし、人によって長いかどうかの感じ方も違いますし、普段の運動量の違いも当然あります。今回はそれほど距離の差があったわけではありませんが、自分の体力や興味などにあったコースはどちらかを決めるところから始まりました。

◆次に子どもたちが持って歩いていた地図には、曲がり角では何を目印にどちらへ曲がるかとか、道の途中で柿を探すようになっているとか、そんなことしか書かれていないため、全体像はわかりませんし、どの道を通るのかわかりません。なので、よく知っている町内なのですが、普段は気をつけていなかったことや知らなかったこと、例えばこんなところにも柿の木があったのかということに気づかされることも多かったようです。

◆そして宝のありかである菰沢池には神様(仙人?)のような人がいて、そこで宝(といってもふかし芋ですが)を手に入れるわけです。なぜ菰沢池で神様なのかというと、「嵐によって菰沢池の水位が上がり池の近くの家が沈んでしまうと神様が教えてくれたのですが、それを信じずに避難しなかった人たちは亡くなってしまった」という言い伝えがあります。先週のもくもくの日では菰沢池周辺へ行ったので、その流れからこの言い伝えを子どもたちに話してあげていました。それが今回の池の神様の話につながっていくわけです。

このように今回のウォークラリーにはいろんな意味が込められていました。普段から活動しているこの地域に楽しみながら触れてほしい、もっと地域のことを知ってほしいという思いから生まれた取り組みです。こうした体験を重ねることで、子どもたちが大きくなったとき、「私はこのような町で育ちました」と誇りをもって言えるようになってほしいと思います。そしていつかは保護者のみなさんと一緒に楽しめるウォークラリーを…とも考えています。

慣らし保育について

あさり保育園の慣らし保育の考え方について、少し説明してみようと思います。

いきなりですが、子どもは自分が一番信頼・信用している人が、そのモノに対して安心しているかどうかの顔色を見る、ということをします。そしてその人が安心していると「あっ、安心していいんだ」と判断する能力を持っていることが分かっています。子どもは自分の世界を広げていくために様々な体験をしていくわけですが、自分の体験が少ないときは体験の多い人の顔を見て、その人がどう感じているかの表情によって自分も落ち着くということをします。

ここで考えたいのが慣らし保育のことです。

赤ちゃんが自分でその場や周りの人のことを体験して慣れるためには1か月くらいかかると言われています。でも最近は仕事の関係でそんなに長く慣らし保育を行うことができないというケースは多いです。そんなときあさり保育園では子どもの持っている素晴らしい力を生かすことにしています。

どういうことかというと、赤ちゃんが安心して接することのできる信用している人、これは主には親であるわけなんですが、その親が保育園に対して「安心している」という顔を見せることで、赤ちゃんはこの場所が安心できる場所だと早くわかるようになります。

例えば入園当初は親と一緒に来てもらって、親と一緒に1日過ごすようにしてもらいます。そのときにとにかく親が「この場は安心して過ごせるところなんだ」と分かってもらうようにしています。そのことによって、その安心感は表情に表れ、赤ちゃんはお母さんのそのときの顔を見ます。そのことで赤ちゃんは「安心して過ごせる場だ」と学んでいくわけです。

赤ちゃんは、ただ置いて行かれてしまうと感じると不安でしょうがないものです。そして自分の力だけで安心できるようになるためには1か月くらいかかります。だから、まずは親には保育園で安心して過ごしてもらい、その表情や様子を赤ちゃんが見ることができれば、ここは安心だと知って早く慣れてくれます。

少しでも保育園での生活を、子ども同士のいろんな関わりを自発的に経験してもらうためにも、慣らし保育は重要だと考えています。でも長い期間を設けることが出来なければぜひ一緒に来てもらい、まずは親が安心して過ごせる場だと体験を通して知ってもらい、そのことで「こここが安心できる場所なんだ」「ここにいる人は安心して接してもいい人なんだ」と子どもにも感じてもらえる、そんな慣らし保育の時間をつくってもらえたらと思っています。

世界を広げていくためには

子どもが成長するというのは自分の世界を広げていくことでもあると思います。では世界を広げていくためにはどうすればいいかというと、やはり自分でいろんな体験をするのが一番です。物の性質を知っていくとか、ここは危ない場所だとか、1つ1つ自分で体験し学んでいくわけです。

そのためには安心できる拠点が必要になります。それは親であることが基本なのですが、その親と依存関係にあると今度は離れることが難しくなります。親が子どもにとっての安心の拠点となり、そのことでそこを基点として子どもは少しずつ世界を広げていくことができる。そんな関係が大事だと思います。

ではそんな関係になるためにはどうすればいいか。子どもが困った時にはいつでも助けてあげる、子どもが負の状態に陥ったときにいつでもそこから立ち直るために手を貸してくれる、そんな安心感を与える関わりが大事なんじゃないかと思います。

子どもが求めてきたときには必ず応えてあげる、子どもが体験していることの楽しさを分かってほしいと思ったときにはいつでもそれに共感してあげる、そんな関わりを続けていくことが大事なんだと思います。子どもが求めたときに応えてあげることによって、安心してまた次の活動に没頭し、世界を広げていくわけです。

また、自分で体験することだけで周りの環境を理解していくしか方法がないとしたら、とてつもなく時間がかかってしまいます。そんなとき子どもは素晴らしい力を発揮します。自分が一番信頼・信用している人、多くは親であったりするのですが、その環境に対して安心しているかどうかの顔色を見るということをします。そしてその人が安心していると「あっ、安心していいんだ」と判断する、そんな力を持っているそうです。

例えば大人の例でいうと、飛行機に乗っていて揺れたとき、私たちは「この飛行機、大丈夫か?」と思いますよね。そんなときは一番信頼している客室乗務員の顔を見ます。その客室乗務員が落ち着いていたら「大丈夫なんだ」と思うようになります。もし慌てた表情をしていたら、こちらも慌ててしまいます。

というように、子どもは体験が少ないときは自分が信頼している体験の多い人の顔を見て、それによって自分も落ち着くべきか、気をつけるべきかの判断をするようです。子どもってすごいですね。

2012年10月25日

No.267 タイムアウトのような工夫も必要

子どもとの接し方って簡単なことじゃないですよね。こんな時はこの対応が唯一の正解!なんてものはなく、その場その場で考え、そして向き合っていくしかありません。その難しさの代表的なものが、子どもの行為に対して注意をしなければいけないときではないでしょうか。アメリカには、親が子どもに対して罰する時の方法でおもしろいものがあるので、ここで紹介します。

それは「タイムアウト」というものです。スポ-ツなどでは休憩時間を取ったりゲ-ムを中断する時に、「タイムアウト」といいます。それと同じで、子どもがかんしゃくを起こしたり悪さをやめない時などに、親が「タイムアウト!」と言って、子どものやっていることをまずはそこで中断させます。そして部屋の隅やイスに一定時間座らせます。その時間は年齢によって異なりますが、だいたい年齢×1分くらいのようで、2才では2分くらい、4~5才からは5分くらいのようです。また、その時間を子どもが把握できるように、砂時計とかベルのなるタイマ-をかけて、子どもの横に置くといいそうです。

ただじっと何もせずに座らせられるということは、子どもにとって非常に苦痛なことです。そして何より、この数分の間に頭も冷やされるわけです。おれだけでなく同時に親も高ぶった感情を静めることができ、一石二鳥です。アメリカでは、公園などで悪さをした子が隅っこに座らせられている光景はよくあるそうです。そして大事なことは、タイムアウトが終わった後に必ず「何が悪かったのか」を子どもに静かに言って聞かせることです。

あさり保育園にある「なかよしテーブル」は、子どもたちがケンカをしてしまったときに、そのテーブルへ行って自分の意見を相手に伝え、同じくらい相手の意見を聞いて仲直りをする場所です。そこでは大人がほとんど関わることなく、子どもたちだけで仲直りをすることができているのですが、そのテーブルへ移動する間に興奮していた子どもたちの気持ちが静まり、そのためにカッとなって手を出したりすることなく相手と話ができるということがあるようです。何が良くて何が悪いのかを子どもに伝えることは大切ですが、そのためにもこうした工夫は必要なんだと思います。親も感情をもった人間です。子どもときちんと向き合い善悪をきちんと伝えるためにも、タイムアウトの様な工夫をしながら少しでもいい形で向き合うことができるといいですね。

2012年10月21日

熊本でのこと

18日と19日、
熊本で行われた研修会に参加してきました。
しかも今回は熊本の保育園と幼稚園を見学させてもらえる
そんな豪華なスケジュールでもありました。

まずは城山幼稚園。
細かいことを書き始めると止まらなくなってしまうので
ここでは1つだけ。
保育を変えるに当たっていろんな議論がなされたと聞きました。
3,4,5歳児を3つのグループに分けたとき、
それぞれの部屋の環境は同じにするのか、
それとも少しずつ違ったものにするのか。

こうやって書くと別に何でもないようなことに思えますが、
実際はほんとに大変だっただろうと思います。
私たちが同じ内容を話し合ったとしても
やはりかなり悩み、かなり苦労すると思います。
結局は少しずつ違う環境にして
グループを超えた子どもたちの交流を生み出したい、
そんな風に決まったそうです。

話し合いをするときに大事なのは
「何を軸とするか」だと思います。
城山幼稚園の軸は「子ども同士の関わり」と聞きました。
他にも悩みはたくさんあるんでしょうが、
悩みにぶつかるたびにその軸に照らして考えるということを
いつも丁寧に、そしてしつこいくらいに 話し合いをされているんでしょう。
そんな姿勢はとても勉強になりました。



そして城山保育園。
ここは園舎が新しくなったばかりで
まだ変化の真っ最中ということが感じられる園でした。
でも至る所に園長先生をはじめ、スタッフの皆さんの思いがしっかりと感じられ、
そこにいるだけでうれしくなってくる、そんな環境でした。

ここも1つだけ。
調理をしているところを子どもたちに見せたい、
そんな思いから調理室が思いっきりオープンになっていました。
こうやって環境をつくることは簡単なことかもしれませんが、
そこで仕事をする方はそんなに単純ではないと思います。

調理室にも入らせてもらいましたが、
すっごく外から見られています。
最初は見られることに少し抵抗もあったと聞きましたが、
おそらくそこから「子どもたちに何を見せるか」という
発想の転換をされていったんだろうと思います。

「外から見ることができる」環境は
中の人が「何を見せるか」を考えることで初めて生きてくると思います。
それは結構大変なことと思いますが、
それを何でもないことのように、しかも楽しそうにされている様子を見て
自分たちもまだまだできることはいっぱいあると感じました。



そしてそんな両園に共通していたことは
子どもたちが自分で考えてしっかりと活動していたことです。
前向きで、柔軟な発想をされる保育者の方々がおられる園です。
当たり前のことですよね。
子どもたちもその環境でしっかりと力をつけているはずです。
やはりしっかりとした取り組みをされている園を見学させてもらうことは
すごく刺激を受けますし勉強になります。

初めて訪れた熊本でしたが、すごく有意義な2日間になりました。

2012年10月18日

No.266 将棋がしたい!

月曜日の昼のことです。ぞう組のKくんが「ねえ園長先生、ぼく将棋がしたいから将棋の道具を用意して!」と頼みに来ました。こういう申し出は大歓迎なんですよね。子どもたちが何かをしたいと考え、そしてその気持ちを伝えて交渉しようとすることは、今後も必要な力です。もちろん全ての申し出を実現することはできないので、きちんと理由を伝えて断ることもあります。でも今回のは違います。とってもうれしいこの申し出を喜んで受けることにしました。

ただせっかくなので、Kくんにいくつかお願いをすることにしました。
①将棋をしたい人が1人だけでは何もできないので、みんなで将棋をやらないかと提案すること。
②遊び方を知らない人がほとんどだと思うから、Kくんがみんなに遊び方を教えてあげること。
そんなことを話してその日は終わりました。

次の日の朝のお集まりの時間、Kくんは「先生、ぼく話したいことがある!」と言ってみんなに将棋のことを話してくれました。前の日に家でどうすれば伝わるかをずっと考えていたようで、楽しさやルールについて堂々と説明してくれたそうです。その時の一生懸命説明する姿から「将棋がしたい。将棋って楽しいよ。」という思いが伝わったんでしょう、みんなも将棋をやってみたいということになり、改めて私のところに将棋セットが欲しいとお願いに来たので、用意することを約束しました。

ここまでのやり取りだけで十分だとも思ったのですが、今回のようなことが出来たのならもっといろんなことを任せてみようと思い、将棋盤をどのゾーンに置くか?片付けのルールなどはどうするのか?についてもKくんに考えてもらうことにし、みんなにそのことを伝えてもらうことにしました。こうやってみんなの中に登場する将棋は、おそらく楽しい盛り上がりをみせてくれることでしょう。将棋のルールがどうやって子どもたちに浸透していくのか、駒がなくならないように誰がどうやって目を光らせるのかといったことにも興味があります。子どもたちの提案がどんどん出てきて、それをみんなで話し合い、実現につなげていくといったことが増えてくると、遊びの質はまた変わってくるんだろうと思います。また楽しみが増えました。



2012年10月16日

ととろの日

ととろの日のイベントが終わりました。
1年に一度、10月16日にしか会えないので、
子どもたちは大喜びです。
私たち大人も毎年新鮮な気持ちで参加できます。

ととろに会うためにはドングリを集めなければいけません。



そんなこともあって、
この時期はとにかく自然の中へ出かけていきます。
そうやってドングリ以外の豊かな自然にも触れるワケです。

また、望めばたいていのものがすぐに手に入る今の時代、
先のイベントを待ちわびるという体験も大切だと思います。
指折り数えて楽しみに待つという体験は、
私たち大人も大事にしないといけないことかもしれません。
そんなことを考えながら、ととろの後ろ姿を眺めていました。



ととろが森へ帰った後、女の子が「ととろにあげたい」と
こんなものを作って持ってきてくれました。
子どもの気持ちは真っ直ぐで気持ちがいいですね。

2012年10月11日

2005年8月のこと

2005年8月、
島根県保育協議会の研修会が出雲で開かれました。
研修委員として活動していた私は参加料等の確認作業を終え、
会場に入って既に中盤に差し掛かっていた講師の話を聞きました。

実際に聞いたのは10分くらいのことだったと思います。
今考えてもなぜそんな風になったのかはわかりませんが、
その10分くらいの話の内容に衝撃を受けて興奮してしまい
そのまま冷静に話を聞き続けることができず
会場を飛び出してしまいました。

保育に対して漠然とした疑問を感じていて、
でもその疑問をどのように考えればいいのかが全く分からず
ずーっと悩んでいたときだったというのが
一番の理由だったと思います。
とにかくその時からその講師のことを調べ、
その方の書かれた本を見つけては急いで取り寄せ
何度も読んで内容を理解しようとしたことを
今でも覚えています。

その方は単に保育の方法を語っておられるだけではなく
生き方を語っておられるんだと私は理解しました。
「よし、どれだけ時間がかかってもいいから
この方から保育を学ばせてもらおう。
そしてあさり保育園の保育をもっといいものにしていこう」
そう決心してあれこれと動きだし、
そして今のあさり保育園の形に至る、というわけです。

今日は出雲で研修会に参加してきました。
2005年8月の研修会と同じ会場、そして講師も一緒です。
その時のことを鮮明に思い出したので
せっかくだからと当時と同じ場所に座って
講演を聞かせてもらいました。

出会いってほんとに不思議です。
2005年8月の出会いから
私の興味関心も活動もガラッと変わりました。
変化の大きい小さいはあるでしょうが、
いろんな人との出会いから確実に影響を受けてるんでしょうね。
これからもいろんな出会いがあると思います。
その一つ一つを丁寧に受け入れていくことができればいいなあ。


No.265 ロゴができました

あさり保育園のロゴが完成したので、ここでちょっと説明をしておきます。「社会福祉法人花の村 あさり保育園」ということで、法人と保育園で2種類のロゴがあります。まず法人のロゴですが、江津市の花「ツツジ」を元にデザインされています。オレンジが介護施設「合歓の郷」、ピンクは姉妹園の「さくら保育園」、緑が「あさり保育園」を示しています。そしてその緑の花から花びら1枚を取り出したものがあさり保育園のロゴになっています。






花びら1枚を取り出しているのは、「子どもたち一人ひとりを大切にした保育」を行っていくという私たちの思いを込めていて、中に描かれているクローバーは子どもたちの成長を願ってのものです。「子どもたち一人ひとりがいろんな人との関わりの中で、自分を大切にしながら成長してほしい」そんな思いを込めたロゴです。できたばかりなので、いろんなところに使用していくのはこれからになりますが、保護者のみなさんにはいち早くこのロゴに親しんでもらいたいと思ってのお知らせでした。このロゴが印刷された名刺があるので、ほしい方はご自由に持って帰ってください。

話は変わって、25年度の入園手続きの時期が近づいてきました。11月の申し込み開始に先立って、今月の17日と26日に入園説明会を行います。この会は来年度新しく入園を考えておられる方が主な対象なので、この文書を配布しているみなさんには直接は関係ないのですが、こんなこともやっているんだという位にでも把握しておいてもらえればと思います。今年度は、様々な発達段階の子どもと関わることが幼児だけでなく乳児にとっても大事だということ、保育園での生活や体験が子どもの成長のためにも大事だということ、そんなことについてお話できればなあと考えています。

保育園の機能は「母親の代わり」「保護者の代替」というイメージが今でも強く残っていると感じています。子どもが小さいうちは母親が育てるべき、という考えもそうです。母親の存在は子どもにとって当然重要ですが、他の子どもとの関わりも同じように重要です。そのためにも子ども集団のある保育園での生活は大事な場なんだということを、何とか広く伝えたいんですよね。

2012年10月5日

No.264 運動会はいかがでしたか?

運動会が終わりました。空の様子を心配しながら進めていくことにはなりましたが、子どもの運動面の発達を伝えることや親子の触れあいを楽しむというテーマに沿った取り組みは無事やり遂げることができたと思っています。子どもたちが自分の出来るようになったことを表現し、それを見ている保護者のみなさんは笑顔になる。これってとても自然なことですよね。そんなわけで子どもたちだけではなく、保護者のみなさんの笑顔もたくさん撮影させてもらい、掲示させてもらいました。笑顔がたくさんある場になったというだけでなく、子どもたちの姿に、そして子どもたちの関心のある対象に対して、みんなの気持ちが向いていた場だったということをうれしく思っています。

子どもは「自分を見てほしい!」という思いはもちろんですが、「自分の興味のあるものを同じように興味を持って見てほしい!」という欲求も強く持っています。どんな時でも子どもと近い距離で接していなければ情緒が安定しないなんてことはありません。例えば子どもが親から離れておもちゃで遊んでいたりするとき、ふと親の方を振り返ったり、「ねえ、見て!」とアピールしたりします。そんな場面はよくありますよね。そんな時に無関心でいるのではなく、そちらを見ることで「あなたが楽しく遊んでいるのを私も興味を持って見てるよ。」というメッセージを伝えることができれば、子どもはまた安心して遊びに没頭していきます。このメッセージを子どもが感じることができれば情緒は安定するということが分かってきています。一緒に遊ぶことができなくても、「見てほしい」という思いに応えてきちんと見てあげることで情緒は安定し、そのことで子どもはますます活動範囲を広げていくというわけです。

運動会で様々な運動に取り組んでいた子どもたちに対して、そしてその活動に対して強く関心を持って見てもらったあの時間は、まさに子どもたちにとって安心して自分の力を発揮できる場であったと思います。これからの子どもたちの活動に対してもみんなで関心を向けていくことで、もっともっと活動は楽しいものになり、もっともっと幅が広がっていくと思います。今後どんな活動が行われていくか、どんな意図で行われるのか、そんな情報をこれからもお伝えしていきますので、みなさんも楽しみにしていてください。

10月になってすっかり秋らしくなりました。自然がどんどん変化するので楽しい季節です。これからもおもしろい活動がどんどん登場してきますよ。

2012年9月27日

No.263 オロチの雲と運動会の話

運動会の予行練習をしているときのことです。ある子が空を見て「あっ、オロチの雲だ!」と叫びました。そばにいた他の子も「どの雲?あーーほんとだ!」「オロチだ!」と喜んでいます。写真がその時の空です。私も結構がんばって探してみたのですが、結局オロチは見えませんでした。子どもってすごいですね。自分の持っているイメージを自由に外の世界にも見ることができるのは、発想が自由で豊かな証拠だと思います。自分も子どもの頃はそんな風に周りのモノを見ていたはずなのに、いつの間にか出来なくなってしまっているなあと考えさせられました。大人の見方と子どもの見方、大人の世界と子どもの世界は決定的に違っていて、そのことを忘れて子どものことを考えている限り、理解できないことは多いんだろうともあらためて思わされた瞬間でした。



そんな姿を見ながらの予行練習だったからか、子どもたちは運動会のことだけを考えて活動していたのではないんだろうと感じた時間でもありました。もちろん当日のことを考えながらやっていた子もいたでしょう。他の子の様子を見ながら「よし、自分も!」と張り切って取り組んだ子ももちろんいたはずです。でも子どもたちの体験は全て運動会のためにあったわけではなく、そのときの雲にオロチを見て楽しんでいた子がいたり、友だちとの会話や関わりを楽しんでいたりと、運動会という活動を通して様々な学びにつながる体験をしていたはずです。そう考えると運動会の練習も、運動会当日の活動も、全てが日常の保育と無関係ではなく、つながっていることが大事だと再確認できました。

あさり保育園の運動会の目的の1つは「保育を厚くする」です。運動会が盛り上がればそれでいいというのではなく、そこまでの活動もわくわく感があり、普段の保育とつながった運動会であることを大事に活動してきました。世界をテーマとし、世界の国々をつないで聖火を運んでくることを目指した最初のリレーなんかもそうです。当日までにどれだけ期待感を持って活動してきたか、その活動と日々の生活がどうつながっているのか等を想像しながら運動会を見てもらうと、より楽しく見てもらえるんじゃないかと思っています。

2012年9月24日

一日限定のカフェ

今日は休憩時間に一日限定のcafeが開かれました。
カフェの名前は「cafe de 52」。



MさんとKさんが企画から準備、今日の運営まで行ってくれました。
出されたものは園庭のハーブで作ったハーブティーと
Kさん手作りのブランマンジェです。



何故このようなカフェが開かれたかというと、
実はこのブランマンジェが入っている瓶を
保育の中で使う必要があったというところから話は始まります。
あることをするためにこの瓶を用意したのですが、
せっかくなのでこの瓶をいろいろ活用してみようとになり、
じゃあ何かスイーツを作ってカフェでも開いて…と
あさり保育園のスタッフが得意とする展開になっていったわけです。

保育園でカフェを運営できたらいいなあという思いがあり、
今までもお迎えに来られた保護者の方々に
ハーブティーを飲んでもらう場を用意したりと、
どんな形がいいのかをいろいろと試してくれていました。
今回もその一環だったりします。
また休憩時間をよりリラックスできる場にできないかということを
MさんとKさんはあれこれ考えてくれたようです。




こんな遊び心を私たちは大事にしたいと考えていて、
今回のカフェもこれだけで終わるのではなく、
何かの形で保育の中に生かされていくと思います。
今回は「瓶」から始まった取り組みですが、
こんなちょっとしたことからも楽しむことを探していく姿勢は
子どもたちにも体験を通して伝えていきたいことです。

保育につなげていくための何かを探そうとすることとか
保育の場を少しでも楽しいものにしようといったことを
いろんな角度から考えることも大事なんじゃないかなあと思います。
ヒントはいろんなところに転がっているはずです。
真正面から考えることはもちろん大事ですが、
時にはちょっと違うところから考えてみたりすることも
必要だったりするんですよね。

そんなことを楽しみながら考え実行してくれるスタッフを見ていて
なんだかうれしくなりました。



2012年9月21日

No.262  手づかみはいけないこと?

今週の水曜日に行政の栄養士さんがあさり保育園の食事を見に来られました。子どもたちと一緒に食事をしながら食事内容や食事風景も見ていただきました。そしてその結果、ごはんと味噌汁を中心にした食事についていい評価をいただいたのですが、それ以上に意欲的に食べている姿を評価してもらったことが私にとっては嬉しいことでした。見ていただいたのは0,1,2歳児の食事風景が中心だったのですが、子どもたちが意欲的に、そして何より楽しそうに食べている姿をすごいと思ったという感想で、まさにそれが私たちが大事にしていることだったからです。

県内を始め全国の保育園の方と交流していると、食事に関しても本当に様々な話を聞くことがあります。最近聞いて驚いたのは「赤ちゃんが手づかみで食べることを禁止している保育園」の話です。内容はそのままなのですが、大人が食べさせるか、スプーンなどを使って食べること以外は認められないそうです。私たちも決して食べるときの作法はどうでもいいなんて思っていませんが、でも赤ちゃんは食べたいという気持ちから思わず食べ物に手が出るということは当然あります。そうした食べたいという意欲は子どもの自然な姿であり、まずはその意欲を大事にし、そこに手の力や手先の器用さが育ってくることでスプーンなどを上手に使って食べられるようになる、というのが子どもの自然な発達の進み方であるはずです。手づかみを禁止することで確かに自分も汚れずに、更には周りも汚さずに食べることはできます。でも汚れて不快だと感じることも発達には大事なことですし、手で食材の感触を十分にあじわうことも五感を刺激するため発達には大きく影響してきます。食事を単に栄養の摂取と考えるのではなく、様々な体験の場と捉え、子どもの発達にどうつながっていくかという観点からも考える必要はあると思っています。

他の子どもと一緒に食べることを通して他の子の食事の様子を見ることももちろん大事ですし、そこから生まれる楽しさを共有することも大事です。好き嫌いなんかも、意欲や楽しさを大事にすることや他の子の様子を見ることを通して減らすことができるという調査結果も出ています。食事内容はもちろんですが、どのように食と向き合うかということも丁寧にこだわっていき、食事という生活の場の質を高めていきたいと思っています。生活は、生きるために必要な様々なことを学ぶ、大事な大事な活動です。

2012年9月20日

保育園からのアプローチによる連携の取り組み

「小学校との連携」の取り組みについて、全国保育協議会の会報に書かせてもらいました。1年前に書いていたものを今回まとめ直しました。記録のためにもここに載せておくことにします。



子どもたちのための連携とは

あさり保育園は、平成12年4月に公立園が民営化された、定員60名の保育園です。小学校との連携については、年1回の話し合いや交流活動などはあったものの、果たしてそれが子どもたちのためになっているのか分かりませんでしたし、小学校で○○をするようになるから保育園ではそれに向けての準備をという考え方も、丁寧に整理して考える必要があると感じていました。

保育所保育指針には小学校との連携について「(ア)子どもの生活や発達の連続性を踏まえ、保育の内容の工夫を図るとともに、就学に向けて、保育所の子どもと小学校の児童との交流、職員同士の交流、情報共有や相互理解など小学校との積極的な連携を図るよう配慮すること。」と書かれています。この中の「子どもの生活や発達の連続性を踏まえ、保育の内容の工夫を図る」ことがまずは連携の基礎であると考え、保育の内容を固めていくことから始めました。

子どもの発達を考えたとき、例えば行動抑制力をつけるためにはまず自己主張をし、やりたいことを十分に行う必要があります。小学校へいってじっと座ることができるように保育園で座る練習をするのではなく、保育園では子どもがやりたいことを自分で考え自発的に取り組める環境を保障しています。遊びのゾーンを設置したり、活動を選択できるようにしたり、そのときの発達課題に確実に取り組めるよう年齢で集団を分けず、活動によって柔軟に集団を作っていく形をとったりしています。小学校ではこうしているからそれに合わせて…と子どもの発達を上から見ていくのではなく、0歳からの発達をしっかりと保障していくことが連携の基礎になければいけないと考えています。


学力の基礎となる探究心を育てる

また、全ての学力の基礎になるのは物事に対する探究心です。探求心がなければいくら文字が読めても数が理解できても、学習に対する意欲は高まりません。子どもの意欲の低下は調査などでも明らかになってきていますが、小学校での学習に対して意欲的に取り組めるようになるためにも、保育園で探究心をいかに育てていくかは大きな課題です。森の中で1日中過ごす活動を行っていますが、自然の中にあるものに対して興味を持ち、思う存分そのものと触れ合うことで不思議さを感じることも、探求心を育てる大事な活動と位置づけています。これらのことは小学校との直接的な関わりではないですが、連携の大事な出発点と捉えています。


日常的に行き来のできる関係づくりを

具体的な連携としては情報の共有、職員の交流があります。主には近くの小学校との連携ですが、子どもの情報を共有するために、年度末だけでなく年度の初めにも話し合いの場を設けてもらうようお願いしています。以前は学期ごとに行っていたのですが、現在は3月と5月の年2回となっていて、ここには園長以外に保育士数名も参加します。それとは別に、不定期ですが、校長先生や教頭先生と話をする場を設けてもらっています。保育園で行っている取り組みの意味を理解してもらうことや、小学校での学習について理解することが目的で、必要性を感じたときに園長が随時小学校へ出かけていって話をさせてもらいます。保育園と小学校という立場の違いはあるますが、子どものことについて語る場はこちらからの動き次第で作ることはできると実感しています。

また夏休み期間を利用して小学校の先生が1名ずつ保育園に来られ、保育士体験をされる活動が続いています。子どもたちの生活を実際にじっくりと見てもらうことで、子どもに対しての理解だけでなく保育に対しての理解も少しずつ深くなってきているように思います。保育園の職員が小学校の授業の様子を見学させてもらう場も、必要に応じて設けてもらっています。頻繁に話し合いをするようになってから、保育園と小学校の行き来も盛んになってきています。連携のためにも日常的に話のできる関係作りは重要だと思っています。


園児と小学生の主体的な交流

子どもたちの交流としては、小学校の5年生と3、4、5歳児が年4、5回に渡って交流する機会もあります。この取り組みでは小学生にとっても園児にとってもコミュニケーション能力の向上を期待した取り組みになるように工夫をしています。小学生と園児が混ざって6人程度のグループを作り、小学生が中心となってどこで何をして遊ぶかを決める活動なのですが、園児から意見を聞き出すのに最初は苦労をしています。発達差が大きい中でのコミュニケーションは互いに伝えることや理解することに工夫を必要としますが、回を重ねるごとに上手くコミュニケーションを取ることができるようになり、その様子からもこうした活動は大切だと思っています。ここで交流する5年生と年長児は次年度の6年生と1年生になり、小学校でもいい関係を築いているようです。


特別支援学校の教諭からのアドバイスも

支援の必要な子どもに対しての取り組みとしては、地域の特別支援学校の先生に定期的に保育園へ来ていただいて子どもの様子を見てもらい、保育に対してのアドバイスをしてもらっています。いろんな角度から子どもたちを見てもらうことで、よりよい支援のための気づきを少しでも多く得たいという思いから、この定期的な訪問を特別支援学校にお願いし実現しました。行政が動いてきちんとしたシステムが作られることももちろん大事ですが、それにはどうしても時間がかかります。であるなら、こちらから行動を起こしてつながりの必要性を訴え支援の輪を広げていくことは、これからも必要になってくると思います。


今後の課題-さらなる共通理解を

小学校だけでなく様々な機関と連携を取ることで、子どもたちの育ちについての共通認識はスムーズにできるようになったと思いますし、特別な支援を必要とする子どもについては、就学に向けての混乱はずいぶん少なくなったと思います。ただ、現状は同地区にある小学校との連携に限定されているので、その他の小学校との連携についても検討していく必要はあります。さらには子どもの0歳からの発達についての共通理解にはまだまだ十分ではないところがあるので、続けて対話を行っていくことが今後の課題でもあります。