2017年12月22日
No.524 冬至って何だろう?
「冬至って何だろう?」では、年長児が受付、司会、出し物等で、とてもいい表情で楽しそうに取り組んでくれました。会を運営することを楽しんでいる様子はこの日までの姿からも感じていましたし、そのために話し合って調整する力なんかもずいぶん育ってきていると聞いています。こうした姿はある年齢がきたら自然と身につくものではなく、日々の生活の中で意見を主張し、ぶつかり合い、自分の思いとは違ったところに相手の思いがあることを想像するといった経験を積み重ねることによって、そのことで遊びや活動がより楽しいものになると実感することによって、獲得していくものだと理解しています。良い経験を積み重ねてきたんだなと、嬉しく感じた「冬至って何だろう?」の会でした。
さて、年が明けた1月の保育参観の場では、O保育士が保護者のみなさん向けにある発表をしてくれることになっています。その内容は「子どもたちが自制心をどのように獲得していくか」です。当日の発表をぜひ聞いていただきたいのでここで詳しく書くことはしませんが、自制心はなぜ大事なのか、こども園の生活の中のどんな経験が自制心の獲得につながっているのか、これらは0歳児から考えていく必要があることで、それを子どもたちの活動の映像を観ていただきながら伝えるものです。こども園で行われている保育の意味についてはまだまだ発信不足なので、こうした機会はもっと作っていかなければいけないと思っています。保護者のみなさんに少しでも理解してもらいやすい形で届けるためにはどうすればいいか、そんなことをO保育士が深く深く考え続けてくれています。1人でも多くの方に当日の発表を聞いていただきたいと思います。
今回が今年最後の「園長のひとりごと」です。印刷して保護者に配布する形をやめ、web上のみで発信する形に変えて半年が経ったところです。自分の中に「どう読まれるだろう」「この意図をなんとかして伝えたい」といった思いが弱くなっている反省もありますし、発信すべきものを発信すべきタイミングで届けられていないという根本的な課題に対しても反省しています。もっと気軽に、もっとタイムリーな発信を、いろんな方法で試していきたいと思っています。 来年もよろしくお願いします。
2017年12月15日
No.523 子どもの行動の裏には発達が関わっている
子どもに真っ直ぐ向き合ってこられた方の言葉はやはり力がある!と感じましたし、勉強になることが多くありました。子育てをしていると、子どもの行動に悩まされることは多くあります。でも、その行動の意味を理解すると受け止め方も変わるし、対応も変わってくるものです。基本的には、子どもは発達上必要なことを行動に移しているだけであって、大人を困らせようとしているわけではありません。そのことについて、柴田さんは次のように話しておられます。
実は子どもの行動の裏には発達が関わっているのよね。
なんで障子に穴を開けるかって、指が思うように動くようになって、プッシュできるようになるから。リモコンやスマホも同じよね。
自分が働きかけると相手が反応するってことを楽しんでいるのよ。
それが終わるとね、今度は指でモノを挟めるようになって、何が始まるかって言ったらそれがティッシュに行く(ティッシュを際限なく取る行動のこと)のよ。
子どもってね、自分の機能が発達してくると、うずうずしてきて、発達に合ったものがちゃんと見えるのよ。
人間として育つ能力を子どもは持ってるってことよね。
そう考えて、私は「子どもは汚い・うるさい・危ないなんだ」って諦めてみたの。
そうすると、「なんでそんなことするの!」って思う気持ちも少しは落ち着くわよね。
子どもの発達が分かると行動の意味を理解できるようになり、発達の道筋が分かればどんな環境を用意しておけばいいかも分かってきます。例えば上で出てきたティッシュを際限なく取る行動が出てくると、つまんで引っ張ることができるティッシュに代わる別のものを用意しておくことで、発達上の欲求を満たすこともできると考えられます。ただ、そうしたことを親だけで全部考え、全部対応していくのはかなり難しいことです。子育ては親だけでするものではありません。親だけではできないというのが正確かもしれません。子育ては社会全体で行うことなので、困ったときは遠慮なくこども園を頼ってください。一緒に考え、子どもと関わることの楽しさを共有していけることを、私たちも望んでいます。
2017年12月
先月行われた島根県保育研究大会の分科会において、さくらこども園のFさんがグループホームとの交流の中で見えてきたことについて発表してくれました。以前から交流はありましたが、互いの距離を見直して日常的な交流をしていくためのプロジェクトが動いていたこともあり、交流の形もずいぶん変化してきました。その交流によって、園児にはこんな変化があった、交流のあり方についてこんな課題が見つかったといったことをまとめてくれた発表です。グループホームでも園児との関わりによって入居者にどんな変化が見られるかを記録し、交流のメリットを明らかにするような取り組みが進んでいくことも期待しているところです。全くの思いつきですが、グループホームの職員とこども園の職員が一緒に研究発表へ出かける機会があってもいいかもしれません。両者の声を同時に聞いてもらうことで、交流を迷っていた施設があれば動くきっかけを与えることにもなりそうですし、何よりそこに向けて話し合っていくことも私たちの取り組みを深めることにつながりそうです。
【つながり】
「つながり」「つなぐ」を大事にしていきたいと考えています。例えば子どもは周りの人からたくさんの刺激を受け、自分もやってみようと意欲を持ち、そして行動することで成長していくわけですが、これも他者との関係(つながり)があるからこそです。私たちの仕事も同じで、成長や変化のためには同僚や同業者の活動、周囲の様々な方(つながり)からの刺激が必要です。つながりがなくても成長できないわけではないですが、どうしても視野は狭くなるので多様な変化・成長は難しいでしょう。私たちの福祉の仕事の意味、福祉の網を張り巡らせることを考えると、やはりつながりは必要です。
グループホームとさくらこども園をつないだことで新たな気づきが得られたように、デイサービスの文化祭でこども園の作品も展示して利用者の制作意欲を刺激することをねらったように、花の村の事業所同士をつなぐことで、介護・保育の幅を広げるきっかけにもなります。また、事業所にはない強みを持った外部とつながることで、お互いの困っていることを補い合うこともできると思います。私たちの持っている力、各事業所の持っている力を目一杯発揮していくためには、自分たちと他をつなぐことがこれからの活動のポイントになっていきます。
【つなぐ】
そんなわけで、今後の花の村は「つなぐ」ことにこだわった事業展開を目指していきます。地域を創造し、活性化するためには不可欠なことと理解してください。つながり方に正解はありません。みなさんもいろんなパターンの「つなぐ」を試してみてください。そして、みんなでみんなの「困っている」を解決していきましょう。
2017年12月8日
No.522 事務室ランチ
ここでのルールは、電話がかかってきたり大事な話をしたりする部屋なので声は控えめにする、小学校の食事時間に合わせて30分で食べ終わることを目指す、この2つくらいです。最初の「声を控えめにする」ですが、その場その時に応じて自分の行動を考えることができるのは大事な事だと考えています。 例えば、社会生活における望ましい習慣や態度を身に付けることもこども園の目標であり、それは、友達と楽しく生活する中で決まりの大切さに気付き、守ろうとする態度が身についていくようにしていくわけですが、事務室での注意事項などは、そこがどんな役割のある場所なのか、どのような行動が優先される場所なのかを保育者が具体的に伝えることも必要です。普段から保育者がどのように事務室を使っているのかを見て感じとってくれていると思いますが、改めて伝えることも、今回の食事の中でねらいとしています。
そして食事時間を30分と設定することですが、これは緩やかに小学校生活のペースを感じてもらいというねらいがあります。小学校では30分で食事時間が終わるから、さあがんばってそれに慣れるように練習していきますよ!みたいなものではありません。例えば小学校の授業は時間が決まっており、その時間は授業に集中できるようになる必要がありますが、それは乳幼児期に同じ時間の集中ができるように練習をすればいいというものではありません。集中することの楽しさを十分に体験しておくことが大事で、そのためにも自分の好きなことに没頭する時間を保障することとか、他の人が集中するのを妨げることのないよう、多様な価値観を尊重できるように様々な人との関わりを重ねることとか、もっと言えばぶつかり合いによる葛藤の経験なんかもそこにつながっていくことです。こども園での生活や遊びを通して、その時期その時期に必要な体験を積み重ねていくことで、卒園後、つまり小学校以降の生活で必要な力の基礎を培っていけるようにするのが、あさりこども園の基本スタンスです。そして、小学校入学まで数ヶ月といった、小学校に対しての期待も少しずつ高まってきているこの時期に、小学校生活のことを少しずつ感じられるようにしていこうと考え、そのための1つの取り組みとして事務室での食事があるという捉え方です。
この食事会は年明けにも実施する予定です。今回とは違った姿も見られるはずなので、今からそのときが楽しみです。
2017年12月4日
自己肯定感はどのように育つのか
「子育てハッピーアドバイス」の著者である明橋大二氏の講演では、子どもの自己肯定感を育むことがいかに大切か、そしてそのためにも保護者の自己肯定感を育むことが大切だということを、丁寧に話してくださいました。その概要を紹介します。
○自己肯定感はどのように育つのか
自分のいいところを見つけてもらい、褒めてもらう。それで自己肯定感は育っていくけど、それだけではない。自分のだめなところ、悪いところ、あるいはマイナスの感情もひっくるめて受け止めてもらえる。それで初めて育つのが自己肯定感。
○子どもの心は「依存」と「自立」を行ったり来たりして成長していく
依存とは甘えのこと、自立とは反抗のこと。この2つを行ったり来たりしながら大きくなるのが子ども。親に十分に依存して甘え、不自由さを感じるようになると自由を求めて(これが意欲)自立し始める。自立して自由になると、今度は不安な気持ちが生まれ、また依存を求めるようになる。そこで安心感を得るとまた自由を求めて…といったように、行ったり来たりしながら大きくなるのが子どもの心。
大事なことは、依存と自立の行ったり来たりは子どものペースでないといけないこと。子どもが「お母さん」と寄ってきたときは助ける。自分でやると言ったときは「じゃ、やってごらん」とさせてやる。子どものペースで行ったり来たりできることが大事。
自立の基礎となるのは意欲。意欲は安心感から出てくるもので、安心感は十分に依存し甘えることで得られる。つまり、甘えない人が自立するのではなく、十分に甘えて安心感をもらった人が自立するということ。
依存(甘え)と自立(反抗)を行ったり来たりしながら育つことを考えると、子どもが反抗し始めるのは依存して甘えて安心感を十分に得られたから。基本的にはそれまでの子育てが間違ってなかったことの証拠。
○親への対応
今の子どももそうだけど、親も自己肯定感が低い。自分の否を認めず、全部保育園のせいにしてくるプライドの高い親もいるが、それは自己肯定感が低いから。自己肯定感の高い人は自分の否を認めることができるし、自分の至らないところを受け入れることができるもの。そんな親が子どもを褒められるようになるためには、まず親が周りから褒めてもらう必要がある。
子どもの支援、子育ての目標は、子どもの自己肯定感を育むこと。では子育て支援とは何かというと、親、特にお母さんの自己肯定感を育むことにつきる。親の自己肯定感が育ってくれば、子どもの自己肯定感を育てられるようになる。
そのためにも親の話をしっかり聞き、親の気持ちを言葉にしてかけ、できているところを十分に認めることが大事。親を変えようとは思わないこと。親が変われば子が変わるというのは事実だけど、あなたが変わらなければということは、今のあなたはだめだという否定のメッセージ。心配な親ほど、1%でもいいのでできているところを見つけて褒め、認めていく。そうすると信頼関係ができてくる。そこで初めてアドバイスができるようになる。
○最後に
最後に、「まずは大人同士が互いのことを褒め合い、認め合うことが大事で、それができて初めて子どもたちのことを褒められるようになる。大人も子どもも互いのいいところを見つけて褒め合い、認め合う。互いの辛さ痛み悲しみに気づきあって、支え合う。そういう関わりを作っていってもらいたい。」と結ばれました。
2017年12月1日
No.521 自己育成と自己管理
鷲田清一さんが、建築家の安藤忠雄さんの言葉を紹介されていました。
今の子供たちの最大の不幸は、日常に自分たちの意思で何かが出来る、余白の時間と場所を持てないことだ。安藤忠雄
自立心を育もうと言いながら、大人たちは保護という名目で、危なそうなものを駆除して回る。そのことで子供たちは緊張感も工夫の喜びも経験できなくなった。安全と経済一辺倒の戦後社会が、子供たちから自己育成と自己管理の機会、つまりは「放課後」と「空き地」を奪ってきたと、建築家は憂う。著書「建築家 安藤忠雄」から。(鷲田清一)
自立とは、何でも自分でできるようになることではありません。自分でできることは自分でする、自分だけではできないことは人に助けを求めることができる、これが自立です。そのためには自分でできることを知る必要がありますし、できないときは他者に助けを求め、ちゃんと助けてもらう経験を、生活や遊びの中で積み重ねていくことが大事です。そのためには自分の意思で行動することや、集団の中で様々な関わりを経験することが必要です。あさりこども園の子どもたちは、自分たちの意思で様々な選択をし、失敗の可能性が常にある緊張感の中で、それを楽しみながら創意工夫をして遊んでいます。そのように活動してくれることを願い、そのための環境を用意しているので当たり前かもしれませんが、自分たちの意思で○○を選ぶといった場面は、こども園の生活のあちこちにあります。その中で、自分でできることは何か、助けを必要とすることは何かをしっかりと学んでくれています。
自分の意思で行動を決定し、失敗も経験しながらできることを増やしていくこと(自己育成)。自分でできることは自分で、自分だけではできないことは人に助けを求めることができる(自己管理)。昔は当たり前にあったこのような機会を、意識して作っていかないといけないのが今の時代、これからの時代なんでしょうね。
2017年11月24日
No.520 「依存」と「自立」を行ったり来たり
子どもの心は「依存」と「自立」を行ったり来たりして成長していきます。依存とは甘えのこと、自立とは反抗のことです。まず子どもの心は親に完全に依存した状態で生まれます。そこで十分安心感をもらうと、今度は依存による不自由さを感じるようになります。依存の世界は安心ではあるけど、同時に不自由な世界です。なので、自由になりたい、自分でやりたいと思うようになります。それが意欲です。そしてその意欲によって自立の世界へ向かっていきます。自立の世界は自由な世界なので、何でも好きなようにできます。ところがそのうちに子どもの心に別の気持ち、何かに頼りたいといった不安が出てきます。この不安が深くなると、また依存し、甘えたくなります。そして甘えることことによって安心感を得ます。そこで十分安心感をもらうとまた不自由になる、といったように、行ったり来たりしながら大きくなるのが子どもの心です。
ここで大事なのは、依存と自立の行ったり来たりは子どものペースでないといけないということです。子どもが「お母さん」と寄ってきたときは助けてあげ、自分でやると言ったときは「じゃ、やってごらん」とさせてあげるといったように、子どものペースで行ったり来たりできることが大事なのです。
子どもの心の育ち方について、このように話しておられました。これを読むとほとんどの方が「うん、わかる」となるんじゃないでしょうか。でも、目の前の子どもを見ていると、行ったり来たりするものだということをつい忘れてしまい、「行く」ことだけを強く求めてしまったりするものです。私たち大人に求められているのは、こうした子どもの育ちの理解だけでなく、目の前に流れている時間とは違ったかなり長いスパンの、肌感覚でしか分からないような時間で子どもを見る姿勢だったりするんだろうと思っています。今目の前に見えている子どもの姿にとらわれすぎることなく、10年後20年後に子どもが社会へ出たときのことを考え、そのときにどんな大人になっていてほしいか、そんなことをじっくり見ていく感覚を磨くことができれば、子育てが少しは楽になるんじゃないでしょうか。そんなことを考えさせられた、明橋氏の講演でした。
2017年11月17日
No.519 互いに影響し合う関係
細かなことは省略しますが、子ども集団の規模が小さい場合、例えば家庭や2,3人の集団の中においては保育者と子どもの密な関係によってアタッチメントは安定しますが、保育園やこども園のような大きな子ども集団になると、保育者との二者間の関係によるアタッチメントの安定度の相関が小さくなってくるようです。そして子ども集団の規模が大きくなっても、保育者と子どものアタッチメントの安定性はたいして変化しないようです。分かりやすい表現にすることが出来ませんでしたが、要するに大きな子ども集団の中では、保育者との二者間の関係を強化することを考えるよりも、保育者との二者間、そして子ども同士のつながり、それらを総合的に高めていく視点を持つことが重要だということになりそうです。
先日、メトロノームの動きやろうそくの炎の揺らぎが互いに影響し合ってシンクロしてくる現象の話を聞きました。
『バラバラに動くメトロノームが徐々に同期するふしぎな現象』
『なぜ複数のロウソクの炎の揺らぎは同期するのか』
目に見えるわけではないけど、互いの力が全体の中で作用し合い、気づけば同じように動いている。こんなまとめ方では間違っているのかもしれませんが、だいたいこんな感じでもいいのかと。ここで同期の原理を細かく見ていくことはしませんが、例えばメトロノームが同期・同調していく様子を見ていると、子ども同士の関係を考える上で大事な部分でもあると感じます。
親や保育者が子どもの気持ちを的確に読み取り、それに即座に応答してあげることでアタッチメントが安定することは上で書きましたが、それは子ども同士の関係においてもあり得るというのが私の立場です。ある子が楽しそうに歌っているとします。それを周りで見ている子が、歌っている子の楽しい気持ちを感じ取り、その気持ちに影響されて同じように歌い出すとか、上手に片付けをしている子を見ていて刺激を受け、同じようにやってみたいと思って片付けに挑戦し始めるとか。そして最初に行動を起こした子が周りが動き出したことを見て、更に気持ちを高めたり行動の意欲を高めたり。そんなことも応答性だと考えていて、その応答によってアタッチメントが安定する、それが子ども集団の持っている力だと思っています。
あさりこども園において「子ども同士の関係性を大事にする」としつこく言っているのは、保育者との二者関係も子ども同士の関係も、どちらも子どもの育ちには大切で、特に子ども同士の関係は子ども1人ひとりの発達を理解したうえで意図して作ろうとしなければ生まれてきにくいと考えるからです。大人の関わりが強すぎるとどうしても大人に依存する傾向が強まり、子ども同士の関係は豊かになりにくいです。大人との関係も築きつつ、子ども同士の関係も豊かに広がっていくようにしていくことが、保育者の役割だと考えています。
2017年11月15日
2017年11月
今年度から環境整備委員会がスタートしています。文字通り、花の村施設周辺の環境整備を考える委員会ですが、これは昨年度までは安全委員会が担当してくれていました。ですが、安全委員会は環境整備以外の検討事項が多くあること、そして合歓の郷施設周辺以外の整備も広く検討していく必要があることなどから、独立した委員会を運営してもらうことにしました。メンバーは、居宅介護支援事業所のNさん、小規模多機能型居宅介護合歓の丘のAさん、デイサービスセンター合歓の郷のMさん、グループホームやかたのYさん、ヘルパーステーション合歓の郷のOさん、さくらこども園のFさん、あさりこども園のIさんです。
【関心を持つ人を増やす】
活動方法で変わったのは、全員が参加できるよう、動ける時間を見つけて参加できる形にしたことです。今までは16時からの1時間で集中的に作業していたため、利用者の送迎等で参加できない部署が常にありました。そうなると、整備に対する意識の差は人によって大きくなり、「草が伸びてきたな」「あそこは修繕が必要なのでは?」といった環境に対しての関心は薄くなってしまいます。もちろん一気にやる方が効率はいいのですが、効率よりも環境に対して関心を持つ人を増やす仕組み作りを優先してくれました。
【心理的な距離】
メンバーの中でも、あさりこども園のIさんに求められる役割は少し特殊です。現在の主な作業場所が合歓の郷の周囲であることから、距離の離れているあさりこども園の職員はサッと作業に加わることができません。関心を持ちにくいのも仕方のないことです。そんな中でも池村さんは花の村全体のことを考え、部署の枠を超えて協力し合うことが自分たちのためにもなると理解してくれており、職員への協力依頼を地道に行ってくれています。物理的な距離は変えられませんが、心理的な距離は必ず縮めることができます。互いに関心を持って協力し合うことこそが花の村の仕事において大事な姿勢であり、そのことを池村さんが率先して伝えてくれているのを嬉しく思っています。
【みんなで支え合う】
委員会発の作業とは別に、個々に整備作業を行ってくれている職員が以前からおられます。その方々の活動をちゃんと伝えるために、このたび「感謝」というチラシを作ってくれました。そこで取り上げられるのは…と辞退された方もおられるので、全員が載っているわけではありませんが、こうした活動にもちゃんと目を向けておきたいと思います。自分の知らないところで多くの人が動いてくれている、むしろそんな活動の方が圧倒的に多く、そのおかげで今の仕事も成り立っていると考えた方がいいかもしれません。みんなで支え合うことを花の村の“根っこ”として大切に育てていきましょう。
2017年11月10日
No.518 AIとかEVとか
AIが社会に与えるインパクトの方が遥かに大きい事は十分に分かっていますが、それでも今の個人的な興味はEV(電気自動車)の方に強く向いています。車に頼り切った生活をしているからこその興味かもしれませんが、2030年までにガソリン車・ディーゼル車の販売を制限する方針を打ち出している国があったり、EVをメインにしていく方針を出すメーカーがあったり、家電メーカーがEV産業に入ってきたりと、大きく動き出していることは間違いありません。乗る車がEVになるという変化だけではありません。今の車は3万点以上の部品が必要なのですが、EVは部品数が半分以下になるとのこと。そうなると車の部品づくりを担ってきた会社はどうなるのか、そこの雇用はどうなるのか、自動車産業の規模の大きさを考えると、社会のあり方はかなり変わってしまうのではないか、そんなことを考えています。
スマートフォンの登場から普及までの間に起こったこともそうですが、産業の形態が変わるだけでなく、生活にも大きく影響してきます。子育ても例外ではありません。以前はテレビとのつきあい方が子育てにおいての課題の1つでしたが、今はスマートフォンとのつき合い方が課題となっています。しかも課題の中身はテレビのそれとは違ってかなり複雑です。そうした変化を体験してきただけに、EVの普及によって(もちろんAIも)、回り回って子育て環境にも変化が訪れるんじゃないかと思っています。
とにかく変化の大きな時代です。しかも変化のスピードは凄まじく速いです。その変化を頭に入れた上で、子育て環境のこと、保育環境のことを考える必要があります。社会の変化に合わせて変わらなければいけないこと、決して変えてはいけないこと、その見極めも必要です。大きく変化している社会の中で、いたずらに振り回されることなく、自分の役割を見つけ、他者と繋がりあって生活していくためにどんな力が必要なのか。自分で考えること、自分で決断すること、他者とコミュニケーションを取ること、多様さを尊重できることなどなど、大事にしたいことはたくさんあります。難しい時代ですが、同時にやりがいがある時代でもあります。
2017年11月3日
No.517 わたしたちの「ふつう」にしよう
わたしの「ふつう」と、あなたの「ふつう」はちがう。それを、わたしたちの「ふつう」にしよう。
愛知県の今年度の人権啓発ポスター
普通教育、普通選挙といわれるように、「普通」はかつて、身分による限定を外すものとして、とてもまぶしいことばだった。それがいつ頃からか、等し並みのもの、これといった特徴のない凡庸なものという意味へと裏返ってしまった。この標語は、「普通」を、一人ひとりの存在を輝かせることばとして甦(よみがえ)らせようとしている。(鷲田清一)
生まれつき茶色い髪を黒く染めるよう、学校から繰り返し強要されたとして、大阪府に対し損害賠償を求める訴えを起こしたというニュースを知りました。それが自分の元々の髪の色であることを証明するために地毛証明書を提出しないといけないケースがあることも知りました。自分の生まれ持ったもの、どうにも変えることのできない部分に対して皆と同じであることを求め、変えることを求める動きは、なんだか恐ろしいものを感じます。バラバラでもいいと認めてしまうと学校運営が成り立たないんでしょうか。子どもを丸ごと信じることが、教育(保育も同じ)の原点だと思います。このニュースを知って、上の標語について書かれた文章を思い出しました。
もう一つ思い出したのが次の文章。髪の毛のことと直接関係はないのですが、私たちはこのような考え方に陥ってしまいがちだということを自覚しておく必要があるんでしょうね。
そこに所属しているという意識から、そこを自分が所有しているという意識に変わったとき、共同性は排他性へと変質する。
星野智幸
つまり「つながりを持てることが喜びだったのに、どこまでが仲間かという線引きが始まる」のだと、作家は言う。他の人たちと思いを共有しているという感覚は、自分は疎外されているという負の感情を癒やすが、同じその「物語」を共有しない人々の排斥へと容易に裏返る。「新潮」1月号に寄せた文章「一瞬の共同性を生きる」から。(鷲田清一)
あさりこども園は誰かの所有物ではなく、多くの人がつながる場であるべきだと考えて運営しています。誰かを排除したりすることなく、誰もがつながることのできる場です。当然そこにいる全ての人がそのまま尊重されることから始まります。こども園だけでなく、社会全体がそうあるべきで、その空気を子どもたちには当たり前のように受け止めてもらいたい、その大切さを生活や遊びの中でしっかりと学んでもらいたいと思っています。
2017年10月27日
No.516 地域をテーマにした取り組み
おもてなしカフェは保護者会の企画で、運営も保護者会が主になって行われるものです。あさりこども園のために力を貸してくれている地域の方たちに対して保護者からも感謝の思いを伝えたい、そんなことから計画されました。地域の行事が多い11月の開催でもあり、また初めての取り組みでもあるので、どれだけ地域の方が来てくださるか分かりませんが、まずは動いてみる、そしてそこでの気づきを次につなげる、こんな感じで動くことになるんじゃないかと思います。
こども園が目指す子どもの姿として、「地域の身近な人と触れ合う中で、人との様々な関わり方に気付き、相手の気持ちを考えて関わり、自分が役に立つ喜びを感じ、地域に親しみをもつようになる。」ということがあります。限られた関係の中だけでなく広く多様な人との関係を持つことは、子どもの成長にとって欠かすことのできないことです。他者との関係の作り方、地域に対しての愛着を育てていくことについて、保護者のみなさんと共に考えていける園でありたいと思っています。この「おもてなしカフェ」もそこへつながる取り組みであることは間違いなく、だからこそ嬉しく思っています。
もう1つの地域の風景の写真集めは、まだ始まったばかりです。今後少しずつ写真が集まってくるとおもしろくなってくると思います。好きな風景の写真を撮ろうと思うと、当然のことですが好きなところを探します。見た人が同じように魅力を感じてもらえるような「地域の自慢できる」ところを探します。初めから魅力がある地域は実は少なく、魅力を感じる人がいて、そこを大事にする人がいるからこそ、その魅力が人にも伝わっていき、多くの人が共感してくれる場や地域になっていく、私はそんな風に考えています。子どもたちにこの地域を好きになってもらうために、まずは地域を知る活動を多く取り入れてきました。それは今も継続しています。そこに更なる魅力を感じてもらうために、私たち大人が魅力を再発見、再確認しようというのが、この取り組みをしようと考えた私たちの思いです。みなさんと一緒にこの地域の良さに対して具体的に目を向けていけば、それは子どもたちにも伝わっていく、そう思っています。たくさんの写真が集まったら、それを何かの機会に展示してみんなで楽しめるようにする予定です。
地域の写真
最後にもう1つ。地域の方に関わってもらう新たな制度を作ることにしました。別に目新しいものではありませんが、「私たちあさりこども園は多くの人に関わってもらうことを望んでいます」と明確に打ち出すことも大事だと考えたものです。間もなくお知らせできるようになると思いますので、そちらもお楽しみに。
2017年10月20日
No.515 ごちゃ混ぜ
シェア金沢は、高齢者、大学生、病気の人、障害のある人など、誰もが分け隔てなく共に生活できる街、社会に貢献できる街で、社会福祉法人佛子園のみなさんが運営されています。
こども園と直接関係があるわけではなく、当法人の方向性を考えることが主な目的だったのですが、こども園のあるべき姿を再確認させてもらえる機会にもなりました。
ここで大切にされている考えの1つは、「全ての人には役割がある」ということ。どれだけ基本的な欲求が満たされても、それで十分なのではなく、社会や誰かのために貢献できていると実感できることが大事だと考えていますが、まさにそことつながります。そのためには社会や誰かとつながっていることが必要で、しかもそのつながりは多様である方がいい、まさにそのことが実践されている街でした。社会や他者に貢献できる人になってもらいたい、そのことを心地いいと思える人になってもらいたい、そのためにも乳児期から多様な関わりが生まれる場を日常的に設けたい、そんな思いであさりこども園の保育を作ってきているわけですが、シェア金沢のような実践は全然足りていません。仕組みづくりもまだまだこれからのところが多いのが現状です。ですが今回の視察でいろいろな実践に向けて動く刺激はしっかりともらってきました。まだまだやるべき事があると思えると、俄然やる気が出てきます。嬉しいことです。
シェア金沢での説明の最後に、作家の村上龍さんが書かれた言葉が紹介されました。印象的な内容だったので、ここでも紹介しておきます。
「共生」ではなく「ごちゃ混ぜ」。「きまじめ」ではなく「ユーモア」を。こんなことが書かれています。
Think globally, act locally. 思考は悲観的に、行動は楽天的に。行動する際に意識するようにしている言葉ですが、これらと通ずるところがある気もします。現場に近いところほど考えたいことです。
佛子園の理念・方針は、「ごちゃ混ぜ」と表される。似たような意味でよく使われるのは「共生」だが、きまじめな印象になる。同じ街で、障がい者、高齢者、それに子どもたちが、ともに接するのは、当然のことながら簡単ではなく、「きまじめ」では限界があり、ときに何らかの反作用が起こることもある。
必要なのは「きまじめ」ではなく、人間味溢れ、懐深い、ユーモアのようなものだと思う。それに、「やってあげる」「やってもらう」が基本となる福祉は、ともすれば「見返り」や「依存」を生じさせ、破綻することも多い。
イタリア映画の巨匠であるF・フェリーニの往年の名画『道』に、象徴的な台詞がある。知的障がいだと思われる主人公のジェルソミーナが「自分には価値がない」と悩んでいるとき、友だちになった綱渡り芸人が、そばにあった石ころを拾って言うのだ。
「君はわかっていない。この石ころだって何かの役に立っている」
社会的に必要とされない人など存在しないという「佛子園」の哲学は、人間としての原点であり、普遍的真実である。
2017年10月13日
No.514 ウクレレグループ誕生
今までに6回レッスンを開催してきたわけですが、レッスンだけでは終わらないのがおもしろいところです。レッスンを修了した方が「どこかで演奏を披露したいね」と盛り上がり、積極的にメンバー集めの声をかけ始め、なんと12月のきらきらコンサートで演奏することが決まってしまいました。この動きを引っ張ってくれているのは保護者のYさんです。あさりこども園の保護者だけでなく、レッスンを受けられた外部の方も関わってくれているようです。あさりこども園という場にさまざまな人が関わってくれ、そこから新たな取り組みが生まれるのは本当に嬉しいことです。一見子どもたちには何も関係のないことのように思えますが、保護者だけでなく、関わってくれる方、そして地域自体が生き生きと活動している様子は、しっかりと子どもたちに伝わっていくはずです。子どもだけでなく、大人も地域も楽しんで動いていくきっかけを作っていくことは、あさりこども園の目指すところでもあります。無理なく、楽しく、ウクレレグループの活動が続いていくことを期待しています。
ウクレレレッスンのような取り組みとは少し違いますが、関わってくれる人を増やしていく仕組み作りは今後も継続して行なっていきます。アイデアがたくさんあるわけではありませんが、できるところから形にしていくつもりです。もしも「こんなことはどう?」といったアイデアがあれば、ぜひ教えてください。
2017年10月
あさりこども園では、10月のスタッフミーティングで「ブレスト」が行われました。ブレストとはブレインストーミングの略で、複数の人が自由にアイデアを出し合って新しい発想や問題の解決方法を導き出す手法のことです。要は話し合いの方法の1つなんですが、今回はルールを2つ設定して実施してもらいました。そのルールとは「とにかく数多くのアイデアを出す(内容は問わない)」「他人が出したアイデアに乗っかる」です。面白法人カヤックという会社が、おもしろい仕事をしていくためにこのブレストを大事にしているのを知り、方法なども真似させてもらいました。ブレストを体験することが一番の目的だったので、お題は「どんな結婚式を挙げたいか?」「カフェを繁盛させるためのアイデアは?」と軽めのもの、しかも業務とは関係のない内容でしたが、だからこそブレストの意味を理解してもらいやすかったんじゃないかと思っています。
【乗っかる】
今回のブレストはアイデアを数多く出すことが最優先。そうなると他人のアイデアを否定している暇はありません。出てきたアイデア全てをみんなで「それいいね!」と受け止める姿勢が大事です。そして個々に思いついたものを出し合うのではなく、他人のアイデアに乗っかることをしなければ、数は増えず、発想の幅も広がらず、すぐに行き詰ってしまいます。これは日々の業務にもつながる話です。仕事に行き詰まりを感じている、なんとなく楽しくない、そんな状態になるのはそこから抜け出す方法が浮かばないことが原因です。1人で考えているだけだと思いつく方法の数は限界がありますが、自分の思いつきに誰かが乗っかったり、誰かの意見に乗っかったりと、そんなことが職場の文化として定着していたとしたら、行き詰まりから抜け出す方法は数多く出てくるはずです。行き詰まりを減らし仕事を楽しくするために、仕事の質を高めていくために、アイデアをたくさん出すためのブレストを取り入れてみてはどうでしょうか。今回企画運営をしてくれたあさりこども園のNさんがアドバイスをしてくれるはずです。
【サンマ】
デイサービスセンターの「さんま祭り」が終わりました。今回サンマを一緒に食べた人は約170名。昨年と比べて50名程度増えたことになります。調理の手伝いに来てくださった方も、この企画を知って来てくださった地域の方も増えました。1人でも多くの方に関わっていただきたいと動いてくれた、職員のみなさんのおかげです。もっと多くの方に関わってもらいたい、花の村の思いを理解してくれる人、協力してくれる人を増やしたい、そしてそのつながりを生かして花の村からも地域へ貢献したい。そんな思いで花の村は動いています。この姿勢を粘り強く継続していると、地域から依頼や提案の声も増えてくると思います。そのときは、みんなで喜んで乗っからせてもらいましょう。
2017年10月6日
No.513 自己肯定感のはなし
自己肯定感について、鯨岡峻さん(発達心理学者、京都大学名誉教授)が次のようなことを書かれていました。
自己肯定感というのは、「それがある」と意識できる感覚ではありませんし、世間でいわれているような「ありのままの自分でよい」ということでもないと私は思っています。「信頼できる人」「自分を認めてくれる人」「自分を必要としてくれる人」、それらの人がいれば、その人はその生活の中で、きっと気持ちが前向きに動くに違いなく、それは一言でいえば、「生活に張りがある」感覚だといってもよいのではないでしょうか。私は、それが自己肯定感だと思っています。
お母さんが子どもから「お母さん大好き」と思われ、夫から「愛しているよ」と言葉や態度で示され、また職場の同僚や友人から「よく頑張っているね、頑張っているあなたは素敵だよ」と認めてもらえるなら、たとえ子育てや日々の生活で多忙な毎日をすごしていて、自分のための時間や、ほっとできる時間が乏しくても、前向きに生きる意欲が湧いてくるに違いありません。それは、「自己肯定感がある」状態といってよいでしょう。
今の子どもは自己肯定感が低い、日本は自己肯定感が高くない人が多いといったことをよく耳にします。子どもたちが自分の力を信じ、個性を大事にしながら成長していくためには自己肯定感を持つことが欠かせない、そういった専門家の声もよく耳にします。確かにその通りだと思うのですが、自己肯定感が目に見えて明らかに計測することができないものだけに、正直なところそのために何をすればいいのかを掴めずにいたところがあります。ですがこの文章を読んで、「なんだ、子どもを認める存在であればそれでいいんだ」と気づかせてもらいました。まあそれがなかなか難しいことではあるんですけどね。
鯨岡さんが書かれている「生活に張りがある」感覚というのは、「自分には役割があると認識している」感覚と同じ意味だと、私は解釈しています。信頼できる人がいて、自分を認めてくれる人がいると、自分の持っている力を認識することができます。そして必要としてくれる人がいるということは、そこには自分の役割が発生しているということです。自分の持っている力を生かした役割があると思えることが、どれだけ力を与えてくれることか。私たちはそのことをもっと理解しておく必要があると思っています。
美味しいもの、美しいもの、面白いものに出会った時、これを知ったら絶対喜ぶなという人が近くにいることを、ボクは幸せと呼びたい
『ボクたちはみんな大人になれなかった』を書かれた燃え殻さんがその著書の中に書かれていることです。最初は「これいいなあ、そうだよなあ」と感じていたくらいだったのですが、時間が経つにつれてこの言葉の意味を深く考えるようになってきています。SNSなどのつながりが広がってきている今、「いいね!」を押したりすることで簡単に共感の意を示し合う関係も含めると、共感してくれる人は以前と比べて圧倒的に増えています。でも、燃え殻さんが書いている幸せのポイントは「近くにいること」です。画面の向こう側ではなく、身近で直接的な関係のことです。その関係をどれだけ築いていくことができるかが、これからはますます重要になってくるでしょうね。
人間関係は何もしなくても自然と出来上がるようなものではありません。楽しく過ごす体験やぶつかり合う体験を繰り返す中で、自分なりの他者との距離感を掴んでいき、自分にとって心地よい関わりができる関係を少しずつ築いていくものだと思っています。子ども時代の体験も関係づくりの力をつけていくために間違いなく重要なものです。成長につれて所属集団は変化していき、数も増えていきます。価値観の違う所属集団を複数持つことも大事だと思っていますし、それぞれの集団の中で共感し合える直接的な関係を緩やかに築いていけることも大事だと思っています。そしてその関係こそが、上で書いたような自己肯定感に大きくつながってくるものであるはずです。そんな関係づくりの基礎となる力を園生活を通してつけていけるよう、私たちはこども園の場づくりについてもっともっと考えなければいけないなあと思わされました。
2017年9月29日
No.512 感情と身体の関係
腑(ふ)に落ちない
言い習わし
■鷲田さんのことば
納得できないこと、合点がいかないことを、人はこう言う。受け容(い)れることのできないことは「呑(の)めない」、感心できないことは「戴(いただ)けない」、油断がならないことは「食えない」とも言う。だから「腹を割って」話すこともできず、つい相手の「腹を探る」ことに。ごそっと、あるいはぐねぐねとうねり、うごめく内臓の波動と、魂の波長とは、どこか深く谺(こだま)しあっているらしい。(鷲田清一)
今回も鷲田清一さんの「折々のことば」から。これを読んで、人の感情は身体と深くつながっているからこそ、こうした表現が使われているんだと気づかされました。感情は頭の中だけの出来事ではなく、様々な体験とセットになっているということです。そうなると、感情を豊かにするためには身体を実際に使うことが大事だとも言えると思います。身体を使うからこそうれしいこととの出会いや悲しかったり悔しかったりする出会いがあったりして、身体を使った出会いだからこそ感情が身体に与える影響も大きくて、そんなことを通して感情が豊かに育っていくんだと思います。
先週は運動会が行われました。運動会はまさに身体を使う場で、感情が大きく磨かれる場であったと思っています。例えばぞう組のリレー。当日までに3回リレーを行い、赤組2勝、白組1勝という結果だったんですが、リレーのたびに走る順番を話し合い、作戦を立て直し、そんなことを繰り返して運動会を迎えました。当日までのリレーでも、自分が走るときに勝ててうれしい、チームが負けて悔しい、順番を決めるときにも自分は〇番目に走りたいけど他の子はどう思うだろう?などなど、リレーを行うことを通して非常に多くの感情を体験している姿がありましたが、同じように当日も様々な感情の表現が見られました。勝ってうれしかった、負けて悔しかったなので感情を抱いたこと、それを表現したことが、どれも大切な体験です。今後はその感情をどう表現するか、どうコントロールするかが課題となります。感情を抱き表現したからこその課題なので、しっかりとクリアしてくれると思います。これからの子どもたちの姿が楽しみです。
来年4月から施行される新しい保育所保育指針(あさりこども園も守らなければいけない保育の基本原則)に、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿の1つとして『心を動かす出来事などに触れ感性を働かせる中で、様々な素材の特徴や表現の仕方などに気付き、感じたことや考えたことを自分で表現したり、友達同士で表現する過程を楽しんだりし、表現する喜びを味わい、意欲をもつようになる。』と書かれています。運動会という行事で身体を使って体験したことを通して、様々なことを感じて表現し、それを友達と十分に共有しました。この体験が次の意欲につながっていく様子を、保護者のみなさんとも共有していきたいと思います。
話題はちょっと変わりますが…
今回の運動会では今までと少し違った様子が見られました。保護者も一緒に楽しんでいる、みんなが自分の判断であちこち動き回って楽しんでいる、子どもたちの動き、他の保護者の動きにも配慮しながら楽しんでいる、そんなことを強く感じました。まあその傾向は昨年までもあったんですが、より強く感じたといったところです。以前「保育には参画という考え方が必要」といったことを書きましたが、まさにその流れが生まれ形になりつつあると思っています。他人事感が少なく、熱意と積極性があり、周りを巻き込む動きもあってと、とっても嬉しい流れです。この流れがより活発になっていくためにも、こども園としては保育に対する考え方をより明確に発信していく必要があります。保育の軸を共有することなしに豊かな参画の形はあり得ないと思っているので、発信は引き続き力を入れて行っていきます。
2017年9月22日
幸せの定義
美味(おい)しいもの、美しいもの、面白いものに出会った時、これを知ったら絶対喜ぶなという人が近くにいることを、ボクは幸せと呼びたい
燃え殻
■鷲田さんのことば
食事は独りでとるより誰かとお喋(しゃべ)りしながらするほうが旨(うま)い。幸せは、自分が満ち足りるというより、誰かと悦(よろこ)びを共有するところにある。そんな誰かが自分には居ないと感じる時、寂しさが内にしんしん沁(し)みわたる。隣の人が歓(よろこ)ばない独り占めの幸福なんてある? 会社員作家の小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』から。(鷲田清一)
いつも読ませてもらっている「折々のことば」に紹介されて、深ーく沁みました。
友達がいることでより楽しく感じられる、より幸せを感じられる、そんな関係性を園生活の中で育んでいきたいものです。
No.511 園庭とマツダスタジアムの共通点
先日おもしろい記事を見つけました。『なぜ誰もがマツダスタジアムに魅了されるのか?設計に隠された驚きの7原則とは』というタイトルの記事です。ご存知の通り、マツダスタジアムはセリーグ2連覇を決めた広島カープの球場の話で、行ったことのない人でも読んでもらうと魅力とその秘密が伝わってくるんじゃないでしょうか。ここに書かれている7原則は、こども環境学会代表理事も務めておられる仙田満氏の影響を受けたもので、実は園庭づくりの7原則ともつながっています。そんなわけで、この記事に書かれている7原則に沿ってあさりこども園の園庭を整理してみることにしました。若干勝手な解釈による説明も含まれますが、その辺は適当に読み流してください。
1.循環機能があること
私たちはこの“循環機能”を“回遊性”とか“反復性”と呼んでいるのですが、園庭で言うと真ん中にあるトラック上のルートを基本とした構成がそれに当たります。同じところをグルグルと巡っているだけでは飽きてしまわないだろうか?と当初心配していたのですが、記事中で「遊具の研究の中で、行き止まりがあると基本的に子どもはそちらの方向には行こうとしないそうです。ずっと先まで続いているような循環機能があると、自分の行動に制約がなくなったように感じ、人はつい動きたくなるとのことです」と書かれているように、子どもたちはグルグルを楽しんでいるのは見ていて分かります。もちろん身体のサイズや集団規模によって満足度は変わってくるでしょうが、今のところはグルグルが機能していると考えています。
2.その循環(道)が安全で変化に富んでいること
記事中には「これも遊具の研究の中で、子どもは起伏があったり危険性を感じる場所を避けて、安全に動ける循環動線を見いだし、そこを基本として動くようになるようです。もちろん、それを踏まえた上でどこかに寄り道したり、見誤って危険な経路を通ってけがをしてしまうことはありますが、そういった経験も踏まえて安全な経路を通るようになる。人間の根源的な本能でリスクを避けようとします。さらには、その循環経路が変化に富んでいることで、何度も繰り返し、通りたくなります」とあります。あさりの園庭のトラックは基本的に平らに作っています。乗り物を使って遊ぶルートでもあるため、段差のない状態です。このような場所があることで、子どもたちは安心して周囲のバラエティに富んだ遊び場に挑戦することができます。ちょっと挑戦して難しかったら戻ってくる場所がある、この安心感は大事です。そして変化という意味では、たくさん植えてある木々の存在も大きいです。特に果樹は季節によって大きく変化しますし、何よりも果実の存在は魅力的です。今はザクロがたくさんなっていてその話で盛り上がったりもしていますが、果実ができるのを楽しみに待ったり、できた実を食べる楽しさもあったりと、変化を感じる要素は満載です。
3.その中にシンボル性の高い空間、場があること
園庭の中で最もシンボル性の高い場所はどこかをいろいろ考えたのですが、いくつかある中でやはり“築山”だろうという結論に至りました。園庭のほぼ真ん中に位置し、どこからでも見ることができます。子どもの発達を考えると、登るためには様々な力を獲得していることが必要で、登ることができるようになると大きな滑り台を滑る権利を得ることになる、ある意味憧れを抱かせる存在でもあります。
4.その循環に“めまい”を体験できる部分があること
めまいについては記事中に「“めまい”というと分かりづらいですが、自分の感覚・知覚を揺るがすことで、その体験自体が遊びになるというものです。」と書かれています。感覚を揺るがす機能を持っているのは、総合遊具の揺れるネットや橋、そしてなんといっても高さのあるツリーハウスです。ここで遊ぶことによって非日常的な感覚体験ができる、つまり”めまい”体験ができるわけです。
5.近道(ショートカット)ができること
園庭にはトラックがあると書きました。基本的な遊びのゾーンはトラックを巡ることでたどり着けるように配置しているのですが、真ん中をショートカットできる道もあります。改めてこの道を眺めてみたんですが、確かにこの道のおかげで動線のバリエーションはかなり多くなっています。この道の重要性を改めて確認することができました。
6.循環に広場が取り付いていること
先にも少し書きましたが、遊びのゾーンはトラックの周囲に配置してあります。単にトラックを巡るだけでなく、巡りながら様々な遊びのゾーンへ行き、そこで満足が行くまで遊びに没頭することができます。砂場であったり、たき火の出来る場であったり、草地であったり、畑であったりと、ゆっくりじっくりと遊ぶことのできる“広場”があり、この存在も遊びの充実には欠かすことができません。
7.全体がポーラス(多孔質)な空間で構成されていること
ポーラス(多孔質)については記事中で「内外をつなぐ穴が無数に空いている構造だという意味です。」と説明されています。この視点で園庭を眺めると、園舎と園庭をつなぐルートは数多くあることに気づきます。それぞれの部屋から見える園庭は少しずつ違っていますし、当然出る場所によって最初に触れる園庭の場所は違います。同じ園庭に出るにしても、様々なアプローチがあるわけです。また、「園舎から園庭へ」の視点だけでなく、「園庭から園外へ」の視点も多様です。周りには山があり、川があり、民家があり、それらが園庭の一部のように溶け込んで見えます。町の中の一部だということを感じることのできるオープンな視界があることも、園庭の要素として大事な部分です。
7原則に沿って園庭の要素を書いてみましたが、ぜひみなさんもこのような視点で園庭を眺めてみてください。
2017年9月15日
No.510 運動会編
さて23日(土)に行われるあさりこども園の運動会ですが、まず全員の「走る」動きの発達を見てもらいます。運動会の大きな目的は「子どもの運動面の発達を保護者に伝える」ことで、様々ある運動面の発達の中の「走る」を取り上げたものです。内容は全員の「走る」を見てもらうのではなく、「走る」ことに関係する発達を順に見てもらうものになっています。
子どもの発達は連続しています。赤ちゃんがある日突然走り始めるのではなく、寝返り→お座り→はいはい→つかまり立ち→伝い歩き→歩くといった流れで「走る」につながっていきます。それぞれの体験を十分と行うことが後の「走る」の大事な土台となっていくため、どの段階もとても大切です。その発達の様子を見てもらえるよう、りす組からスタートし、ぞう組へとつないでいきます。「走る」ができるようになってからは、「友だちと一緒に」とか「競い合って」といった姿を見てもらうわけですが、「こうやって走れるようになっていくんだなあ」と先のことを想像したり、「あんな頃もあったなあ」と小さい頃を思いだしたりと、子どもの発達の道筋を楽しみながら見てください。
そして個人競技では、跳ぶ・越える・渡る・運ぶ・登る・バランスをとるなどの発達も見てもらいます。あさりこども園の園庭は平らなところが少なく、ぐるっと1周するだけでも様々な動きを必要とする作りになっています。日々の遊びの中で様々な動きを体験し、力をつけ、そのことによって更に遊びが楽しくなる、そんな園庭作りを保護者のみなさんの力を借りながら行っています。その園庭での遊びや生活の中でつけた力を見てもらうので、その様子を想像しながら見てもらいたいです。そして周りの子と影響し合っているところにもぜひ注目してみてください。友達と「共に」があることで、活動の楽しさが増したり、刺激を受けてより意欲的になったり、相互に作用しながら力をつけていくのが子どもたちです。直接的であったり間接的であったりと様々ですが、1人に注目したり、全体を眺めてみたりといった見方もおすすめします。
2017年9月
グループホーム合歓の郷のBさんが「縷紅草(るこうそう)」の世話をしておられたので、話を聞かせてもらいました。糸のように細くて長いものを「縷(る)」といい、糸のようなツルを持ち紅い花をつけるので「縷紅草」と呼ぶそうです。竹をドーム状に組み、そこにしっかりとツルを這わせて縷紅草のドームを作っていて、伸びたツルを摘む作業の最中でした。縷紅草のツルはほっておくとあちこちに伸びていくため、はみ出したツルを摘まなければきれいなドーム状にはならないと教えてくれました。芝生も似ていて、上へ伸びる性質があるため、こまめに刈ってやると上を諦めて仕方なく横へ広がり始め、その結果きれいに地面を覆う芝生ができます。
【行動のクセ】
私たちの仕事は、その人の意志や意欲を尊重した介護や保育、育成を行うことです。上に書いた縷紅草や芝生の育て方のように、利用者や子どもの意思とは違う方向へ意図的に操作することはちょっと馴染みません。ですが、仕事に対する行動を考えるヒントをもらうことはできます。私たちの行動には縷紅草のようにクセがあります。気が付くとそのクセに流されているのはよくあることです。○○を目標にして行動を改めよう!と決意しても、いつの間にか忘れてしまい、以前の行動パターンに戻っていたりします。自分の行動のクセから抜け出すのは簡単ではありません。
【ロールモデル】
ではどうすればいいか?縷紅草や芝の特徴を掴んで育てるのと同じで、まずは自身の行動のクセを認識すること。楽な方に流されやすい、行動に移すのをためらいがちといった、自分の傾向をまずはきちんと認識することです。そして周りの人の力を借りることも大事です。といっても、自分の行動を逐一チェックしてもらうとかではなく、この人の行動を参考にしたいといったロールモデルにさせてもらうことです。この人のように!と強く思えるロールモデルがあると、行動は変わりやすいです。いつものパターンに流されそうになったときにふと思い出せる、そんなロールモデルを見つけてください。
【おすそ分け】
縷紅草の種は、集めて地域の方に配る予定だそうです。これもいい取り組みですね。種や野菜などに限らず、私たちの持っている専門性や技術、資源は、仕事を通じてもっと地域に出していけると思います。小さくなってきている地域を活性化するには、個々の持っている力を生かし合うしかありません。花の村の資源は何か、強みは何かを考え続け、地域に貢献する行動を積極的に試してください。花の村の力を地域におすそ分けし、地域の方からいろんな面で支えてもらえる、そんな関係を丁寧に広げていきましょう。
2017年9月8日
No.509 参画
参画を辞書で調べてみると、「事業・政策などの計画に加わること」とあります。単なる参加、一緒に活動するだけではなく、何をするか?の計画段階から一緒に行うという意味です。英語ではparticipationとinvolvementの2つの言葉が該当するようですが、involvementの方が巻き込む、熱中する(活動に熱意と積極性を持って参加するイメージ)意味合いが強いようで、考えていきたい参画のイメージと一致します。子どもたちがこども園での活動を「させられる」のではなく、何をするか?誰とするか?どのようにするか?を考え、友達や保育者だけでなく場合によっては保護者や地域の方も巻き込みながら、それに熱中し没頭する。単に関わっていればいいのではなく、熱中して関わることがポイントになるでしょうね。今でも「あっ、これって参画だよな」と思えることもありますが、まだまだ参加で終わってしまっている部分があるのも確かです。あさりこども園の全ての活動を参画までもっていくのは簡単ではないですが、子どもたちと共に作り上げていくことを目指していきたいと思っています。
単にできることが増えることを成長と見るのであれば、参画の必要性をここまで考えなくてもいいのかもしれません。ですが、私たちは社会の一員として成長してもらいたいと考えているので、参画は欠かせません。こども園は社会の1つである以上、ここで学んだ社会でのふるまいは必ず他の社会でも生かされることになります。ということは私たち保育者も日々の活動が参画を基本としていなければいけないわけで、保育だけにとどまらず様々な活動全体のあり方を考えなければいけない話になります。とっても大きな話なのでじっくりと取り組んでいきます。
役員さんが力を発揮してくれたおかげで、園庭に渡り橋が完成しました。この活動もそうですが、役員さんが中心になり、園の考えを踏まえた上でこんなことをしてみたいと提案し実行してくれることが増えてきています。これも保護者による園への参画です。子どもの参画、保護者の参画、そして地域の方々の参画と、熱中して関わってくれる参画の輪が広がってくるとますますおもしろくなっていくはずです。楽しみですね。
2017年9月1日
No.508 我慢する力
この「我慢」ですが、一般的には「やりたいことを諦めること」と思われているかもしれませんが、子どもたちにつけてもらいたいのは「違う方法を考える」意味の我慢です。やりたいことが友達とかぶってしまったから自分は違うやりたいことを見つけるとか、友達に諦めてもらうための方法を考えるとか、遊びを切り上げないといけないからいやだなーと感じている気持ちを「今日のごはんは何だろう?」と食事に興味を移していく方法とか。今の自分の感情をコントロールし、別の選択肢を探していく「我慢」ができるようになると、大人の介入がなくても自分たちだけで充分に場を動かしていくことができます。あさりこども園の生活の中で、その力をつけていくための体験を積み重ねてほしいと思っています。
そんなことを考えているときに、興味深いツイートに出会いました。小学3年生の長女と小学1年生の次女のやりとりを紹介したものです。
①海に二泊三日で明日帰る夜、次女が「最後は皆でお父さんの方のお風呂に入ろうか」と言い出し、長女が「いや、私はお母さんの方に入るから…」と答えたところで、次女が泣き出して止まらない。お風呂場でもずっと泣いており、長女はお風呂にはしゃぎつつも、次女に泣いている理由を聞き続け、
— とけいまわり (@ajitukenorikiti) 2017年8月16日
②「私が男湯に行かなかったから泣いてるの?」「男湯がどんなのが見たかったの?」「たまにはお父さんと入りたかったの?」と、一つ一つ理由を確かめて、次女が全部に首を振ると、長女はしばらくしてからまた同じ質問を始め、少しずつ質問の内容を変えながら20個ぐらい質問したところで、
— とけいまわり (@ajitukenorikiti) 2017年8月16日
③長女が「あー、なるほど、お父さんが毎日お仕事遅くてあまり家族とお話とかできてないから、せめて旅行の時ぐらい一緒に入ってあげたかったのねー。お父さん、寂しかったかもねー」と言うと、次女がこくんと頷いたので、相手の気持ちを文章化させる力、すごいな長女と思いました。
— とけいまわり (@ajitukenorikiti) 2017年8月16日
④長女が同じような質問をしても何度も次女が首を振ったのですが、長女が少しずつ質問の内容を変えながら尋ねる事によって、次女が何となくモヤモヤした気持ちに整理がついてきたみたいです。「おしゃべりが上手でも、自分の泣いている理由がうまく言えるとは限らないからねー」と長女。
— とけいまわり (@ajitukenorikiti) 2017年8月16日
⑤最後にみんなで背中を洗って、次女が笑顔になって終了。どうしたらお父さんが寂しくなくなるか、作戦会議をするそうです。いやあ、ささいな事だったんですが、鮮やかな手腕に鳥肌がたちました。
— とけいまわり (@ajitukenorikiti) 2017年8月16日
長女に「泣いている子にお話するコツ」を聞いたところ、「ゆっくり優しい声でたくさん質問をする。そのうち、相手が『私の気持ちが分かってくれて嬉しい』と思ってもらえるドアにたどり着く。そこからドアを開けて、ちょっとずつ相手に近づいていきながらしゃべる」だそうで、実践できている所が凄い。
— とけいまわり (@ajitukenorikiti) 2017年8月16日
『自分の気持ちがわかってもらえた』というきっかけから、気持ちが色々な所につながっていって、そこからは自然と自分の力だけで心は解決に向かっていくからね。そのきっかけを探すのを、ゆっくり丁寧にして、『泣きやませよう』と思わないのがコツかなあ。
— とけいまわり (@ajitukenorikiti) 2017年8月16日
昨日は旅行中に何度か次女が泣き出し、私が「何で泣いてるの?言ってくれないと何も手伝ってあげられないよ」と言っても、ずっと次女は黙ってシクシク泣くだけで、正直、次女がしょっちゅう泣くのしんどいな…と思っていたのですが、
— とけいまわり (@ajitukenorikiti) 2017年8月16日
私は泣いている子を何とか泣きやまそうと、あの手この手で話しかけるのに対して、長女は「何で泣いているのか本人も分からなくて辛いから、理由を一緒に探して助けてあげよう」というスタンスだったので、何だか色々考えさせられました。大人の私だって、何となくモヤモヤして辛い時もあるというのに…
— とけいまわり (@ajitukenorikiti) 2017年8月16日
純粋にすごいなーと思いましたし、こうやって自分の思いを言葉にすることが苦手な子に対して一緒に考えてあげる存在があれば自分の思いや感情を客観視しやすくなるだろうなあとも思いました。自分を客観視することは、自分の感情をコントロールするためには欠かせないことです。客観視できるからこそ自分の思いに気づくことができ、思いに気づけるからこそ感情をコントロールでき、コントロールできるから別の選択肢を見つけることもできる、つまり我慢ができるというわけです。だとすると、自分の気持ちに気づくのが得意でない子に対しては、保育者や周りの友達がこのツイートの長女のような役割を担ったりすることで、あさりこども園での子どもの育ちはずいぶん変わってくるんだろうなあと、そんなことを思っています。もしかするとそんなことは既に当然のように行われているかもしれませんが、時々その意味の確認をするのも大事なことだと思います。
2017年8月29日
2017/8/28【花の村で楽しむ】ひうたのウクレレレッスン in さくらこども園&花の村温泉 レポート
またまたウクレレレッスンが開催されました。
午前中の会場はさくらこども園、午後の会場は花の村温泉です。
今回が3回目の開催になりますが、「楽しそうだからやってみたかったんだよねー」と参加してくれる人が少しずつ増えてきているようです。ウクレレレッスンを毎回見て感じるのは、レッスンを受けている方全員がすごく楽しそうにしていること。あっという間に曲が弾けるようになるのも楽しさの秘訣だと思いますし、あの音色が響いている空間にいるのもかなり心地いいです。ひうたさんのレッスンはとても楽しいので、興味のある方はぜひ一度体験しに来てください。
今回遂に全3回のレッスンを全て受け、見事卒業となった方々が6名も誕生しました!レッスンは一応3回受講して終了となりますが、せっかくなので演奏会なんかを企画して多くの人に披露する場をつくってしまおうと。卒業の方はまだまだ増えると思うので、その全員が集まっての演奏ってすごいだろうなあと、今から楽しみです。
引き続き初めての方向け、2回目の方向け、もちろん3回目の方向けのレッスンも行っていくので、あさりこども園からのお知らせをチェックしておいてください。
2017年8月25日
No.507 まだまだ変わります
「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ
俵万智さんのサラダ記念日にこんな詩がありました。かなり季節外れですが。久しぶりにこの詩を読んだとき、これって子どもに寄り添う保育者の姿じゃないかなと、そんなことを思いました。
「子どもたちは白紙の存在で生まれてきて、そこに大人がどんどん知識を植え付けてあげる」過去の子ども観はこんな感じでした。でも今はいろんな研究によって、「子どもたちは様々な力を持って生まれてきて、それを引き出してあげることが大事」だと分かってきました。そうなると、子どもたちにあれこれ指示をしてやらせるのではなく、子どもたちが持っている力を信じ、その力を引き出すための環境を用意し、自分から行動していくためことが大人の役割だと言えます。その存在のことを安全基地と呼んだりするのですが、その安全基地とは何かを考えることがよくあります。大人の視点で、大人の判断で子どもたちの行動をサポートするのとは少し違い、子どもが育つために必要なことは子ども自身がよく分かっているから、子どもからの働きかけを待てばいい、その働きかけに対してきちんと応えてあげればいい、そんなスタンスで子どもを見守る存在のことなんじゃないかと思っています。子どもが求めることに即座に答えてあげることや、子どもの思いに適切に共感してあげることが安全基地としての存在であり、その存在であることが保育者としての役割なんじゃないか、そんな風に考えています。最初に紹介した詩のように、子どもが「今日は暑いね」と言ってきたら「暑いね」と答えたり、「こんな虫を見つけたよー!」と走ってきたら「すごいね、よく見つけたねー」と答えたり、「今日は何もしたくないなー」と言ったら「そうかー、何もしたくない日かー」と答えたり。そんな存在がちゃんといてくれると子どもが実感できると、その存在によって安心して自分の感情を受け入れることができ、自信を持って行動し、そして成長していくと思うんです。
なぜこんなことを書いているかというと、あさりこども園のスタッフが、自分たちの「子どもの力を信じる」や「保育者の役割」について、根本的なところから見直そうと動き始めているからです。今まで子どもを信じていなかったわけでも、保育者の役割を掴めていなかったわけでもありません。そうではなく、次のレベルで自分たちの役割を考え直そうとしてくれているんです。形が見えてくるのはもう少し先かもしれません。でも子どもたちの姿に変化が出てくるはそんなに先の事ではないと思っています。その姿を見ることで、私たち保育者にできることはまだまだ山のようにあると、たくさんの気づきを与えてくれると思っています。あさりこども園はまだまだ変わっていくとしつこく言ってきましたが、今回はかなりの変化になるはずです。その変化をうまく伝えることができるか自信はありませんが、発信だけはいろんな形でしつこく続けていくつもりです。
2017年8月24日
2017/8/23【花の村で学ぶ】認知症研修 in 合歓の郷 レポート
研修の内容ですが、まずよこたの郷の様子を紹介してもらった後、認知症ケアの考え方についての話に移っていきました。 認知症の基本症状として記憶障害・見当識障害・実行機能障害の3つがあるといった基本の話を分かりやすく整理してもらうことに始まり、実際の声かけなどの対応で気をつけることなども細かく教えてもらいました。
研修の中で何度も話されたのが次のことです。
「本人の目線になる。本人の見ているものを理解する。」
「尊厳を守るケア、つまり自分がされて嫌なことはしないことが大事。」
このことを大事して介護を行ってほしいというメッセージをしっかりと受け取らせてもらいました。
現在認知症の人は462万人、軽度認知障害を含めると800万人もいるそうです。島根県の人口が約70万人なので大変な数字です。事業所としては当然ですが、社会としても認知症に対する理解を深めていくことは今後ますます重要になってくるでしょう。今後もこのような研修の場を計画していきますので、1人でも多くの方と共に理解を深めていきたいと思います。
2017年8月18日
No.506 畑の小屋と石の道
1つは畑の小屋。保護者会長のHさん、Nさん、Sさん、Yさんが協力して作ってくれたものです。
以前からお伝えしていたのですが、こども園の畑で採れたものを使って地域の方をおもてなしをしたい、そのためには畑で美味しい野菜ができないといけない、そうなると畑作業のための道具置き場もしっかりしたものが必要、今ある小屋は改修が必要になってきている、だったらそれを新たに作ってしまおう、そんな風に考えて作り始めてくれて遂に完成したというわけです。廃材を使ったのでかなり工夫をしなければいけなかったのが大変だったと言われていました。その言葉通り、実際の小屋を見るとすごく考えてくれたことが伝わってきます。その小屋を使う職員のことをいろいろと考えながら作ってくれたようで、内側の棚は自由に組み替えることができるようにしてくれています。この小屋をしっかりと活用し、畑の野菜を使っての地域の方へのおもてなしはもちろん実現させることを考えていきますね。
そしてもう1つの変化が石の道。今まではただの土の道だったところに石が敷き詰められました。
試しに裸足になって歩いてみたところ、かなり不安定です!
まだ石が地面に馴染みきっていないため、不用意に歩こうとすると石のグラグラにやられてバランスを崩してしまいます。もうしばらくすると多少は歩きやすくなるんでしょうが、それでも不規則な形や高さの石の上を歩くのはなかなか難しいです。この上でこけると当然痛いです。だから気をつけて歩かないといけません。バランスも上手にとらないといけません。そんなことは誰かに教えられてできるようになるものではなく、自ら体験して掴んでいくことです。園庭の外に出るとこのような箇所はあちこちにあります。そこでどんな体の使い方をする必要があるかを、園庭の中で学んでほしいという思いがあります。そして、運動面でこれから大事にしていきたいのが「バランスをとる」こと。ゆらゆらと揺れを感じながら、その中でバランスを取ろうと体の動きを意識する、そのために必要な力をつけていく、そんな体験を十分にさせてあげたいと思います。その取り組みの1つが今回の石の道。これから修正を繰り返す予定ですので形は変わっていくかもしれませんが、保護者のみなさんもぜひバランスを取るこのルートを通ってみてください。
2017年8月15日
2017年8月
何を今さらと言われそうですが、花の村では地産地消を食の柱の1つとして大事に考えています。地産地消のメリットについては既にみなさんも知っていると思いますが、旬のものをいつも新鮮なうちに食べられるとか、輸送距離が短いので鮮度がよく栄養価が高いとか、いろいろとあります。そして地元の食材を扱うことで、この土地や地域とやり取りすることになるのが大きいです。この地にどっしりと構えることと地域を創造し活性化していくことは切り離せないので、地産地消は外すことができません。毎日行われる『食べる』営みを通して地域と安定したつながりを持つことは、みんなで考え続けていきたいことです。
【N農園】
合歓の郷の建物の後ろに「N農園」があります。この名前は私が勝手にそう呼んでいるだけなのですが、合歓の郷調理員のNさんがコツコツと作り上げている3坪の畑です。今までに作ってきた作物は大根、カボチャ、キュウリ、トマト、スイカで、たくさんは栽培できないので食数の多くない合歓の丘で時々使われたりしています。今後は畑を少しずつ広げて収穫量を増やしたり、ジャガイモや玉ねぎなども植えたりすることを計画しているようです。
【自産自消】
Nさんが取り組んでいるようなことを「自産自消」という言葉で表現することもあるようです。規模を極端に大きくしていくことは難しいでしょうが、自分たちで作って自分たちで消費する「自産自消」はおもしろい活動だと思っています。地産地消の取り組みと直接つながるわけではありません。でも生産から消費の流れを実際に体験することで、地産地消が食の基本であると実感しやすくなるはずです。各事業所でもそれぞれの規模、それぞれのやり方で自産自消が行われていますが、無理のない範囲で楽しみながら継続してもらいたいと思います。
【失敗から学ぶ姿勢】
そんな地産地消のこと、自産自消のことを先日行われた合歓の郷調理担当者のミーティングの場で話をさせてもらいました。地域の食材を使う場合の課題がたくさん話し合われましたが、こうした話し合いを繰り返し、少しずつ花の村の地産地消の形を作ってもらうことを期待しています。私たちの事業で完成されたものはなく、改善が必要なことばかりです。だからこそみなさんの大胆な発想からの提案、その提案からの行動が大事です。もしうまくいかなかったとしても、みんなでそこから学ばせてもらいましょう。その姿勢こそがこれからの私たちに最も必要なことと考えてください。
2017年8月7日
みんなのサマーセミナー in尼崎
このセミナーに興味を持つきっかけになったのがラジオ番組「8時だヨ!神さま仏さま」。活動自体に興味を持ち、「8時だヨ!神さま仏さま」のDJも授業をされること、そしてなんといっても尼崎市長も参加する教育についてパネル討論もあると知り、これはちょっと覗きに行こうと考えた訳です。
こうした学びの場作りの必要性を感じていたし、事業を動かす前の段階、小さな動きを生み出す仕組み作りにも役立つと考えていたので、限られた時間での参加でしたが、そこの空気をじかに感じることができたのは収穫でした。やっぱりおもしろいです、こういうのは。スタッフの方はそれぞれに楽しそうに動き回っておられたし、授業も多種多様なのもすごいです。「今こそ告白!ラブレター大作戦」とか、参加してみたらよかったとちょっと後悔。
今回は4時限目と5時限目に参加できました。4時限目は「8時だヨ!神さま仏さま」のDJ、貴布禰神社の江田宮司の授業へ。関わっていることを深く掘り下げた話だったので、全く知らない神社に関する話でしたが楽しく聞かせてもらいました。
そして5時限目は教育政策についてのパネル討論へ。尼崎市長、熊本市教育長、箕面市長、生駒市長のそれぞれの取り組み、それぞれの考えを聞かせてもらいました。頷けない部分もありましたが、こういったことがオープンに議論されるのは大事なことかもしれません。ただ、ちょっと怖いな…と感じる取り組みの紹介もあり、でもそれを怖いこととはあまり感じておられないところに更に怖さを感じ…といったこともあり、ちょっと考えさせられました。詳しくは書きませんが、いろいろあるんだなあと。
とにかくあれこれ感じたことを整理することから始めていきます。
2017年8月4日
植松さんの講演会
TEDの動画に加えて、2015年5月17日(日)山梨県立図書館で行われた講演も楽しんでいます。
どの話もとっても響いてきて、いつか生で話を聞きたいと思いながら、何度も何度も動画を見ています。
そんな感じで植松さんの話が頭の中にたっぷり詰まっていた昨日の夜のこと。
子どもの行事予定を確認しようと学校からのプリント類を確認していると、あるプリントに「思うは招く」の文字が。
どこかで見た言葉だなあ、そういえば植松さんの講演タイトルは「思うは招く」だったよなあ……
えっ!
植松努さんの講演会の案内だ!
市内で行われる中学生対象の!
しかも前日に終わってる!
中学生の息子のところへ走っていき、聞きました。
「昨日植松さんの話を聞いたの?」
「うん、聞いたよ」
「植松電機の植松さん?」
「うん」
「ロケットを飛ばす植松さん?」
「うん」
「今日みなさんにお話しするのは『思いは招く』っちゅう話です、って話すあの植松さん?」
「うん、おんなじこと言ってた」
「うわー、いいなあーー!父さんにも教えてほしかったーーー!」
「父さんは別に興味ないと思って」
「今一番興味のある人だよ!ほら、この動画とか(TEDの動画を見せる)、、、、この動画とか(山梨の動画を見せる)、、、、これを今ずっと聞いてるんだよ!」
「へえー、好きだったんだ」
「話を聞いてて楽しかったんじゃない?いい話だったでしょ?」
「うん、よかったよ」
そんな感じで、興奮した父と、そんな父の態度にニヤニヤしながら淡々と受け答えする息子のやりとりがありました。
植松さんは講演の中で
「ロケットの作りたいと思ったら、作ったことのない人にそのことを話しても「そんなの無理」と言われてしまう。でも自分に相談してくれたら『どんなのを作る?』と言ってあげられる。そうすると、本当にロケットを作ることができてしまう。だから夢は『どうせ自分にはできない』とか『やり方がわからないからできない』とあきらめてしまうんじゃなくて、どんどん人に話さないといけない。たくさんの人に話していると『それだったこうしてみたら?』とか『それに詳しい人を知ってるよ』と教えてくれる人に出会える。そうやって夢はどんどん叶っていく。」
そんな話をされていました。
もし私が「植松努さんの話が聞きたい」「今一番会いたい人は植松努さん」とあちこちで話していたら、「植松さんなら今度ここに来るよ」と教えてくれる人に出会っていたかもしれません。息子も「今度植松さんの講演会があるよ」と教えてくれてたかもしれません。
夢の大小にかかわらず、「こうしたい!」という思いは人に話さないといけないなあ、植松さんの講演の動画を見てそのことを学んでいたはずなのになあと、大反省した夜でした。
植松さんの言葉
子育て中の方とは、子どもに関わる人とは、ぜひ共有しておきたい内容です。
例えばお子さんをお持ちの方は子どもの将来についていろいろ考えると思います。
その時についつい「将来何になりたいの?」って聞いちゃうことがあると思います。
でもね、気をつけてください。
できれば「何をやりたいの?」って聞いてほしいんです。
ちょっと違うんだけど、全然違うんです。
どういうことかというと、例えばね、子どもが将来「お医者さんになりたい」と思ったとします。
「あら、いいわね」と思ったとします。
でもよくよく調べてみたら、よっぽど頭がよくないと、すっごくお金がかかるって思ったら、
もうあきらめちゃう人もいるかもしれないですね。
でも考えてほしいんです。
お医者になりたかったのは何故なんだろう?って。
それがもしも「人の命を救いたい」だった場合には、
お医者が使っている道具はお医者が作っているんじゃないんですね。
そしてドクターヘリも救急車もお医者が作っているんじゃないですね。
AEDもお医者が作っているんじゃないですね。
健康にいい食べ物を開発したり、安全な車を作ったりするだけでも
人の命はすごい救えるじゃないですか。
お医者になりたいと思ったら、道が一本でした。
ところが人の命を救いたいと思ったら、道はいろいろあったんです。
だからこそ、子どもの将来のことをしゃべるときとかには、
資格とか学歴とか職業の名前なんかにとらわれないでほしいです。
何をやりたいのかを考えるんです。
そしたらね、いろんな道の可能性が見えてくるからなんです。
No.505 園庭のこと
あさりこども園の園庭は、こだわって作り上げた園庭です。平らではないし、あちこちに木が植えられています。決められたコースでしか遊べない遊びもあるし、ある程度体に力がつかないと遊べないものもあります。全て子どもたちの育ちを考えた上で、一つ一つに意味を持たせた作りになっています。園庭をぐるっと一周してもらうとわかりますが、必ずたくさんの動きが必要になります。歩く、走るだけでなく、またぐ、飛ぶ、登る、下りる、ぶら下がる、くぐる等の動きです。動詞の数が少しでも多くなるように、遊具の設置場所なんかも考えています。
そんな風にいろいろとこだわりのある園庭ですが、そうは言っても園庭の広さはいつも同じです。遊具が毎日変わるわけでもありません。、園外で遊び場も機会も多くあるにしても、基本的な作りは変わりません。それでも子どもたちは毎日夢中になって遊ぶ姿を見せてくれます。
退屈しないんだろうか?
変わらない園庭をどんな風に見ているんだろう?
そんなことを考えながら、遊んでいる子どもたちを眺めることがあります。
でもよく考えると、子どもたちは成長するたびにできることが増えていきます。鉄棒にぶら下がることしかできなかった子が、大きくなるとくるくる回ることができるようになります。憧れのまなざしを向けることしかできなかったツリーハウスも、力がついてくれば登って遊ぶことができるようになります。
また最近は毎日のように畑で採れた夏野菜を見せてくれるんです。一昨日はキュウリとカボチャ、昨日はキュウリとスイカを誇らしげに見せてくれました。これも当たり前のことですが、植物は毎日変化します。畑の野菜は次々と収穫できる状態に成長します。たくさんある木々の様子も変わります。見ているだけでも変化はあるし、収穫など積極的に関わるとさらに変化を感じやすくなります。
そして遊ぶ友達も変化します。同じ遊びをしていても、一緒に遊ぶ相手が変わるだけで全く違った遊びになるものです。似たような発達段階の子と遊ぶと競い合う楽しさが生まれますし、発達段階の違う子と遊ぶ場合は教えたり教わったり、刺激を与えたり受けたりといったことがでてきます。
サラッと見ると、広さも内容も変化のない園庭に見えてしまうかもしれませんが、その一つ一つをじっくり眺めると、一つとして変化のないものはありません。だからこそ子どもたちは夢中になって遊んでいるわけで、だとすると私たちも「もっといい園庭の環境を」と考え続けなければ!と思わされます。
園庭の様子を眺めながら考えていることを、そのまま書いてみました。 ただそれだけの内容です。
2017年7月28日
No.504 「どうせ無理」をなくしたい
きっかけは下記の動画を見たことです。とにかく感動してしまいました。
植松さんは植松電機を経営しておられ、リサイクルのためのマグネットを作る仕事をしながら宇宙開発(ロケットや人工衛星を丸ごと全部作ったり、NASAとドイツの研究所と植松電機の世界に3つしかない無重力実験装置を作ってしまったり)も行っているとんでもない方です。この方の考え方については動画を見てもらうとよく分かると思います。
世の中から「どうせ無理」という言葉をなくしたい、「だったらこうしてみたら」とみんなが言い合うことで夢を叶えてほしい、そんなことを訴えておられます。動画の中に何度も出てきますが、「子どもの夢を奪っているのはそれをやったことがない大人の無責任な発言だ」という部分に、ドキッとする人は少なくないんじゃないでしょうか。私も今までの自分の発言を振り返り、子どもに対してだけでなく、大人に対してもそんなことをしてきたことを改めて反省しました。子どもたちは何でも試したがり、恐れずにいろんな夢を抱きます。大人はそれをジャマすることなく、更に夢が広がるように、夢に向かっていく力を無くしてしまわないように関わらなければいけない。そんな当たり前のことを深く考えさせてくれたのが、植松さんの言葉の言葉でした。
そして、別のところではこんなことも言っておられます。「大きな夢を持つと自分1人では叶えることが無理な場合もある。それでも叶えようとすると仲間が必要になる。一緒にやってくれる人、自分の後を引き継いでやってくれる人。自分以外の人と協力しなければいけない事に気づかされる。だから大きな夢を持つことは大事なんだ。」そんな話だったと思います。
これも大事なことですよね。あさりこども園では子どもたちに協働する楽しさを知ってもらいたい、体験してもらいたいと考えています。1人でやるよりも友達とやった方が楽しい。1人ではできないけれど友達と協力したらできるようになった。そのことで遊びがより楽しくなり、好奇心が満たされ、そのことで対象に対して更に深い関心を持つようになる。そんなことの楽しさを知ってもらいたいと思っています。そして、自分の得意なところと友達の苦手なところを比べて友達をバカにしたりするのではなく、自分の苦手なところと友達の得意なところを比べて自分に自信を持てなくなったりするのではなく、自分の得意なところで友達の苦手なところを補ってあげ、自分の苦手なところを友達の得意なところで補ってもらえればもっともっといろんなことができるようになる、そうやって社会を楽しいものにしていくことを遊びや生活を通して十分に体験してもらいたいと思っています。そうなるためには植松さんが言われるように大きな夢を持つこと、何としてでもやってみたいという強い関心を自ら持つことが必要で、あさりこども園でもそのことを大事にしています。
他にも興味深い話をたくさんされているのですが、大きな夢、簡単には叶えられそうにない夢を持つからこそ仲間が必要になる、他者と協働することが必要になるという話が、あさりこども園の思いと重なる部分は多いと感じたので、ここで紹介させてもらいました。
植松電機で行われていること、そこで働いている人たちの関係性、そして植松さんの強くて深い思い、そんなことを実際に北海道へ行って肌で感じてみたくなっています。
2017/7/27【花の村で楽しむ】ひうたのウクレレレッスン in あさりこども園&花の村温泉 レポート
(第1回レッスンのレポートはこちら)
前回は初心者向けのレッスンのみでしたが、今回は初心者向けと2回目の方向けの2クラスを開催。初めての方にはウクレレの楽しさを、2回目の方にはウクレレの楽しさだけでなく、できることが増えていく楽しさもレッスン時間をフルに使って伝えてくれました。
参加者は午前の部と午後の部を合わせて21名。今回もたくさんの方に参加していただきました。
午前の部は前回と同じくあさりこども園で。
そして午後の部では初めて花の村温泉のホールを使って。
花の村温泉ホールはウクレレの音がキレイに響き渡るなかなかの環境でした。社会福祉法人花の村には他にも施設があり、それぞれが独特の雰囲気を持っているので、いろんな施設で開催するのも楽しいかもしれません。
今回は夏休みということもあり、小学生が4名も参加してくれました。それぞれに楽しんでくれていたようなので、保護者と一緒に参加してもらうという条件はありますが、ぜひ小学生の参加もおすすめしたいです。
また、18時からの初心者向けクラスに参加し、続けて19時からの2回目の方向けクラスに参加された方もいました。一気にいろんなことを吸収し、一気にできることが増えていくのも楽しそうでした。そんな参加もできるので、興味のある方はご相談ください。
レッスンが全て終わった後にひうたさんと相談をし、近いうちに第3回を開催する方向で調整することになりました。今度は初心者向け、2回目の方向け、3回目の方向けの3クラスの開催になると思います。詳細が決まり次第お知らせしますので、ご参加お待ちしています!
2017年7月21日
No.503 Yさんの企画
この活動を企画してくれたのは保護者のYさん。Yさんが農家の方と話をしているとき、「そういえばあさりこども園の今年のテーマは『地域』だから、園の近くで農業をされている方の話を聞かせてもらったりするのはテーマにもつながるし、自分たちが食べている食材について考えるきっかけにもなるんじゃないか」と考えてくれたようで、その場でこの企画について農家の方に相談をしてくださり、承諾までもらってくれ、実現に至ったわけです。 園としては当然テーマである『地域』を子どもたちにどう伝えていけばいいか、そのことを考えながら取り組みを計画しているのですが、保護者も同じように考えてくれ、しかも今回のように企画から提案までしてくれるのはすごいことだと思っています。
保護者と園が一緒になって子どもたちの体験を豊かにしようと考えてくれると、当然出てくるアイデアの幅は広がりますし、体験はより豊かなものになります。そして、その大人の姿勢はしっかりと子どもたちに伝わるわけで、子どもの育ちに与える影響がいかに大きいかは容易に想像できます。以前からもう少し小さな提案はありましたが、今回の提案には本当に驚かされ、改めてこうした保護者の思いをありがたく感じています。
先日の園庭整備作業では、保護者の協力のおかげでより遊びが展開しやすい状態にしていただきました。明日は夏祭りが行われますが、その際もたくさんの保護者に協力していただきます。役員さんを中心に、園庭改修の計画も動き出しています。保護者が率先して動いてくれていること、この流れを毎年次の保護者につないでくれていることは、当たり前のことではありません。ここまで動いてもらえているのはすごいことです。今の保護者にはもちろん、この流れを作ってくれたこれまでの保護者にも感謝です。
2017年7月15日
2017年7月
10年以上も前のことになりますが、オープンであることの大切について教えてもらったことがあります。オープンにすればするほど、より大きなものが自分に返ってくるという話です。例えば何かアイデアを思いついたとします。それを自分の中にしまっておくだけだと、大きくなることも増えることもありません。でも、「こんなアイデアを思いついたんだけど」と誰かに伝えるために自分の外に出そうとすると、言葉にする過程で整理が行われアイデアが変化することがあります。また、外に出して自分以外のいろいろな人を通ることでアイデアが違った形に変化することもありますし、自分だけでは決して思いつかなかった全く別のアイデアが新たに生まれることもあります。
【自分に返ってくる】
面白いのは、そうしたアイデアたちが自分に返ってくるところです。アイデアを自分だけのものにせずオープンにするのは恥ずかしいから…とためらってしまうこともあるかもしれません。時には自分だけのものとして守っておきたいと思うこともあるかもしれません。でもオープンにすることでもっと大きなものが自分に返ってきます。不思議ですが、そういうものなんです。だから職場内で、部署を超えてアイデアを共有し合えたら、どんなに面白いことが生まれるんだろうとワクワクしてきます。積極的にオープンにしていく姿勢を、花の村では当たり前のことにしていきたいと考えています。
【巻き込む・巻き込まれる】
アイデアの共有もそうですが、私たちの仕事は1人では成り立ちません。常に誰かと協力して行う必要のあることばかりです。でも「ちょっと手伝って」「一緒にこんなことをやってみない?」と誰かを巻き込むのはちょっと勇気のいることだったりします。みんな忙しいだろうし…なんて考えてしまうと、お互い様であるはずなのに言い出せなくなってしまいます。両こども園ではそんな現状を変えていくために「巻き込み・巻き込まれプロジェクト」というものを定期的に行っています。
35歳以下の職員グループ(巻き込む側)が企画者となり、36歳以上の職員グループ(巻き込まれ側)を講師として招く研修を企画します。今までに行ったのは「保育士の心構え」「保護者対応」を教えてもらう研修などです。意欲的に講師を受けてもらえるよう「巻き込み側」には工夫が求められますし、より楽しく、より学びが深くなる研修になるよう、上手に盛り上げる「巻き込まれ側」の姿勢も重要です。この取り組みを通して、両方の立場の重要性を感じてくれていると思っています。
物事を動かそうとするとき、巻き込む側(リーダー)はもちろん重要ですが、それについていき盛り上げる巻き込まれ側(フォロワー)の存在も重要です。花の村の仕事は、どちらの役割が欠けても上手く進んでいかないことを知っておいてください。
2017年7月14日
No.502 フラフラすることを楽しむ
夢中になる対象はそのときそのときで変わっていいから、なんにでも首を突っこんでフラフラしてください。(益川敏英)
■鷲田さんのことば
人生にはいろんなことが待ち受けていて、どの方向に一歩踏みだすべきか、誰にもわからない。楽しく、そして惜しみなく努力を注ぎ込める何かに出会うまで、とことんさまよえばいいのだと、物理学者は言う。「フラフラする」というのは、何でもがむしゃらにやって「フラフラになる」ことでもあろう。
『「フラフラ」のすすめ』から。(鷲田清一)
身軽な人ほど成長する、という話もよく聞きます。身軽であることは、フラフラすることとと本質は近いと思っています。身軽な人は活動的で、しかも活動に飛びつく動きが速いです。積極的にチャレンジし、そこで多くの成功や失敗を経験するため、学びの機会が非常に多い=成長が促されるという流れを自ら生み出しています。
でも、人は経験を積んでいくと事前にリスクを考慮することが増え、気づいたら非常に動きが鈍くなっていきます。これは自分のことでもあるのでよくわかります。最近新しいことに挑戦していないなとか、新たなことを思いついても「失敗したらどうしよう」「もう少し様子を見てから…」と、結局何もしないことを選択していたりします。いつまでもリスクを顧みず行動するのは立場上よくないことも多いので仕方ないことでもあるんですが、自分自身としてはもうちょっと積極的に動くべきなんじゃないかと思ったりするわけです。
何につながるかわからない、でも興味があるからやってみる。するとやってみたことで視野がパッと広がったり、そこで生まれた縁から挑戦したこととは関係のない別の学びが得られたりします。挑戦すること、フラフラすることの面白さの1つには、想像を超えたものとの偶然の出会いがあると思っています。
話を子どものことに移します。子どもは行動力の塊で、フラフラすることこそ子どもの本質だと言ってもいいくらいです。どこかにおもしろいことがないかいつも探していますし、興味を持ったら即行動です。もちろん失敗することも多いですが、でもその体験こそが成長の種となっていきます。そんな成長の原点でもある子どもの「フラフラする」ことを、大人はちゃんと認めてあげないといけませんよね。
興味を持てる様々な要素を周りに用意すること。
興味を持てる場や様々な人との出会いを用意すること。
やりたい!と思うことを見つけたら、それに十分に取り組める時間を用意すること。
失敗しても、また次に進んでいけるよう、受け止める存在としてそこにいること。
フラフラすることの楽しさを伝えるために、時にはフラフラのモデルとなること。
大人の役割は例えばこんな感じでしょうか。
大事なことは《「自ら」フラフラする》こと。
あれもこれも面白いからやりなさい!と強制してしまうと意味がありません。自分の興味関心にしたがってフラフラすることがポイントです。
子どものフラフラを認めつつ、時には大人もフラフラすることを楽しむ。
子どもも大人も、失敗を恐れずフラフラすることを大事にしたいですね。
2017年7月7日
さざなみの森へ
今回は県内で作っている勉強会グループで企画した見学研修です。
私自身は何度も訪問させてもらっているんですが、
他の方々は訪問したことがありませんでした。
園長は元建築家、大きな幼稚園からスタート、その後認定こども園へ。
そんなところなので、発する言葉や環境に対する見方、保育への思いも独特です。
訪れるたびに、お話をさせてもらうたびに刺激をもらっています。
これから保育園・認定こども園を取り巻く状況はまだまだ変わっていくことが予想され、
その変化に柔軟に対応していくためには
自分たちの思考の枠を超えた刺激を受ける体験も必要だと考え、
今回の見学を企画したわけです。
参加されたみなさんがどのように感じられたか分かりませんが、
こういう機会も必要だなあと私は感じました。
じーっと待っていて勝手に刺激がやってくることも無くはないですが、
でも自分で動いて得るのが正しいあり方だと思います。
動いてみて「思ったような学びはなかった」と感じたとしたら、
自分の動き方を見直すきっかけにすればいいだけです。
現状の認識が正しくできているかを確認するために、
現状に簡単に満足してしまわないために、
現状を思い切って変えるために、
そのためにどう動けばいいか、
動くために何を考えなければいけないか、
そんなめんどくさいことをずっと続ける必要があるんでしょうね。
ちなみにこの園の園長先生は園に対しても地域に対してもとっても思いが深い方で、ずっと話をしていたいと思わされます。
柔らかいけど強い芯をしっかりと持っておられる、そんな姿勢にも憧れています。
2017年7月6日
思考方法
考えていることが他の何かにつながって、それがまた自分の考えに影響を与えてくれて。そんなことをずーっと繰り返してきました。1つのことだけを考え続けていくのではなく、その1つに関連する他のことにどんどん手を広げていき、その過程で何かピーンとくるものを見つける。この思考方法がどうやら自分は好きなようです。
No.501 気持ちを新たに
それを辞めることにしたんですが、書きたいことがなくなったわけではありません。保護者が園の考えをかなり深く理解してくれている現状、保育の場で起きていることや子どもの姿について、その意味も含めて保育者がしっかりと発信してくれるようになった現状を考えると、自分が発信し続けなくてもいい段階がきたんじゃないかと判断したわけです。でも、書き続けてきたことが自分の学びになっていたこと、書くことで頭の中が整理されてきたのも事実です。ですから、印刷して園の保護者に直接配布することは辞めますが、ネット上では細々と続けていくことにしました。直接保護者に届けることを目的としていたのが今までですが、これからはちょっと力を抜いて、しかも字数もあまり気にせずに長かったり短かったりしながら、できるだけ素直に思ったことを書いていこうかと。
ということで、今考えていることの一部を紹介します。いっぱいある中の一部の、さらにその触りの部分のみですが。
①園庭遊具の無彩色化
園庭遊具で大事なのは色なのか、機能なのか。色がなければ遊具で遊ぶ意欲は生まれにくいのか。園庭に必要な色は何か。私たちの園の様な自然に囲まれた環境では遊具の色をどうとらえるのか。そんなことを考えていて、遊具は機能が大事、園庭ではまず自然の色を生かすことが大事ということで、無彩色というものを取り入れてみることを検討しています。無彩色(achromatic color)とは、白・灰・黒などの色みのない色のこと。無彩色の遊具が置かれた風景をまだ想像できていませんが、どうなるか楽しみです。
②文脈棚の意味合いを強めた絵本ゾーンへ
本を著者別や分野別でなく「意味」でつなげて並べてある棚を文脈棚と呼ぶことを知りました。そういえば文脈棚で展示している本屋を時々見かけます。ビールの棚を作り、ビールとタイトルが付いている書籍、例えばグルメ本、小説、ビールが取り上げられているマンガの8巻だけなどを揃えているところもあるようです。こども園の絵本棚にも文脈棚はあり、今なら夏に関する本を集めた棚、虫に興味を持ち始める時期なので虫関連の棚などがそうです。子どもの興味の広げ方を考えると、ある1つのこと中心に関連のあるものに興味を広げていくことが多いように思います。なので興味関心を広げやすいように文脈棚をもっと積極的に取り入れてはどうか、そんなことを考えています。どこから手をつけ始めるかはこれからのお楽しみということで。
2017年6月30日
No.500 センター試験の廃止と保育の関係
センター試験に代わる試験を行うことに決まった会議の報告書を読むと、なぜ変えることになったかの理由、どう変えていくのかの方向性が書かれていました。簡単にまとめると、変える理由としては「これからの社会は誰にも予想がつかないくらい大きく変わっていく。そんな時代だからこそ、多様な人々と協力しながら自分自身で人生を切り開いていく力が重要になる。また、知識の量だけでなく、自分で問題を発見し、答えを生み出し、新たな価値を作りだしていく力が重要になる。」とありました。すごく大事なことですよね。園児が大人になったときは今と状況が大きく違っているはずで、だからこそそこを見据えて必要な力をつけるべく、育ちの場を作っていかなければいけません。前回のひとりごとでそのことを書きました。
そしてこれから教育の場で重視すべき力として「①十分な知識・技能、②それらを基盤にして答えが一つに定まらない問題に自ら解を見いだしていく思考力・判断力・表現力等の能力、③これらの基になる主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度である。」とあります。①は今までと変わらないことですが、今後は②③の重要性がもっと盛んに叫ばれるようになると思います。これらは乳幼児期からの体験も非常に重要だと考えていて、自分で考え挑戦する場、その中での失敗が認められる場、個々の考えの違いが尊重される場、子ども同士の多様な関係の中で楽しさを共有する場、好奇心を高めもっと知りたいと思える場、そうした場を作ることがこども園、保育園、幼稚園の役割としてますます重要視されるようになるはずです。あさりこども園はこれからも変わらずそこを目指していくわけですが、その目指しているところを改めて整理する段階にきていると思っています。保護者のみなさんだけでなく、地域の人たちにもスッと理解してもらえるような、そんなものを作って示していくことが私たちの課題でもあります。
センター試験とこども園の保育は直接つながっているわけではありませんが、目指すところを合わせるのは絶対に大事なことです。子どもたちに関わる全ての大人が、全ての教育の場が同じ思いになれば、社会のあり方も変わっていくんでしょうね。そうなっていくことを目指して、私たちはこども園でできることを1つずつ積み上げていきます。
2017年6月23日
No.499 15年後、20年後の社会に向けて
そのレッスンの打ち合わせをひうたさんとしている際、スマートフォンやPCの進化のすさまじさについての話になりました。ひうたさんは作曲もされているのですが、曲が頭に浮かんだらメロディーを適当に口ずさんだものをスマートフォンで録音し、それを知り合いにメールで送るとすぐに曲に仕上げて送り返してくれるそうです。特別な機材もいらないし、やり取りもほとんど時間がかかりません。そしてPCが1台あれば作曲や音作りをしてCDを作り上げることまでできるとのことです。音楽スタジオを借りてたくさんの機材を使って…ということも必要ないそうです。以前は必要だったものや仕事がどんどん必要なくなっている時代になったんですねと、2人で話していました。
「あと10年で消える職業」という話が以前話題になっていました。「コンピューターの技術革新がすさまじい勢いで進む中で、これまで人間にしかできないと思われていた仕事がロボットなどの機械に代わられようとしています。」という説明の後、消える職業としてレストランの案内係、レジ係、スポーツの審判、ホテルの受付係、データ入力作業員、測定を行う作業員、メガネやコンタクトレンズの技術者、訪問販売員などが紹介されていました。本当に消えていくんだろうか?と疑う気持ちもありますが、でもスマートフォンの進化など身の周りで起きている変化の速さや大きさから考えると何が起きてもおかしくはないのかも、とは思っています。
今こども園にいる子どもたち、これから生まれてくる子どもたちが社会に出て活躍するのは15年後、20年後です。今とは違う社会のあり方の中でどう力を発揮していくのかが、間違いなくこれからの課題となっていきます。たくさんの知識を詰め込むことではコンピューターには絶対にかないません。今後必要となってくるのは、持っている知識を組み合わせて新しいことを生み出す創造性や、相手の気持ちを読み取りながら協働していく対人知性であり、その力をつけていくためには子ども同士の関わりが欠かせません。その関わりを遊びや生活の中で複雑に生み出していくことがこども園や保育園などの施設の大事な役割で、それがあさりこども園の保育の軸になっています。
2017年6月16日
No.498 おもてなしカフェ?
週に一度のもくもくの日の活動で、海に行く時期は限られていて、しかも海へ行くかどうかは子どもたちに選択に委ねているのでどうなるかわからない、そんな不確定なことのためにこうして動いてくださる方がいるのは、本当にありがたいです。
「この先で蜂がたくさん飛んでいたから気をつけた方がいいよ」「○○の実がなっていたから取りに行ってみたら」といった情報を教えていただくことも増えました。子どもたちがこの地で楽しく遊べるように、この地の楽しさを十分に知ることができるようにと考えてくれているんだと思います。地域の中に子どもの活動場所が少なくなっている、子どもの存在を受け入れてもらいにくくなっている、そんなニュースを耳にすることも少なくない今、あさりこども園の周りでこのような動きが起きているのはとてもうれしいことです。地域の方の活動を保護者のみなさんにも知ってもらうために、定期的に情報を発信していく仕組みを作ることは、私たちのこれからの課題です。
月曜日には保護者会の役員会が行われました。以前にも紹介しましたが、お世話になっている地域の方にお礼をする場を作りたいと会長のHさんが考えてくれていて、その活動の提案もありました。その案の1つは、飲み物と、こども園の畑で採れたサツマイモで作ったお菓子などを用意してカフェを開き、そこに地域の方を招待するというものです。カフェだけで言えばあちこちで行われていることですが、こども園の子どもたちの活動に協力してくださっている地域の方々に対して感謝の気持ちを伝えるために、保護者が中心となって活動が起こるというのはあまり聞いたことがありません。あさりこども園の保護者はすごいなあと思いながら、その話を聞いていました。この活動にはもちろんこども園も加わらせてもらいます。役員以外の方にも加わってもらい、みんなで楽しみながら地域の方をおもてなしできるといいですね。役員会後の立ち話で「地域の人とのつながりは絶対に大事にしていきたい」と役員のYさんが私に話してくれました。この思いをみなさんと共有できていることをうれしく思っています。